2021年

6月8日

投稿者 : yoshimura1212 投稿日時: 2021-06-08 08:36:32 (2734 ヒット)

 今日(アメリカでは6月7日か)は認知症研究にとって歴史に残る日になることだろう。バイオジェンとエーザイがFDAに申請していたアデュカヌマブが承認されたのだ。アデュカヌマブ(もちょっと言いやすい命名はなかったんか?ニュースでアナウンサーも舌をかみそうだった)はアルツハイマー病の原因とも言われるアミロイドβ(Aβ)に対する抗体で、神経疾患に対する生物製剤は初めてではないか(自己免疫性の脳脊髄炎などは除いて)(勉強不足だったが、片頭痛に対するCGRP抗体、ガルカネズマブがすでに販売されている)?その作用機序は、簡単には抗体がAβにくっついてミクログリアなどの脳内免疫細胞によって除去されるということ。がんに続いて免疫が神経疾患を治療する時代がやってくるのではないか?何年も前からそう宣伝している自分としては大いに意を強くした。しかし実はまだまだわからないことは多い。

ちょうど今上原財団の脳ー抹消連関のシンポジウムが行われている。昨日のイスラエルから非常に興味深い発表があった。このグループは以前がんの治療に使われるPD-1抗体(チェックポイント阻害剤として使われている)がAβの蓄積を止め神経症状を改善することを報告していた。今回は同じくがん治療で使われている抗PD-L1抗体を使ったもで、主なAβ除去細胞はもともと脳に存在するミクログリアよりも外から入っていくるマクロファージなのではないかという話。しかもマクロファージは七田君がみつけた死細胞などの除去受容体MSR1を高発現している。しかし抗PD-L1抗体が活性化させるのはT細胞なので、なんで抗PD-L1抗体がM2型と呼ばれるAβ除去に関わるマクロファージを増やすのはよくわかっていない。まだまだ研究しないといけないことは多いがアディカヌマブの承認はこの分野の研究を強く活性化するだろう。
ちょうど昨日脳内免疫に関する某科研費のヒアリングがあった。このニュースが1日早かったらもっと意義を強調できただろうに。そんなことよりエーザイの株を買っておくべきだったか。。

今朝のハーバード大学からの報告はさらに面白く、母体(マウス)にpolyI:Cを注射して(母親が妊娠時にウイルス感染した時の状態を模倣している)作成する自閉症モデルにLPSで発熱させると自閉症の症状が良くなり社会性が回復するのだという。この場合、仕組みはよくわからないがIL-17aが重要だそうだ。もともとなぜこういう話になったかというと自閉症の子供を持つ親は、子供が熱を出すと一時的に症状が緩和することを経験していたからだそうだ。うーんこれも奥が深い話だ。IL-17aがどこから来るのかは不明だそうだが、今コロナのワクチンを打っている若い人たちは発熱しやすいのでぜひ自閉症の症状がどうなるかみて欲しいものだ。昔ワクチンで自閉症が起きるという完全に捏造の研究があって大いに物議をかもしたが、逆にワクチンで良くなるとなればワクチン忌諱派も減るかもしれない。

なお妊娠中のインフルエンザワクチン接種では自閉症が増えることはない。しかしmRNAワクチンやアデノウイルスワクチンでの大規模な調査はこれからだろうから、念のために妊婦は出産してから打ったほうがいいのではないかと思う。

上原シンポジウムのトリでの講演。英語は久しぶりでしどろもどろでグタグタになってしまった。歳のせいもあるだろう。自分が真っ先にアデュカヌマブを打つ必要があるだろう。

イギリスではワクチン2回接種が50%を超えたというのに感染者が増加傾向にある。この記事ではインド株のせいにしているが、ワクチンはインド株にも効果があることが報告されている。よって感染している(少なくとも入院している)人はワクチンを打っていない人と思われる。なぜそこのところをしっかり調べて報道しないのだろう?ワクチン打っても無駄のような結論にしたいのかもしれないが、状況は全く逆で、ワクチン打った人々は安心して外に出るので打たなかった人が感染の機会が増えているだけかもしれない。すでに半数以上2回接種していると言われるイスラエルではほぼゼロを維持していることからも ワクチンを打った人が感染しているとは考えにくい。悪意を持った、あるいはあまり深く考えていない記者の書くことだろう。本来は死者は減り続けていることに注目すべきで、ワクチンの目的は感染しても重症化せずにウイルスを広げないことで、決してかからないことではない。PCRのような高感度の方法を使えばワクチン打っても陽性は出る。ワクチンが行き渡っらもう若い人のPCRは必要ないと思う。

党首討論が気になっていた。菅総理はオリンピックで感染者が増えたら腹を切る(辞職する)とまで言い切るかと思っていたが、さすがにそこまで肝は座っていなかったか(それくらい見栄を切っても良かったと思うが)。しかし11月までに希望者全員にワクチンを接種すると言い切ったそうだ。そこは不退転の決意なのだろう。約束通り1日100万人も達成した(盛りすぎ発言だったらしいが)。ぜひそうなって欲しいものだ。すべての人々が科学的判断ができるわけではないので、自由に外出できるがワクチンを打ちたくないという人は一定数いるだろう。海外と同様にそのような人は結果的には感染して免疫をつけることになるだろうが現状ではそれぞれの判断に委ねるしかない。11月でイスラエルなどのように収束すると期待したい。
慶應義塾大学は6/21より大学を挙げてワクチン接種を進めるという。伊藤新塾長の宣言が誠に頼もしく、希望にあるれるものだった。「キャンパスライフを奪還しよう!」という。1日1000人、合計5万人の接種をめざすそうだ。自分のためだけでなくキャンパスライフを確立するため、そして日本からコロナをなくすために是非ワクチンを接種しようと呼びかけられている。涙が出るほど感動した。秋にはいや夏休みからでも授業やサークル活動が再開される。ようやく日常が戻ってくることを学生さんらと共に喜びたい。ただもちろん「浮かれてばか騒ぎなどはしないように、国民全体にワクチンが行き渡り社会全体として安心感が得られるまでは慎んだ日々を送るように」と釘をさすことを忘れていない。それでもともかくも希望の灯火を掲げることが重要なのだと思う。

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