投稿者 : yoshimura1212 投稿日時: 2018-09-19 18:17:35 (263 ヒット)

 仲野徹教授は私が最も尊敬する(羨望する?)研究者のひとりである。あるいは文化人、評論家と言ったほうがよいのかもしれない。研究の著書も多いが、数多くの一般向け著書やテレビ出演もある。Twitterも評判らしい。今日も(そこまで言わんでもええやんやないかと思われるほど)散々自分の著作の宣伝をされていかれた。「お笑い系研究者」を自認されているように話は面白かったが、関東圏の学生には文化圏的にやや難しかったところもあったように思われる。
私にとって極めて面白かったのは先生らがクローニングしたPGC7という遺伝子の話。この遺伝子は仲野先生が2002年4月に最初に小さい雑誌に報告されている。ところが商売敵で後輩の斎藤通紀先生が同じ遺伝子を少し遅れて"Stella"という名前でNatureに発表。最早PGC7の名はほぼ消滅。「PGC7ていうのが先に出ているのを知っててよくも断りも(引用も)なく名前を変えやがったな」というわけだ。相当悔しかったのだろう、斎藤先生を極悪人呼ばわりしていたのだが、そこから奮起してStella/PGC7の機能「受精卵において母親由来のDNAのH3K9me2にくっついて脱メチル化を阻害する」を解明してNatureに発表してリベンジを果たされたところはすごい。この論文は「なぜ父親由来のDNAと母親由来のDNAの脱メチル化の速さに差があるのか?」という疑問を解決した本当にすごい論文だと思う。これ以外の論文ではご自身でもStellaを使っているのだが、このNature論文ではタイトルはPGC7になっている。そこに仲野先生の雪辱の思いがこもっているように思える。
学生向けに人生論や研究への取り組み方も話されたのだが、「自分の好きなように生きたらええ」というのが結論なのでどうにも迫力が足りない。いっそ文楽の話でもしていただいたほうがよかったかもしれない。私も文楽好きだが到底評論できるようなレベルではない。仲野先生は自分でも浄瑠璃をされ、国立文楽劇場に寄稿するほどの専門家なのである。この寄稿を読んで「夏祭浪速鑑」を観に行ったほどだ。ただ「長町裏の段」の解説に一箇所誤植がある。まあ、ケチをつけたいわけではなくその程度は自分でもわかると自慢したいだけなんだが。


投稿者 : yoshimura1212 投稿日時: 2018-09-11 21:26:06 (984 ヒット)

 今日のMCBの講義は京都大学iPS研究所の川口先生と熊本大学発生研の西中村先生。奇しくもiPSから膵臓と腎臓を作成されたことで著名なお二人のお話だ。川口先生はしかしiPSの話はされず、膵臓の内分泌細胞、外分泌細胞がどのように影響し合いながら分化や機能維持を果たすのかを研究手法を交えてお話くださった。プロの研究者には馴染み易い話だった。最後に「先生が研究をされてこられたことは外科医としては役にっていますか?」と私が尋ねたところ、「論理的にものを考えることにものすごく役に立っている。例えば研究の経験がある者は血液検査を出す場合ものすごくよく考えて推論できるような検査項目を入れる。何も考えない者はただ漫然とルーチンで出す」と言われていたのが印象的だった。

一方の西中村先生は自分の夢だった「試験管内で腎臓を造る」という目標をどうやって実現したか、あるいは実現しつつあるか?という話で門外漢の私にも極めて刺激的な話だった。もともと腎臓内科医で透析で大変な思いをされている患者さんを腎臓移植で治したい、そのために人工的に腎臓を作り出したいというのがこの世界に入るきっかけだったそうだ。しかし腎臓は最も複雑な臓器のひとつで多くの種類の細胞が複雑に絡み合っている。そう簡単にできるものではない。例えばもしiPS(あるいはES)細胞からネフロンをつくるにしてもマウスの発生では10日くらいかかり1日ごとに変わっていく。もし一日あたり1000通りくらいの培養条件を検討しなければならないとすると1000の10乗の条件を検討しなければならないことになる。ほぼ無限といえる数字だ。それを先生は1日ごとに調べて確定していけば1000X10=10000回の条件検討で済むと考え、実際にそれをやり遂げられた。理屈はそうかもしれないが1000通りの条件検討すら想像がつかないくらい大変そうなのにそれを10回やるなんて、呆れるくらいすごい。しかも熊本地震によって中断も余儀なくされたという。例えば我々の分野のT細胞なんかOP9という線維芽細胞みたいなのとまず培養し、次にNotchを発現させたOP9-DL1と培養するだけで割と簡単にできる(らしい)。腎臓の細胞もそんなものだろうと思っていた不明を恥じるばかりだ。切片を切って糸球体のような形が見えた時は大学院生と涙を流して喜んだそうだ。こういう話は昔私が若かった頃、微量の生理活性物質を何段階ものカラムを通して丸一日コールドルームで過ごして精製していった先人たちの話に通じるものがあるように思う。創意と工夫、それに弛まぬ努力があれば不可能はない。NHKは「プロフェッショナル」に呼ぶべきだ。

MCBの先生方の話はそれぞれ個性があって興味が尽きない。多くの学生さんたちは「単位をもらう」ことしか考えていないだろうが本当に少人数でも何か感化されるものがあれば大成功だろう。

 


投稿者 : yoshimura1212 投稿日時: 2018-09-05 12:08:42 (1246 ヒット)

 先週27日夜会合で新宿まで行く。途中で稲光がして近くに雷が落ちた様子が見えた。これはすごい。次は写真に収めようとのそのそしているうちにものすごいゲリラ豪雨になった。この5分の遅れでびしょ濡れ。折りたたみ傘など全く役に立たない。つまらないことをしたと後悔。昨日の台風21号はものすごい勢力だったのだろう。中心からだいぶ離れた東京でも風が普通の台風くらいあったような気がする。自然は侮れない。ニュースで大阪の街でこの台風のなかを歩いている人たちを映し出していた。なんでこんな日に外出?と思うが新宿のゲリラ豪雨のことを思い出して「きっと自分もそうしてしまうのだろう」。

9/1,2 恒例の免疫適塾。理研の岡田先生のイメージングは映像がすごい。話も大変面白かった。雨でソフトボール大会は流れたが、この頃妙に胸が痛く(ときめくとか騒ぐではなく)なる自分としてはなぜかほっとする。で、早く家に戻ったので録画したカンブリア宮殿を見る。今回も感動モノだった。倒産寸前だった撚糸会社を技術開発で一発逆転。「下町ロケット」を地でいく中小企業のサクセスストーリーだ。数々の実験と失敗を繰り返してようやく新しい糸を開発。しかしそれでめでたしではない。これを編んで布にしてくれる会社が必要なのだ。何軒も探し回ってようやく小さな同じく倒産寸前の企業を見つけて、さらに技術的な困難を乗り越えてようやくタオルを開発。まるでどこかの小説で読んだ話のようだ(いや小説の方がこの話をモデルにしたのかも)。ベンチャーの話も感動したが理系人間としてはこちらのほうがより親しみを感じる。自分も頑張ろうという気にさせられる。我ながらつくづく単純な人間なんだと思う。
さっそくそのタオルを買おうとネットをみると軒並み「品切れ」。同じ単純人間が多いんだと納得。

台風もだがそれ以上に仰天したニュース。政府が原則70歳まで働けるよう企業に努力目標をおしつけるという。定年を指折り数えて待っている人もいるのに。アカデミアではますます若手のポストが減るので活力が失われると思う。

9/6 朝 北海道で強い地震。土砂崩れも発生している。広く停電しているそうだ。北大や札医の知り合いは大丈夫だろうか。
今回の停電は発電所の破損ではなく厚真町の発電所の緊急停止による需給バランスが崩れから北海道全域に広がった「ブラックアウト」らしい。


投稿者 : yoshimura1212 投稿日時: 2018-08-26 22:14:10 (1661 ヒット)

 ベンチャーから年商800億円の新ビジネスを作り上げた異端経営者・瀬戸欣哉(現在は年商1兆6000億円のリクシル社長)。その言葉がすごい。(カンブリア宮殿より)
「この会社を変えるためには個々が、自分たちでリスクを意識しながら実験をしていく。実験の結果に関して失敗を責めない。失敗から学ぶ限りはそれは失敗ではなく投資である。それがベンチャー的なものの考え方である」
「資金力がないからこそクリエイティブにならざるを得ないし実験して学ぶ」
「sense of ownership: 自分の会社だと思うと一生懸命自分で考える」
なるほど。会社を研究室に置き換えても同じ。うーん私は完全にベンチャー失格です。失敗を必要以上に責めてたし、いや最近はパワハラになるので責められなくて、矛先は自分に向かう。失敗するとすぐに忘れようとするので失敗から学ばない。つい過食に走ってしまう。ついでに哲学者のお考えもひとつ。「死を意識するからこそ人生は輝くのだ」(ハイデガー)(NHK Eテレより)。ジョブスも同じようなことを言ってたな。「朝起きたら今日が人生最後の日だと思って行動しなさい」。今日は仕事を早く終えて近所の神社まで走ろうと誓っていたが、気がついたらすでに夜で西郷どんを見ながらビールを飲んでいる。怠惰な自分には無理無理。。。でもそれが普通なのかもしれない。怠惰な人に送る「普通人の気持ちに寄り添ったお考え」特集は絶対に受けると思う。

 


投稿者 : yoshimura1212 投稿日時: 2018-08-24 08:33:35 (1166 ヒット)

 鹿児島から戻ってすぐに某研究補助金の最終報告書を書き始める。いや実はサマースクールの間中、他の先生の話は聞かずに部屋にこもって書いていたのだが全然終わらない。額も大きいのでしかたないが40ページくらいにはなりそうだ。つくづく「もらえなくて地獄、もらっても地獄か」と嘆いてもはじまらない。
「○○と乞食(もしくは坊主)は3日やったらやめられない」という。○○には政治家とか医者とか入るが教授もそのひとつだ。とんでもない、私は1日も早くやめたいのだが、某有名な教授にぼやくと「僕は報告書なんか書いたことあらへんで。申請書もない」。なるほどこんな先生がおるから「3日やったらやめられない」と言われるのか、と感心する。その先生を含むある門下では代々「雑用はすべて部下がやる」というのが伝統らしい。立派なお弟子さんたちがたくさん巣立っていることからすると「雑用は教授がやるからその時間は実験してほしい」というのはダメなのかもしれない。結局「雑用やらなくて済んだ時間は遊んでいる」ということかも。でも私なんぞは「ろくなアイデアもないのだから雑用くらいしかできんだろ」と言われるのがオチかもしれない。

8/25 一日かけて報告書を書き上げる。何が大変かって難しいのは3~5年前の学会発表の情報を集めることだ。ネットに出てるのもあるが出ていないのも多い。ちゃんと記録を残してなかったお前が悪いと言われればそれまでだが。数年おきに同じことをしている。もう治しようがない。


投稿者 : yoshimura1212 投稿日時: 2018-08-20 19:32:08 (1416 ヒット)

 8/20から鹿児島県指宿で免疫サマースクールが開かれている。もう20年くらい前に鹿児島に住んでいた。人情が厚く鹿児島は好きな街のひとつだ。指宿までのバスの車窓から錦江湾公園が見えた。昔よく家族で遊びにきたところだ。大型ロケットH-2Aの展示がまだあった。むちゃくちゃ懐かしい。
私は一日目の3番目のイントロダクトリーコースで獲得免疫の話をする。疾患や治療の話を中心に50分間しゃべった。時間が限られているので「免疫劇場」を見せようか迷ったのだが、聞いてみると意外と「知らない」というので見せることにした。「はたらく細胞の」キャラも随所に入れこんだ。そんなに難しい話はしなかっかった(つもりだったが)、あとで聴講生に無理に聞くとわかりやすかったと好評だったが本当のところはどうだろうか。今年は意外に医学部の3年生や4年生が多かった。講義が終わったばかりなせいか「アレルギーの4分類」忘れているのもいた。試験が終わればすっぱり忘れるのは学生の本分なのでしかたない。私も今年で免疫サマースクールは卒業だろう。
授業で免疫学などを教えている先生も多い。学生の「評価」のことを聞くと「見ない」そうだ。匿名で適当なことを書くのはネットの無責任な書き込みと同じ。建設的な改善点を聞きたいのなら顕名にすべきだろう。実は誰が書いたかはわかっているのだが。
理事長があいさつで「若い人たちにもっとサイエンスの世界に入って活躍してもらうためにもすそ野を広げなければならない。このサマースクールもその一つだが我々は常にその方策を考えている」と述べられた。すでに出来上がっているとなりから「年寄りが身を引くのが一番では?」と小声が。。
21日の夜は台風の風雨の音がすごくて眠れなかった。翌日帰れるか相当心配したが、前の便は欠航になったものの運良く自分の便は時間通り運行された。


投稿者 : yoshimura1212 投稿日時: 2018-08-15 07:28:04 (1552 ヒット)

 このところゲリラ豪雨が頻繁に報道されている。日本もいよいよ亜熱帯か。一昨日は千代田区で雷鳴の中での会議だった。1日座っているのはなかなか大変でかなり消耗する。お盆だからか電車が空いていたのがせめてもの救いか。タイからの留学生が教室見学に来た。もはや大学院生は海外に頼るしかないのかもしれない。今年のように仕事でお盆に墓参りに行けなかったのは久しぶりだ。お盆のことを聞いてみたらタイにはないらしい。仏教の行事ではあるが日本独特のようだ。日本の夏はタイより暑いそうだ。たいして外に出ないのに夏バテ気味。
山口で行方不明になっていた男児を発見したのは78歳のボランティアで捜索に参加した方だそうだ。このかた筋金入りのボランティアで様々な被災地に遠近に関わらず自家用車で駆けつけて人々を助けているという。私利私欲がなく他人のために働く人には頭が下がる。引退したらこんなジイサンになりたい。

昨日に続いて今日も一日千代田区で缶詰。雨はなかったようだが緊張が続き相当に消耗した。少しでもリラックスしようとつい冗談を言うと「先生、録音されてますよ」とたしなめられる。さらに追い討ちをかけるように某報告書のリマインドのメールが来る。しまった、完全に忘れていた。今週末は講演とサマースクールで出張なのでとても複雑な仕事はできない。懸案の論文のreviseもある。自分の事務処理能力をすでに大幅に超えている。NHK Eテレで毎週木曜日の深夜やっている「世界の哲学者に人生相談」。総集編に入ったのでもう終わりなのか。毎回含蓄のある哲学者の「お考え」を楽しみにしていたのだが。「沖仲仕の哲学者」と言われるエリック・ホッファー。『仕事にとって大切なこととは「自由」「運動」「間暇(=ヒマ)」「収入」この4つの適度な調和である』いやいや誠に的確で奥が深い。うーん、残念ながら今の自分にはどれもないような気がする。


投稿者 : yoshimura1212 投稿日時: 2018-08-12 00:53:06 (1117 ヒット)

 夏の花火はなんとなく寂しい。打ち上げの最中はきれいなので歓声をあげているが、終わると「もう夏も終わりか」という気分に否応なくさせられる。もっともこの酷暑では「早く終わってくれ」と思うのかもしれない。
今日は神宮の花火大会。仕事が一段落して帰ろうとしているとC君から電話。「信濃町駅付近からよく見えますよ、来ませんか?」おお席取りしてくれてたんだと思って行くとC君が突っ立っている。何のことはない、警察から「ここで立ち止まらないでください」と怒鳴られながら立って見るだけ。きっと綺麗どころと楽しくやっているのだろうという淡い期待を完全に打ち砕かれる。ビールを飲むのも落ち着かない。それで歩いて打ち上げ場所に近い方に歩いて行ったが木の影で余計に見辛い。しかたなく某所の屋上に行く。ここは新病棟ができたのでまず見れないと思われたところだ。しかし行ってみるとわずかの隙間からよく見えるではないか。何より腰掛けながら見れるのがいい。わずかに若いカップルが一組いちゃついている。意地悪くオヤジ二人が近くで(わざと?)大声を上げながらみていると即さくと何処かに消えて行った。


C君はよぼど嫌なことがあったのかすでに完全に出来上がっている。花火のあと「帰ります」と先に帰ったのにまた電話。「カラオケにいるので来ませんか?」私も今日は学◯の審査(一年中ひとの申請書ばかり読んでいる)が終わって解放的な気分になっていたのか、付き合うことにする。泥酔のC君も一人では心配だ。オヤジ二人で深夜まで何曲も歌った。「それでも愛は勝つ」と二人で拳を握りしめながら熱唱する。このところ溜まっていたストレスを解消できた。

NHKの日曜美術館で「いわさきちひろ」をやっていた。で、これまで行ったことがない上井草の美術館に行ってみた。殺伐とした日々を送っているので、子供の絵をみていると癒される。しかしどうも違う。よく調べたらNHKでやっていたのは東京ステーションギャラリー。残念ながらそちらまで行く時間がなくラボでまた別の助成金の申請書の審査をする。もしかしたらこれが天職なのかもしれない。


投稿者 : yoshimura1212 投稿日時: 2018-08-08 13:16:44 (1137 ヒット)

 台風のせいか急に涼しくなった。酷暑もようやく終わりかと思ったら、NHKのニュースを見ていたら衝撃的な話が出ていた。最新のProNAS.USAの論文で「このままでは温暖化に歯止めがかからずに地球は温室と化して生物が住めなくなる」というのだ。こちらのほうが詳しいか。灼熱の砂漠にだって、温泉にすら生物はいるので何らかの「生物」は住めると思うが、このところの異常な水害や暑さを思うと本当に人が住めなくなる可能性もあるのかもしれない。まだだいぶ先の話らしいが、子孫のために有効な手を尽くすべきだろう。

それにしてもこの8月の前半は神経をすり減らす毎日だ。自身のヒアリングもあれば審査する側のヒアリングもある。後者の方が楽そうに見えるかもしれないが「重責を担っている」ので精神的にはそうでもない。昨日は重責に堪えられず深酒し現実を忘れる。
期待していたもうひとつのAMEDの申請は面接の連絡がないのでダメだったのだろう。そういえばこれまで代表として気合いを入れて申請して、面接で落とされたことはことはあっても面接に呼ばれなかったことはなかった(ように思う)。連絡もなくスルーされる側のなんとなくじわじわくる、いわゆる「真綿で首を絞められる」気持ちがわかる。みなさんごめんなさい。早く快適(気楽)な季節になってほしい。

 


投稿者 : yoshimura1212 投稿日時: 2018-08-04 08:57:09 (1352 ヒット)

 毎朝ニュースで「命にかかわる暑さ」と言っているがあまり外に出ないのでさほど気にしていなかった。しかし今週は外回りが多くかなり消耗した。熊本出張ではgoogleではバス停から大学まで徒歩10分と出たので歩くことにした。ところが着いたのは大学病院で、研究所のビルはずっと先のようだ。道に迷って結局30分くらい歩いたろうか。熊本は九州のなかでもひときわ暑い。刺すような日差しを堪能させていただいた。英語でのセミナー。冒頭アドリブで「熊本は暑いがこの研究所は研究への熱気でもっと暑い」と言ったつもりだが全く伝わらなかったようだ。
セミナー終了後郷土料理の店に連れて行ってもらった。最初に出てきたのが「人文字グルグル」。ネギを巻いて味噌で食べるもののようだ。私は九州出身なのに初めて知った。実はネギではなくワケギで江戸時代に細川藩で開発された由緒あるものらしい。名前の由来はこちら。一度聞いたら忘れられないネーミングだ。
   数日後の眼科の研究会で「免疫応答」を説明するのに初めて「はたらく細胞」のキャラを使って説明してみた。もう十分大人の先生たちが相手だったせいか全くウケなかった。さらにここで時間を使いすぎたか予定時間を超過してしまった。かなり自己嫌悪に陥る。

この夏、近々自分自身の研究者としての人生を左右するヒアリングがある。落ちたらほぼ研究終了とも言える。こちらも熱い。
土日の全てを費やしてヒアリングの準備をする。夜中一人で作業をしていると夜回りの警備員さんに声をかけられる。やっぱりこんな仕事、若い人には敬遠されるよな。家に戻り一人で麻婆豆腐を作る。小さじ一杯味見するとこれがすこぶる美味い。そのまま3人前位くらいを平らげてしまった。ストレス食いか。でも今回はだいぶ気持ちが落ち着いている。どうあがいてもあと5年しかないのだ。自分が本当にやりたいことをストレートに伝えたい。最後の5年でやりたいと思っていることを10分で審査員に理解できるように伝えられなかったら全く自分の責任。潔く研究の世界から引退するのもやむなし。

 


投稿者 : yoshimura1212 投稿日時: 2018-07-19 09:16:17 (2696 ヒット)

 Gyao無料動画に「はたらく細胞」というのがあってちらっと見てみたら細胞を擬人化していろいろな病原菌に対抗するシリーズのアニメらしい。もちろんほとんどの登場人物は免疫系の細胞だ。T細胞が胸腺大学で教育を受ける回もあるらしい。
アニメの第二話で白血球が壊れた血管内皮からすべり落ちる際に仲間の白血球が「Lセレクチンを出してなかったのか!」と叫ぶシーンがあった。原作者は医学とは無縁の方らしいが相当に勉強していると感心した。

アニメやマンガで微生物学と免疫学(の基本)を学ぶのはとっつきやすくていい考えだろう。他にもWebでは「免疫のシゴト」とか「マンガ免疫学」とかいろいろある。「新抗体物語」は免疫の解説よりも主人公の人生ドラマが面白い。河本先生の「マンガでわかる免疫学」というのもがあるが惜しむらくは絵がちょっと。。(河本先生は本業界きってのアニメーター。なぜ彼自身が絵を描かなかったのか?)「はたらく細胞」のほうがはるかに絵がきれいで今風だ。細胞の擬人化という意味では東大の学生さんが作った「免疫劇場 MEN-EKI BLACK」が秀逸で毎年講義でも見せている。来年は「はたらく細胞」を見せようかと思ったがちょっと長すぎるな。「免疫劇場」は4分くらいなのでちょうど良い。「はたらく細胞」のキャラで「免疫劇場」を作ったらきっとウケるだろう。

免疫学の本試験。「丸暗記よりも理解」を大事にしてほしいと持ち込み可にしてみた。もちろん広い範囲から情報を集めて解くような問題なので何処に何が書いてあるのかくらいは覚えておかないといけない。「試験は合否を決めるためではなく勉強して理解を深めてもらうためにある」というのが私の信条。持ち込み可であってもある程度は勉強しないと解けない。しっかり勉強してくれたのか多くは大変よくできているので「持ち込み可」の試みはよかったのではないか。
でも講義に全く出ないで免疫学を教科書だけ読んで理解するのはかなり大変で膨大な時間がかかると思う。特に教科書では何が重要で何が瑣末なことなのかわかりにくい。概論講義は全部で12コマ=18時間程度である。「エッセンシャル免疫学」を全部読んで理解するのに必要な時間よりもずっと短くて済むと思う。


投稿者 : yoshimura1212 投稿日時: 2018-07-15 22:55:49 (1360 ヒット)

 7/14土曜日。この3連休、4つの眼科関係の合同年会が新宿で開催されてる。14,15,16と完全に連休を潰して勉強されている姿勢には頭が下がる。14日は講演に呼ばれてTregの話をする。夕刻7時から懇親会なのだが一度ラボに戻ってから出かけることに。懇親会では来賓代表でスピーチをと依頼されていた。私の一番苦手なやつだ。ところが新宿周辺は渋滞で会場には15分くらい遅れて到着。結局乾杯まで呼び出しがかからなかったので「ああ、自分の出番には間に合わなかったのだ」と妙に安心してワインを遠慮なくいただいていた。そうすると会の最後に「ではここで来賓のご挨拶を」と海外からの招待者と私が呼ばれたのだった。かなり油断していた。でも今こそ「古代ローマのライオンのスピーチ」のネタがぴったりだ、と思ったのだが、すでにほとんどの聴衆は出来上がっている。あまり複雑なことを言っても通じないかもしれない。そこで数日前の山中先生の講演を披露して「iPSの臨床応用は眼科領域が一番乗りである」と持ち上げ、でも「とりあえずは他家移植をめざすそうなので、HLAの問題は避けられない。再生医療には免疫学の知識が欠かせない」と免疫の勉強の重要性を強調した。そのあと「実は山中先生とは旧知のなかで、、、」と続けようと思ったが、「免疫学の勉強は重要」と言ったところで皆しらけたのか聞いていない。最後は前田敦子の「吉村は嫌いになっても免疫学は嫌いにならないで!」で少しの笑いを誘って結んだ。まあ皆さん記憶にも残ってないだろうからいいか。


投稿者 : yoshimura1212 投稿日時: 2018-07-11 23:56:41 (1463 ヒット)

 免疫学分野だけではないだろう。マウスモデルでなくヒトの材料を用いてヒトの生理病理を理解しようという機運が高まっている。当教室でも健常人の末梢血を使った実験を行なっている。もちろん○○委員会の承認を受けている。
懇親会でいい気分になって家に帰ったら突然○○審査からメールがやってきた。3ヶ月くらい前に出した報告書に不備があるらしい。ところが書いているのは
「上記の1)〜 3)については、従来の年次報告書の「実施状況の概要」欄の
㈰〜㈬を適切に記入していただければカバーされます。」

Webシステムにアクセスしても指摘されているところがどこなのか全くわからない。何を「適切に」どう書けばよいのか?一体何が不備なのか一切書いていない。日本語が理解できない。理解できない自分がわるいのだろうがメールは「返信は受け付けない」と書いてあるのに問い合わせ先の電話番号もない。○○審査の申請書と報告書には常に苦しめられ続けて苛立つ。複雑怪奇なWebシステムの不備も大きいと思う。

PC相手にいろいろいじくってもラチがあかないので、事務局にメールして来てもらった。そこはかなり親切だ。するとなんと5分程度で終了。あの1時間はなんだったのか?これからは自分ではやりません、お呼びしますのでどうか来てください、とお願いしたらいつでも来ますとのこと。これはありがたい。
 


投稿者 : yoshimura1212 投稿日時: 2018-07-11 22:57:34 (1216 ヒット)

 11日12日と都内で日本炎症再生学会。炎症と再生。炎症と再生の2つの学会が合同になったのが平成12年だそうだ。おそらく融合した当時は相当違和感があったと思うが、今日この2つは切り離せないものと捉えられている。先人の先見の明には感服する。今日の目玉は山中先生の講演。iPSの臨床応用が着実に進んでいることが実感させられた。ところで実は私と山中先生とは旧知の仲である。はるか昔は「山中君、頑張って」と肩を叩いていた。それがもう声もかけられない存在になってしまって久しい。懇親会で「吉村先生は心の師匠です」なんて言われて調子に乗って「先生、それをぜひ次の講演会で披露してくださいよ」とおねだりしてしまった。恥ずかしい。まあ先生は心の広いかたなのでなんとも思っておられないだろう。
子供や学生たちにに自慢したいからとツーショットをお願いした。すると、では自分もと次々と理事の先生方までツーショットをおねだりしていたのがおかしかった。山中先生もアイドル並みか。


投稿者 : yoshimura1212 投稿日時: 2018-07-09 00:02:58 (1313 ヒット)

 昨年の朝倉の大水害のときもひどかったが今回は広範囲で規模が大きい。被災されたひとたちは本当にお気の毒だと思う。これだけ広範囲だと何処に義援金を送ったらよいのか。広島は4年前にも大規模な土石流で多くのかたが亡くなっている。そういう教訓を活かせる以上の雨量だったのだろうか(砂防ダムつくってるんじゃなかったのか)。数十年に一度の雨と言われるようになってほぼ毎年災害が起きている。この国に住んでいる以上避けられない宿命なのだろうか。いや自分が子供の頃に比べると治水工事の効果で少なくとも筑後川の氾濫は減っている。常に自然と対峙しないといけないのだろう。a

実は久留米の実家でも車が水没するという被害にあった。幸い家と人には被害はない。座席までも水は来ていないのですぐに直ると思ったら修理に70万円かかるという。ネットで調べてもマフラーに水が入るくらいだとそれくらいかかる。しかも一旦水没したものはいつ壊れるかわからない、ということで買い替えを勧められた。中古車しか買える余裕はないがそれでも想定外の相当の出費だ。ところが同じようなひとはたくさんいるらしく在庫がかなり少ないらしい。中古車店に連れて行ってもらったが確かに車がいつもの半分もない。泣く泣く言われるままに購入。。広島や岡山の被災者の方々とは比べものにならないが、やはり痛い。こういうときくらい減税措置してくれるといいのだが。。。

明日が懸案の査読の締め切り。先週も昨日今日も休みなくひたすらひとの申請書を読む。集中力が続かないので1日にそうたくさん読めるわけではない。皆さん懸命に書かれているのでこちらも真剣にならないといけない。。。なんとか今日中に終えることができたがストレスで過食に走っている。それにしても話題の文科省局長の贈収賄事件。大学支援事業のような公募案件は専門家の会議で決めると思う。局長の一言で決まるようなものではないと思うのだが。。。


投稿者 : yoshimura1212 投稿日時: 2018-06-28 01:10:17 (2024 ヒット)

 先週はアメリカkeystone meeting。土日を挟んで月火講義でそのまま札幌での会議。金曜日神戸。AMEDの締め切りが刻一刻と迫る。それでもワールドカップを見てしまう自分が情けない。韓国ードイツ戦。ドイツ楽勝と思われたが韓国は意地を見せた。そもそも引いて固めた相手をこじ開けるのは難しい。韓国はお手本通りのサッカーをしたのだと思う。明日は日本ーポーランド。立場は日本とドイツ、ポーランドと韓国全く同じ。失うものがない韓国は落ち着いていた。一方のドイツは焦りばかりが目立った。全く同じことが明日起こるだろうと予想するのは私だけではないだろう。GKを変えなと早い時間帯に失点しあとは焦りで自滅するだろう。でもわかっていても決断できないのが人間だ。私の予想はGK変えなければ1-0か2-0でポーランド。GKを変えれば0-0か1-1で引き分け。私の予感はアメリカ大統領選挙をもあてたのだ。西野監督に聞こえるといいが。

言った通りになった。自分には予知能力でもあるのか?日本は最後コロンビア頼みで5分以上ボールをまわすだけ。日本男子なら負けてもいいから最後までゴールを取りにいく気持ちをみせろよ。どのみちこんな試合していたら次は負ける。後味悪い試合だった。

7/3 ベルギー戦。2点先制するも逆転負け。ベルギーをかなり慌てさせた。負けたものの前回の試合の汚名をそそぐいい試合だった。しかしこのあとが難しい。今から寝ると寝過ごしてしまいそうだ。。


投稿者 : yoshimura1212 投稿日時: 2018-06-17 16:20:58 (1319 ヒット)

 NHK天気予報士の南さん。関西で活躍していたがいつからか全国放送でも見かけるようになった。はじめは関西ノリのオヤジギャグを連発し周囲の温度を5度ほど下げ、女子アナに冷ややかな視線を浴びせられ続けた。オヤジの星、カガミというべき存在だったが、そこで指導が入ったのかすぐに全くおとなしく何の取り柄もないノーギャグ状態に陥った。南さんのユーモアも権力には勝てなかったかと同情していたが、今日は久々の(ごくささやかな)逆襲。さすがに梅雨なので明日から一週間連続して雨。今日が唯一曇り。そこで南さん「センタクの余地がありませんね」。洗濯と選択をかけている。思わずテレビに向かって「ウマイ!」と声をかけた。哀しくもいとおしい「オヤジ」をご理解いただきたい。


投稿者 : yoshimura1212 投稿日時: 2018-06-14 20:42:11 (1414 ヒット)

 本年度からMCBという膨大なオムニバス講義シリーズの世話係を担当している。「学生が研究の面白さを認識し、同時に研究に参入してくれる契機になるように」というコンセプトで様々な分野の第一人者を呼んで講義してもらうことになっている。その第1発目は京都大学の斎藤通紀教授。生殖細胞の発生研究では世界のトップランナーで、弱冠38歳の若さで京大教授に就任された。特にiPS細胞から始原生殖細胞を誘導することに成功された仕事は高く評価されており、武田学術賞を受賞されている。その時の講演を聞いて大変感銘を受けてぜひにとお願いして来ていただいた。京都からこの講義のためにだけ来てもらって講義が終わるとすぐに東京駅に急がれた。超多忙のところを誠にありがたいことだ。
門外漢なので専門用語にやや戸惑ったが、講義はわかりやすく、普通の細胞から精子と卵子を作ってほぼ試験管内だけで個体ができるような時代がそう遠くない将来に来るのではないか、と思わせるような夢を感じられるものだった。でも体細胞由来のiPSと違って精子や卵子のDNAにはほとんど変異が入っていないらしい。その仕組みはまだよくわかっていないという。もちろん倫理的な問題も提起されてレポート課題にとりあげられた。学生からも結構質問が出ていたのでinspireできたのではないだろうか。
そのあと4限目免疫学の講義をした後ビアガーデンに直行して学生実習の打ち上げ。ここ数年実習があまりにうまくいかないのでアレルギー応答に切り替え結果が明瞭に出るようにした。スタッフは本当にご苦労様で感謝にたえない。このごろ申請書ばかり読んでいてストレスが溜まっているのかつい発散しすぎた。。


投稿者 : yoshimura1212 投稿日時: 2018-06-12 21:07:13 (1353 ヒット)

うすうす肌で感じていたことだが国がデータで認めるとなると首肯せざるを得ない。ではどうすればいい?

<科学技術白書>「国際的地位は低下」研究力の低迷あらわに

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180612-00000051-mai-sctch


投稿者 : yoshimura1212 投稿日時: 2018-06-08 22:07:17 (1505 ヒット)

 人前でのspeechは大の苦手である。ローマ時代ライオンと人間が戦っていた頃、兵士が「もしお前が勝ったらスピーチしないといけないぞ」とライオンにこそっとつぶやいたらライオンが戦わずして逃げ出したというのは有名な話。今回プログラム委員だからと指名されて終了後の懇親会のspeechを請け負うことになった。もちろん固辞したが「あなたしかいない」と進行役の若い人に泣き落とされた。この忙しいのに一晩寝ずに考えたのが以下のspeech。このまま忘れ去られてしまうのはあまりも勿体無いので転記しておく。

My name is Akihiko Yoshimura from Keio University. On behalf of IMS-JSI- program comitte, I express sinseir thanks to all participants in this joint symposium. Especially I greatly appreciate speakers from overseas for your great contribution to this symposium. Thanks to all of you, I think this symposium was extremely successful. 
By the way, the title of this symposium is "checkpoint in medical science". Does anybody know who is the first to say this word "Immunecheckpoint"? When I heard this word for the first time, I felt weired because checkpoint is usually used for dead or alive situation in cell cycle or in the rearrengement of BCR or TCR genes. However, now this word becomes very familiar and very popular, and sounds very nice. Immunoecheckpoint implys the inhibtory factors or inhibitory molecults that prevent activation of immune cells, especailly T cells. Yes, immunecheckpoint is really imporant for immunological sciences. However, it is also important for immunological researchers and society. You may be able to image so many checkpoints are present in immunology society. I am not talking about particlar person, of course*. In any filed and age, conflicts between generations are always present. However, recently, I am afraid that the power of youner generation in the filed of immunology is weaker than that of older ones, especaiily in Japan. There are checkpoints, anytime and anywhere in your life. I hope young people here will overcome the checkpoint(person)s and make your dream true.

Thank you very much again for your participation.

 

*ここが唯一笑いをとるポイント。まあまあウケたかな。


スピーチ原稿代筆のご用命はメールにて承っております。



投稿者 : yoshimura1212 投稿日時: 2018-05-07 16:13:07 (3062 ヒット)

 日曜劇場の「ブラックペアン」。臨床薬理学会から治験コーディネーターの描き方があんまりだと抗議を受けるも「炎上商売」なのか気にしてないようだ。それよりも慣れ親しんだ「インパクトファクター」が何度も出てくる。一般社会では馴染みが薄いであろうこんな専門用語がテレビでバンバン出てくるのは感無量である。数字で競うのでわかりやすいからだろうか。理事長選挙を争う西崎教授が71で佐伯教授が77だそうだ。やけに低い。「オレなんか500以上はある」と家人に胸を張るが、ふ〜ん、と無視される。

4月休みなしで書いた論文が立て続けに高インパクトファクター(IF)の雑誌に蹴られる。Reviewにすら回らないのでは相当にヘコむ。誰かが「インパクトファクターはサイヤ人の戦闘力みたいなものか」とつぶやいていたが当たらずとも遠からず。確かによく使われるのは教授選とか昇進とか研究費の審査の時である。なので皆、高IFの雑誌に論文を掲載したいと願望し競争も激化する。弊害も多いので「人事等では使わないようにしよう」という運動すらある。そもそも送った論文に最初に目を通す editorなどそこらの若造が多くて(自分の英語がダメなことはおいといて)本当の価値を判断できるとは思えない。ここで凹んでいては研究者はやっていけない。

ある会議室。ある教室の講師の選考会議。普通の昇進の判定だけなのだが推薦した教授が申し訳ななそうに「インパクトファクターの合計が200くらいしかないんですよね」とおっしゃる。「大丈夫ですよ。佐伯教授でも77しかないんですから」(と思わず言いそうになった)。


投稿者 : yoshimura1212 投稿日時: 2018-04-27 16:48:56 (1644 ヒット)

 金沢大学がん進展制御研究所の田所先生、平尾先生の研究が『Cell Stem Cell』のオンライン版に掲載されている。プレスリリースもされている。SpredはRas-ERK経路の負の制御因子でLegius症候群の原因遺伝子である。私はマウスを供給したくらいで大した貢献はしてないが、「Spred1がメタボによる幹細胞の傷害、がん化を防ぐ機能を持つことの発見」というすばらしいお仕事に少しでも関与できたことは望外の喜びだ。田所先生がこの仕事を始められたのはおそらく5年以上前だと思う。大変丁寧にコツコツデータを蓄積された大作だ。でも一番のキモはやはり高脂肪食でSpred欠損マウスの骨髄幹細胞が腫瘍化することの発見だろう。これは割と最近の発見で、やはり田所さんの粘り強く鋭い観察眼のたまものだろう。メタボが気になる私も、多分SPRED1は正常だろうから少し安心させられるが、いずれにしろ過食はがん化の危険を高めるということだから注意しないといけない。さらにこの研究では腸内細菌との関係にも焦点が当てられている。メタボの影響は腸内細菌叢の変化をもたらし、これが腫瘍化に関係しているらしい。腸内細菌が遠く離れた骨髄にまで影響していることは驚きだが、造血幹細胞の腫瘍化を促進する菌もしくは菌の産物がわかれば予防にもつながるかもしれない。今後の展開が楽しみな優れた研究だと思う。

田所先生、平尾先生による日本語の詳しい解説はこちら。

AMED-CREST/PRIME説明会の動画
配信されている。めちゃめちゃ緊張してソワソワしているし滑舌悪すぎで恥ずかしい。ともかく多くの革新的、魅力的なご提案をお待ちしています。


投稿者 : yoshimura1212 投稿日時: 2018-04-26 09:15:41 (1595 ヒット)

 SOCS3に続いてSOCS1とJAKの共結晶構造が発表された。オーストラリアのBabon(ウイスキーはbourbon)のグループである。数年前にすでに解いていたというのは聞いていたのでpublishするのに苦労したのだろう。メカニズムとしてはSOCS3の時と同じくkinase-inhibitor-regionが擬基質として作用し基質が入り込むのを妨害するというもの。我々の仮説は証明された。しかし最も驚きだったのはSH2ドメインとリン酸化ペプチドの結合は阻害に必要ないというのも。彼らは様々なリン酸化ペプチドを試してやはりJAKのキナーゼactivation-loopのペプチドが最も強く結合することを確認している。これは20年近く前に安川君が報告した通り。ところが生のJAKのactivation-loopとは立体構造が邪魔になって結合できないらしい。つまりSH2ドメインの本当の相手は分からずじまい。早速BabonにメールしたところSH2ドメインの謎に2年間取り組んだが結局分からなかった、という返事だった。これがこの論文が御三家に載らなかった要因かもしれない。

しかし、試験管内ではSOCS1の抑制効果はJAKのリン酸化に依存しないとしても、細胞レベルではSH2ドメインの変異体は相当に抑制活性が落ちる。謎が残った格好だが、私はやはり相手はactivation-loopだろうと思う。様々なリン酸化ペプチドと比較しても結合の強さが全然違う。Babonも同様に相手はactivation-loopではないかと考えているらしいが証明ができない。実は結晶をつくるの使われているJAKはキナーゼドメインだけである。私はその隣の「調整機能を持つ」とされるpseudo-kinaseドメインがおそらく構造を変化させてJAKとSH2の結合を助けてくれるのではないか、と思っている。いずれにしてもSOCSのJAK阻害活性はサブnMレベルなので人工的なキナーゼ阻害剤と同程度である。リン酸化に依存しないでもこれくらいあるのだからSH2を介してJAKに接近できればもっとすごいのではないかと想像する。リン酸化に依存しないとすると創薬標的としてもやりやすいのではないか?Babonたちも最後にSOCS阻害剤のことを述べていた。残念ながら我々の総説を引用してくれなかったが、機運は高まりつつある。


投稿者 : yoshimura1212 投稿日時: 2018-04-19 12:55:51 (2411 ヒット)

 4/9に新井賢一先生が逝去された。18日お通夜に参列してきた。2週間ほど前に宮島先生の会でお会いしたばかりなので訃報を聞いたときは耳を疑った。新井先生とはDNAX時代からお世話になってきた。直接研究の指導をしてもらったわけではないが、なにかれと目をかけていただいた。医科研の所長をされていた頃訪ねていったら、海外との提携やベンチャーのことなど壮大な話をしてくださった。スケールの大きさに圧倒されて当時はやや気後れしてしまったが、退官後はいつもやさしく声をかけてくれていいオヤジという感じだった。ご冥福をお祈りしたい。
 

先週から息つく暇がないほど忙しい。通常4月はやや余裕があるのだが報告書書きやAMEDの準備が重なった。研究費の切れ目なので申請書も書かないといけない。それに重要な論文の執筆が重なった。論文を書く作業は強いストレスだが頭を整理する作業でもある。以前データを見せてもらったときは「意味ない」と思って気にも留めていなかったことが「ある仮説」で考えるとそれを支持する重要なデータだったんだ、と再認識することがよくある。書くと何が足りないか、次に何をやるべきかも見えてくる。本当は日々の実験や議論の時に「すっ」と出てくると「さすがだ」と思われるし、大変な時間と労力の節約になるのだろうが、この〇〇チュウ頭ではなかなか難しい。こういうところにAIが常にアドバイスして適切な実験を指示してくれるようになれば教官は随分楽になるだろう。いや私のような半ぼけ教授はそもそも要らなくなるかもしれない。
ともかくどうせロクな意見はもらえない、と思いつつも老教授にデータを見せることは重要だろう。彼の記憶の引き出しに残すことが大事なのだ。実験した本人が忘れていることですら集中していて一瞬だけ神がかった教授には思い出せる(こともある)。そのへんの「ひらめき」の仕組みがわかるともっと楽になれるんだろうが。


例えば新井先生の場合、私のようなサイエンス以外のところで影響を受けた者よりも実際に直接実験指導を受けた人たちはもっと強烈なインパクトを受けたに違いない。研究に限らず出会いは極めて重要でその人の人生すら変えることがある。だからアカデミアをめざす大学院生には留学を勧めている。若い人には密着して指導してくれる人のほうがいいような気がする。でも逆にそれが強すぎると指導者の言うことを聞くだけで自分で考えない人もいるかもしれない。人それぞれなので難しいが自分を変えてくれたと思える指導者に出会えることは本当に幸運なんだろうと思える。自分のようなダメ教授でも反面教師としてそれなりに存在価値があるに違いないと思うことにする。
 


投稿者 : yoshimura1212 投稿日時: 2018-04-10 21:09:54 (2625 ヒット)

 今年度よりAMEDの革新的先端研究開発支援事業(CREST, PRIME)の総括を仰せつかった。副総括は順天の横溝先生。日本の研究力が低下していると言われる時代。ぜひ世界に誇れるいい研究成果が出るようにサポートしたい。内容は外傷やストレスによる組織損傷に対して生体が他の臓器由来因子や複数の細胞を介して適応、修復していくプロセスを解明し治療に役立てようというもの。

応募案内はこちら。研究開発領域「生体組織の適応・修復機構の時空間的解析による生命現象の理解と医療技術シーズの創出

具体的な領域についての解説(領域概要)は公募要項のp44にある

たぶん探すのが面倒だろうからここに抜粋します
4月23日に説明会あります。


投稿者 : yoshimura1212 投稿日時: 2018-04-07 17:33:50 (1395 ヒット)

上野の国立科学博物館で「人体」展をやっている。○NKに苦言を呈した手前一度見ておきたいと思って行って見た。ダビンチとかの解剖学の歴史が面白かった。そのなかにレーベンフックの顕微鏡の実物もあり、その小ささに驚いた。レーベンフックはよほど目が良かったのだろう。ついこの間まで微生物学を講義していたのでレーベンフックのことはある程度知っている。「微生物学の父」とも呼ばれている。ちょうど京都大学人文科学研究所の田中祐里子氏の講演があったので拝聴した。やはり文系の先生の講演は上手だ。丁寧に一般のひとにもうまく興味をつなぐように話される。フェルメールの「天文学者」と「地理学者」のモデルはレーベンフックではないか、と紹介するのはお約束なんだろうが「モデルとは違う」という説もあってあれこれ解説されていたのは面白かった(ウンチクがひとつ増えた)。レーベンフックが「最初に見た」とされる原虫や細菌、赤血球、精子など原図を見せながらいろいろなエピソードを紹介された。予定の60分を過ぎても話し続けられたが聴衆は飽きずに聞いていた。質問の時間になって誰かが「レーベンフックの業績はまとめると一体何ですか?』と問われてこれらを最初に見て報告したこと、と答えられた。しかし「微生物学の父」と言われながら彼は発見した細菌が「何をしているのか?」という疑問には一向に関心がなかったように見える。彼はビールに酵母がいることを見つけて酵母はビールから生まれると考えた。酵母がビールを造っているとは思いもしなかったそうだ。しかしレーベンフックはともかく周囲の自然科学者や医学者たちはこんな小さなものが何をしているのか?ということになぜ興味を持たなかったのだろう?そこで思い切って「なぜ彼の発見は機能に結びつかなかったのか?微生物が発酵や病気の原因であることは200年後のパスツールまで待たなければならなかったのはどうしてでしょうか?」と質問した。その答えは17世紀の医学理論体系がなんとか(よく聞き取れなかったがあとで厚かましくもメールで尋ねたらデカルトの粒子論ということだった)でレーベンフックの発見は医学界には全く波及しなかった、といったものだった。あとで調べると田中氏は「近代西洋医学発展史」の研究者なんだそうで、実は同じ疑問を持たれている。レーベンフックももしかしたら「微生物と病気」の関係に気づいていたかもしれない。しかし、やっぱり見たものから想像するだけでは人々を変えることはできず「実験的検証」(病原微生物の場合はコッホの3原則など)という科学的な方法論が確立されるまで長い時間待たねばならなかったのだろう。


投稿者 : yoshimura1212 投稿日時: 2018-04-06 12:12:36 (1614 ヒット)

 TGFβの免疫抑制作用はよく知られている。しかし低分子TGFβ阻害剤は確か開発が途中で止まったと聞いてる。がん細胞ではTGFシグナルは増殖を抑制するのでTGFβ阻害はがんの成長を促進させる可能性がある。今日のジャーナルクラブでは、TGFβシグナルが入らなくなった腫瘍モデルを使ってリンパ球でTGFβのシグナルを止めると転移を抑制できること、PD-L1抗体との併用で著しく腫瘍を縮小できることを示した論文が紹介された。以前から概念的には知られていることだったがクリアな系でクリアに証明したところがすごいんだろう。当然TGFβ阻害剤と抗PDL1抗体との併用は期待できそうな気がする。その上をいく発想がPD-L1の抑制抗体とTGFβ受容体(TGFβのトラップ)を一体化したバイオ製剤M7824で当然マウスではすごい効果が報告されているCTLA4版もあるSOCSは第三のチェックポイント分子だと言ってきたが、TGFβは第四のチェックポイントか。うちではSmad2/3の欠損マウスを使っていろいろな研究を行ってきたが最近すっかり忘れていた。もう一度マウスを起して腫瘍免疫の観点で実験してみるか。。いやもう遅いだろうな。

どうでもよいことだが、昨晩夜中に一人で仕事をしていると人の気配がする。皆帰ったあとで実験室は閉まっているはず。廊下に出てみると講師のT君がいる。どうしたんだと聞くと奥さんと喧嘩して追い出されたのだそうだ。酒を出して慰めているとまた廊下を「ぱたぱた」とスリッパで歩くようなかすかな音がした。もう10時をまわっている。誰か来たのだろうと調べるが誰もいない。背筋に寒気が走ったが、T君いわく夜中遅くまでいるとよくこんなことがあるのだそうだ。そういえばこの東校舎は地下に病理解剖の部屋がある。一度夜通しカメラを回したらテレビ局が買ってくれるような映像が撮れるかもしれない。T君はたたみかけて「1階はもっとすごくてトイレの入り口のドアがよくひとりでに閉まりますよ」とか言う。いやトイレのドアは普通自動的に閉まると思うけど。。。


あとで聞くとT君は別に奥さんと喧嘩したわけでも追い出されたわけでもなく、酒も自分のものなのだそうだ。トイレも入り口ではなく内部の使用する個室のドアのことだという。まあ飲むと記憶がなくなるので仕方がない。


投稿者 : yoshimura1212 投稿日時: 2018-04-06 00:26:57 (1422 ヒット)

 コメの消費は減っているというのに精米や炊飯器の開発は熾烈な競争があるようだ。東テレのガイヤやカンブリアでもこれでもかというほどにやっている。私が知っているだけでも「どなべ」「金芽米」「ロウカット玄米」「バルミューダ」「バーミキュラライスポット」。今日はシロカの「かまどさん電気」。実際にかまどさんや金芽米は通販で買ってしまった。普通のコメの倍はする「〇〇の霹靂」も試した。実際に食べて見ると「う〜ん」。確かに美味しいがテレビで食した人が「もう他は食べれない」と言っているほどの衝撃的な差は感じられない。やっぱりご飯の好みは人それぞれ。好きなコメの銘柄を決めて好きな水加減を決めれば普通の炊飯器でもいいのかも。。とくに手入れが面倒などなべとかはおいしさと面倒臭さとの天秤になる。テレ東もこんなにいろいろな企業の紹介を何度もするなら「暮らしの手帳」並みに一度一堂に集めて味だけでなく手入れのことも含めて比較試験をしてくれればいのに。


投稿者 : yoshimura1212 投稿日時: 2018-03-25 21:43:53 (2022 ヒット)

 ○HKの「人体」シリーズはビジュアルもよくできていて一般の方々にも興味を喚起すると思われる。最新の医学生物学研究の成果をわかりやすく知らせるには非常に価値があるだろう。でも今回の「臓器間のメッセージ物質」では「そう言い切っていいの?」と思えることが多いように思う。例えば筋肉からIL-6が出るので運動すれば痩せるとか、オステオカルシンで若返るとか、がん細胞のエキソソームが転移を促進させたり免疫を抑制している、とか最新の論文があることは知っているが、つい最近の話でこれらが定説になったという話はまだないんじゃないかと思う。ノーベル賞の山中先生が「そうかもしれない」というとみている人は「そうなんだ」と思うだろう。重要な研究領域であることは確かだろうが、今まさに研究途上の話題ではないか?期待が先行したイリシンの例もある。。筋肉のIL-6の時は意見を聞かれたが、私はまだ時期尚早と言ったのだが。。。余計なことかもしれんが一言言っておきたい。


投稿者 : yoshimura1212 投稿日時: 2018-03-25 12:29:56 (1551 ヒット)

宮島先生の退任記念会でのスピーチ原稿をupしました。

このスピーチの準備に実は相当の時間を費やした。特に「オチ」を考えるのにかなり苦労した。当初は3年ほどまえの須田先生の会で阪大の金倉教授が言ったオチをそのまま使おうと思った。その時の記憶ではすごくウマイとうならせる印象だったのだが、中身が思い出せない。昔の記録をさんざん調べて調べて、『定年退任された教授はこれからは教育と教養を大事にしていただきたい。つまり「今日いくところ」と「今日よるところ」』というものであることがわかった。こうして書いてみると実に面白くない。そこで自分でいろいろ調べたり、あれこれ考えて「定年退職はちょうどよいカルピスの味に似ている、そのこころは現役(原液)に水をさしすぎないように」ということにした。
しかしいざ話し始めると完全にあがってしまった。早口だったせいかせっかくのオチも皆さんぽかんとして通じていなかったかもしれない。「ねずっちです」と胸をはろうかとすら思っていたのにかなり意気消沈した。ネタは悪くないと思うが、やはり一番重要なのは間の取り方としゃべりかただろう。もっと精進しないと。


  
(1) 2 3 4 ... 13 »