2018年

3月15日

投稿者 : yoshimura1212 投稿日時: 2018-03-15 14:11:33 (1526 ヒット)

Inhibition of Nr4a receptors enhances anti-tumor immunity by breaking Treg-mediated immune tolerance

Hさんは大学院博士課程4年生でもうすぐ卒業なのだが、論文が間に合ってよかった。ノックアウトマウスの解析にとどまらず阻害剤のスクリーニングと個体レベルでの効果の検証までやった大作だ。よく頑張ったと思う。実際に使われている抗がん剤がNr4aを抑制する活性を持つことを見出した点が秀逸だと思う。学会発表で「吉村研がとうとうこっち(腫瘍免疫)に来たのか」と言われたそうだが、実際は2005年頃からSOCS1欠損マウスで抗腫瘍免疫が増強されていることなどを報告している。なので「また流行に乗って」というわけではない。Nr4a活性化剤は報告が多いが阻害剤は見かけない。もっと選択的な阻害剤ならばPD1抗体との併用も期待できるだろう。製薬企業のかた、いっしょにやりませんか?

 多くのがんにおいて制御性T細胞Tregの増加が予後不良と相関していることが報告されている。そこで新しい腫瘍免疫療法としてTregを抑制したり除去する方法の開発やTregをエフェクター細胞に転換する方法の開発が進められている。本研究ではTregの機能を選択的に阻害しうる標的分子として、Tregの発生及び機能維持に必須の転写因子であるオーファン核内受容体Nr4aファミリー(Nr4a1/a2/a3)に着目し、Nr4aによるTregを介した抗腫瘍免疫応答抑制機構の解明とNr4aをターゲットとした新規がん免疫療法の探索を行った。Treg特異的にNr4a1/a2を欠損したマウスは野生型マウスに比べて顕著な腫瘍増殖の抑制が見られた。さらにNr4a1/a2欠損担癌マウスではTregの減少とCD8陽性細胞傷害性T細胞 (CTL)の増加が確認された。続いて、既存薬のライブラリーを用いてNr4aの転写活性を指標にNr4a阻害剤のスクリーニングを行ったところ、古典的抗癌剤 Camptothecin (CPT11) がNr4aの転写活性阻害剤として作用しうることを見出した。またNr4aはTregにおいてPGE2-PKA- cAMP response element binding protein(CREB)経路によって誘導されることから、Cyclooxygenase-2 (COX-2)阻害剤の投与によってNr4aの発現誘導が抑制されTregの免疫抑制活性も阻害されることがわかった。これらのNr4a阻害剤として同定した2つの薬剤をマウス皮下腫瘍モデルに投与すると両薬剤はTregの機能を阻害し相乗的な抗腫瘍効果を示した。以上のことから、Nr4a受容体は腫瘍内でTregの機能を維持することによって抗腫瘍免疫を抑制していること、逆にNr4aを阻害することでTregを介した抗腫瘍免疫応答の抑制機構が解除され、CD8陽性CTLを中心とする抗腫瘍エフェクターT細胞の強力な活性化を誘導できることが示された。Treg制御因子Nr4aはがん免疫療法の新たな標的分子として期待できる。

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