2020年

6月18日

投稿者 : yoshimura1212 投稿日時: 2020-06-18 09:38:43 (1988 ヒット)

 新型コロナウイルス 感染による重篤な肺炎やサイトカインストームに白血病(B細胞腫瘍)治療に用いられる薬剤ーBTK阻害剤が有効であるとの報告がなされた。論文はこちら。BTKはB細胞の発生や維持に必要なチロシンキナーゼで、これを遺伝的に欠損するとB細胞がいない、すなわち無ガンマグロブリン血症になる。B細胞腫瘍でもBTKは増殖生存に必要なのでBTK阻害剤はB細胞リンパ腫の治療に有効だ。今回これがサイトカインストームに効くことがわかった。といってもB細胞がサイトカインストームを起こしているわけではない。
BTKはマクロファージにおいてToll-like receptorとインフラマゾーム(炎症性サイトカインIL-1βの産生に必要な細胞内マシーン)の活性化に必要なのだ。2015年に伊藤さんと森田君がこれを世界で最初に報告し、この論文でもちゃんと引用してくれていた。日本語はこちら。サイトカインストームではIL-6が話題になるがIL-1βはその上流に位置すると考えられる。我々も整形外科の森君や宮本先生(現熊本大学教授)といっしょに関節リウマチで報告している(ちなみに日本の免疫学会が出しているIF=4~5くらいの雑誌だが152回も引用されている)。なのでインフラマゾームーIL1βを抑制するBTK阻害剤はサイトカインストームの根元を断ち切れる可能性がある。わかりやすい模式図(論文のFig.1)はこちら。我々基礎研究をやっているものが患者さんの治療に使える薬や治療法を直接的に開発することは難しい。しかし基礎研究を通じて自分たちの発見がたとえ小さくても「人類の知恵」のひとつに加わって、かつ結果的に人の役に立つことがあれば本当に研究者冥利につきる。私に残された時間は少ないがそんな研究をひとつでも増やせたらいい。

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