2020年

5月20日

投稿者 : yoshimura1212 投稿日時: 2020-05-20 15:15:14 (1891 ヒット)

雲の隙間から日が差して光線がスジ状に見えることを薄明光線という。関西は緊急事態宣言が解かれ、東京も新型コロナ感染者は一桁になり、いよいよ収束に向かいつつあるのか、という気がする。明るい希望を持てるかもしれない。
東大の児玉先生の抗体調査では東京都の推定感染者数は8万人でPCR検査で確定した5000千人あまりの8倍だという。この記事では重要なことが触れられていた。日本人の感染で軽症な人はひとはIgMよりもIgGの立ち上がりが早いという。通常初感染であればIgMができてそれがIgGにスイッチする。免疫記憶があれば(すでに一度感染していたら)早期にIgGが上がってくる。ということは実は軽症者では免疫記憶が成立していて重症者は初めてコロナに感染した、ということになる。やはり日本人(アジア)の多くはすでに類縁のコロナに感染したことがあって集団免疫に近い状態だったのか。もしそうなら新型コロナに特異的な抗体を検査するよりもむしろコロナに共通のコアタンパク質に対する抗体検査のほうが重要な意味を持つのかもしれない。最近のウイルス抗原に対するT細胞応答を調べた論文でも、新型コロナに未感染者の60%に少なくともヘルパーT細胞応答が見られるという。感染防御に直接働くキラーT細胞でも30%くらいは反応するらしい。新聞報道はこちら。日本人を含めてアジアで死亡者数が少ないのは、すでにかなりの割合で類縁の弱毒のコロナウイルス に感染した経験があって免疫をもっており、そういう人たちは重症化しないという仮説はかなり説得力があるように思える。同じアジア人でもイギリスでは死者が多いのでHLAのような先天的な要因よりも後天的な要因のほうが大きいのではないかという気がする。
Yale大学の岩崎先生(免疫学では著名な方)は論文で日本で感染者も死者も少ない理由として5つの可能性を挙げられている。その中の2番目の可能性として上記の説を取り上げられている。

こういうのは免疫学的には非常に興味深いのだが、私は一番の要因は社会習慣ではないかと思っている。日本人は衛生観念が高く、手洗い、マスク着用を常に行ってきたこと、何よりも大きな痛みを伴う自粛要請に相当素直に従ってきたことが大きかったのではないかと思う。国民の努力と忍耐の賜物であってこれは誇っていいような気がする。
 

でも今後普通の生活に戻るためには集団免疫が成立しているかどうかの検証が欠かせない。なので抗体検査もむしろ交差反応まで重視して感染防御効果のある抗体を検出するべきなのだろう。本当を言えばT細胞応答を調べることはもっと意義があると思うが残念ながら実験室での細胞培養が必要なのでこれを簡便に調べることは現状では難しい。しかし研究レベルでは国ごとにT細胞応答を比較することで重症化しにくいメカニズムを明らかにできるだろう。さらにT細胞応答を指標に新型コロナに交差できる弱毒コロナを見つけることができれば生ワクチンとして使用できる可能性がある。山中先生はファクター-Xと呼ばれているが、最近コロナウイルスOC43というのが候補に挙げられている。感染者数を数えることも大事だが近縁のコロナに対する免疫を持っている人は軽症だろうから分けて考えるべきだろう。 

今年は講義はすべて録画。収録が始まりかなり忙しくなってきた。Zoomの使用には少しずつ慣れて来たが録画はなかなか難しい。途中で電話がかかって来てそれも入ってしまった。編集することは不可能ではないだろうがとてもそんな余裕はない。

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