投稿者 : yoshimura1212 投稿日時: 2019-09-10 15:15:38 (699 ヒット)

MCBも9回目。本日は産総研の瀬々潤先生。じつは現在は株式会社ヒューマノーム研究所の社長が主な顔だ。医学部の講義のなかでは異色の機械学習、人工知能の講演をお願いした。この先生、とにかく声が大きい。エネルギーの塊のような方なのだろう。私は機械学習と深層学習 (Deep learning)は同じと思っていたが違うらしい。一細胞RNAシークエンスでよく見るディズニープロットは機械学習の一種らしい。講義のあとは学生さんとの議論タイムなのだがあまり手が挙がらない。つい次々自分の疑問を質問してしまう。例えばDNA情報から顔を予想する研究が報告されていたが病気を予測する方が価値があるんではないか?とか、東大医科研でワトソンに論文を読み込ませて難しい疾患を診断する報告があったが論文情報は人間が入れないといけないのか?とか(実際そこが大変らしい)。先生は将来のAIと医師と患者との関係を3つに分類して「AIが直接的、あるいは間接的に医師を補助して医師が患者に診断を伝える、もしくは医師がAIを監督してAIが患者に診断を伝える」。私は4番目の可能性「患者が医者を信用しないでAIに直接診断させる」というのは?(学生をみて)勉強しない医者は無視される時代が来るんではないか?と質問すると先生は笑っていた。またいらんことを言ってしまった。


投稿者 : yoshimura1212 投稿日時: 2019-09-09 09:24:49 (994 ヒット)

この土日は守谷での「免疫適塾」。もう11回を数える伝統となった研究会である。主に未発表のデータをじっくりディスカッションしようという趣旨なので内容は書けないがどの発表も非常に面白く白熱した議論が続いた。ソフトボールはあくまで会の終了後、有志による勝手なレクリエーションであって会の本体とは 関係ない。そう強調しないと「経費で落ちない」かも。証拠に勉強している写真を一枚掲載したい。
ソフトボールは確か昨年は雨で流れたのではないか。久しぶりな気がする。といっても年1回しかしないので1年も2年でも『久しぶり』であることに大差はない。うちは人数が足り ないのでS研と企業のかたを加えてなんとかチームとしての体裁をつくる。D科、H研との総当たり(といっても2試合)である。当然私が投げるのだが初戦は 緩急が冴え渡りD科を1失点で一蹴する。D科はH研にもほぼ完封負け。あれほど強かったD科がどうして。。。どうも教授がいないと力が入らない?2回戦はH研。若い人が多くかなり手強い。最終回まで白熱した投手戦で 1:1で決着がつかず。最後はツーアウト満塁で後一本が出ればうちがサヨナラ勝ちというめちゃめちゃ惜しい状況だった。それでつい欲を出して延長戦を申し 出たのだが、これが裏目に出た。逆にツーアウト満塁でランニングホームランを打たれて終了。最後ムキになって直球を投げたのが悔やまれる。その晩は悔しく て、、、ではなく台風の風と木のざわめきで眠れなかった。
写真は東校舎前で倒れた木。

一夜明けて風雨は収まりつつあるが、1限目にMCBが予定されている。台風は過ぎても交通はひどく乱れている。きっと休講だろうと思ったら学生課からは「通常通り」との連絡。こればかりは自分では決められない。予想通り学生は10名ほどで講師の久保先生には誠に申し訳ないがそのまま決行する。鉄道の復旧が遅れて多くの通勤客が大変な思いをしたらしいが計画運休が発表された段階で1限目は休講にすべきだったかもしれない。
久保先生の話は実臨床に近く『患者に難しい事 を難しく説明するのは誰でもできる。優れた医師は難しい事をわかりやすく伝える』という言葉が印象に残る。我々の商売にも言えるがなかなか難しい。久保先生は遺伝性疾患を数多く手がけられている。遺伝性疾患というと遺伝子治療でもやらないと治らないかと思っていたが、そうでなく治せる例があるらしい。代謝酵素の変異であればちゃんと経路を理解して理論的に治療が可能である例や、患者自身の細胞に復帰変異が起こって正常化する場合があり、皮膚であればそれを増やして利用することが可能な例を紹介された。非常に重篤な症状を示す患者さんでも高度な再生医療などを用いずに注意深い医師の観察と知識、洞察力で既存の方法で治る可能性があることを示されたのは感動的だった。


 


投稿者 : yoshimura1212 投稿日時: 2019-09-05 19:26:28 (862 ヒット)

 今日のMCBは3限目が神経解剖の仲嶋先生、4限目は成育医療センターの鳴海覚志先生。仲嶋先生の講義は初めて聞いた。Reelinという発生過程の神経細胞の移動と分化の制御に関係する分子の話。大学院生のときにまだ遺伝子のわかっていなかったReelinマウスに野生型マウスの脳細胞を免疫して抗体が得られたことからスタートされている。後から考えるとよくとられる手法のひとつかもしれないが大学院生の時によく思いついたものだ。神経細胞の動きと分布が一つの分子で細かく制御されていることが驚きだった。成育医療研究センターの鳴海先生は慶應医学部の出身でまだ40代初め。次世代シークエンサーを使ってどのように先天性疾患遺伝子にたどり着くのか、見つかった症候群にどう名前をつけるのがいいのかご自身の体験をもとに面白く話された。自分の若い時は遺伝子をクローニングして名前をつけるのが目標だったので相通じるものがある。シドニーブレナーの言葉「科学の進歩は新技術、新発見、新発想に依存し、おそらくその順に重要である」を紹介されて、新しい技術を導入することがいかに大事かを強調された。確かに次世代シークエンサーは遺伝子疾患の原因遺伝子の発見に多大な貢献をしている。このMCBは研究医を志す学生を少しでも増やす目的があるのだが昨今なかなか難しい。鳴海先生の話は大いに刺激になってくれたと期待したい。


投稿者 : yoshimura1212 投稿日時: 2019-09-03 17:13:34 (984 ヒット)

MCBの2日目。3限目はシンガポールにラボを構えておられる須田年生先生。5年前まで慶應で研究をされていた造血幹細胞界の大御所である。コロニー形成ユニット(CFU)とコロニー刺激因子(CSF)といった造血幹細胞の古い(失礼!)歴史的な話から始まって先生が精力的に研究されているニッチの話まで広く話された。残念ながらいつものように淡々と話されるので、ここで紹介できるような笑いを取る所はない。でもレポート問題は「CellやNatureに最近発表された幹細胞関係の論文を読んで一番驚いたことを書け」というもので、これは学生にはかなりハードルが高く敬遠されるかもしれない。いや採点しないといけないのでレポート数を減らす深謀遠慮か(学生は30ある講義の中から12を選んでレポートを書かないといけないので選択は可能)。
4限目は昨年に続いて京都大学の斎藤通紀教授。30代で京大教授になられた新進気鋭の教授なのだが、なぜ研究の道を選んだのか、という問いへの回答は「研究なんて天才がやるもの、自分には関係ない職業と思っていたが、学生時代にラボ見学に行ったら普通のおもろいひとがやっていてこれなら自分でもできそうと思ったから。」昨年の講義での話を総合するとおそらく現、浪速大学教授のN先生のことを見てそう思われたのか。斎藤先生はN先生のもとにピカピカの先のとんがった靴を履いてやってきたらしい。N先生「なんでそんな靴を履いているのか」と聞くと斎藤先生「バーテンのアルバイトをやっています。混ぜるのは得意です。(実験では試薬を混ぜることが多い)」と言ったとか。しまった、またひとの持ちネタを披露してしもた。
それはさておき斎藤先生は試験管内でESやiPSから精子、卵子(正確には始源生殖細胞)を造る研究の大家である。講義の最後のほうで「人がセックスをやめるとき」(東京化学同人)という翻訳書の話をされて、いずれは体外で人が誕生するSFのような世界が普通になるかもしれない、という話を紹介された。米国在住の某先生のウワサの受け売りでは「アメリカではなんぼでもクローン人間がいる」らしい(フェイクニュースかもしれない)ので本当にそんなふうになるのかもしれない。しかし実はまだiPSからつくられた始原生殖細胞も完全にエピジェネテックスがリセットされているわけではなく、iPS由来の精子卵子から作られたマウスは異常が多いのだそうだ。まだまだ数十万個の卵子の元になる細胞から最良の500個あまりを選ぶ仕組みや、心臓一回鼓動する間(1秒くらい?)に1000個もの精子がつくられるのにゲノム情報に変異が極めて少ない仕組みもわかっていないそうだ。ちょっと怖いが非常に夢というか妄想が広がる研究に思えた。


投稿者 : yoshimura1212 投稿日時: 2019-09-02 17:26:10 (914 ヒット)

3年生のMCB講義のトップバッターは筑波大学の柳沢教授である。私が前座でオリエンテーションと免疫学のトピックスの講義を行った。柳沢教授は「睡眠研究」の第一人者で国際統合睡眠医科学研究機構の機構長ある。大学を挙げて睡眠研究を寝ても覚めても推進されているに違いない。
大学院生時代にエンドセリンを発見し単身(かどうか不明だが)アメリカに渡りオレキシンを発見。それ以降睡眠研究にのめり込まれた。昨年の慶應医学賞の受賞者である。講義は「なぜ神経を持つ生物は眠るのか?(クラゲだって眠るらしい)」「なぜ睡眠研究が難しいか」というかなり哲学的な内容から始まった。その後オレキシンからナルコレプシーの話になる。睡眠だけに「目が覚める」ような印象的な話だった。何が難しいかって「何らかの睡眠誘発物質が溜まってある閾値を超えると眠るのではないか」と言われているが通常の状況でその物質的基盤がわかっていないらしい。以前プロスタグランジンD2(PGD2) がそれではないかと言われ私もそう信じていたのたが、柳沢先生の話ではそれは炎症などが起きた病的状態で眠くなる場合の睡眠誘導物質なのだろうという。柳沢先生らはその「睡眠物質」の候補としてマウス遺伝学を駆使してリン酸化酵素SIK3を同定された神経のリン酸化の状態によって睡眠が制御されているとしたらすごい。SIK3の最も重要な標的分子が長らく求められた睡眠物質なのだろうか。
ところでナルコレプシーではオレキシンがないために睡眠と覚醒のバランス制御がうまくいかないらしい。ヒトのナルコレプシーの場合は「笑う」ことがトリガーになって情動脱力発作を起こすのだそうだ。柳沢先生「ところがマウスではそうではない。何故ならマウスは笑わないから。」学生は無反応。柳沢先生「ここは笑うところなんだけど。。」実はマウスは笑わないがラットは笑うらしい。お腹をこすってやると人間みたいに「笑う」。なんとラットが笑うという話はScienceに報告されている。しかしマウスのお腹をこすると「怒る」のだそうだ。マウスの場合のトリガーはチョコレートなんだそうだ。チーズかと思った。それにしても先生の「持ちネタ」をこんなところで披露していいんだろうか?苦情が来ないうちに期間限定としたい。

睡眠はまだまだ分からないことが多いらしい。やはり「夢見る」分野なのだと再確認した。

 


投稿者 : yoshimura1212 投稿日時: 2019-09-01 17:33:30 (822 ヒット)

 高知から福岡に飛び日曜日からのAMEDの若手発表会に参加する。CRESTの若手、PRIME一期生の発表で内容は多肢にわたるものの極めて面白かった。終了後もいくつかのグループで情報の交換や共同研究の話が盛り上がっていたようなので大いに成功だったと思う。九州北部はこの日から雨続きで佐賀県での豪雨災害につながった。
東京に戻ると次は2期目の応募で不採択になった提案への返答が待っていた。もちろん他の審査員からのコメントも羅列してあるが、皆さん神経をすり減らして必死に書かれた申請なのだから、なるべく丁寧に返事をして問題点を指摘したい。様々な仕事が溜まって時間に追われている身ながら(なのに飲み会に行く時間はあるのは何故とは聞かないで)、こちらも週末を潰して取り組む。といっても半端な数ではないので全部に書き加えることは難しい。私のような領域長(総括)は日本のライフサイエンスを担う人たちを支援するため雇われている。だから採択された人たちへの叱咤激励だけではなく、申請された方、これから申請しようという方にアドバイスをすることも重要な仕事と思っている。学会やメールなどで遠慮なく声をかけて欲しい。どこまで適切な助言ができるかはわからないが参考意見は言えると思う。サイエンスに限ったことではないが、他人の意見は時に思いがけず役に立つことがあるものだ。


投稿者 : yoshimura1212 投稿日時: 2019-08-22 07:47:20 (1125 ヒット)

アメリカから客人。ラボでのミィーテングの前の午前中に定番の観光案内を行った。暑いので朝8時から出発。第一の目的地はスカイツリー。先日に予約 を入れて行ったのだが、がら空き。夏休みでいつものは1時間くらいは待たされると思ったのに。展望台に登って理由がわかった。曇りでほとんど何も見えないのだ。夜中の 雨でガラスも曇っている。絶句するしかなかったが、これはこれでいい思い出になったと慰めてもらう。その後浅草寺をまわってボートでの隅田川下り。お昼前 にラボに戻って昼食。曇りで多少はましだったとはいえ35度近くの暑さに外にいるだけで汗が吹き出る。夜の会食中に客人のひとりが気分が悪くなり先に帰 ることになった。前日も酷暑の中を歩き回ったらしく熱中症では?ということになった。それなのに「高速」で連れまわしたことを申し訳なく思う。

そのあと学会で高知にやってきた。腫瘍免疫の学会ですごい熱気。高知までそんなに人は来ないだろうと思っていたのに広い会場は満席に近く、少し前の神戸での学会の寂しさと比べて愕然とする。こっちは学問の熱中症か。栄枯盛衰は世の常とはいえなんとかしないと。しかしこの夏は出張や会議が多かったせいか自分もかなり疲れ気味だ。自分の場合は熱中症よりも熱酎症か。

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疲れて家に帰るとプロ野球の延長戦をやっていた。ワンアウト3塁で監督は申告敬遠。しかし相手のバッターはバッターボックスへ。すかさず解説者『現在のルールでは名前がコールされた後でないと申告敬遠は成立しないんですよ。しんこくな問題ですね。』


投稿者 : yoshimura1212 投稿日時: 2019-08-14 20:54:11 (1330 ヒット)

 商売柄これまで数多くの書面審査と面接(プレゼンテーション)を経験してきた。数々のすばらしいプレゼンを拝聴してきたが、一方で立派な業績があるのに残念なプレゼンも存在する。残念である原因の多くは構成の不備と練習不足である。極意と書いたが何も特別なことはない。プレゼンの構成はだいたい決まっておりそれを大きく逸脱したり不足するのは感心できないというだけ。何処にでも書かれていることだが
(1)目的 (2)背景(1,2は前後する場合あり)(自分の論文と他人の論文は区別した方がいい)(3) これまでの実績(関連ないものでも実績を示して遂行能力をアピールすることは必要)(4) 予備的検討状況(具体的で印象的なほどよい。ここが厚くてconvincingであるほど通りやすくなる。全くない場合はアイデア勝負になるのでよほど画期的でないと)(5) 方法、計画 (4,5は同時並行もあり)(6) 新規性、独自性、アドバンテージ (7) 将来展望 (6,7は並行もあり)

何より大事なのは非専門家に聞いてもらい批判してもらうこと。聞いている人が理解できたかどうかは自分だけで練習してもわからないことが多い。また早口で聞き取れないのは論外。内容はいいのにプレゼン下手で落ちるのは勿体無い。自慢するわけではないが、これまでボランティアで何度か非専門分野の発表練習につきあって技術的アドバイスをしてきたがその多くはパスしている。引退したら有料にして生計を立ててもいいかも。ただコントロールがないので誰が聞いても、あるいは聞かなくても結果は同じだった可能性は否定できない。


投稿者 : yoshimura1212 投稿日時: 2019-08-09 01:12:33 (1305 ヒット)

NHKのドラマ10で多部未華子が主役をやっている。宣伝を兼ねてかNHKではご丁寧に「経費落ちなかったらどうします?」と街頭インタビューしていた。「泣き寝入りしかない」ことは十分承知しているだろうに。これだからN国にコケにされる。うちもタイムリーなことに複数の免疫系教室をあげてのXX研究会が槍玉にあがった。いわゆるリトリートのような合宿形式の研究会なのだが、会の終了後、希望者はソフトボールなどのレクリエーションもある。参加者の旅費を請求しようとすると経理のかたはご丁寧にどこぞのHP(昔のうちのかも?)を調べたらしく、『楽しそうにソフトやっているようですが本当に研究会なんですか?』と横槍が入った。リアル「経費で落とせません」。私は「ではぜひ会に参加していただいて何をやっているか経験してもらいましょう」と答えることにした。最近は細かいことを根ほり葉堀り聞かれることが多くなった。経理の立場もわからんではないが、研究意欲は否応なく下がる。私のような年寄りはある程度寛容が成立しているが若い人はどうだろう。「そんなに疑われるならやらないほうがまし」という短気な江戸っ子もいるに違いない。多部さんに直接言われるならいくらでも言ってほしいが。。


投稿者 : yoshimura1212 投稿日時: 2019-08-03 14:32:34 (1134 ヒット)

富山大学学長の齋藤先生の話は衝撃的で勉強になった。母親が妊娠時にウイルスなどの感染を受けると胎児脳に影響が出る事はよく知られている。ジカウイルスの小頭症ほどではなくても自閉症や統合失調症の発症リスクが上がるそうだ。その仕組みとしてマウスモデルでは母体が感染を受けると胎児脳でIL-6やIL-17が増加しこれが神経細胞に悪影響を与えることが示されている。最近ヒトでもサイトカインと小児の神経障害が疫学的に証明されつつあるのだそうだ。例えば妊婦のIL-6レベルが生まれて来た子供の脳機能に影響するという報告がある。またダウン症とインターフェロンの関係も報告されている。先生は妊婦の炎症は積極的に抑えた方がよいと提案されている。ではどうして母体の感染で胎児の脳でサイトカインが上がるのか?それはまだよくわかっていないらしい。齋藤先生はサイトカインそのものは胎盤を通過しないが炎症細胞は通る場合があるという。
妊娠や胎児には炎症はすべて悪いのかというとそうでもなく、受精卵の着床や発生には樹状細胞やサイトカイン(LIFなど)は必要らしい。このインターフェロンサイトカイン学会は会員数が減少しておりこれからどうするか議論されているが、サイトカインはどんな生命現象にも重要で課題は無限だと思わせる講演だった。


投稿者 : yoshimura1212 投稿日時: 2019-08-02 23:04:49 (938 ヒット)

2週間前の炎症再生医学会に続いて今日明日インターフェロンサイトカイン学会で神戸に来ている。幹事会の後会長招宴に招かれる。ポートアイランドの神戸空港のあたりは結婚式場になるような小洒落たレストランや宴会場が集まっている。2週前も同じような場所で懇親会だった。夕方でも気温は30度を超えている。沖縄ではないかと思えるような風景でちょっと学会前の緊張もほぐれる。といっても自分は座長で教室のI講師が目の前で発表するから。I講師は今回の学会では奨励賞を頂くことになっている。今まさに売り出し中なのだ。

懇親会では自分が駆け出しの頃を思い出した。元来口べたで人見知り、面識のない偉い先生を前にすると必ず怖じ気づいた。しかし「ここで名前を覚えてもらわないといつアピールできる!」と自ら鼓舞して積極的に名刺を配ってまわった。研究の世界も結局は人と人とのつながりが重要だ。今の若い人はSNSでスマホの前では能弁になれても、いざ人前に出ると萎縮してしまうのか声をかけられる事は少ない。せっかく懇親会費を払っているのだ。こういう時は「じゃま」と思われるくらい自分を売り込んでいい。成果が少なくても自分のやっていることと少しでも関連あることを見つけて話の糸口をつかむといい。オヤジ(おばさんも)は皆そんな時代を経験しているので若い人から声をかけられて悪い気がする人はいない。むしろそれを期待しているので安心して声をかけて自分を売り込むといいと思う。懇親会はおなかを満たすためにあるのではない。


投稿者 : yoshimura1212 投稿日時: 2019-07-29 11:34:13 (1200 ヒット)

7/26,27と阿蘇で行われた「がん、免疫、感染症のフロントライン」と題したシンポジウムに参加する。阿蘇は10数年ぶりだ。山肌に土がむき出しのところがまだ散見される。熊本地震の爪痕なのだそうで、そのすさまじさを感じさせられる。写真はシンポジウムのポスターで「阿蘇ラピュタの道」を撮ったもの。空中に浮かんだように絶景を楽しめるスポットだったが現在は閉鎖されている
私は1日目の最後の講演者だった。腫瘍免疫の話が続いたので「免疫はがんを克服しつつある。本庶先生は人間はそのうちがんで死ななくなるとおしゃっている。では免疫は次は何を克服すべきなのか」と問いかけて「次は脳神経系だろう。認知症や神経疾患が免疫で治る日がやってくるだろう」とぶちあげて脳梗塞後の炎症とTregの話をする。すこし格好つけすぎたかもしれない。

この会にも京大のK先生が来られていた。なんとバンドの機材まで運んで来て懇親会で披露された。講演ではいつものように「ここでちょっと脱線」と漫画の話やバンドの話をされる。結局これもいつものように本題に入る前に時間切れでほぼ「脱線」の話になってしまった。しかし脱線話のほうが強烈だし面白いのでK先生はこの路線でいいのではないかと思う。K先生、学問もすごいが漫画もバンドもできてしかもしっかり笑いを取れる芸人、いや芸術家である。学問すらたいしたことできなくて笑いもとれない自分と比べるとその才能が心底羨ましい。
熊本から戻るとすぐに新宿で自己免疫疾患研究会。午後から夜まで20演題くらいあって、さすがに頭が飽和した。翌日は日曜なのに都内で会議で相当疲弊した。だいぶ体力の衰えを感じる。


投稿者 : yoshimura1212 投稿日時: 2019-07-23 11:23:25 (1264 ヒット)

猫も杓子も「single cell RNA sequence」ばやりである。今日の雑誌会で紹介された論文はNatureに掲載された「Single-cell analysis reveals T cell infiltration in old neurogenic niches.」(Nature. 2019 Jul;571(7764):205-210. )だった。老齢マウスの脳の1細胞RNAシークエンス(scRNAseq)の解析の結果、脳室下帯(SVZ)領域にCD8+T細胞が浸潤し神経幹細胞でIFNγの下流遺伝子発現が上がっていることを発見。T細胞と神経幹細胞を試験管内で共培養するとIFNγ依存性に増殖が抑えられることから、「加齢によって脳内でT細胞が増えて神経再生を減らす」という話だ。なんということか個体を用いたT細胞除去の実験もIFNγ中和の実験もない。これらが認知機能にどう影響するのかもわからない。T細胞が認識している(だろうと想像される)抗原の話もない。何でこれがNatureかと思うが紹介してくれた講師の言葉を借りると「いい雑誌に載るにはscRNAseqやるしかない」というのが結論。
少し前に出たCRISPRスクリーニング法による機能的クローニングのほうがずっと馴染みやすいし精緻な気がする(Nature. 2019 Apr;568(7751):187-192)。こちらは加齢によってミクログリアで発現するCD22(普通はB細胞で出るべき分子)が貪食作用を抑制しアルツハイマーモデルを悪化させる話。ちゃんと個体でCD22を阻害して加齢による認知機能の低下を抑制できることを示している。納得のNatureだと思う。

ともかくも脳に限らず加齢による「個体の機能低下」には免疫系が大きく関わっていることは間違いないだろう。しかし一方で健康長寿の地域では免疫は強い(曖昧な、、)らしい(NHKスペシャルでやっていた)。免疫は感染防御や発がん抑制に重要なので理にかなっていると思う。免疫は諸刃の剣。いい方を伸ばし悪い方を抑えられるといいのだろがそう単純にはいかないところが難しい。


投稿者 : yoshimura1212 投稿日時: 2019-07-23 01:19:58 (1066 ヒット)

  参議院選挙が終わって『NHKから国民を守る党』が一議席を獲得した。どうせ話題集めの泡沫党と思っていたが、やはりNHKに不満を持つ人は相当数いるのだろう。NHKの政見放送では候補者が『NHKをぶっ壊す』と叫んでいたときは何のジョークだろうか、と思っていた。NHKのアナウンサーに『NHKから国民を守る』と読ませるためだけにやっているのかと思った。NHKの番組をよく見るので私はそこまで不満はないが「BS見ていないのにアパートにアンテナがあるからというだけでBS料金を取られる」とか「NHK職員の平均年収1125万円(一説では1780万円)」とか聞くと無性に腹がたつ(日本の普通の平均収入は420万円くらい。もちろん同年代の大学教授よりずっと上)。そんなに受信料は国民の義務だというなら税金で集めるべきだろう。なんで高飛車にヤ○ザまがいの方法で徴収するのか理解に苦しむ。「N国」頑張って欲しい。久々に痛快な出来事だ。
とはいえNHKの番組をみると感心することは多い。なので私は「高い」と思いながらしぶしぶ受信料を払っている。「いだてん」も面白いし「プロフェッショナル」にいたっては録画してみている。今晩は「伝説の清掃員、新津春子」。「誰がやってくれたかわからなくていい。気持ちよく使ってもらえたらそれがうれしい」と言われる。やっぱり一流プロは違う。知り合いの生化学の先生が初対面の発生学の先生に「絶滅危惧種」と言われたと笑っていた。私に言わせれば発生学は「すでに滅んだ種」と思うが、確かに生化学の「職人技」は終わりに近づいているのかも。酵素の精製や遺伝子クローニングの時代はまさに「腕の見せどころ」だった。頭はなくても仕事量と手先の器用さがあればなんとかなった(いやたぶん私だけの話)。でも新津の言うように「自分はプロとは思わない。いつもスタートライン」という気持ちでいないといかんのだろうな。。。頭がさがる。

今日のプロフェッショナルは「家電修理請負人・今井和美」。私も同じ修理人だが部品の交換くらいしかできない。電気系統は無理なので家電修理はそちらにお願いしてほしい。


投稿者 : yoshimura1212 投稿日時: 2019-07-20 14:37:57 (1117 ヒット)

 神戸から戻るとすぐに学部免疫学の試験である。私の試験は「勉強する契機に」して欲しいという意味から講義資料と自作のノートは持ち込み可にしてある。つまりアンチョコ持ち込みOKなのだ。この試験は「暗記ではなく理解したかどうか」を確認するものだ。新作かつ応用問題なので一応勉強しておかないと、少なくとも何処に何が書いていあるのかを知っておかないと解けない。講義に出てしっかり聴いているか、あるいは教科書で勉強して自分でノートをまとめたら何のことはない問題だ。しかし試験開始後に初めて見たかのように資料をめくっている連中がなんと多いことか。そもそも講義にも出ないで答えられると思うのは甘すぎる。まずターム(用語)の意味がわからない。アンチョコを作成することさえ面倒なのだろう。招聘講義ではお忙しい中来ていただいた教授と質疑応答をして「ここは大事」と念を押したところをそのまま出題しているが、聞いてなかったのだろう。こんな試験をすると面倒臭い免疫学がますます嫌いになり、私は学生からイヤな教師のレッテルを貼られると思う。しかし学生は自分が病気になった時のことを考えてみるといいと思う。「こんなに勉強しない医者」に診てもらうことになったら戦慄するだろう。浪速大学のN先生が最近自分の所の学生を「こんなに勉強せん学年は初めて」と嘆いていたそうだが何処も同じか。最先端のiPSを使った再生医療に興味を持つものも大いに結構だが、移植拒絶の原理も知らないで再生医療ができるはずがない。再試験には勉強の跡を示すノートの提出を義務付けることにした。さらに嫌われるだろうが別に気にしない。

講義に出るのは話を聴くだけではなく質問できるという貴重な機会だ。デジタルコンテンツ化(録画で何処でもいつでも見られる)で講義がなくなることはないとはないとは思うが、「免疫学」は教科書を読むだけではやはりスラスラ理解することは難しいので1日も早くデジタルコンテンツ化を進めていただきたいものだ。来年は自分で録画し必要な学生に貸し出そうかとも思っている。まあ再試験に備えて四苦八苦するよりも講義15回に出るほうがずっと楽だったと思うけど。


投稿者 : yoshimura1212 投稿日時: 2019-07-17 23:55:24 (1127 ヒット)

7/16,17と炎症再生学会に参加する。会長招聘講演は米国バージニア大学のKenneth Walsh先生。循環器領域ではかなり有名らしい。大会長の佐田先生が留学していたころのボスなんだそうだ。Ken先生の講演は"clonal hematopoiesis"(クローン性造血)。全く不勉強を恥じるばかりだが、最近「クローン性造血」は注目されており、心血管障害や動脈硬化をはじめ多くの疾患に関係していることが明らかにされているらしい。我々の血液細胞はすべて造血幹細胞に由来しているが、加齢によって少数の「突然変異」を持った幹細胞に由来する血球が増えていく。変異があるからといってがん化するわけではない。しかしその幹細胞由来のマクロファージは炎症刺激に過敏で、IL-1βなどを高産生し、その結果心血管障害や動脈硬化のリスクが上がるのではないかという話らしい。「らしい」というのは講演の内容を完全に理解できたわけではないから。懇親会の時に質問に行って確認したので間違いないとは思うが。。
この先生、声が大きくてエネルギーのかたまりのような人だ。懇親会でも喜んで阿波踊りを踊っていたノリのいい先生である。日本に来るたびに富士山に登ぼるのだそうだ。しかも1日で頂上まで登ってその日に下山するという。今回5回目で佐田先生も同伴するらしい。佐田先生も山中先生や樺島先生に負けないマラソンランナーだそうだ。Ken先生、年齢を聞くと驚くことに63歳という。自分より3つも上か。これはいかん。こちらは少し階段を上っただけで心臓が口から飛び出しそうになる。明日から酒を減らして運動しようと誓う。


投稿者 : yoshimura1212 投稿日時: 2019-07-13 00:46:49 (1030 ヒット)

昨年1月に続いて関西のN女子大で講義をする。七月の奈良は暑い(どの大学かわかるやないか)。今回も食物栄養学科。修士課程なので10数名の少人数でかなりリラックスして講義できる。今回も今まで貯めて来た「ネタ」を一気に披露したので楽しめたのではないか(と自分では思っている)。最初の1時間は千円札と一万円札を見せて野口英世、北里柴三郎、福沢諭吉の話をする。20分くらいと思っていたら1時間もヨタ話(うんちく、もしくは明日少し自慢できる無駄知識)をしていた。秘蔵のネタなのでここでは披露できない(といっても伝記とかに書いていあることですが)。食品を専門にしている学科なので食べ物と免疫の関係を調べて披露する。やはり自分の分野に関係があるとなると目が覚めるようだ。質問は少なかったものの感触は悪くなかった。
衛生仮説」では幼児期に動物園や牧場に行くとフンに含まれるエンドトキシンを吸ってTh1が増えてTh2が減るのでアレルギーが少なくなるという(いろいろな異論はありますが)。奈良ではシカが何処でも歩き回っているからアトピーや花粉症は少ないのでは?少なくとも学生さんに聞くと花粉症という人はほとんどいない。やっぱり、と納得するも、先生からは単に恥ずかしがって手をあげなかっただけかもしれない、とのこと。まあそうでしょうな。

1日目午後3コマ、2日目2コマの集中講義である。1日目終了後は担当の先生に和食の店に連れていってもらう。料理も美味しかったが奈良の地酒もうまい。さすがに東京ー奈良の移動と3コマ(90分x3)の講義で疲れたのか少量で完全に酔いがまわった。宿に戻ったらすぐに眠りこけて気がついたら朝だった。


投稿者 : yoshimura1212 投稿日時: 2019-07-05 10:06:15 (1348 ヒット)

学術振興会(JSPS)からワニ皮の丸筒が届いた。何かと思ったら審査員としてよく頑張ったことを褒めてくれた表彰状。まあ義務あるいは天職と思ってやっているので面映いが、それでも表彰状なんて最近ないので素直に嬉しい。なにか「ご褒美」ももらえるともっと嬉しいがそれはなし。

今AMEDのほうの査読をやっている。こちらは量が半端なく多いのでとても全部に細かくコメントは書けない。この時期は「学部講義」と査読で全く余裕がない。若い人からの挑戦的な申請はかなり気持ちを動かされるが、ベテランの重厚な申請も捨てがたい。枠が少ないだけに難しい判断を迫られる。優れた申請も多いので枠を広げてもらえるといいのだが。。

 


投稿者 : yoshimura1212 投稿日時: 2019-07-03 14:45:22 (1194 ヒット)

「 林先生の初耳学」は好きな番組の一つで時々見る。その製作会社から『「林先生の初耳学」企画相談』と題したメールが来た。おお、オレもついにテレビデビューかと思って喜んで開けたら『夜と昼で刺される蚊の種類が違う』ことについて解説してくれ!という。それって『チコちゃん』でやってたんじゃないの?慈恵医大の女の先生が大量の蚊に腕の血を吸わせて実験していたやつ。てんでお門違いじゃねえか!「どなたかとお間違えでは?ご質問の内容は私にも『初耳』でした」と返事をする。メールの主も少しは喜んでくれただろうか。
そういえば先週くらいの問題で「松竹梅」の話が出ていた。林先生は当然『歳寒三友』を知っていてスラスラと答える。だがこの問題って1週間前にチコちゃんでやってたんじゃないの?担当者大丈夫か?


投稿者 : yoshimura1212 投稿日時: 2019-07-03 08:39:31 (1056 ヒット)

 講義に使おうと思って数年前にiPad-Proを購入した。残念ながら講義でパワポを使うと「字が汚い」「すぐに止まる」と断念。もっぱら論文を読むか会議の資料を読むのに使っている。昨日これがいつもの場所にないことに気がついた。教室員らに「見かけなかったか?」と聞くと『どうせ教授室の何処かにおき忘れているのだろう』とぞろぞろ教授室を探し回ってくれたがやはりない。先週の水曜日まで使っていたので失くしたのはそう前のことではない。落し物係に電話するも届いていない。家にもない。ロックはかかっているがその道の専門家なら開けられるかもしれない。『大学教員XX情報の入ったiPadを紛失』とニュースで叩かれて処分を受けている場面が眼に浮かぶ。『そのうち出てくるさ』と平静を装うも実はかなり焦った。
iPhoneやiPadには『iPhoneを探す』機能がついている。なぜかその場所は今いる建物を示している。やはりボケて何処かに仕舞ったのを忘れたのか?『サウンドを再生』で音が出るはず。しかし聞こえない。ところがiMacで小さな音が出るので(後に「サウンドが再生されました」メールを受信した時の音だと判明)、iMacをiPadと誤認しているに違いないと思い込んでしまった(実際は長くて大きな音がする)。ここ数日行った記憶のあるキャンパス内の部屋を片端から訪ねまわり人にも尋ねるも収穫なし。これでは『便利屋』の名がすたる。。。

翌日、もう一度冷静に考え直す。記憶はやっぱり全くない。もう一度『iPhoneを探す』を起動してみるとやはりこの建物にあることを示している。ひっとするとと思って部屋にあるすべてのパソコンの電源を落としてみた。消えない。やっぱりiPadはこの建物の何処かにあるのだ!さっそく別の階の会議室や講義室に行って『サウンドを再生』をするがやはり音はしない。最後に絶対ないと思った地下に行ってみる。今年は実習に全くかかわっていないので地下室に行った覚えがなかった。しかしかすかに音がするではないか。すぐに実習室の鍵を開けるとiPadがあった!思い出した。先週のセミナーの後に、消防からの通達に対応するために皆で廊下のキャビネットを実習室に移動させたのだった。その時に実験台に置いてそのまま部屋に戻ったのだった。なぜかその時の記憶がすっぽり抜けていたのだ。年はとりたくないものだ。。

むせび泣くような音を出しているiPadを手にすると「やっぱりAppleはすごい」と感心するも、ボケが進んでいるのできっとまた同じことをするだろう。もしWiFiに繋がっていない場所に置き忘れたら万事休すだ。重要な情報はそのつど消すようにしようと誓う。

 

 

 


投稿者 : yoshimura1212 投稿日時: 2019-06-28 23:04:44 (948 ヒット)

泌尿器の研究会でT細胞疲弊と免疫チェックポイント阻害の話で講演をする。直前依頼主の同僚の教授から『聴衆は「メモリーT細胞」なんて聞いたこともないと思います』と言われて焦る。急遽前の講演をほとんど聞かず学部学生の講義で使ったスライドと入れ替える。本庶先生とのエピソードを入れて柔らかくしたつもりだが、それでも難しかったようだ。要は『今の最先端の知識ではPD-1の阻害はブレーキを外すとか、疲弊したT細胞を若がらせるとか、そんな単純なことでは説明できない』もっともっと詳しい機構がわかっている、ということを言いたかったのだが。。。初めに『私は学生に嫌われています。講義が難しいと言われる。しかし免疫学は複雑なので誰が講義しても難しい。私のせいではない』と訴えるも笑いもとれなかった。
多少は理解してもらえたのだろうか。呼んでいただいた先生には面白かったと言ってもらえたのだが。。

泌尿器領域では腎癌と膀胱癌でオプジーボが使われている。ところが医師の話ではチェックポイント阻害剤を使うと逆に腫瘍が大きくなる人がいるという。なぜか?と聞かれて答えに詰まってしまった。そういえば河上先生もそんなこと言ってたな。でも詳細は思い出せない。「TregもPD-1を出しているのでTregが増えるんじゃないですかね?」と苦し紛れの説明をすると「がん研のN先生もそう言ってましたね」。なぜか胸をなでおろす。マウスでわかっている理論とヒトは大きく乖離していることがある。わかったつもりでまだまだわかっていないことが多いのだろう。

その翌日は膠原病内科の研究会での講演。こちらは聴衆は免疫の専門家なのでイントロ不要でガンガンデータを示せる。懇親会もでたくさん質問を受けて楽しかった。


投稿者 : yoshimura1212 投稿日時: 2019-06-23 21:56:27 (1107 ヒット)

朝は7時半前には電車に乗るのでNHKの朝ドラは観れる時間に居ない。しかしなぜか「あまちゃん」と「ひよっこ」はしっかり観ていた記憶がある。NHKで後日譚「ひよっこ2」をやっていたのでつい見入った。「ひよっこ」は高度経済成長期の自分が若い頃の時代と重なるところが多く感情移入しやすかったのだろう。市井の人情も厚かった時代を肌で感じられた。自分のことだけではなく社会とは言わなくてもせめて周囲の人のために頑張る。そんな素直で伸びやかな精神があったような気がするが、根拠があるわけでもなくそれだけ自分が年をとったのだろう。

学部教育の一環で週末「医学部入試の現状を考える」セミナーが開催されたので出席する。駿台の先生の話もあって現実的だったが山形大学の先生の話はきわめて理念的で感銘を受けた。昔は医学部に入れる子は2つの小学校区のなかで1人だったらしい。なので医学部にはいい意味でのエリート意識があり学生には「利潤」よりも社会や人のため学ぶという意識があったという。今は割と普通の成績でも入れる時代になった。医学教育は非常に難しい時代なのだ。講義をしていてもそう思う。免疫学の講義のはじめには必ず『NMDA受容体抗体脳炎』の話をする。わずか10数年前には原因もわからず「悪魔つき」と言われた病気だ。知識のない(勉強していない)医師にかかった場合は統合失調症と誤診されて治る治療も受けられなかった可能性があったと言われる。IgG4関連疾患の膵炎もそうだ。免疫学の知識がないとかなりの確率で誤診するだろう。でも私は学生に「自分が勉強するのは自分だけのためではなく将来診る患者のためでもある」という医学生としての当然の意識を持たせられないダメ教師なのだと最近実感する。
話がそれた。「ひよっこ」には偉い人の話は出てこない。でも番外編では大学で学びたいが家計に負担をかけたくないので就職するという娘の話が出てくる。もちろん周囲は頑張れと応援してくれて進学する。昭和40年代はまだそんな時代だったのだ。今はずっとよくなった、と思いたい。が、日本の子供の貧困率は先進諸国で最低ラインというのが非常に気がかりだ。


投稿者 : yoshimura1212 投稿日時: 2019-06-12 22:39:01 (1364 ヒット)

東大をスベッたわけではない。3年生向けの免疫学の講義が始まった。抗体のところでIgG4関連疾患を説明するも、あまりピンときていない様子。まだ臨床講義も始まっていないのでそれはそうだろう。そこで昨晩ダウンロードしたドクターG(NHK)の『たちくらみでふらつく』(2017年)のさわりを見せる。IgG4関連疾患は日本で見つかったということもあってか、国試に出ることも多い。特に膵臓がやられるとすい臓がんと区別がつかなくて『摘出したらB細胞の山だった』ということもあったらしい。重要な疾患概念なのでビデオでわざわざ見せたわけだ(ドクターGというのが安直か。。)。実はうちのテレビの録画ディスクにはドクターGが何本も録画されている。以前某私医大から夏休みにうちのラボに実験に来ていた子がいみじくも言っていた。『夏休みに家に帰ると親が録画したドクターGのビデオが山積みされているんですよね』。おお、君の親も同じか。私もかつて医学生だった娘に見せようと貯めていたのだが、ほとんど観てくれていない。学生さんらに「もし実家に帰ってドクターGが録画されていたら親孝行と思ってぜひ観てください」。多少はウケるかと思ったのに完全な沈黙。うぅ。こういう時が次の一言に最も困る。スベッても動揺してはいけない。何もなかったように「はい、では次は補体。」と次の話題にコマを進めるしかない。


投稿者 : yoshimura1212 投稿日時: 2019-06-06 22:24:38 (1675 ヒット)

 今日は東京大学で朝から学会。朝の本郷通りを颯爽と歩いていた。歩行者も多い。突然体が宙に浮いたような気がした。歩きスマホをしていたわけではない。すぐに歩道の低い出っ張り(これいらなくね?価値がわからん。)につまづいたのだと理解した。加速装置をオンにしたかのように、すべてがスローモーションで動いて行く。『おっとっと』状態で次に片方の足を前に出せば踏ん張れる、少しかっこ悪いがまあ事なきを得るはずだ、とその状態までも頭に浮かんだ。しかし気持ちとは裏腹に足が出ない。なんで?という疑問の渦の中で完全うつ伏せ状態に沈んだ。スマホがポケットから飛び出す。カバンのPCが鈍い音をたてて地面にたたきつけられたような気がした。当然、すぐに起き上がり、受身となった手の掌からの出血を隠すようにスマホとPCを拾って(この2つは命にも代えられない)カバンに納め、何事もなかったように歩き始める。後ろから立派な紳士に声をかけられた。『ボールペン落としましたよ』。やさしいひとなのだろう。つとめて普通にペンを差し出した。しかし必死に笑いをこらえている目は隠せない。とにかくその場を逃げるように立ち去ったが気がつくと足の付け根が相当に痛む。地面に接触した場所ではないのでひねったのだろう。1日この痛みに耐えることになった。

このところ高齢者の車の事故の報道が相次いでいる。手足は頭では思う通りに動いているのに、実際は全くいうことを聞いていないのだろう。加齢による神経伝達速度の低下もあるらしい。身につまされる出来事だった。


投稿者 : yoshimura1212 投稿日時: 2019-05-30 23:35:53 (1593 ヒット)

湘南にある某研究施設を訪問し講演やフリーデスカッションを行った。ウワサの最先端リサーチパークである。これまで企業の研究所はいくつも訪ねたことはあるが、今回は度肝を抜かれた。まず敷地が広大。施設は大学とは比べ物にならない。創薬や実用化を目指しているので当然かもしれないが。職員の福利厚生も充実している。職員食堂は1000人を一度に収容できるという。
見学しているうちに『臨床応用とか治療とか我々大学人が言うのもおこがましくナンセンス』という気分になった。応用研究のプロ、この施設、そして大学とは比べ物にならない研究費だ。私の教室は60年前に建てられたボロ校舎で機器の維持費も自前。どうやって高額機器の保守契約費を捻出しようか頭を悩ませている有様だ。しかしその会社に勤める私の研究室の卒業生がいみじくも言っていた。『大学は企業にできない基礎研究をやるべき。』うーん、その通り。わかっていてもつい忘れがちになるんだよね。PD-1やiPSの例を挙げるまでもなく大きく花開くものほどはじめは見向きもされないド基礎研究だったはず。大学の研究は現象の根本原理を明らかにするような研究であるべき。初心に帰れと言われているようではっとした。大学の建物はボロであればあるほどいい。お金は少し足りないくらいがいい。そのほうが工夫が生まれる。大学教授に身分不相応な高額の研究費を与えて経理不正で処分された例は枚挙にいとまがない。この会社も高額で著名大学教授をチームリーダーにしているようだがコスパはどうかと思うが。。。もちろんほぼやっかみと負け惜しみなんですけどね。そうでも言わないと大学で研究なんてやってられない。

それにしても90分話して少し疲れた。喉が枯れる。体力の衰えだろうか。再来週から講義が始まる。90分X2コマ連続の講義が続くのに大丈夫か心配になる。


投稿者 : yoshimura1212 投稿日時: 2019-05-21 00:36:20 (1244 ヒット)

重慶の次の目的地は長沙。何度か訪れた土地だがここでも大歓迎を受ける。いつものようにシンポジウムは派手派手なのだが、speakerのイスがフカフカの重役用のもので睡魔との戦いに苦戦する。やはり中国は日本とは考える事が違う。

この地方はお茶の産地らしく今回もお茶をお土産にたくさんもらっている。畢竟帰りのスーツケースはお茶で一杯になる。中国のお土産の特徴は中身以上に凝った外身の包装で、重厚にパッケージされている。もしかしたら中身より外身のほうが値が張るのでは?と 疑うほど。しかし旅行者には重厚な包みはつらい。泣く泣く外身を破棄して中身のお茶の入った金属製の容器のみを整理する(まあどのみち日本で整理されるの だから。。)。

間違いなくかなり高価なお茶なのだろう。しかし送迎係の若い人に聞くと若者は実はお茶そのものはあまり飲まないのだという(日本と同じか)。日本茶もそうなんだろうが、実は中国茶も正式に楽しもうととすると相当に熟練を要する、じつに面倒くさいものなのだ(そうだ)。彼女はお茶はミルクティーにしか使っておらずいつも親に怒られるのだという。『こんな高価なお茶をミルクティーに?!』といったところなのだろう。知識がなければ価値はわからない。私もいただいた玉露に熱湯を注いで生きる資格がないほどに罵倒されている立場なので気持ちは極めてよくわかる。

長沙はおそらく北京、重慶に次ぐ中国でも指折りの大都市なのだろう。市内から空港まで高速道路を使っても1時間はかかる。そこはやはりスケールの大きい中国なのだから新幹線かリニアモーターカーを走らせてほしい。長沙は実は低速のリニアモーターカーが走っている。時速100kmくらいなので上海と異なりあまり宣伝されていない。


投稿者 : yoshimura1212 投稿日時: 2019-05-19 08:27:06 (984 ヒット)

重慶の医科大学に呼ばれて講演と打ち合わせを行った。ほぼ一日缶詰めになり学生やポスドクらの発表を聞いてコメントしたりアドバイスしたり。呼んでくれた教授は最近アメリカから戻って来た新進気鋭だ。重慶は中国第二の都市である。空港は最近できたばかりでとてつもなく広い。中国の空港は何処もどう考えても無駄だろうというくらいの空間が多いがここはさらに広そうだ。道路は広く横断歩道がない。道幅が広く車は多いのでとても危険で渡れそうにない。反対側に行くには地下道を通って渡ることになる。街は人で溢れかえっている。アメリカと中国の貿易戦争が問題となっているが中国は引かない。中国の研究者に聞くとアメリカに頼る必要はなく内需で十分だろうという。技術ももう自前で揃えられる。だから譲歩する必要はない。その言葉がすんなり信じられるほどスケールが大きく自信もあり消費も激しい。日本はもう追いつけないかもしれない。何か別の独自の道を探るべきか。
重慶は火鍋の発祥の地らしい。仕事の後、夜景の美しい川のほとりのレストランに連れて行ってもらった。ものすごく辛いがこれがうまい。多くは内蔵などのモツだ。辛いもの好きにとってはたまらない。ただちに体重管理はあきらめてひたすら食べる。それでも次から次に出てくる。中国には「食品ロス」という言葉はないと思う。

 


投稿者 : yoshimura1212 投稿日時: 2019-05-14 18:57:15 (1543 ヒット)

Lewis Cantley教授はPI3キナーゼの発見者でいつもノーベル賞の候補にあげられる有名な人だ。本日北里講堂で公開セミナーが行われた。いつものラウンジやセミナー室とは格が違う。私のラボの卒業生の佐々木君は彼のところで5年くらいポスドクをしていた。PI3Kをやっていなかったのでどうかと思ったがちゃんと覚えていた。PI3キナーゼ阻害剤はいくつかのがんの治療薬として期待されている。しかし効きが悪い場合がある。彼らはそれは血中グルコース(糖)やインスリンレベルが高い場合であることを昨年のNatureに報告している。また糖をたくさん摂ると腸でのポリープも増加するらしい。Cantley教授は盛んに『砂糖の入った飲み物は飲むな!』と繰り返していた。もちろん糖尿病の予防にもいいだろう。どうしても聞きたいが公衆の場では恥ずかしくて聞けなかった質問があった。講演終了後直接聞いた。『糖はダメでもアルコールはどうでしょう?』彼は即座に『酒は糖を含んでいないから大丈夫。自分もワインは好きだ。』と答えた。この講演で一番の収穫だったかもしれない。

前日『教室のiMacが壊れた』との通報。データが。。。と悲痛な表情なのでなんとかしたい。PRAMの解除などすぐにできそうなことは全部やったが駄目。ネットで調べるとビープ音が3回なる場合はメモリの故障の可能性が高いそう。幸い10年ものの古いMacなのでメモリの取り出しは簡単だった。しかし今売っているメモリがそんな古いPCに合うのか?実際昔ノートPCが壊れた時にHDのせいだろうと踏んで中古品を購入して交換したのに治らなかったことがある。amazonで探すも全く同じ番号のものはなかった。いろいろ調べておそらくいけるだろうと踏んだ4GB2枚を5000円で購入。翌日届いたので早速交換したところ見事復活。電子機器の修理はさすがにまだ自信がないだけに大いに得意になった。早速皆に「ラボの修理屋」から復旧完了のメールを送った。


投稿者 : yoshimura1212 投稿日時: 2019-05-11 11:57:35 (1292 ヒット)

昨日はテキサスのサウスウエスタン大学に留学中の若手研究者が訪ねてきたのでセミナーをしてもらった。そのあといつもの「もつ鍋屋」さんで会食。かなり話が盛り上がって相当飲んだ。これもいつものごとく、どうやって帰ったのか記憶がない。朝気がつくと「チコちゃん」をやっている。『腹の虫がおさまらない、の腹の虫ってどんな虫?』というお題。確かに「虫の知らせ」とか「虫が好かない」とか何で虫?と思える表現は他にもある。私もこのところ大量の報告書や〇〇委員会のクレームやらで「虫の居所が悪い」。なんと昔のひとは様々な病気が『虫』で起きると思っていたそうだ。うがって考えると実は『病原菌』の概念がすでに戦国時代には確立していたとも言える。この想像上の『虫』がカラフルでなんとも面白い。実はこの虫の図鑑『針聞書』は今は九州国立博物館に所蔵されており公開されている。博物館ではこれを『売り』にしてアニメや体操まで披露しているではないか。NHKはなぜこんないい題材をムシしたのだろう。。
なぜこんな虫たちが気になったかというと、このなかに『大酒の虫』というのがいるから。自分のお腹にもいるに違いない、と思った人は多いはず。私のお腹にも巨大なのがいる。
で、思い出したのが芥川龍之介の『酒虫』。大酒のみの富豪「劉氏」のお腹にいた酒虫は僧侶によって取り除かれる。劉氏は酒が嫌いになり飲めなくなるが同時に健康も財産も失う。オチは酒虫は劉氏の魂そのものだったのでは、というもの。私から酒を取りあげたら何も残らないというのは頷ける。実に深い。


投稿者 : yoshimura1212 投稿日時: 2019-05-04 22:05:57 (1086 ヒット)

先月に続いて今回は国立台湾大学医学院の共同研究者に呼ばれてセミナーを行う。10連休の真っ只中で成田へ行く電車も満席、台北のホテルでも周りは日本人ばかりだった。国立台湾大学病院はさすがに台湾一らしく巨大で立派だった。台湾の人は一時日本に占領されたにも関わらず親日家が多いという。台湾大学も日本統治時代に設立され初代教授陣の多くは日本から派遣されたのだそうだ。呼んでくれた若い先生からも下にも置かない歓迎を受けた。セミナーは午前10時とやや変則。免疫には馴染みがない学生や先生も多いということでかなり基礎的な内容も加えた。そのせいかある先生から「自分の専門は免疫でも神経でもないがとてもわかりやすく面白かった」とお褒めの言葉をいただいたので儀礼半分としても嬉しかった。質問も多く予定の1時間を20分はオーバーしただろう。セミナーが終わってさっそく昼食に行こうということになった。訪問する前に「何が食べたいか」と聞かれていた。やはり

台湾といえば「小籠包」。なんと台北で最も有名でミシュランにも載っているという小籠包専門店に連れて行くという。ところがどのガイドブックにも出ているせいか待ち時間3時間は普通だそうだ(写真は200分待ち時間の表示)。それで彼は『朝の9時半に技術員を派遣して順番待ちの番号札を取りに行かせた』という。札を取って帰ったのかと思っていたのだが行ってみると2時間半ずっと待っていたというではないか。これには感激するやら申し訳ないやらで小籠包の味もただただ美味いという記憶しかない。日本ではさすがに自分が雇っていても技官や秘書を順番待ちに派遣することは難しい。やはり中国、台湾の人は客人に対する「もてなし」の気合が違う。三国志演義の逸話を思い出した。劉安という人物が劉備玄徳らをもてなすために己の妻を殺してその肉を使って料理を提供した話(真偽は不明らしいが)で少なくとも当時は美談とされている。古来より中国のおもてなし精神は筋金入りと言うべきか。しかし相手が喜ぶ姿を見るのが嬉しいようなので素直にこちらも感謝しつつ受け入れるべきなんだろう。


  
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