TGFβの免疫抑制作用はよく知られている。しかし低分子TGFβ阻害剤は確か開発が途中で止まったと聞いてる。がん細胞ではTGFシグナルは増殖を抑制するのでTGFβ阻害はがんの成長を促進させる可能性がある。今日のジャーナルクラブでは、TGFβシグナルが入らなくなった腫瘍モデルを使ってリンパ球でTGFβのシグナルを止めると転移を抑制できること、PD-L1抗体との併用で著しく腫瘍を縮小できることを示した論文が紹介された。以前から概念的には知られていることだったがクリアな系でクリアに証明したところがすごいんだろう。当然TGFβ阻害剤と抗PDL1抗体との併用は期待できそうな気がする。その上をいく発想がPD-L1の抑制抗体とTGFβ受容体(TGFβのトラップ)を一体化したバイオ製剤M7824で当然マウスではすごい効果が報告されている。CTLA4版もある。SOCSは第三のチェックポイント分子だと言ってきたが、TGFβは第四のチェックポイントか。うちではSmad2/3の欠損マウスを使っていろいろな研究を行ってきたが最近すっかり忘れていた。もう一度マウスを起して腫瘍免疫の観点で実験してみるか。。いやもう遅いだろうな。
どうでもよいことだが、昨晩夜中に一人で仕事をしていると人の気配がする。皆帰ったあとで実験室は閉まっているはず。廊下に出てみると講師のT君がいる。どうしたんだと聞くと奥さんと喧嘩して追い出されたのだそうだ。酒を出して慰めているとまた廊下を「ぱたぱた」とスリッパで歩くようなかすかな音がした。もう10時をまわっている。誰か来たのだろうと調べるが誰もいない。背筋に寒気が走ったが、T君いわく夜中遅くまでいるとよくこんなことがあるのだそうだ。そういえばこの東校舎は地下に病理解剖の部屋がある。一度夜通しカメラを回したらテレビ局が買ってくれるような映像が撮れるかもしれない。T君はたたみかけて「1階はもっとすごくてトイレの入り口のドアがよくひとりでに閉まりますよ」とか言う。いやトイレのドアは普通自動的に閉まると思うけど。。。
あとで聞くとT君は別に奥さんと喧嘩したわけでも追い出されたわけでもなく、酒も自分のものなのだそうだ。トイレも入り口ではなく内部の使用する個室のドアのことだという。まあ飲むと記憶がなくなるので仕方がない。
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