2020年

9月27日

投稿者 : yoshimura1212 投稿日時: 2020-09-27 16:00:39 (2035 ヒット)

 自分の出身の高校は地方で純朴を絵にかいたような学校だった。卒業したのはもう40年以上前のことだ。本を読むか、勉強することしかなかったこれも極めて特色に乏しい3年間だった。こんなことを考えたのは母校の100周年記念式典での講演を頼まれたからだ。高校生相手に講演などしたことがない。こういう時は高校時代の涙ぐましい、もしくは感動のエピソードを紹介するとか、スティーブ・ジョブスのスピーチのような心に残る人生訓を話すかすべきなのだろう。しかし生来人様に訓示を垂れるような人格もないし感涙を誘う成功物語もない。散々考えた挙句、やはりここは専門の免疫学の講義を、今皆関心があるに違いないコロナにひっかけて話すしかないと結論した。特に山中先生の「ファクターX」の有力候補の免疫交差説を説明しようとすると、抗体や獲得免疫など免疫の基礎もやや詳しく解説できるだろう。抗体の話では利根川先生の遺伝子再構成にも触れることができる。ただそれだけでは文系には受けないかもしれない。そこで抗体や血清療法の話を引き出すのに野口英世と北里柴三郎の話も盛り込んだ。彼らには興味深いエピソードに事欠かない。どちらも留学しており高校生に「世界を目指す」お手本としては最適だ。
でも明治の偉人の話では身近に感じられないかもしれない。それに自分の話も少し入れないと「先輩」としての面目が立たないかと思って自分の留学時代の話も10分ほど入れる。そうなると「てんこ盛り」となるが練習を重ねて60分に収まるようにした。zoomの講義録画もだいぶ慣れてきた頃だ。何度かzoomで録画して練習を行う。最後にスタッフの高校1年のお子さんに録画を見てもらい「面白かった」「よくわかった」との言質を得て自信を得て講演会に臨んだ。

当日、PCの動作確認を行うがなんと音声が出ない。前日ちゃんと動くことを確認したのだが。かなり慌てたがしかし音声は「免疫劇場」のみでマイクでPCの音を拾うことでうまく切り抜けられそうだった。体育館で結構明るくスライドはかなり薄いが、今更しかたない。講演が始まると流石に600名の生徒らの視線というか圧力は強烈だ。いつになく舞い上がってしまった。言おうと思っていたことをかなり言い忘れた。例えば「大学が門を閉じているのは大学の偉い人たちの事なかれ主義」と批判したところで、「佐賀県は死亡者ゼロであり、高校ももかなり正常に動いている。これは先生や県の人たちの風評被害に負けない英断も大きいはず。」と賞賛するのを忘れた。 生徒さんらの顔を見て何度も言い直したりしたせいか時間もオーバーしそうになった。これはいかん、と焦り最後に「質問などあればメールして欲しい」と言うべきことも忘れてしまった。結局予定より10分もオーバーしたのではないかと思う。
話すのに手一杯でなかなか生徒のほうを見れなかったが、生徒の表情からは解ったのか、面白かったのか、つまらなかったのか全く読み取れなかった。今でも「真面目」「純朴」な生徒が多いそうなのでつまらなくても顔にも出さないのかもしれない。ひとりでも興味を持ってくれたらそれでよしとしよう。それにしても自分にとってはスリリングな体験だった。 
若い人たちに犠牲と閉塞を強いる今の状況。もし北里がいたら「オレが責任をとるから若いものはどんどん仕事せい」と言ったのではないかと思う。もっとも当時は死を覚悟して研究するのが普通だったようだが。肝が座っていると言うべきだろう。北里と一緒に香港にペストの調査に向かった東大教授の青山は感染して生死の境を彷徨っている。野口はアフリカで感染して客死したが、黄熱病ウイルス説を唱えて後にノーベル賞を受賞したマックス・サイラーは感染したが生還している。やはり運も重要なのだろう。

「大学オンライン授業はもう限界、学生の怒りと絶望と落胆の声123件」という記事があった。そもそも自分が感染しても軽症か無症状で重症化することがほとんどない大学生に多額の授業料を払わせておいて「大学に来るな」と言える根拠はどこにあるのだろうか?年金と同じとは言えないが未来を担う若者が老人の犠牲になってよいのか?大学生も署名活動を始めたという。大阪市立大のように全員抗原検査を行うとか京都産業大学のように学内に検査センターをつくるなどやろうと思えば可能な対策はいくらでもあるだろう。やらないのは大学側の怠慢や「ことなかれ主義」と言われてもしかたない。米国では大学を再開したことで感染者は増えたが最近は死者数は増えるどころか低下している。若者は重症化しにくいので当然か。もしオンライン授業を続けるなら「講義や部活を再開すると重症者が増える」というきちんとした根拠を示すべきだろう。

トランプ大統領がコロナに感染したという。これって本当なんだろうか(報道からは本当らしい)? 感染から早期に回復したところ示して「オレはコロナなんかに負けない強い男!」「コロナはただの風邪」をアピールして支持急拡大を狙う腹ではないか。そういう戦略をとっても全く驚かないが。
 

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