2016年

5月6日

投稿者 : yoshimura1212 投稿日時: 2016-05-06 08:55:12 (4215 ヒット)

 今月号のNature Medicine 22, 516–523 (2016) より。『腸内細菌は腸内のγδT細胞を制御して脳梗塞の病状に影響する』ヒトでは腸内細菌は動脈硬化の結果として脳梗塞や心筋梗塞など関係することが語られて来た。マウスの実験ではあるが、この論文では腸内細菌叢のDysbiosis(バランス失調)が樹状細胞を介して制御性T細胞Tレグ(Treg)とIL-17産生性γδT細胞の比率を変えることで脳梗塞を改善させることが報告されている。脳内炎症との関係に着目したわけだが、Dysbiosisは様々な疾患を悪化させることが多いのにこの場合は脳梗塞を軽減している。IL-17産生性γδT細胞が脳梗塞の悪化に寄与することはもうだいぶ前に七田君が報告しているし、Tregが保護的に作用することも報告されている。腸内細菌叢の乱れがこれらの細胞群に影響を与えることもわかっている。やはり流行の腸内細菌と脳梗塞後の炎症を結びつけたところが着眼点なのだろう。一般的な『dysbiosisは悪い』という認識と逆の結果なのも面白かったのかもしれない。ただ見ている結果は梗塞後1週間以内である。もう少し長い経過でみるとどうなるか?再生や修復と腸内細菌の関係も今後着目されるだろう。

印刷用ページ このニュースを友達に送る

投稿された内容の著作権はコメントの投稿者に帰属します。