投稿者 : yoshimura1212 投稿日時: 2019-11-12 16:43:06 (617 ヒット)

MCBのトリを飾るのはワシントン大学の今井眞一郎先生。言わずと知れた「老化長寿」研究の第一人者で昨年に続いての講義だ。今回は学生以外の研究者のかたも多数聴講に来られた。驚くべきことは今年Cell Metabolismに発表された成果で、NAD合成の律速酵素eNAMPTが脂肪組織機からエキソソームのような小さいベジクルに包まれて分泌されること、それが老化によって減少するが、eNAMPTを内包するベジクルを老齢マウスに注射すると毛並みも運動機能もよくなり寿命も長くなるらしい。マウスではあるがその違いは明白で、私などすぐにでも注射してもらいたいのだが、どうやら小胞に包まれることが重要で、そうしないと標的である脳に届かないらしい。やはりこの酵素の産物であるNMNを摂取するのがもっとも手っ取り早そうだが、純粋なNMNはべらぼうに高いそうで相当の金持ちでないと個人的に購入することは難しいという(Amazonで調べると売ってないことはなさそうだがまがい物が多いのだろうか。。)。今井先生はエネルギッシュで声も大きく、後ろの方で〇〇学生がうるさく私語をしても、ものともしない。圧倒的なパワーだ。きっとNMNを毎日飲んでおられるのかと思ったら、そうではなく食事で取れるらしい。NMNを多く含む食物は「枝豆、ブロッコリー、アボガド」。さらに朝ごはんをディナー並みに豪勢に食べるとNMNの利用の面ではよいらしく今井先生は朝ごはんにステーキを食べると言われていた。逆に夕食を質素にして夜8時までに食べて朝の8時まで何も食べないこと。12時間の食事の間欠で擬似的に飢餓状態を作ることで寿命の延長が期待できるらしい。
また面白いのはNMNを最も多く含むのは実は赤血球。ドラキュラが長生きする理由もこれか!?

なおこれでMCBの講義は終了。まだレポートがあるが、長かった講義期間が終わった。お世話係も今年で終了。講義が辛いのは学生ばかりではない。時間的に拘束されるということよりも、これだけの講師陣を揃えながらxxxxx。。。。心折れることが多すぎる。次の主任の先生、よろしくお願いいたします。


投稿者 : yoshimura1212 投稿日時: 2019-11-11 21:06:12 (647 ヒット)

 11日日曜日呼ばれて「京都賞」の授賞式に初めて出席する(もちろん授賞式の見学者として)。京都賞は日本国際賞と並ぶ日本を代表する国際学術賞である。演壇には過去の受賞者の山中先生や本庶先生もおられた。楽団の演奏ばかりでなく能が披露されたり着物姿の子供達の合唱が入ったりと豪華な演出だった。やっぱり稲盛氏はすごいと再確認した。正装で来るように書いてあったので生まれて初めて蝶ネクタイをつけた。家人に「年よりになったコナンみたい」と言われる(年取ったコナンを見たことがあるんか?)。普通の背広なので他のタキシード姿の人を見るとややおかしい気はする。まあ普通のスーツにネクタイの人も多かったのでさほど気にしなくてよかったのかもしれない。ただ胸の白ハンカチにまで気が回らなかった。

翌日、岩倉のあたりはすでに葉が落ち始めているようだったが国際会議場の周辺は人も少なく静かで散策にはうってつけだった。海外からの観光客もここまでは来ないらしい。やっぱり秋の京都はいいなあ。稲盛氏は経営破綻した日本航空を再建したことでも知られる。地下鉄の駅ではJALを解雇された人たちなのか、なにやら稲盛氏を非難する演説を行なっていた。気持ちはわかるが人員整理は稲盛氏のせいとは思えないしまして京都賞とは関係ないことなので、なにもここでやらなくても、という気はした。


投稿者 : yoshimura1212 投稿日時: 2019-11-10 00:48:04 (687 ヒット)

今日は慶應内の脳神経系の研究室が集まる研究会で講演を行なった。多発性硬化症の愛媛大越知先生、神経修復で著名な大阪大学の山下教授もいっしょだった。
日本人の死因の第一位は悪性腫瘍(がん)。2018年がん免疫療法でノーベル賞を受賞した本庶先生は「21世紀中に人類はがんを克服しひとはがんで死ななくなる」と述べている。免疫(ワクチンや血清療法)が感染症による死を激減させたように腫瘍免疫はがんによる死をいずれなくせるのかもしれない。ではがんでなければひとは何で死ぬのか。第2位は心疾患、第3位は老衰、第4位が脳卒中などの脳血管障害である。また寝たきりになる原因の第1位と第2位は認知症と脳血管疾患で、超高齢化社会を迎えて脳の病気の克服は急務である。免疫が克服すべき疾患は「がん」の次は「脳神経疾患」ではないだろうか。折しもバイオジェン、エーザイのアルツハイマー治療抗体アデュカヌマブが逆転申請となった。9月に「臨床試験を継続しても有効性が証明される可能性が低い」ということで中止が発表されたばかり。それがつい先日一転承認申請を行うことになったという。何が起きたのか?どうも高投与量群の患者データを追加したら有意差が出たらしい。これで直ちに認知症が克服できるわけではないだろうが、抗体を使ってアミロイドβのクリアランスを行えば治る可能性が示された意義は大きい。抗体の作用機序や発症、改善効果のメカニズムの解明が一気に加速するのではないか。同様にパーキンソン病やALSなど神経を変成させる有害物質の沈着で起きる脳の疾患は多い。同じく免疫系を介した治療が可能だろうという期待も出てきておかしくない。しかし実際にはT細胞の関与や寄与するミクログリアのサブセットなど解っていないことはものすごく多い。ちなみにアミロイドβの主要な受容体のひとつは七田君がDAMPs受容体として同定したtypeAスカベンジャー受容体である。ちょうどPD1抗体がヒトのがんに効くことが実証されてから腫瘍免疫の研究がものすごく盛んになった時に似ているような気がする。腫瘍免疫の国際会議に行くとアメリカや中国に今さら追い付けないような気がするが、神経免疫ならまだチャンスはあるのではないかと思う。国は機を逸することなく集中的に研究費を投入しては、と私ごときが言っても方針はなにも変わらないだろうけど。


投稿者 : yoshimura1212 投稿日時: 2019-11-07 21:46:07 (690 ヒット)

水曜日から岡山で開催のDAMPsの国際会議に来ている。DAMPsはDamage/Danger-assocaited molecular patternsの略で、要するに傷害等で組織が破壊された時に細胞成分が分泌され炎症を惹起する原因物質である。一番有名なのはHMGB1という核内タンパク質で、ストレスがかかると細胞質に移動し、未だに分からない機構で細胞外に分泌されてサイトカインのように働くというしろものだ。toll-like receptor2/4(TLR2/TLR4)を介して主にマクロファージや血管内皮細胞を活性化することが知られている。我々も脳梗塞モデルでペルオキシレドキンという分子を新たなDAMPsとして報告した。国際会議では主にHMGB1に関する驚きの報告が相次いだ。HMGB1に対する抗体は脳梗塞のみならず脊髄損傷、てんかん、痛み、アルツハイマーその他さまざまな疾患に効果があることが報告された。特に驚きだったのはHMGB1を神経特異的に欠損させるとなぜか神経が少ないと思われる関節での炎症も抑えるとのことで、そのメカニズムは想像することも困難だ。またHMGB1の一部分を投与すると強い抗腫瘍免疫を誘導するという報告も驚きだった。一方で数億円もかけてHMGB1に結合する中分子(分子量50kDくらい?)を作成したところ抗体で報告されているような疾患に効果がなかったという報告もあった。ほぼ完璧なネガティブデータでそれを公表する勇気には賞賛するが、もともと抗体はHMGB1のクリアランスを促進することで作用するとも考えられていたはず。小さくしたらいいというものではないと思ったのは私だけではないだろう。ともかくもこれまでのDAMPsの意識を転換させられる極めて面白い会議だった(明日もあるのだけれど)。DAMPsは間違いなく存在する。そこは疑う余地はない。しかしその作用機序はまだ不明な点が多いし、ましてやその阻害が及ぼす治療効果もさらなる研究が必要、というのがこの分野には初心者の偽らざる感想だ。
学問的にも勉強になる会議ではあったが、2日目の午後は岡山市では失礼ながら数少ない勝景地の後楽園と岡山城への遠足と会食が用意されていたことは大会長のN先生の気配りが感じられた。岡山城は烏(う)城と呼ばれて遠くからみると漆黒の外観が極めて印象的である。しかし近くまで行くと完全なコンクリ建設でやや(いや実際にはかなり)期待を削がれる。NHKのニュースでは全国的に木造での城の再建が検討されているそうであるが、沖縄の首里城の火災が影響する可能性があるという。それでも宇喜多秀家や小早川秀秋などの秀吉から家康への時代の変遷を語るに欠かせない武将たちが居城とした城である。歴史、大河好きのオヤジには興味が尽きない(城内のゲーム風の肖像は全くもっていただけない)。いい一日を過ごさせていただいた。写真は岡山城と武将姿でご満悦の大会長。

岡山から戻ると持田財団の助成金と学術賞の授賞式。今年は私が推薦した竹田潔先生が学術賞を受賞された。数年おきに必ずNatureを発表されるようなすごい先生である。その師匠は審良静男先生と岸本忠三先生。受賞講演の最後に両先生から受けた薫陶を話された。岸本先生が言っていた『本当に重要な研究をせよ。重箱の隅をつつくような仕事はするな』という言葉は耳が痛い。選考委員長からも「助成金の受領者はよく胸に刻むように」というお言葉があった。師匠と呼ぶべき人を持てるのは幸せなことだと深く感じ入った。


投稿者 : yoshimura1212 投稿日時: 2019-10-31 00:49:59 (1022 ヒット)

2020年は東京オリムピックの年である。極評されているNHKの大河ドラマであるが、私のなかでは近年にない秀逸な作品だと思っている。しかしC席でも10万円はくだらないという開会式のチケットを買えるわけもなく2020年に特に大きな思い入れはない。が、IOCがマラソンと競歩を「東京は暑いから」という理由で札幌に無理やり替えるという話が出た時はそれはおかしんじゃないのという気持ちになった。そもそもオリンピックを7月の最も暑くて湿度も高い時期にやったら死人がでるんじゃないか、という話ははじめからあった。今年の8月に外国人を午前中案内しただけで完全に疲弊した。10月とか5月に開催すれば何の問題もないはずである。暑さ対策の費用も浮く。ところがIOCが巨額のテレビ放映権欲しさにこの時期でないとまかりならん、と決めたのだという。全くもってIOCの言うことは筋が通らない。そんなに選手のことが心配なら秋開催にすればいい。でも多くの報道は何故かそこを追求しない。ぜひ東京都はIOCの横暴に一矢報いて欲しいものだ。しかしこれも温暖化のツケ。グレタにIOC会長にぜひ"How dare you!"と言って欲しい。


投稿者 : yoshimura1212 投稿日時: 2019-10-19 12:55:59 (1373 ヒット)

札幌の臨床免疫学会で印象的だったのはJAK阻害剤の話題が多かったこと。といっても自分がそれを選んで聞きにいっているからかもしれないが。もちろんトファシチニブやバリシチニムは関節リウマチで認可されている。京都大学の橋本先生の話ではJAK阻害剤は早期に「痛み」を軽減するという。JAK阻害剤はアトピー性皮膚炎でも期待されており、日本でもJTと鳥居薬品が『JTE-052軟膏」を承認申請している。こちらもバリア機能強化とともに痒みの軽減が期待されている。JAKを活性化するIL-4やIL-13は「かゆみ」を感知する神経の感受性を高めるらしい。よってJAKを阻害することで痒みを抑えることができる。「痛み」のほうはどういう機序かはこれからだそうだが、サイトカインが痛みや痒みの神経に作用してその閾値を決めているのだろう。CAR-T療法で起こるサイトカインストームはIL-6の阻害が有効であることが知られているがこれもJAK阻害剤で代価できるだろう。JAKの変異が知られている腫瘍分野の先生の話ではがんの縮小効果もだがそれ以上に患者さんに「身体が楽になった」といわれるのだそうだ。そう考えるとJAK阻害剤はステロイドに近いかもしれないがそれ以上にQOLを改善する効果が期待できるのかもしれない。まだまだ使用に慎重な医師は多いらしい関係者の意識が変わり始めている気がする。以前OSheaが来た時に講演で「アメリカではJAK阻害剤がイヌのアトピーで使われてよく効くと評判で、ヤミでヒトに使われているらしい」と言っていた。JAK阻害剤がいつかさらに広く様々な疾患に使われたら、30年前にこの分野の端っこで開拓に関与した者としては嬉しい限りだ。


投稿者 : yoshimura1212 投稿日時: 2019-10-17 22:22:07 (906 ヒット)

グレタにノーベル平和賞をあげるべきだった。先週末関東東北を縦断した台風19号。昨年の西日本豪雨に匹敵するかそれを超える被害らしい。多くの方から大丈夫だったかとメールが来たが首都は頑強だ。その周辺の被害が大きい。テレビで被災した人たちを見るのはつらい。ある遠く離れたところにいる卒業生から「こんな状況でも研究させてもらえることに感謝したい」とメールが来た。温暖化のためにこんなことはこれから毎年のように起きるだろう。でも我々はいつもこんな弱い立場の人たちから集められた税金で研究をさせてもらっている。研究者はそんな人たちから未来を託されて研究させてもらっているのだということを忘れてはいけないのだと思う。

NHKの台風の特集をみていた。北陸新幹線の車両基地はなぜあんな水没の危険があるとことに造られたのか。長野オリンピックのために新幹線を通すために急いであの場所に築かずを得なかったのだという。グレタの言った「経済成長というおとぎ話」を思い出した。

臨床免疫学会で札幌に来た。さすがに外は寒いくらい。コートを持って来てよかった。ランチョンセミナーでTregの話をする。主催者の予想を超える盛況だったそうだが、役立ついい情報を提供できたなら望外の喜びだ。


投稿者 : yoshimura1212 投稿日時: 2019-10-11 12:42:12 (1070 ヒット)

今日のMCBは筑波大学の家田先生。臨床でも忙しい中を来ていただいた。嵐の前の静けさなのかまだ天候は悪くない。家田先生は慶應循環器の出身。以前かから線維芽細胞の心筋細胞へのダイレクトリプログラミンを研究されておりこの分野ではパイオニアかつフトンロランナーだ。講義では留学時代のきっかけの話から心筋梗塞の治療を目指した研究まで紹介された。非常に驚いたのは心臓のなかで実は心筋細胞は3割くらいしかないらしい。1割が線維芽細胞で他は血管内皮など。なので心筋梗塞領域の線維芽細胞のうち100%でなくてもある程度心筋になれば治療効果が期待できるのだそうだ。ただ老化した線維芽細胞はリプログラミン効率が悪い。なぜかCOXの発現が高く炎症を介した仕組みが関係するそうだが「老化」のメカニズムを考える上でも示唆に富む研究のように思われた。ダイレクトリプリグラミングを治療に、というのは夢だろうが家田先生は単に夢に終わらせず実際に可能にする努力をされている。それが伝わってくる講義で、学生からの質問もいつも以上に多かった。来ていただいてよかった講義の一つだろう。


投稿者 : yoshimura1212 投稿日時: 2019-10-04 08:41:28 (2048 ヒット)

NHKの今朝のニュースで「日本からノーベル賞が出なくなる」と出して特集が放送されていた。 同様の話はだいぶ前から出ている。確かに毎年日本人候補者は減っている。私も昨年まではNHKや新聞社に「この時期連絡できるようにしておいてください」と言われていた。もちろん私が受賞するかも、という話ではなく「免疫関係で受賞者が出た時のコメント」のため。しかし今年はない。昨年が腫瘍免疫の本庶先生だったからということもあるだろうがノーベル賞候補の日本人は確実に減っている。ノーベル賞に発展するような革新的な成果には長く地道な基礎研究が不可欠。そのような人材を育てる環境は年々厳しさを増している。消費税も痛い。地方大学の窮状は目を覆うばかりでニュースで取り上げられた先生は自腹で学生を学会に派遣したという。一番不幸なのは資金不足で十分な実験ができない学生だろう。これでは研究者になりたいという若手は育たない。そんななかで企業との共同研究で活路を開こうという動きもあると報道された。大学は「運営」から「経営」に舵を切るべきとされた。しかし企業との研究ほど直近の技術的成果を求められるものはない。お金を出す企業としては当然だろう。ますます基礎研究に割く時間がなくなり自分で自分の首を絞めることになりかねない。
ところで今年の私の予想は医学生理学賞は「レプチン」か「オプトジェネテックス」。化学賞は「ゲノム編集」か「次世代シークエンサー」。まあ外れるだろうな。平和賞はぜひグレタにあげたい。

医学生理学賞は「低酸素応答」に。もう外した。
化学賞はリチウム電池。日本人が受賞してよかった。ノーベル賞の受賞が好調で関心が高いうちに、次に続に続く人たちを育てる抜本的な改革ができるとよいが。。


投稿者 : yoshimura1212 投稿日時: 2019-10-01 11:57:40 (1021 ヒット)

 9/30のMCBでは名古屋大学の山中宏二先生が登壇。山中先生は筋萎縮性側索硬化症(ALS)の発症機構で著名な先生だ。話し方が非常にマイルドで京都大学医学部を卒業されているので「お公家さん」かと思っていたら三重県のご出身だそうだ。家族性ALSでよく見つかるSOD1遺伝子変異のトランスジェニックマウスの研究からSOD遺伝子の変異は酵素活性を失わせることではなく異常たんぱく質として蓄積することで神経症状をもたらすことが知られていた。山中先生は変異SOD遺伝子を各種の細胞で消すことで病状の変化を追跡し、なんと変異SODは神経細胞ではなくミクログリアやアストロサイトなどのグリア細胞に働いて神経を障害することを明らかにされた。文章で書くと簡単だが1年以上観察しないといけない実験で相当に根気が必要だ。気の短い私にはほとんど不可能。おそらく同様の機構が同じく異常たんぱく質が蓄積するアルツハイマー病やパーキンソン病でも起こっているのではと推測されている。神経変性疾患は単純な神経の病気ではなく思った以上に複雑なのだ。ではなぜALSでは運動神経が、アルツハイマーでは記憶などに関与する神経が特異的にやられるのか?それはまだ大きな謎なのだそうだ。アルツハイマーではアミロイドβに対する抗体が期待を集めていたが思った効果が得られずに臨床試験は中止に追いやられた。でもミクログリアは免疫細胞なので何か免疫系が関わっていることは間違いないだろう。すでに凝集してしまった変性たんぱく質は毒性は少なく途中の過程が重要なのかもしれないらしい。


投稿者 : yoshimura1212 投稿日時: 2019-09-29 16:11:45 (921 ヒット)

木曜日から「がん学会」。初日午前中の英語のセッションでの発表。T細胞疲弊化の話題は英語でやったことがほとんどないので緊張する。25分の予定が直前に20分にと言われて後半のスライドをかなりスキップすることになった。いずれにしても準備不足で自分としては不満の残る内容だった。学会は演題はまだ少ないものの「がん免疫」は「がん学会」でも盛況で聴衆も多く定着しつつある気がした。

日曜日は郷里に戻って高校の同窓会に頼まれた講演を行う。話題の中心はもちろん「がん免疫」。がん学会での話も含めてノーベル賞の本庶先生の話題満載(もちろん賞賛ばかり)だった。一般向けの講演はあまり経験がなくいつも以上に緊張する。眠たくならないように所々にジョークをちりばめる。新ネタはCAR-Tの「キムリヤ」一回3300万円もするので「高すぎてムリヤ〜」まばらな笑い。「忘れてください」。
柳沢先生の話からヒントを得て「世の中では『笑うと免疫力がアップしてがんになりにくい』といわれているが実験的には証明されていない。ミッキーマウスは笑うけど我々がよく実験に使うネズミは笑わない。そもそも動物を笑わせるのは極めて難しい」これはうけた。
ノーベル賞の話題にからめてカロリンスカ研究所で昔、共同研究者に呼ばれて講演をしたときの謝辞の話を披露する。「今回は講演の機会をいただき誠にありがとうございます。つきましては12月にもう一度お呼びいただけることを願っています、と言ったら意味がわかってもらえずに会場がシーンとなった」これはまあまあ受けた。

質問で「先生がノーベル賞をとるのはいつですか?」「残念ながらノーベル賞は存命中でないともらえないので、私が生きているうちは難しいでしょう。」とかわす。イグノーベル賞ならそのうち、と言えばよかった。
予定の40分きっかりだったと思うが、一般向けに話すのはめちゃめちゃ難しい。


投稿者 : yoshimura1212 投稿日時: 2019-09-24 16:52:18 (1303 ヒット)

グレタ・トゥーンベリさん16歳は世界で最も有名な少女かもしれない。国連の温暖化の会議で怒りをぶちかました。あなたたちが話しているのはお金の事と経済成長というおとぎ話ばかり。恥を知りなさいHow dare you! というのは「よくもまあこんなことができるものだ」という怒りの表現。何度かでてくる。すごい。偉い。ぼーっと生きている自分が恥ずかしくなる。日本でも台風や豪雨で多くの人々が亡くなったり被害をうけたりしている。確かに彼女の言う通りで現在の大人たちが野方図に放出している二酸化炭素のつけは子供達にまわっている。放出を減らすぐらいでは足りない。吸収して減らす方法を開発すべきだろう。削減は困難。ならば技術開発で吸収すれば新たな産業の育成にもなりそう
この子はアスペルガー症候群で自覚しているという。中には「病んでいる」と避難するバカなそれこそ恥を知るべき大人もいる。幾多の批判にも負けないこういうカリスマ的な人が世界を変える事ができるのだろう。温暖化阻止のジャンヌダルク。負けないでほしい。


投稿者 : yoshimura1212 投稿日時: 2019-09-21 20:22:41 (1086 ヒット)

Kenn Murphyはずっと昔から免疫学の世界では一家言ある高名な人物で(見た目から?)「近寄りがたい」「怖い」人と思っていた。なんと35年も同じワシントン大学の教授をつとめている。実は歳は私と同じくらいかもしれない。彼が有名なのは免疫学では最も権威ある教科書「Janeway's Immunobiology」の単著者であることだろう。以前は共著だったが共著者が自己紹介しか書かないのでキレたという。やっぱり怖い?!
そのMurphyが慶應にやってきた。H教授がホストでセミナーをやってついでに接待にも誘ってもらった。私が知っているKennのイメージは免疫学会でよく呼ばれていた20年前であるが現在も外見はほとんど変わっていない。これまでのイメージで「怖いやつ」と思っていたが話してみると割と普通のオヤジだった。が、自分との大きな違いはその体型で腕を見る限りかなりの筋肉質。おそらく腹も3段に割れているに違いない。体型の話になって、彼は太ったと思ったら「高脂肪低タンパク」食事療法を行うのだと言う。最近もそれをやってXXポンド(アメリカはまだkgではなくポンドを使う後進国なのでよくわからなかった)減量したという。おいおい逆じゃないのかと思って確かめたが間違いない。「高脂肪」食といえばヒトでもマウスでも太らす食事のはず。それが何故?ポイントはタンパク質を摂取しないということらしい。延々と代謝経路の説明をされたがもともと代謝は大の苦手なので全くフォローできない。H先生はいちいちうなずいていたのできっと理解できたのだろう。世の中様々な食事ダイエット法は乱立しているが完全に逆説的な「高脂肪低タンパク」は初めて聞いた。ネットで調べても出てこない。低タンパクが脳にいいという話はあるようだが。。。まあ糖質制限ダイエットさえ続かずに食は美味しければそれが一番と思っている怠惰な人種には無縁か。。。


投稿者 : yoshimura1212 投稿日時: 2019-09-21 12:25:26 (805 ヒット)

 14日からの3連休はオーストラリアのシドニーで開かれた国際炎症学会(WCI)に参加する。南半球は冬から春になりかけの頃で前半は非常に良い天気で快適だったが後半冷たい雨が降った。学問的には脳梗塞研究で著名な研究者と知り合いになれたことが一番の収穫だった。私が慢性期の脳Tregの話をしたら、オーストラリアでは動物愛護の観点から脳梗塞モデルを処置したマウスは1週間以上飼育してはいけない規則なのだそうだ。それで慢性期のことは研究できなかったと悔しがっていた。我々はその規制のおかげで少し得をしたということか。実はマウスは脳梗塞モデルに強く1週間もすると普通に動いている。それを処分するほうがよほど残酷のように思えるが。。

よいことばかりではなかった。初日、街は最近建設されたと思われる高架の道路が縦横に交差しており、GoogleMapで調べても会場までの行きかたがよくわからない。道路や線路を越えられないのだ。ようやく会場に着いたものの、3つほどの巨大なコンベンションセンターが並んでおり、しかも学会の看板が一切なくどこでやっているか全くわからない。散々探し回って基調講演を聞き逃してしまった。またプログラムの冊子が全くなくすべてアプリでダウンロードしなければならない。これは日本でも普及しているのだが、ここではすぐにはデータが入って来なくて、なぜか時々勝手にスマホに送られてくる。全部のプログラムが見れるようになったのは1日後。自分がどこで発表すればよいかもわからず焦った。船で英国領事館まで行ってパーティーをやるというので期待していたら雨でバスでの移動に変更になった。夕方の通勤時間帯にぶつかり大渋滞に巻き込まれ1時間くらいかかって到着したように思う。帰りはなんと自分らで勝手に帰れという。折り畳み傘が壊れて泣きそうになった。参加者の多くはオーストラリアからなので彼らには勝手はよくわかるのだろうが、難儀なことが多かった。会場は有名なダーリング湾の近くで夜景が美しかったのでよしとすることにしたい。


投稿者 : yoshimura1212 投稿日時: 2019-09-10 15:15:38 (1241 ヒット)

MCBも9回目。本日は産総研の瀬々潤先生。じつは現在は株式会社ヒューマノーム研究所の社長が主な顔だ。医学部の講義のなかでは異色の機械学習、人工知能の講演をお願いした。この先生、とにかく声が大きい。エネルギーの塊のような方なのだろう。私は機械学習と深層学習 (Deep learning)は同じと思っていたが違うらしい。一細胞RNAシークエンスでよく見るディズニープロットは機械学習の一種らしい。講義のあとは学生さんとの議論タイムなのだがあまり手が挙がらない。つい次々自分の疑問を質問してしまう。例えばDNA情報から顔を予想する研究が報告されていたが病気を予測する方が価値があるんではないか?とか、東大医科研でワトソンに論文を読み込ませて難しい疾患を診断する報告があったが論文情報は人間が入れないといけないのか?とか(実際そこが大変らしい)。先生は将来のAIと医師と患者との関係を3つに分類して「AIが直接的、あるいは間接的に医師を補助して医師が患者に診断を伝える、もしくは医師がAIを監督してAIが患者に診断を伝える」。私は4番目の可能性「患者が医者を信用しないでAIに直接診断させる」というのは?(学生をみて)勉強しない医者は無視される時代が来るんではないか?と質問すると先生は笑っていた。またいらんことを言ってしまった。


投稿者 : yoshimura1212 投稿日時: 2019-09-09 09:24:49 (1379 ヒット)

この土日は守谷での「免疫適塾」。もう11回を数える伝統となった研究会である。主に未発表のデータをじっくりディスカッションしようという趣旨なので内容は書けないがどの発表も非常に面白く白熱した議論が続いた。ソフトボールはあくまで会の終了後、有志による勝手なレクリエーションであって会の本体とは 関係ない。そう強調しないと「経費で落ちない」かも。証拠に勉強している写真を一枚掲載したい。
ソフトボールは確か昨年は雨で流れたのではないか。久しぶりな気がする。といっても年1回しかしないので1年も2年でも『久しぶり』であることに大差はない。うちは人数が足り ないのでS研と企業のかたを加えてなんとかチームとしての体裁をつくる。D科、H研との総当たり(といっても2試合)である。当然私が投げるのだが初戦は 緩急が冴え渡りD科を1失点で一蹴する。D科はH研にもほぼ完封負け。あれほど強かったD科がどうして。。。どうも教授がいないと力が入らない?2回戦はH研。若い人が多くかなり手強い。最終回まで白熱した投手戦で 1:1で決着がつかず。最後はツーアウト満塁で後一本が出ればうちがサヨナラ勝ちというめちゃめちゃ惜しい状況だった。それでつい欲を出して延長戦を申し 出たのだが、これが裏目に出た。逆にツーアウト満塁でランニングホームランを打たれて終了。最後ムキになって直球を投げたのが悔やまれる。その晩は悔しく て、、、ではなく台風の風と木のざわめきで眠れなかった。
写真は東校舎前で倒れた木。

一夜明けて風雨は収まりつつあるが、1限目にMCBが予定されている。台風は過ぎても交通はひどく乱れている。きっと休講だろうと思ったら学生課からは「通常通り」との連絡。こればかりは自分では決められない。予想通り学生は10名ほどで講師の久保先生には誠に申し訳ないがそのまま決行する。鉄道の復旧が遅れて多くの通勤客が大変な思いをしたらしいが計画運休が発表された段階で1限目は休講にすべきだったかもしれない。
久保先生の話は実臨床に近く『患者に難しい事 を難しく説明するのは誰でもできる。優れた医師は難しい事をわかりやすく伝える』という言葉が印象に残る。我々の商売にも言えるがなかなか難しい。久保先生は遺伝性疾患を数多く手がけられている。遺伝性疾患というと遺伝子治療でもやらないと治らないかと思っていたが、そうでなく治せる例があるらしい。代謝酵素の変異であればちゃんと経路を理解して理論的に治療が可能である例や、患者自身の細胞に復帰変異が起こって正常化する場合があり、皮膚であればそれを増やして利用することが可能な例を紹介された。非常に重篤な症状を示す患者さんでも高度な再生医療などを用いずに注意深い医師の観察と知識、洞察力で既存の方法で治る可能性があることを示されたのは感動的だった。


 


投稿者 : yoshimura1212 投稿日時: 2019-09-05 19:26:28 (1134 ヒット)

 今日のMCBは3限目が神経解剖の仲嶋先生、4限目は成育医療センターの鳴海覚志先生。仲嶋先生の講義は初めて聞いた。Reelinという発生過程の神経細胞の移動と分化の制御に関係する分子の話。大学院生のときにまだ遺伝子のわかっていなかったReelinマウスに野生型マウスの脳細胞を免疫して抗体が得られたことからスタートされている。後から考えるとよくとられる手法のひとつかもしれないが大学院生の時によく思いついたものだ。神経細胞の動きと分布が一つの分子で細かく制御されていることが驚きだった。成育医療研究センターの鳴海先生は慶應医学部の出身でまだ40代初め。次世代シークエンサーを使ってどのように先天性疾患遺伝子にたどり着くのか、見つかった症候群にどう名前をつけるのがいいのかご自身の体験をもとに面白く話された。自分の若い時は遺伝子をクローニングして名前をつけるのが目標だったので相通じるものがある。シドニーブレナーの言葉「科学の進歩は新技術、新発見、新発想に依存し、おそらくその順に重要である」を紹介されて、新しい技術を導入することがいかに大事かを強調された。確かに次世代シークエンサーは遺伝子疾患の原因遺伝子の発見に多大な貢献をしている。このMCBは研究医を志す学生を少しでも増やす目的があるのだが昨今なかなか難しい。鳴海先生の話は大いに刺激になってくれたと期待したい。


投稿者 : yoshimura1212 投稿日時: 2019-09-03 17:13:34 (1222 ヒット)

MCBの2日目。3限目はシンガポールにラボを構えておられる須田年生先生。5年前まで慶應で研究をされていた造血幹細胞界の大御所である。コロニー形成ユニット(CFU)とコロニー刺激因子(CSF)といった造血幹細胞の古い(失礼!)歴史的な話から始まって先生が精力的に研究されているニッチの話まで広く話された。残念ながらいつものように淡々と話されるので、ここで紹介できるような笑いを取る所はない。でもレポート問題は「CellやNatureに最近発表された幹細胞関係の論文を読んで一番驚いたことを書け」というもので、これは学生にはかなりハードルが高く敬遠されるかもしれない。いや採点しないといけないのでレポート数を減らす深謀遠慮か(学生は30ある講義の中から12を選んでレポートを書かないといけないので選択は可能)。
4限目は昨年に続いて京都大学の斎藤通紀教授。30代で京大教授になられた新進気鋭の教授なのだが、なぜ研究の道を選んだのか、という問いへの回答は「研究なんて天才がやるもの、自分には関係ない職業と思っていたが、学生時代にラボ見学に行ったら普通のおもろいひとがやっていてこれなら自分でもできそうと思ったから。」昨年の講義での話を総合するとおそらく現、浪速大学教授のN先生のことを見てそう思われたのか。斎藤先生はN先生のもとにピカピカの先のとんがった靴を履いてやってきたらしい。N先生「なんでそんな靴を履いているのか」と聞くと斎藤先生「バーテンのアルバイトをやっています。混ぜるのは得意です。(実験では試薬を混ぜることが多い)」と言ったとか。しまった、またひとの持ちネタを披露してしもた。
それはさておき斎藤先生は試験管内でESやiPSから精子、卵子(正確には始源生殖細胞)を造る研究の大家である。講義の最後のほうで「人がセックスをやめるとき」(東京化学同人)という翻訳書の話をされて、いずれは体外で人が誕生するSFのような世界が普通になるかもしれない、という話を紹介された。米国在住の某先生のウワサの受け売りでは「アメリカではなんぼでもクローン人間がいる」らしい(フェイクニュースかもしれない)ので本当にそんなふうになるのかもしれない。しかし実はまだiPSからつくられた始原生殖細胞も完全にエピジェネテックスがリセットされているわけではなく、iPS由来の精子卵子から作られたマウスは異常が多いのだそうだ。まだまだ数十万個の卵子の元になる細胞から最良の500個あまりを選ぶ仕組みや、心臓一回鼓動する間(1秒くらい?)に1000個もの精子がつくられるのにゲノム情報に変異が極めて少ない仕組みもわかっていないそうだ。ちょっと怖いが非常に夢というか妄想が広がる研究に思えた。


投稿者 : yoshimura1212 投稿日時: 2019-09-02 17:26:10 (1226 ヒット)

3年生のMCB講義のトップバッターは筑波大学の柳沢教授である。私が前座でオリエンテーションと免疫学のトピックスの講義を行った。柳沢教授は「睡眠研究」の第一人者で国際統合睡眠医科学研究機構の機構長ある。大学を挙げて睡眠研究を寝ても覚めても推進されているに違いない。
大学院生時代にエンドセリンを発見し単身(かどうか不明だが)アメリカに渡りオレキシンを発見。それ以降睡眠研究にのめり込まれた。昨年の慶應医学賞の受賞者である。講義は「なぜ神経を持つ生物は眠るのか?(クラゲだって眠るらしい)」「なぜ睡眠研究が難しいか」というかなり哲学的な内容から始まった。その後オレキシンからナルコレプシーの話になる。睡眠だけに「目が覚める」ような印象的な話だった。何が難しいかって「何らかの睡眠誘発物質が溜まってある閾値を超えると眠るのではないか」と言われているが通常の状況でその物質的基盤がわかっていないらしい。以前プロスタグランジンD2(PGD2) がそれではないかと言われ私もそう信じていたのたが、柳沢先生の話ではそれは炎症などが起きた病的状態で眠くなる場合の睡眠誘導物質なのだろうという。柳沢先生らはその「睡眠物質」の候補としてマウス遺伝学を駆使してリン酸化酵素SIK3を同定された神経のリン酸化の状態によって睡眠が制御されているとしたらすごい。SIK3の最も重要な標的分子が長らく求められた睡眠物質なのだろうか。
ところでナルコレプシーではオレキシンがないために睡眠と覚醒のバランス制御がうまくいかないらしい。ヒトのナルコレプシーの場合は「笑う」ことがトリガーになって情動脱力発作を起こすのだそうだ。柳沢先生「ところがマウスではそうではない。何故ならマウスは笑わないから。」学生は無反応。柳沢先生「ここは笑うところなんだけど。。」実はマウスは笑わないがラットは笑うらしい。お腹をこすってやると人間みたいに「笑う」。なんとラットが笑うという話はScienceに報告されている。しかしマウスのお腹をこすると「怒る」のだそうだ。マウスの場合のトリガーはチョコレートなんだそうだ。チーズかと思った。それにしても先生の「持ちネタ」をこんなところで披露していいんだろうか?苦情が来ないうちに期間限定としたい。

睡眠はまだまだ分からないことが多いらしい。やはり「夢見る」分野なのだと再確認した。

 


投稿者 : yoshimura1212 投稿日時: 2019-09-01 17:33:30 (989 ヒット)

 高知から福岡に飛び日曜日からのAMEDの若手発表会に参加する。CRESTの若手、PRIME一期生の発表で内容は多肢にわたるものの極めて面白かった。終了後もいくつかのグループで情報の交換や共同研究の話が盛り上がっていたようなので大いに成功だったと思う。九州北部はこの日から雨続きで佐賀県での豪雨災害につながった。
東京に戻ると次は2期目の応募で不採択になった提案への返答が待っていた。もちろん他の審査員からのコメントも羅列してあるが、皆さん神経をすり減らして必死に書かれた申請なのだから、なるべく丁寧に返事をして問題点を指摘したい。様々な仕事が溜まって時間に追われている身ながら(なのに飲み会に行く時間はあるのは何故とは聞かないで)、こちらも週末を潰して取り組む。といっても半端な数ではないので全部に書き加えることは難しい。私のような領域長(総括)は日本のライフサイエンスを担う人たちを支援するため雇われている。だから採択された人たちへの叱咤激励だけではなく、申請された方、これから申請しようという方にアドバイスをすることも重要な仕事と思っている。学会やメールなどで遠慮なく声をかけて欲しい。どこまで適切な助言ができるかはわからないが参考意見は言えると思う。サイエンスに限ったことではないが、他人の意見は時に思いがけず役に立つことがあるものだ。


投稿者 : yoshimura1212 投稿日時: 2019-08-22 07:47:20 (1210 ヒット)

アメリカから客人。ラボでのミィーテングの前の午前中に定番の観光案内を行った。暑いので朝8時から出発。第一の目的地はスカイツリー。先日に予約 を入れて行ったのだが、がら空き。夏休みでいつものは1時間くらいは待たされると思ったのに。展望台に登って理由がわかった。曇りでほとんど何も見えないのだ。夜中の 雨でガラスも曇っている。絶句するしかなかったが、これはこれでいい思い出になったと慰めてもらう。その後浅草寺をまわってボートでの隅田川下り。お昼前 にラボに戻って昼食。曇りで多少はましだったとはいえ35度近くの暑さに外にいるだけで汗が吹き出る。夜の会食中に客人のひとりが気分が悪くなり先に帰 ることになった。前日も酷暑の中を歩き回ったらしく熱中症では?ということになった。それなのに「高速」で連れまわしたことを申し訳なく思う。

そのあと学会で高知にやってきた。腫瘍免疫の学会ですごい熱気。高知までそんなに人は来ないだろうと思っていたのに広い会場は満席に近く、少し前の神戸での学会の寂しさと比べて愕然とする。こっちは学問の熱中症か。栄枯盛衰は世の常とはいえなんとかしないと。しかしこの夏は出張や会議が多かったせいか自分もかなり疲れ気味だ。自分の場合は熱中症よりも熱酎症か。

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疲れて家に帰るとプロ野球の延長戦をやっていた。ワンアウト3塁で監督は申告敬遠。しかし相手のバッターはバッターボックスへ。すかさず解説者『現在のルールでは名前がコールされた後でないと申告敬遠は成立しないんですよ。しんこくな問題ですね。』


投稿者 : yoshimura1212 投稿日時: 2019-08-14 20:54:11 (1524 ヒット)

 商売柄これまで数多くの書面審査と面接(プレゼンテーション)を経験してきた。数々のすばらしいプレゼンを拝聴してきたが、一方で立派な業績があるのに残念なプレゼンも存在する。残念である原因の多くは構成の不備と練習不足である。極意と書いたが何も特別なことはない。プレゼンの構成はだいたい決まっておりそれを大きく逸脱したり不足するのは感心できないというだけ。何処にでも書かれていることだが
(1)目的 (2)背景(1,2は前後する場合あり)(自分の論文と他人の論文は区別した方がいい)(3) これまでの実績(関連ないものでも実績を示して遂行能力をアピールすることは必要)(4) 予備的検討状況(具体的で印象的なほどよい。ここが厚くてconvincingであるほど通りやすくなる。全くない場合はアイデア勝負になるのでよほど画期的でないと)(5) 方法、計画 (4,5は同時並行もあり)(6) 新規性、独自性、アドバンテージ (7) 将来展望 (6,7は並行もあり)

何より大事なのは非専門家に聞いてもらい批判してもらうこと。聞いている人が理解できたかどうかは自分だけで練習してもわからないことが多い。また早口で聞き取れないのは論外。内容はいいのにプレゼン下手で落ちるのは勿体無い。自慢するわけではないが、これまでボランティアで何度か非専門分野の発表練習につきあって技術的アドバイスをしてきたがその多くはパスしている。引退したら有料にして生計を立ててもいいかも。ただコントロールがないので誰が聞いても、あるいは聞かなくても結果は同じだった可能性は否定できない。


投稿者 : yoshimura1212 投稿日時: 2019-08-09 01:12:33 (1430 ヒット)

NHKのドラマ10で多部未華子が主役をやっている。宣伝を兼ねてかNHKではご丁寧に「経費落ちなかったらどうします?」と街頭インタビューしていた。「泣き寝入りしかない」ことは十分承知しているだろうに。これだからN国にコケにされる。うちもタイムリーなことに複数の免疫系教室をあげてのXX研究会が槍玉にあがった。いわゆるリトリートのような合宿形式の研究会なのだが、会の終了後、希望者はソフトボールなどのレクリエーションもある。参加者の旅費を請求しようとすると経理のかたはご丁寧にどこぞのHP(昔のうちのかも?)を調べたらしく、『楽しそうにソフトやっているようですが本当に研究会なんですか?』と横槍が入った。リアル「経費で落とせません」。私は「ではぜひ会に参加していただいて何をやっているか経験してもらいましょう」と答えることにした。最近は細かいことを根ほり葉堀り聞かれることが多くなった。経理の立場もわからんではないが、研究意欲は否応なく下がる。私のような年寄りはある程度寛容が成立しているが若い人はどうだろう。「そんなに疑われるならやらないほうがまし」という短気な江戸っ子もいるに違いない。多部さんに直接言われるならいくらでも言ってほしいが。。


投稿者 : yoshimura1212 投稿日時: 2019-08-03 14:32:34 (1284 ヒット)

富山大学学長の齋藤先生の話は衝撃的で勉強になった。母親が妊娠時にウイルスなどの感染を受けると胎児脳に影響が出る事はよく知られている。ジカウイルスの小頭症ほどではなくても自閉症や統合失調症の発症リスクが上がるそうだ。その仕組みとしてマウスモデルでは母体が感染を受けると胎児脳でIL-6やIL-17が増加しこれが神経細胞に悪影響を与えることが示されている。最近ヒトでもサイトカインと小児の神経障害が疫学的に証明されつつあるのだそうだ。例えば妊婦のIL-6レベルが生まれて来た子供の脳機能に影響するという報告がある。またダウン症とインターフェロンの関係も報告されている。先生は妊婦の炎症は積極的に抑えた方がよいと提案されている。ではどうして母体の感染で胎児の脳でサイトカインが上がるのか?それはまだよくわかっていないらしい。齋藤先生はサイトカインそのものは胎盤を通過しないが炎症細胞は通る場合があるという。
妊娠や胎児には炎症はすべて悪いのかというとそうでもなく、受精卵の着床や発生には樹状細胞やサイトカイン(LIFなど)は必要らしい。このインターフェロンサイトカイン学会は会員数が減少しておりこれからどうするか議論されているが、サイトカインはどんな生命現象にも重要で課題は無限だと思わせる講演だった。


投稿者 : yoshimura1212 投稿日時: 2019-08-02 23:04:49 (995 ヒット)

2週間前の炎症再生医学会に続いて今日明日インターフェロンサイトカイン学会で神戸に来ている。幹事会の後会長招宴に招かれる。ポートアイランドの神戸空港のあたりは結婚式場になるような小洒落たレストランや宴会場が集まっている。2週前も同じような場所で懇親会だった。夕方でも気温は30度を超えている。沖縄ではないかと思えるような風景でちょっと学会前の緊張もほぐれる。といっても自分は座長で教室のI講師が目の前で発表するから。I講師は今回の学会では奨励賞を頂くことになっている。今まさに売り出し中なのだ。

懇親会では自分が駆け出しの頃を思い出した。元来口べたで人見知り、面識のない偉い先生を前にすると必ず怖じ気づいた。しかし「ここで名前を覚えてもらわないといつアピールできる!」と自ら鼓舞して積極的に名刺を配ってまわった。研究の世界も結局は人と人とのつながりが重要だ。今の若い人はSNSでスマホの前では能弁になれても、いざ人前に出ると萎縮してしまうのか声をかけられる事は少ない。せっかく懇親会費を払っているのだ。こういう時は「じゃま」と思われるくらい自分を売り込んでいい。成果が少なくても自分のやっていることと少しでも関連あることを見つけて話の糸口をつかむといい。オヤジ(おばさんも)は皆そんな時代を経験しているので若い人から声をかけられて悪い気がする人はいない。むしろそれを期待しているので安心して声をかけて自分を売り込むといいと思う。懇親会はおなかを満たすためにあるのではない。


投稿者 : yoshimura1212 投稿日時: 2019-07-29 11:34:13 (1262 ヒット)

7/26,27と阿蘇で行われた「がん、免疫、感染症のフロントライン」と題したシンポジウムに参加する。阿蘇は10数年ぶりだ。山肌に土がむき出しのところがまだ散見される。熊本地震の爪痕なのだそうで、そのすさまじさを感じさせられる。写真はシンポジウムのポスターで「阿蘇ラピュタの道」を撮ったもの。空中に浮かんだように絶景を楽しめるスポットだったが現在は閉鎖されている
私は1日目の最後の講演者だった。腫瘍免疫の話が続いたので「免疫はがんを克服しつつある。本庶先生は人間はそのうちがんで死ななくなるとおしゃっている。では免疫は次は何を克服すべきなのか」と問いかけて「次は脳神経系だろう。認知症や神経疾患が免疫で治る日がやってくるだろう」とぶちあげて脳梗塞後の炎症とTregの話をする。すこし格好つけすぎたかもしれない。

この会にも京大のK先生が来られていた。なんとバンドの機材まで運んで来て懇親会で披露された。講演ではいつものように「ここでちょっと脱線」と漫画の話やバンドの話をされる。結局これもいつものように本題に入る前に時間切れでほぼ「脱線」の話になってしまった。しかし脱線話のほうが強烈だし面白いのでK先生はこの路線でいいのではないかと思う。K先生、学問もすごいが漫画もバンドもできてしかもしっかり笑いを取れる芸人、いや芸術家である。学問すらたいしたことできなくて笑いもとれない自分と比べるとその才能が心底羨ましい。
熊本から戻るとすぐに新宿で自己免疫疾患研究会。午後から夜まで20演題くらいあって、さすがに頭が飽和した。翌日は日曜なのに都内で会議で相当疲弊した。だいぶ体力の衰えを感じる。


投稿者 : yoshimura1212 投稿日時: 2019-07-23 11:23:25 (1390 ヒット)

猫も杓子も「single cell RNA sequence」ばやりである。今日の雑誌会で紹介された論文はNatureに掲載された「Single-cell analysis reveals T cell infiltration in old neurogenic niches.」(Nature. 2019 Jul;571(7764):205-210. )だった。老齢マウスの脳の1細胞RNAシークエンス(scRNAseq)の解析の結果、脳室下帯(SVZ)領域にCD8+T細胞が浸潤し神経幹細胞でIFNγの下流遺伝子発現が上がっていることを発見。T細胞と神経幹細胞を試験管内で共培養するとIFNγ依存性に増殖が抑えられることから、「加齢によって脳内でT細胞が増えて神経再生を減らす」という話だ。なんということか個体を用いたT細胞除去の実験もIFNγ中和の実験もない。これらが認知機能にどう影響するのかもわからない。T細胞が認識している(だろうと想像される)抗原の話もない。何でこれがNatureかと思うが紹介してくれた講師の言葉を借りると「いい雑誌に載るにはscRNAseqやるしかない」というのが結論。
少し前に出たCRISPRスクリーニング法による機能的クローニングのほうがずっと馴染みやすいし精緻な気がする(Nature. 2019 Apr;568(7751):187-192)。こちらは加齢によってミクログリアで発現するCD22(普通はB細胞で出るべき分子)が貪食作用を抑制しアルツハイマーモデルを悪化させる話。ちゃんと個体でCD22を阻害して加齢による認知機能の低下を抑制できることを示している。納得のNatureだと思う。

ともかくも脳に限らず加齢による「個体の機能低下」には免疫系が大きく関わっていることは間違いないだろう。しかし一方で健康長寿の地域では免疫は強い(曖昧な、、)らしい(NHKスペシャルでやっていた)。免疫は感染防御や発がん抑制に重要なので理にかなっていると思う。免疫は諸刃の剣。いい方を伸ばし悪い方を抑えられるといいのだろがそう単純にはいかないところが難しい。


投稿者 : yoshimura1212 投稿日時: 2019-07-23 01:19:58 (1150 ヒット)

  参議院選挙が終わって『NHKから国民を守る党』が一議席を獲得した。どうせ話題集めの泡沫党と思っていたが、やはりNHKに不満を持つ人は相当数いるのだろう。NHKの政見放送では候補者が『NHKをぶっ壊す』と叫んでいたときは何のジョークだろうか、と思っていた。NHKのアナウンサーに『NHKから国民を守る』と読ませるためだけにやっているのかと思った。NHKの番組をよく見るので私はそこまで不満はないが「BS見ていないのにアパートにアンテナがあるからというだけでBS料金を取られる」とか「NHK職員の平均年収1125万円(一説では1780万円)」とか聞くと無性に腹がたつ(日本の普通の平均収入は420万円くらい。もちろん同年代の大学教授よりずっと上)。そんなに受信料は国民の義務だというなら税金で集めるべきだろう。なんで高飛車にヤ○ザまがいの方法で徴収するのか理解に苦しむ。「N国」頑張って欲しい。久々に痛快な出来事だ。
とはいえNHKの番組をみると感心することは多い。なので私は「高い」と思いながらしぶしぶ受信料を払っている。「いだてん」も面白いし「プロフェッショナル」にいたっては録画してみている。今晩は「伝説の清掃員、新津春子」。「誰がやってくれたかわからなくていい。気持ちよく使ってもらえたらそれがうれしい」と言われる。やっぱり一流プロは違う。知り合いの生化学の先生が初対面の発生学の先生に「絶滅危惧種」と言われたと笑っていた。私に言わせれば発生学は「すでに滅んだ種」と思うが、確かに生化学の「職人技」は終わりに近づいているのかも。酵素の精製や遺伝子クローニングの時代はまさに「腕の見せどころ」だった。頭はなくても仕事量と手先の器用さがあればなんとかなった(いやたぶん私だけの話)。でも新津の言うように「自分はプロとは思わない。いつもスタートライン」という気持ちでいないといかんのだろうな。。。頭がさがる。

今日のプロフェッショナルは「家電修理請負人・今井和美」。私も同じ修理人だが部品の交換くらいしかできない。電気系統は無理なので家電修理はそちらにお願いしてほしい。


投稿者 : yoshimura1212 投稿日時: 2019-07-20 14:37:57 (1173 ヒット)

 神戸から戻るとすぐに学部免疫学の試験である。私の試験は「勉強する契機に」して欲しいという意味から講義資料と自作のノートは持ち込み可にしてある。つまりアンチョコ持ち込みOKなのだ。この試験は「暗記ではなく理解したかどうか」を確認するものだ。新作かつ応用問題なので一応勉強しておかないと、少なくとも何処に何が書いていあるのかを知っておかないと解けない。講義に出てしっかり聴いているか、あるいは教科書で勉強して自分でノートをまとめたら何のことはない問題だ。しかし試験開始後に初めて見たかのように資料をめくっている連中がなんと多いことか。そもそも講義にも出ないで答えられると思うのは甘すぎる。まずターム(用語)の意味がわからない。アンチョコを作成することさえ面倒なのだろう。招聘講義ではお忙しい中来ていただいた教授と質疑応答をして「ここは大事」と念を押したところをそのまま出題しているが、聞いてなかったのだろう。こんな試験をすると面倒臭い免疫学がますます嫌いになり、私は学生からイヤな教師のレッテルを貼られると思う。しかし学生は自分が病気になった時のことを考えてみるといいと思う。「こんなに勉強しない医者」に診てもらうことになったら戦慄するだろう。浪速大学のN先生が最近自分の所の学生を「こんなに勉強せん学年は初めて」と嘆いていたそうだが何処も同じか。最先端のiPSを使った再生医療に興味を持つものも大いに結構だが、移植拒絶の原理も知らないで再生医療ができるはずがない。再試験には勉強の跡を示すノートの提出を義務付けることにした。さらに嫌われるだろうが別に気にしない。

講義に出るのは話を聴くだけではなく質問できるという貴重な機会だ。デジタルコンテンツ化(録画で何処でもいつでも見られる)で講義がなくなることはないとはないとは思うが、「免疫学」は教科書を読むだけではやはりスラスラ理解することは難しいので1日も早くデジタルコンテンツ化を進めていただきたいものだ。来年は自分で録画し必要な学生に貸し出そうかとも思っている。まあ再試験に備えて四苦八苦するよりも講義15回に出るほうがずっと楽だったと思うけど。


投稿者 : yoshimura1212 投稿日時: 2019-07-17 23:55:24 (1299 ヒット)

7/16,17と炎症再生学会に参加する。会長招聘講演は米国バージニア大学のKenneth Walsh先生。循環器領域ではかなり有名らしい。大会長の佐田先生が留学していたころのボスなんだそうだ。Ken先生の講演は"clonal hematopoiesis"(クローン性造血)。全く不勉強を恥じるばかりだが、最近「クローン性造血」は注目されており、心血管障害や動脈硬化をはじめ多くの疾患に関係していることが明らかにされているらしい。我々の血液細胞はすべて造血幹細胞に由来しているが、加齢によって少数の「突然変異」を持った幹細胞に由来する血球が増えていく。変異があるからといってがん化するわけではない。しかしその幹細胞由来のマクロファージは炎症刺激に過敏で、IL-1βなどを高産生し、その結果心血管障害や動脈硬化のリスクが上がるのではないかという話らしい。「らしい」というのは講演の内容を完全に理解できたわけではないから。懇親会の時に質問に行って確認したので間違いないとは思うが。。
この先生、声が大きくてエネルギーのかたまりのような人だ。懇親会でも喜んで阿波踊りを踊っていたノリのいい先生である。日本に来るたびに富士山に登ぼるのだそうだ。しかも1日で頂上まで登ってその日に下山するという。今回5回目で佐田先生も同伴するらしい。佐田先生も山中先生や樺島先生に負けないマラソンランナーだそうだ。Ken先生、年齢を聞くと驚くことに63歳という。自分より3つも上か。これはいかん。こちらは少し階段を上っただけで心臓が口から飛び出しそうになる。明日から酒を減らして運動しようと誓う。


  
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