2017年

2月21日

投稿者 : yoshimura1212 投稿日時: 2017-02-21 12:00:02 (1391 ヒット)

 20-Feb-2017
Dear Dr.Yoshimura:
I am pleased to inform you that your manuscript INTIMM-16-0126.R1 is accepted for publication in International Immunology.
acceptのメールをもらったのは本当に久しぶりのような気がする。Kさんは大学院に入学したものの出産育児で一時離脱し、3年生として入り直して研究を行っていた。今も昔も子育てと研究の両立は難しいものだがなんとかやりくりして最後までやり遂げたところは立派だ。
タイトルは"Role of scavenger receptors as damage-associated molecular pattern receptors in Toll-like receptor activation"
本論文ではDAMPsとして有名なHMGB1をとりあげている。昔からHMGB1のようなDAMPsはTLR4を活性化することは知られていたがDAMPsとTLR4の結合力は非常に弱い。何か別の副受容体(co-receptor)の存在が示唆されていた。七田君がDAMPsの受容体としてスカベンジャー受容体を発見していたのでこれがco-receptorとして働くという仮説を考えた。材料は揃っているので1年もかからずにすぐにまとまるだろうと考えていた。しかしそう簡単に絵に描いたようにはいかなかった。まず培養マクロファージ細胞でHMGB1がスカベンジャー受容体のMsr1で取り込まれること、Msr1がないとHMGB1によるサイトカイン産生が低下することからMsr1がHMGB1とTLR4を結ぶco-receptorの役割を果たしていることが示唆された。極めてきれいな話ですぐに終わると思ったのだが苦難はここから始まった。Msr1欠損マウス由来のマクロファージでは取り込みは変らずにサイトカインはむしろ上がったのだ。スカベンジャー受容体はたくさんあるので個体では本当に重要な受容体は別にあるか、あるいは他のスカベンジャー受容体群に補償されるのだろう。結局その個体で重要な受容体は同定出来ず、M-BSAという普遍的な阻害剤を用いるしか方法が無かった。昔からスカベンジャー受容体と炎症については正反対の論文が出されたりして議論が分かれていた。Kさんは個体での応答を丁寧にみることで炎症性のM1マクロファージではスカベンジャー受容体はHMGB1を取り込むときにTLRのco-receptorとして働くが、M2マクロファージではもっぱらHMGB1を取り込み分解する本来の掃除役としてのみ働くことを見つけたのだった。しかしM1とM2で、どのような仕組みで機能的な差が出るのかまでは明らかにできなかった。次の目標になるだろう。しかし不運だったのはHMGB1の受容体がSCARA5というスカベンジャー受容体であることがJ.Immunol.に昨年出されてしまったこと。これでJIクラスは無理かと思ってIIにしたのだが、雑誌のIFで内容は測れない。M1/M2でスカベンジャー受容体の機能が異なるというのは極めて新しくて面白い発見で胸をはってよいと思う。

Reviewerのコメントが返ってきから2ヶ月あまり。コメントは的確で、ウエスタンブロッテイングでscavenger受容体のあるなしでシグナルの差をみろというものだった。このため彼女は毎日ウエスタンばかりすることになったが、まだまだ基本が出来てないから簡単な実験でもつまずいてばかり。『一芸は百芸に通ず』あるいは『一芸は道に通ず』と言われる。ウエスタンの奥義を極めれば必ずどんな新しい技術も科学も苦労無く身につけられることだろう。そういって励ましたのだがプロフェッショナルになるのはもう少し先かな。

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