異能の研究者:浪速大学仲野徹先生登場

投稿日時 2018-09-19 18:17:35 | カテゴリ: TOP

 仲野徹教授は私が最も尊敬する(羨望する?)研究者のひとりである。あるいは文化人、評論家と言ったほうがよいのかもしれない。研究の著書も多いが、数多くの一般向け著書やテレビ出演もある。Twitterも評判らしい。今日も(そこまで言わんでもええやんやないかと思われるほど)散々自分の著作の宣伝をされていかれた。「お笑い系研究者」を自認されているように話は面白かったが、関東の学生には時代的、文化圏的にやや難しかったところもあったように思われる。
私にとって極めて面白かったのは先生らがクローニングしたPGC7という遺伝子の話。この遺伝子は仲野先生が2002年4月に最初に小さい雑誌に報告されている。ところが商売敵で後輩の斎藤通紀先生が同じ遺伝子を少し遅れて"Stella"という名前でNatureに発表。最早PGC7の名はほぼ消滅。「PGC7ていうのが先に出ているのを知っててよくも断りも(引用も)なく名前を変えやがったな」というわけだ。相当悔しかったのだろう、斎藤先生を極悪人呼ばわりしていたのだが、そこから奮起してStella/PGC7の機能「受精卵において母親由来のDNAのH3K9me2にくっついて脱メチル化を阻害する」を解明してNatureに発表してリベンジを果たされたところはすごい。この論文は「なぜ父親由来のDNAと母親由来のDNAの脱メチル化の速さに差があるのか?」という疑問を解決した本当にすごい論文だと思う。これ以外の論文ではご自身でもStellaを使っているのだが、このNature論文ではタイトルはPGC7になっている。そこに仲野先生の雪辱の思いがこもっているように思える。
学生向けに人生論や研究への取り組み方も話されたのだが、「自分の好きなように生きたらええ」というのが結論なのでどうにも迫力が足りない。いっそ文楽の話でもしていただいたほうがよかったかもしれない。私も文楽好きだが到底評論できるようなレベルではない。仲野先生は自分でも浄瑠璃をされ、国立文楽劇場に寄稿するほどの専門家なのである。この寄稿を読んで「夏祭浪速鑑」を観に行ったほどだ。ただ「長町裏の段」の解説に一箇所誤植がある。まあ、ケチをつけたいわけではなくその程度は自分でもわかると自慢したいだけなんだが。






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