2019年
4月16日
JSTに「多細胞」というAMED「適応修復」に似た領域が立ち上がり、Prime、さきがけを目指す若手には間口が増えた。制度的には両方出すことに問題はない。
この背景には一細胞RNAseqなどの最先端解析技術の応用が日本では大きく立ち遅れているという危機感があるのではないか。それでも費用的にも設備的にも本格的に一細胞RNA解析、一細胞エピゲノム 解析を行えるところはかなり限られるはず。すでにアメリカや中国には大きく水をあけられているように思う。このままではジリ貧だろう。やはり国がそれ用の施設を設けて研究課題を公募して、よいものを支援すようにすべきではなかろうか。
生命科学は常に新しい技術を取り入れて発展して来た。私の頃の『最先端技術』はtwo-hybrid法などでさほどお金はかからなかったが最近は機械もランニングコストも高額でひとつの仕事を完成するのにかかる金も時間も大幅に伸びた。
なので、ついでに言うと、そろそろ「戦力の逐次投入」という愚策はやめるべきだ。今年科研費は若手に配るために『若手』や『基盤C』の採択率を大幅に引き上げたとみられる。それは諸手を挙げて大いに結構とはいいがたい。限りある資源を浅く広くばらまくだけでは成果の出そうな芽を伸ばすには足りず、育つ見込みのない種にも水をやることになりかねない。直接経費では若手でも年間150万円X2年程度。これでは一細胞解析が4、5サンプル分にしかならない。本当に有望な若手を厳選して年間3000万円X5年、投資すべきだ。昔、思いついたように内閣府が「最先端次世代支援プロジェクト」と銘打って若手と女性支援を行ったことがあった。おそらく3000万円X4年はあったろう。これは有望な若手PIをかなりの数伸ばしたのではないかと思う。しかし継続されなければ効果は薄い。テニュアトラック制度とか卓越研究員とか人材育成なんたらとかPrimeとか「さきがけ」とか細かく分けて小出しにせずに、ひとつにして給与、身分と十分な研究の場と研究費を保証する。このような制度があれば将来に向けて少なくとも5年間じっくり研究に専念でき若手を勇気付ける効果もあるだろう。今こそ思い切った投資をしないともうアメリカ中国に追いつけなくなるのではないか。関心ある方は関連する中野徹先生のご意見『日本の科学研究ー地盤沈下はとめられるのか』『博士に未来はあるか?〜若手研究者が育たない理由』もぜひ読まれると良い。