2015年

9月21日

投稿者 : yoshimura1212 投稿日時: 2015-09-21 21:35:33 (2692 ヒット)

安保法案は採択されたが『戦争反対』あるいは『戦争は文化ではない』というスローガン(推進派に言わせれば"レッテル貼り"かもしれないが)のもとでかなり危うい法案ではないか、という認識を持たせた。私はこの法案について何か言えるほどの見識を持っていないが、最近スローガンの重要性を認識させられたことがあった。大学院生の論文を某誌に送ったら全く新しいことがないとrejectされてしまった。文献の引用も拙く、相当にコキおろされた。未熟なことは認める。しかしメモリーTh17がTCRとは関係なくIL-23の刺激でサイトカインを産生しinnate様の炎症を惹起できるというのは、獲得免疫と自然免疫のつながりを埋める重要な発見ではないかと思う。再投稿の準備をしていたら今月号のNature Immunologyに似たような話を見つけた。
Innate immunological function of TH2 cells in vivo
Nature Immunology 16, 1051–1059 (2015) doi:10.1038/ni.3244
要するにメモリーTh2はTCR刺激無しで寄生虫感染などに対応できるという発見で獲得免疫Th2に『innate function』があるという話である。一方我々のは"memory Th17 cells promotes endotoxin-induced acute lung inflammation.....”といったものでなんともやぼったい。この差が論文の命運を左右するのかと思うとタイトルの重要性、ネーミングの重要性を思い知らされる(もちろんそれだけではないだろうが、、)。
なおinnate memoryがやはり昨今スローガンとしてもてはやされている。これは言葉の定義の問題である。『記憶』と『特異性』は普通は切り離せない。当面、学部レベルの学生諸君は『特異性の低い』自然免疫には『記憶』がない、そう覚えておいて”今のところ”間違いはない(将来覆るかもしれん)。いやそれよりも、そもそも『免疫記憶』の意義を理解することのほうがずっと重要なのだ。関節リウマチがアレルギー分類の3型なのか、4型なのかと同じような議論である。ぜひ考えてみて欲しい。
なおinnate Th2のlast-authorは米国NIHのDr.Willam Paul でBill Paulと呼ばれて親しまれた親日家であったが、ごく最近亡くなられたそうだ。ご冥福を祈りたい。

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