2018年

9月11日

投稿者 : yoshimura1212 投稿日時: 2018-09-11 21:26:06 (1572 ヒット)

 今日のMCBの講義は京都大学iPS研究所の川口先生と熊本大学発生研の西中村先生。奇しくもiPSから膵臓と腎臓を作成されたことで著名なお二人のお話だ。川口先生はしかしiPSの話はされず、膵臓の内分泌細胞、外分泌細胞がどのように影響し合いながら分化や機能維持を果たすのかを研究手法を交えてお話くださった。プロの研究者には馴染み易い話だった。最後に「先生が研究をされてこられたことは外科医としては役にっていますか?」と私が尋ねたところ、「論理的にものを考えることにものすごく役に立っている。例えば研究の経験がある者は血液検査を出す場合ものすごくよく考えて推論できるような検査項目を入れる。何も考えない者はただ漫然とルーチンで出す」と言われていたのが印象的だった。

一方の西中村先生は自分の夢だった「試験管内で腎臓を造る」という目標をどうやって実現したか、あるいは実現しつつあるか?という話で門外漢の私にも極めて刺激的な話だった。もともと腎臓内科医で透析で大変な思いをされている患者さんを腎臓移植で治したい、そのために人工的に腎臓を作り出したいというのがこの世界に入るきっかけだったそうだ。しかし腎臓は最も複雑な臓器のひとつで多くの種類の細胞が複雑に絡み合っている。そう簡単にできるものではない。例えばもしiPS(あるいはES)細胞からネフロンをつくるにしてもマウスの発生では10日くらいかかり1日ごとに変わっていく。もし一日あたり1000通りくらいの培養条件を検討しなければならないとすると1000の10乗の条件を検討しなければならないことになる。ほぼ無限といえる数字だ。それを先生は1日ごとに調べて確定していけば1000X10=10000回の条件検討で済むと考え、実際にそれをやり遂げられた。理屈はそうかもしれないが1000通りの条件検討すら想像がつかないくらい大変そうなのにそれを10回やるなんて、呆れるくらいすごい。しかも熊本地震によって中断も余儀なくされたという。例えば我々の分野のT細胞なんかOP9という線維芽細胞みたいなのとまず培養し、次にNotchを発現させたOP9-DL1と培養するだけで割と簡単にできる(らしい)。腎臓の細胞もそんなものだろうと思っていた不明を恥じるばかりだ。切片を切って糸球体のような形が見えた時は大学院生と涙を流して喜んだそうだ。こういう話は昔私が若かった頃、微量の生理活性物質を何段階ものカラムを通して丸一日コールドルームで過ごして精製していった先人たちの話に通じるものがあるように思う。創意と工夫、それに弛まぬ努力があれば不可能はない。NHKは「プロフェッショナル」に呼ぶべきだ。

MCBの先生方の話はそれぞれ個性があって興味が尽きない。多くの学生さんたちは「単位をもらう」ことしか考えていないだろうが本当に少人数でも何か感化されるものがあれば大成功だろう。

 

印刷用ページ このニュースを友達に送る

投稿された内容の著作権はコメントの投稿者に帰属します。