2011年

6月1日

投稿者 : yoshimura1212 投稿日時: 2011-06-01 11:33:31 (7481 ヒット)

On lineで出ました。

JST,慶應とのプレスリリースも。http://www.jst.go.jp/pr/announce/20110520/

Immunityに出していた市山君の論文がやっとacceptになりました。ほほacceptと言われてから3ヶ月近くたったので全く異例のことです。一時はrejectかと気をもみましたが、粘り強くやりとりをしてようやくacceptにまでこぎ着けました。

市山君は当教室を先春卒業し別教室に一時移籍後すでにアメリカに留学中。そんななかでreviseの作業は困難を極めましたが多くを学ぶことができたはず。これを糧にアメリカでも更なる活躍を期待したい。reviseには理不尽な要求であることも多いが今回のはきわめてまっとうで追加実験で論文はかなりよくなったと思います。

この論文はT細胞特異的Smad2/3欠損マウスのリベンジでもありました。Smad2/3-KOは考えられないほどの労力と時間と資金をかけたにもかかわらずJIどまり。私自身やるかたない思いを抱き続けてきましたが、そのなかなからSmad非依存性の応答遺伝子を見つけ出した市山君の頑張りが今回の成果につながりました。それにしてもタイトルまでかえられてしまった。"Transcription factor Smad-independent T helper 17 cell induction by Transforming-Growth factor-b is mediated by suppression of Eomesdermin" Ichiyama et al. Immunity

Th17のマスター転写因子であるRORgtはTGFβによって転写誘導されますが、Smad2/3-両方が欠損したT細胞でもRORgtは誘導されることからTh17の分化はSmad非依存的な経路によって誘導されると考えられてきました。しかしTGFβのSmad非依存的経路とは何か?どんな遺伝子がRORgtの誘導にかかわるのか?現在でも完全にはわかっていません。本論文ではまずSmad2、Samd3の両方が欠損したT細胞でTGFβで増減する遺伝子(つまりSmad非依存性応答遺伝子)をピックアップしました。これらの遺伝子をT細胞に導入したところ、eomesdermin(通称eomes、エルメスではない)という遺伝子が強力にTh17分化を抑制することがわかりました。eomesの発現はTGFβによってSmad非依存的に発現が抑制されます。もし抑制されないとTh17誘導が起こりにくくなります。eomesは転写抑制因子として働きRORgtのプロモーターに結合してRORgtの発現を抑制します。なのでTGFβがeomesの発現を抑えることでTh17分化を促進していることになります。

ではSmad非依存的経路とは何か?市山君は様々な阻害剤を用いて検討したところ、JNK阻害剤がeomesの発現抑制を解除しTh17分化を抑制することを見いだしました。TGFβはJNKを活性化することは以前から知られていましたので、全く新しい経路の発見とはいきませんでしたが、ともかくもTGFβ-->JNK-->eomesの抑制-->Th17促進というスキームが完成しました。JNK阻害剤はTh17によって引き起こされる自己免疫疾患EAEモデルを著しく改善しました。この経路の発見によって新しい治療戦略を提示できたと思います。

しかしeomesはRORgt誘導を抑制するものであって、RORgtを本当に誘導する本体はまだわかっていません。この単純そうで難しい問題こそがTh17に
残された大きな問題で今後も取り組んでいきたい課題です。分子のレベルで免疫を理解して治療方法を開発する、という当ラボの方向性に興味をもってくれる学生の参加を期待します。

科学新聞社が掲載してくれたそうです。





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