講義の準備をしていたら「アトピー性皮膚炎の治療に抗IL-31モノクローナル抗体(nemolizumab)の第二相試験で有効性が示された」という報告に目がとまった。3月に発表されたNew England Journal of Medicineに掲載された論文で京大の椛島先生が中心になっている。この抗体は中外製薬が開発したもの。実は当時ニュースで見た時はIL-13の間違いだろうくらいにしか考えていなかった自分の不明を恥じる。調べてみるとIL-31もTh2型ヘルパーT細胞から分泌されて特に「かゆみ」との関係が深いのだそうだ。しかもオンコスタチンM(OSM)受容体を使っていて私には因縁がある(まあマウスOSMを最初にクローニングしたというだけですが。そんな些細なことで威張ってどうする!)。教科書的にはTh2からのサイトカインはIL-4,IL-5,IL-13と決まっておりこれまでIL-31はあまり知られておらず私も講義では取り上げていなかった。それが臨床研究から一躍脚光を浴びるとは。今やあらゆるサイトカインや細胞表面分子に対する抗体が試されている時代。むしろ「臨床研究から基礎研究へ」という流れなのかもしれない。
なおオンコスタチンMは最近炎症性腸疾患でも注目されている。
ついでながら「ともかくサイトカインを止めればいい」という発想ならやっぱりJAK阻害剤が効くはず。ファイザーのJAK阻害剤Tofacitinibはリウマチで認可されているが我々はIL-4もIL-13も抑えるので「アトピー性皮膚炎にも効くはず」と言ってきた。日本イーライリリーがBaricitinib(JAK1/2阻害剤)(同じくリウマチでは認可)が第二相試験を始めているそうでサイトカイン屋としては注目したい。
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