2020年

8月6日

投稿者 : yoshimura1212 投稿日時: 2020-08-06 18:43:18 (5013 ヒット)

 ある意味衝撃的なレポートがイギリスから出ていた。Pre-existing and de novo humoral immunity to SARS-CoV-2 in humans (新型コロナウイルス に対する既に存在していた、および初回の抗体応答)と題する論文で査読前のBioRxivに7/23に出されたものだ。2018年から2020年始めのまだ新型コロナが蔓延する前(つまり感染していない人)の血液を調べたところ、6%くらいに新型コロナのタンパク質、特にスパイク(ウイルスが細胞内に侵入するのに必要なウイルスの突起)のS2部分に反応する抗体を検出したと言う。スパイクはS1とS2二つのサブユニットからなり、S1よりもS2のほうが一般的な風邪コロナウイルスと似ている。特に無症状が多いことがよく知られている子供と青年にこのような抗体がよくみられ(6歳から16歳以下だとなんと60%以上。17歳以上は数%)、その抗体は試験管内での新型コロナの感染を抑制したのだそうだ。つまり子供や若者が重症化しないのはすでに持っている類縁コロナに対する抗体のせいなのかもしれないというわけ(だろう。全くもって読むのが困難な論文なのだ。感染者と非感染者、ウイルスの抗原など様々な項目が錯綜している。ただたぶん言いたいのはこういうことだろう)。

さらにこの見解を支持する2つの論文が相次いでScienceとNatureに出された。抗体産生と深く関係するヘルパーT細胞を解析したものだ。Scienceのほうは以前交差免疫を言い出したCellに出したグループからで、ヘルパーT細胞応答をスパイクとそれ以外の抗原にさらに細かく調べたもの。Natureのほうはスパイクタンパク質に特化して、いずれも新型コロナと類縁の風邪コロナの抗原ペプチドに対する応答を調べたものだ。これらも難しい論文で正確に全部を理解できたわけではないが、やはり非感染者は特にS2に応答するヘルパーT細胞を高率で持っている。さらに詳しく調べるとそれらのT細胞の一部にはすでに蔓延している風邪コロナの「対応する部位」に確実に反応するものがあることが示された。つまり類縁風邪コロナとの交差免疫応答が確実に証明された。実際にScienceの論文で使われた非感染者の血清のほとんどで風邪コロナに反応する抗体が検出されたと言う(図S1B)。またNatureでは重症者はこのようなスパイクに応答するT細胞を検出できなかったと記されている(ExtDataFig.3.)。もちろんこれらの風邪コロナに応答するT細胞が新型コロナに対して本当に保護作用があるのかどうかは、このようなT細胞を持つ人と持たない人を実際に感染させてみないとわからない(倫理的に不可能だろう)。だが、特に子供や青年は類縁の風邪コロナに対してT細胞やB細胞の記憶、あるいは抗体を持つので症状が軽いのではないか、と言う仮説はさらに大きな説得力を持つことになった。

しかし、イギリスの報告では17-36歳の抗体保有者は数%なので若者が軽症なことを説明できていないような気がする。さらにNatureはドイツ、Scienceはアメリカからの報告だ。依然としてアジアで死亡率が低い理由にはならないのではないか。まだ解かれていない謎は残っているように思う。

極端な言い方だが、もし類縁の風邪コロナに対する抗体が軽症になる原因ならば、抗体陽性のひとは新型を恐れる必要はなくなり遠慮なく経済活動に参加し、抗体のない人は生ワクチンとして風邪コロナを接種すればよいことになる(安全性は保証できないのでアイデアとして)。

ロックダウンや休校を行わなかったスウェーデンでは7月17日に「抗体獲得率は20%未満でもT細胞免疫は40%近くに上り、ほぼ集団免疫が獲得された」と発表したそうだ。T細胞免疫が何を意味するのか、実際の細かいデータは探しても見つからなかったが(これか?)、やはり経済を維持しながら早期の収束を目指すならスウェーデン式が最も現実的な方法のように思える。スウェーデンの対策と結果の詳細はこちらの報告に詳しい
マスコミは「スウェーデンは失敗」とネガティブに捉えたいらしい。しかし感染者数と死亡者数の推移を見ると、規制を緩めると感染者が増える他の国(例えば日本やアメリカ)と比べると、方針に一貫性があり、感染者も死亡も減り続け、第二波第三波に対しても安心感があると言う意味でも成功していると言えるだろう。今朝も報道番組で「スウェーデンのやり方は失敗」と根拠も示さず否定する偉そうな評論家がいたが自分の目でデータを見ない人なのだろう。

今日は東京は462人陽性だという。PCRは数コピーのウイルスを検出してしまう。陽性者は感染者なのか?自然免疫ですぐに排除されるようなら感染とは言う必要はないかもしれない。最近抗体検査のことはさっぱり触れられなくなった。やはり抗体陽性率は低く感染しても抗体陽性にならない場合が多いのだろう。それだけ今回のウイルスは自然免疫か交差免疫で早期に排除されているということなのかもしれない。その場合は獲得免疫は得られず再度感染する可能性も否定できないが、訓練免疫説や交差免疫説が正しいならば再感染しにくくなる可能性は十分ある。自称専門家としてはRNAのコピー数や陰性化のスピードのデータも欲しい。
 
交差免疫説を支持する首都圏の抗体検査の結果がニュースになっていた。東京理科大学の村上先生らは抗体検査で感度をあげるとほぼすべての検体で抗体の反応があったという。なので首都圏ではほとんどのひとがすでにコロナか類縁コロナに感染していて免疫ができているとしている。よって高齢者やリスクの高い人たちに重点を置いた方策をとるべきだろうと言われている。もちろん感度を上げすぎると偽陽性が出るので注意しないといけないが。年齢別の陽性率も出していただけるとありがたいが。

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