2019年

4月11日

投稿者 : yoshimura1212 投稿日時: 2019-04-11 16:03:05 (818 ヒット)

 脳梗塞の総説を書いていて、死んだ細胞から出るマクロファージ活性化分子、いわゆるDAMPsについて最近フォローしていないことに気が付いた。DAMPsについては完全精製したタンパク質ではTLRを活性化できないとか言われて混入物質を疑う先生もいる。七田君が新しいDAMPsとしてペルオキシレドキシンを報告してからすでに6年が過ぎている。論文はこちら。TLR2/4の欠損マウスの実験からTLR2/4を活性化することは間違いないものの、ペルオキシレドキシン(PRX)とTLRの直接の会合は示すことができていなかった。LPSとTLR4の結合ですら生化学的に示すことは難しいので致しかたないことではある。また当時は大腸菌の組み替えタンパク質を使っており菌体成分の混入を危惧する先生もおられた。その後PRXがマクロファージやミクログリアを活性化することは多くの続報が続いていたが分子機構の詳細は不明のままであった。最近発表された論文では「一分子原子間力顕微鏡」という文明の利器を使って実際にPRXがTLRに会合してサイトカイン産生を促すことを証明している。また中和抗体を使って刺激が解除されることも確かめており「大腸菌成分混入説」は否定されている。こちらの報告では脳梗塞だけではなく脳出血でもDAMPsとして働いているらしい。
ということで、七田君は間違っていなかった。我々が他のことに目を向けている間に別の人たちが発展させてくれていた。不精を恥じるものの、実はそうでないと一つの発見はなかなか浸透し発展していかない。いい研究ほどそうなんだろう。ただ、PRXがDAMPsとしてTLRを活性化することはだいぶ証明されてきたと言っていいが分子メカニズムはまだまだわからない。先輩格のHMGB1は3つあるシステインのうち2つがジスフィルド結合をしていてかつ残りの1個がフリーでないとTLRを活性化出来ないという何とも複雑なことになっているらしい。PRXもシステイン残基が酵素活性中心として他の基質に修飾されやすい。DAMPsとしての活性には何らかの修飾が必要なのではないか。最近はホスフォリパーゼ活性も見つかっておりこれもDAMPs活性に関係するのかもしれない。まだまだ目が離せない。岡山大学の西堀先生が秋にDAMPsの国際会議をされるので最近の動向を仕入れてきたい。

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