2015年
5月21日
またまたNHKである。私は別にNHKの片棒を担いでる訳ではないことはまず申し上げたい。今回は4/5に放送されたNHKスペシャル『新アレルギー治療〜鍵を握る免疫細胞〜』で最近録画を見た。解説には以下のように紹介されている。
『鍵になるのが、“制御性T細胞(Tレグ)”。発見した大阪大学の坂口志文さんは、その業績によって先日「ガードナー国際賞」の受賞者に選ばれました。“Tレグ”は免疫の過剰な攻撃を押さえ込む役割を持っています。最先端の研究現場では“Tレグ”のコントロールによってアレルギーが完治するケースが出始めています。番組では、“Tレグ”とアレルギーの関係性について詳しくご紹介し、今研究が進められている新たな治療の、具体的な可能性についてお伝えします。』
すごく画期的な治療法が見つかったかのようである。言うまでもなく坂口先生はこの分野の創始者でありTreg(Tレグはできればやめて欲しい。どうもハイレグとかTバックを連想してしまう。。私だけか?)の発見者である。番組ではアーミッシュの人々にはアレルギーがほとんどいない一方でTregが多いことや、舌下免疫療法が効果があるひとはTregが増えていることが紹介されていた。確かにアレルギーの抑制にTregは深く関係しているし、おそらく経口免疫寛容の成立にもTregが関与するだろう。ただそれだけで全部説明できるとは思えない。アーミッシュの疫学調査をしたムティウス教授らは昔『家畜とふれあうとアレルギーになりにくい』という疫学調査を報告し『衛生仮説』をひろめたかたである。そのときはエンドトキシンがTh1を誘導しアレルギーの主役のTh2を抑えるという説明だった。今回Tregに宗旨替えしたようだがそんなに簡単に主張を替えていいものだろうか。そもそもどうしてTreg(だけ)が増えるのか?が説明できてない。有効なTregを増やす方法についても我々も含めて研究の真っ最中である。Tregの重要性を一般にも示してくれたのは大変ありがたいが、科学番組の宿命とはいえ『すぐにでも治る』『これが原因』ような表現をしてしまうので注意が必要だ。もっとも我々がプレスリリースするときも同じような『誇大広告』をしているのではあるが。。