2017年

10月26日

投稿者 : yoshimura1212 投稿日時: 2017-10-26 15:08:51 (1601 ヒット)

 血液内科から派遣されていた笠原君の論文が先ほどacceptされた。
Generation of alloantigen-specific induced-Treg stabilized by vitamin C treatment and its application for prevention of acute graft versus host disease model

笠原君はiTregを移入することで骨髄移植の際のGVHDを緩和できないか、という課題に取り組んで来た。あまりに熱心なので1年余計にかかったが、いつものように内容的にはIIにはもったいないと言える。様々な理由でIIがどんどん増えていくのだが、別に雑誌のIFで内容が決まるわけではない(と胸を張りたい)。今回はreviseにかなりの時間とエネルギーを注いでくれた。私ももちろん言い続けたのだが、reviewerから「ヒトのデータは必要」と言われたのでようやっとやってくれたものだ。しかし実際にはrevise実験で得られたヒトT細胞のデータがこの論文で最も価値があるものかもしれない。

 笠原君は安定な抗原特異的iTreg(この場合はアロ抗原)を作るために様々な条件検討を行った。遺伝子導入も行ったが、これまで試験管内でFoxp3を誘導すると言われていた遺伝子でも個体に移入してGVHDを起こさせるとことごとくFoxp3がなくなっていった。しかしビタミンCをiTreg誘導時に加えるとFoxp3の発現が安定化し、個体に戻してもほとんどFoxp3が減らない”真性”Tregができたのだった。この安定化iTregは見事にGVHDを抑制してくれた。抗原特異的iTregでGVHDのような強烈な炎症を抑制できたという報告はかなり少ない。その点では価値はあるが、なにせビタミンC添加によってFoxp3遺伝子のCNS2という領域のDNA脱メチル化が促進されてFoxp3の発現が安定化することはすでに報告されている。これだけでは『ものすごく驚くべきこと』というわけではない。

 しかしヒトではかなり様相が違っている。ヒトT細胞ではFoxp3は割と容易に誘導されて不安定であると言われている。しかしビタミンCを加えるとFoxp3の発現が一段と高い”真性”iTregが出現したのだった。DNA脱メチル化も部分的にではあるが進んでいる。この”真性”iTregを分離するためのマーカーはまだ見つかっていないがビタミンCを活用することできっとそんなマーカーも見つかるだろう。抗原特異的”真性”iTregを分離できれば様々な免疫疾患に応用できるに違いない。また一歩免疫リプログラミングに近づいたような気がする。笠原君はrevise実験を通じて『他人の言うことに耳を傾ける』ことの重要性を認識したことだろう(と思いたい)。ぜひ胸を張って臨床に戻って、この経験を生かしてもらいたいものだ。

 

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