2021年

10月17日

投稿者 : yoshimura1212 投稿日時: 2021-10-17 08:42:33 (1280 ヒット)

 10/17 本当の専門の話。Rasの抑制因子SPREDファミリーは2001年に大学院生だった脇岡君がクローニングした。以来細々と研究を続けてきたが、2007年にSPRED1がヒト神経線維腫症1型に似た疾患(Legius症候群)の原因遺伝子であることがわかり2012年にNF1との結合が報告されて分子機構の解明も進んだ。このような流れでRas病の概念が形成されていった。しかし注目を集めるのはヒト疾患との関連が明らかなSPRED1のみでSPRED2の理解は進んでいなかった。SPRED2もSPRED1と同様にNF1に結合しRasを抑制することは明らかだったが、がんでの変異は多数見つかっているもののヒト遺伝性疾患との関係は報告されていなった。SPRED2はSPRED1よりも発現が広範囲なので私はSPRED2の変異は致死性かもしれないと疑っていたが、ついにヒトでの変異が3つの家系で発見された。Legius症候群と違って心疾患を特徴とするNoonan症候群に近いという。またLegius症候群はSPRED1のヘテロ変異(優性遺伝)に対してSPRED2はホモ変異(劣性遺伝)だ。症状の違いはSPRED1/2の発現部位の違いを反映しているのだろう。それでも全てを説明できるわけではない。ヒト胎児期の発生にも関わる問題のようでなかなか難しい。SPREDをはじめ多くのRas経路の(後天的)変異はガン化に直結している。一方でRas病の話は先天性の変異であり、おそらく胎児期の発生の過程でのRasの過剰活性化によってもたらされるものだ。原因がわかればMAPK阻害剤を投与するなどの方法はあるかもしれないが発生過程なので時期が難しい。我々のSPRED欠損マウスはよいモデル系を提供してくれるに違いない。

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