2019年

11月7日

投稿者 : yoshimura1212 投稿日時: 2019-11-07 21:46:07 (631 ヒット)

水曜日から岡山で開催のDAMPsの国際会議に来ている。DAMPsはDamage/Danger-assocaited molecular patternsの略で、要するに傷害等で組織が破壊された時に細胞成分が分泌され炎症を惹起する原因物質である。一番有名なのはHMGB1という核内タンパク質で、ストレスがかかると細胞質に移動し、未だに分からない機構で細胞外に分泌されてサイトカインのように働くというしろものだ。toll-like receptor2/4(TLR2/TLR4)を介して主にマクロファージや血管内皮細胞を活性化することが知られている。我々も脳梗塞モデルでペルオキシレドキンという分子を新たなDAMPsとして報告した。国際会議では主にHMGB1に関する驚きの報告が相次いだ。HMGB1に対する抗体は脳梗塞のみならず脊髄損傷、てんかん、痛み、アルツハイマーその他さまざまな疾患に効果があることが報告された。特に驚きだったのはHMGB1を神経特異的に欠損させるとなぜか神経が少ないと思われる関節での炎症も抑えるとのことで、そのメカニズムは想像することも困難だ。またHMGB1の一部分を投与すると強い抗腫瘍免疫を誘導するという報告も驚きだった。一方で数億円もかけてHMGB1に結合する中分子(分子量50kDくらい?)を作成したところ抗体で報告されているような疾患に効果がなかったという報告もあった。ほぼ完璧なネガティブデータでそれを公表する勇気には賞賛するが、もともと抗体はHMGB1のクリアランスを促進することで作用するとも考えられていたはず。小さくしたらいいというものではないと思ったのは私だけではないだろう。ともかくもこれまでのDAMPsの意識を転換させられる極めて面白い会議だった(明日もあるのだけれど)。DAMPsは間違いなく存在する。そこは疑う余地はない。しかしその作用機序はまだ不明な点が多いし、ましてやその阻害が及ぼす治療効果もさらなる研究が必要、というのがこの分野には初心者の偽らざる感想だ。
学問的にも勉強になる会議ではあったが、2日目の午後は岡山市では失礼ながら数少ない勝景地の後楽園と岡山城への遠足と会食が用意されていたことは大会長のN先生の気配りが感じられた。岡山城は烏(う)城と呼ばれて遠くからみると漆黒の外観が極めて印象的である。しかし近くまで行くと完全なコンクリ建設でやや(いや実際にはかなり)期待を削がれる。NHKのニュースでは全国的に木造での城の再建が検討されているそうであるが、沖縄の首里城の火災が影響する可能性があるという。それでも宇喜多秀家や小早川秀秋などの秀吉から家康への時代の変遷を語るに欠かせない武将たちが居城とした城である。歴史、大河好きのオヤジには興味が尽きない(城内のゲーム風の肖像は全くもっていただけない)。いい一日を過ごさせていただいた。写真は岡山城と武将姿でご満悦の大会長。

岡山から戻ると持田財団の助成金と学術賞の授賞式。今年は私が推薦した竹田潔先生が学術賞を受賞された。数年おきに必ずNatureを発表されるようなすごい先生である。その師匠は審良静男先生と岸本忠三先生。受賞講演の最後に両先生から受けた薫陶を話された。岸本先生が言っていた『本当に重要な研究をせよ。重箱の隅をつつくような仕事はするな』という言葉は耳が痛い。選考委員長からも「助成金の受領者はよく胸に刻むように」というお言葉があった。師匠と呼ぶべき人を持てるのは幸せなことだと深く感じ入った。

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