2015年

7月2日

投稿者 : yoshimura1212 投稿日時: 2015-07-02 23:35:28 (20113 ヒット)

 Smad2 and Smad3 Are Redundantly Essential for the TGF-β–Mediated Regulation of Regulatory T Plasticity and Th1 Development
The Journal of Immunology July 15, 2010 vol. 185 no. 2 842-855

7/1に卒業生の瀧本智仁君が亡くなった。37歳。急性白血病だった。彼は九州大学医学部卒業後小児科で研修を行い平成18年に博士課程大学院に進学した。4年間私のところで研究を行い本論文を完成させて小児科に戻っていった。私の力が及ばずにtop journalには通せなかったが論文は極めて完成度が高くすでに200回以上引用されておりTGF-β研究において重要な地位を占める。この研究内容は永遠に生き続けるだろう。
   TGF-
βは強力な抗炎症性サイトカインであり、T細胞においてはFoxp3の発現を誘導して制御性T細胞(iTreg)を産み出すとともに、炎症性のTh1やTh2を抑制する。しかしTGF-βのどのようなシグナルがこれらの現象に必要なのか、またiTregの誘導とTGF-βのもつ抗炎症機能の関係もよくわかっていなかった。
   TGF-βは
Smad2およびSmad3を介して核内にシグナルを伝達する。瀧本君はT細胞特異的Smad2損(Smad2cKO)マウスとSmad2/3-両欠損(DKO)マウスを作製した。Smad2あるいはSmad3 の単独欠損T細胞では、TGF−βのiTreg誘導能もTh1抑制能も減弱し、さらに両欠損T細胞では完全に消失した。したがってTGF-βによるFoxp3の誘導とTh1の抑制はSmad2/3が重複して必須であることを示している。さらにDKOマウスは重篤な炎症のために生後一ヶ月以内に死亡したことから、個体レベルでもSmad2/3が重複して炎症抑制に寄与することが明確に示された。Foxp3の誘導がTGF-βの免疫抑制機能に必須かどうかを調べるためにFoxp3を欠損するScurfyマウスTGF-βを連日投与したところ致死的な炎症が抑制された。血中の炎症性サイトカインの濃度もTGF-β投与によって低下した。また試験管内でもTGF-βはFoxp3が存在しなくてもTh1分化を抑制することができた。すなわちTGF-βはiTregの誘導に必須であるものの、Foxp3に依存しないメカニズムでも炎症や炎症性サイトカインの産生を抑制することがはじめて明らかにされた。

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