インフルエンザ新薬

投稿日時 2019-01-26 20:47:54 | カテゴリ: TOP

 インフルエンザが猛威を振るっている。1月第三週の推定患者数は207万人で2009年以降最多だそうだ。一方で今年は強力な新薬が登場している。ゾフルーザである。今週の「カンブリア」には満を持してシオノギ製薬社長が登場。「手代木」さんという方だ。「てしろぎ」と読むらしい。うちの研究員もインフルエンザにかかって処方されたら翌日にはすっかり熱も下がったそうだ。聞かれもしないのに「こんなにインフルエンザが流行って儲かってしょうがないんじゃないですか?と言われるが流行らないにこしたことはない」と先手を打っていた。ずいぶん気が回る人だ。
5年ほど前にまでは細菌学とウイルス学を教えていたのでインフルエンザの化学療法は当然とりあげていた。ゾフルーザは広くいうとRNAポリメラーゼ阻害剤ではあるが作用は「宿主mRNAのCAP構造をもつ部分を切断してウイルスRNAの合成に供給するRNA切断酵素」を阻害するもの。恥ずかしながら「富山化学」が開発したRNAポリメラーゼ阻害薬「アビカン」に似たものとばかり思っていた。アビカン(T-705)は10年くらい前にすでに知れ渡っていたので
おそらく開発はこちらが先だろう。不運だったのはアビカンは催奇性の危険があるということで条件付き承認になったこと。シオノギにとっては幸運だったのかもしれないが、手代木氏がすごいのは社長になって当時特許切れなどで会社が売れる薬が少なくなっていたのに「製薬会社は薬を開発するのが使命」という原点に立ち返って果敢に新薬の開発に打って出たこと。新薬の開発には10年以上の歳月と1500−1700億円の費用がかかるのだそうだ。買収ばかりしている何処かの企業とは覚悟が違う。その信念があってこそゾフルーザをはじめとする複数の新薬を上市できたのだ。「自分の考えにもとずかないといけない。振りまわされると難しい」と言われる。やっぱり何かを達成した人は言うことが違うと感心する。

RNAウイルスは変異しやすい。ゾフルーザも耐性株が出てくると考えられる。ロッシュと提携するそうなので作用点の違うタミフルと併用で耐性株が出現する前に抑え込むことも考えているのかもしれない。下手の考え休むに似たり。すでに記事になっていた

私はなぜインフルエンザウイルスの原液を飲んだのか?自分の体を使ってワクチン開発をやっていたとかカッコいい話ではない。私が大学院生のころはピペットエイドみたいな便利な機器はなく、ピペットはゴム球のようなもので吸い上げていた。つけたりはずしたり面倒臭いことこの上ないし正確に止めることが難しい。私は当時から実験に関しては自ら恃むところすこぶる厚く『私失敗しないので』とうそぶいて(ホンマか?)口で吸っていたのだ。案の定何かのはずみで吸いすぎて卵50個分くらいの
濃厚な生ウイルス液を全部口に入れてしまった(インフルエンザウイルスは鶏卵で増やす)。もちろん使っていたのはA型ワクチン株だし気道に入った訳ではないから特に症状は出なかった。意外と最も効果的なワクチン接種方法だったのかもしれない。以来B型に感染することはあってもA型インフルエンザには罹患したことがない。35年以上前の話である。






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