2020年
4月22日
4/22 たぶん素人のたわごとはこれが最後。
慶應大学病院では新規の入院患者は全員PCR検査をしているそうで、その結果が公表された。『コロナ感染症以外の治療を目的とした無症状の患者さんのうち5.97%の陽性者(4/67)が確認されました。』NHKでも紹介された。
サンプル数が少ないとはいえ無症状のひとの6%がPCR検査で陽性(現在感染している)ということ。もしそのまま外挿すれば東京都の人口1000万人とすると60万人もが現在感染していることになる。若い先生に教えてもらったのだがニューヨークの妊婦さんのPCR検査では無症状の210名中29名(13%)が陽性だったという報告があるのでありえない話ではないだろう。さらにすでに感染しウイルスが消えて抗体を持っているひとはアメリカの結果を考えるとすごい数字なのではないか(もし抗体陽性者がPCR陽性者の10倍いるとするとすでに60%が抗体を持っていることになる)。10倍はいいすぎだろうが、23日の暫定的な報告ではNY州が14%、NY市は21%だそうなのでそれくらいはいっているかもしれない。これは早期に抗体検査をすべきで、その価値は十分あるように思える。もし集団免疫が(かなり)できているとすると京大の先生のいうように弱いS型がすでに蔓延していたためなのかもしれない。そう考えると重症な人や死亡者が他の国に比べると極端に少ないことは説明がつくのかもしれない。
また、もし集団免疫が近いか、あるいはこれほど無症状が多いなら強力な封鎖はあまり意味がないか、むしろ終息を遅らせる可能性があるのではないだろうか?我々は壮大な無駄を行なっているのかもしれない。
私は『若い人は普通に生活して経済活動を再開しどんどん免疫をつける。65歳以上および基礎疾患のあるひとは厳しく外出を制限したり接触に十分注意する。万一感染して症状が出た人はすぐに隔離しアビガンなど抗ウイルス剤を早期に投与する』でいいような気がする(スウェーデン方式+ハイリスク集団は接触制限)。PCR検査は症状のあるひと、および65歳以上あるいは基礎疾患のあるひとのみでよくて(今までと違って熱が出たり疑わしいのはすぐにやる)、むしろ抗体検査を中心にして高齢者でも免疫が成立したひとは外に出て良いことにする。もちろん医療関係者は一番に抗体検査を行う。
免疫学は専門でも全く疫学を知らない素人の言うことなので暴論かもしれない。ぜひ専門家の西浦先生には机上のパラメーターではなく実測値を使って理論を動かして(シミュレーションを行って)、封鎖の程度や隔離のやりかたによって今後の推移がどうなるかを予測していただきたいものだ(スウェーデンの疫学者は数理モデルで5月中には集団免疫が達成されると言っている)。そもそも実測値なしでどうやって「予測」や「方針決定」ができるのか実験科学者にとってはなかなか理解できないところだ。ただ抗体測定キットは世界中で需要が高く日本ではなかなか手に入らないし、感度と特異性の点で問題が指摘されている。確定診断はHIVのようにウエスタンブロッティングなどが望ましいのだろうが手間暇かかりすぎる。ぜひ国産のいいものを早急に発売、認可してほしいものだ。
厚労省は抗体検査を始めるという。まずは検査キットの性能を確かめるために献血で得られた血液を使うそうだ。患者ではなく健常人の献血試料ということは内心では抗体陽性者がかなりいると思っているのでは?PCRに比べれば随分動きが早いのは何か確信があるのではないかと期待してしまう。
ついでに「抗体があるからと言って再感染がないとはいえない」といって難癖をつける人がいる。WHOもそう言っている。しかしそれは免疫学を知らない人の言うこと。抗体があってもT細胞免疫があっても再感染はします。再感染しても気づかないか軽くて済むということ。ついでに抗体価が低くても再感染によって急速に抗体価が上がる(これをニ次応答と言う)のでそれほど心配することはないと思われる。WHOも感染を経験したほとんどは抗体をもつがごく一部は抗体価が低いと言っているがその人たちが再感染して重症になった、あるいは感染を拡げたという正確な数を公表していない。PCRが陰性になって退院しても再び陽性になって感染させることはまれにあるらしいので抗体価も測って用心するにこしたことはない。熊本の例は発症から6日で退院させており獲得免疫が十分発達していなかった可能性がある。もちろんウイルスに変異が入れば別だが、それはワクチンも同じで「難癖をつける人」はワクチンも否定していることになる。肝炎ウイルスのように慢性感染に移行する可能性もゼロではない。免疫不全のひとは再感染で重症化するリスクはある。しかし100のうち2の例外があるからダメと言う場合もあれば98がうまくいけば理論的に多くの命を救えると言える場合もある。それほど心配なら抗体価の低い人は隔離の方にまわせばよい。WHOの誰かは知らないがこういう100のうち2の例外をあげて有用な98を完全否定する言い方は科学的とは言えない。100%完璧はないができるだけ事実に基づいて科学的、合理的な考え方を心がけたい。
誤解のないように付け加えると、言いたいことは「このままNY並みの強力な封鎖をしても、すでに蔓延した状態ではやはり万人単位で死者が出るのか?」「スウェーデン方式(ただ現在のスウェーデンでは高齢者も隔離はしていないようなのでそこは厳格に隔離すべきだろう)にしたら終息が早まりある程度の死者数はでるとしても結果的にこれくらい」などなど考えられる方策とシナリオを実測値を入れて、専門の西浦先生らが数理シミュレーションを行い、最もいい方法を提示すべきではないか、ということ。極論すれば「封鎖して感染を減らす」のと「一部解放して集団免疫をめざす」のと現時点でどちらが死者が少ないのか、どちらが早く終息するのかくらいは計算できるだろう。自分はどうも理屈で納得できないと行動に移せない性分らしい。1918年のスペイン風邪を例に歴史に学べ(だから即封鎖すべき)というひともいる。しかし当時はウイルスも免疫の仕組みも分かっておらず、PCRも抗体検査も、数理モデルもなかった。抗ウイルス剤もなかった。特に大きな違いはスペイン風邪では若年壮年層に死者が多かった。この100年の科学の進歩を踏まえて議論する方が納得できると思う。
また追記。今日のニュースでは一回2万円くらいするにもかかわらずニューヨークの市民が民間の抗体検査場に行列を作っている様子を写していた。インタビューでは陽性なら安心できると答えていたので意味が正しく理解できているということだろう。採血なので簡易検査ではなくELISA法で正確に測っていると思われる(でないと2万円は高すぎる)。ニュース最後にはやはり100のうち2を心配する医師が出て来て「抗体はいつまで保つのかわからない、まだわからないことが多い」と反対していたのでやっぱりかと笑える。ニュースや記事で両論併記はしかたないにしても知識のない読者には賛否半々と受け取られてもしかたない。ニューヨークの市民のほうがよくサイエンスを理解しているように思える。
抗体もPCRも検査は本当は市民の要望が強い。しかし日本では大量の検査をさばけるとは思えない。池上彰の番組では機器が足りないと言っていた。多くの大学や国立研究機関や企業の研究室は半ば閉鎖されている。そこではかつてPCRもELISAも日常的にやっておりリソースも技術も十分ある。これらを活用しないのはもったいない気がする。航空会社のCAも医療用ガウンの縫製に手を挙げている。志願者だけでいい。今眠っている研究室のリソースを活用してはどうだろうか。PCRの機器が足りないとも言われているが休眠研究室にはすごい数が眠っているはず。せめて科研費(国費)で買った機器は非常時なので拠出させてはどうか。山中先生もそんなことを言っていた。
そんなことを考えていたらタイミングよく大学からPCR要員の志願兵、いやボランティアの募集があった。もちろん精製した試料で感染の恐れはない。早速志願しようと思ったが「精度確認」の実技試験があるという。落ちたら恥ずかしいので迷う。
土曜日のNスペ見ていたが途中でやめた。アナウンンサーが市中で気づかれない感染が広がっているのではないか?病院に運び込まれてから感染が判明する場合があるのではないか(アナウンサーの聞き方も変だが)と専門家会議の先生に聞いていたが先生は「そういう可能性について今後検討していかないといけない」と答えていた。どなたかが「政府は感染がおさまらないのはまるで8割削減ができていない国民のせいのように言っている。これだけの時間があったのに準備しなかったことは全く触れようとしない。」と怒っていたがその通りだろう。ところが26日は東京都の感染者が72人と100名を切りさらに27日は39人まで減ったそうだ。これから連休でこの数字はもっと下がるだろう。都民の血を流す努力が数字に現れたのだ。これを無下に否定していいはずがない。もう東京都が発表する数字をそのまま信じる人はいないと思われるが専門家会議はまさか検査数が少ないからとは言えまい。政府が自粛要請の成果が出たと解釈して緊急事態宣言を引っ込めてくれたらそれはそれで結果的にはよいのかもしれない。
4/30 東京新聞によると新宿区と立川市のクリニックで200人を調査したところ抗体陽性者は一般5%、医療従事者9%だったそうだ。思ったよりも少ない印象。キットの感度の問題か。市販の簡易キットの性能評価がされている。使い物にならないものもあるようだ。やはり感度はPCRよりも低いようだ。ELISA法などのより正確な測定法が望まれる。
神戸市立病院の調査では無症状の外来者のうち3%が抗体陽性だったという。こちらは1000人規模で信頼度が高そうだが血清を使ったということか。精度管理できていない検査は本当は使えないという意見もあるがおおまかなことは言えそうでやはり症状がない感染者(不顕性感染者)がとんでもなく多いのだろう。これまで教えられてきた重症化率や死亡率はずっと低いのかもしれない。この状況で今の対策で本当にいいのか、子供から高齢者まで全員の自粛に意味があるのか?本当はどうすべきなのかなぜか専門家も説明してくれない。
5/4 ドイツ西部ガンゲルトの抗体やPCR検査では15%が陽性。ニューヨーク州並だが死亡率は大幅に低下し0.37%になったという。
5/5 各地の抗体検査のまとめはこちらに詳しい。こちらも。いろいろな視点はあるもののひとつだけ確実なのは症状の出ているひとの何十倍も無症状の(あるはPCR検査してもらえなかった)感染者がいるということ。それを踏まえると100年前のロックダウンと同じことでいいのかという疑問は当然で予想される効果と現実が必ずしも整合性がないと言う意見もある。
実際には予測に使われているモデルが正しいのかどうか誰も検証していないのではないか?専門家会議の世界的権威の先生がよもや最も単純で大昔インフルエンザで使われたSIRモデルを使っているとは思えないが、九州大学の小田垣名誉教授(物理学がご専門らしい)は改良したSIRモデルを使うとPCR検査を増やして感染者を見つけ出して隔離すれば「5割減」でも(つまり強力なロックダウンなしでも)早期に収束するという。詳しい論考はこちら(高校の微分方程式の知識があれば理解可能)。先生は「人と人との接触を避けるのは市民の努力だが効率的な検査と隔離の仕組みを整えるのは政府の責任」と言われている。全くその通りと思われる。Nスペでは緊急事態宣言のために困窮した人々、アルバイトができずに学業を諦めざるをえない大学生が紹介されていた。検査と隔離の仕組みがあれば人々を困窮させるような封鎖は必要ない可能性がある。
小田垣先生の論考では考慮に入っていなそうだが不顕性感染者が増えれば(あるいは集団免疫ができれば)第二波が来たときに大きな防波堤になるのではないか。そういう観点での考察は今の所少ないように思う。