次は神経免疫の時代か?

投稿日時 2019-11-10 00:48:04 | カテゴリ: TOP

今日は慶應内の脳神経系の研究室が集まる研究会で講演を行なった。多発性硬化症の愛媛大越知先生、神経修復で著名な大阪大学の山下教授もいっしょだった。
日本人の死因の第一位は悪性腫瘍(がん)。2018年がん免疫療法でノーベル賞を受賞した本庶先生は「21世紀中に人類はがんを克服しひとはがんで死ななくなる」と述べている。免疫(ワクチンや血清療法)が感染症による死を激減させたように腫瘍免疫はがんによる死をいずれなくせるのかもしれない。ではがんでなければひとは何で死ぬのか。第2位は心疾患、第3位は老衰、第4位が脳卒中などの脳血管障害である。また寝たきりになる原因の第1位と第2位は認知症と脳血管疾患で、超高齢化社会を迎えて脳の病気の克服は急務である。免疫が克服すべき疾患は「がん」の次は「脳神経疾患」ではないだろうか。折しもバイオジェン、エーザイのアルツハイマー治療抗体アデュカヌマブが逆転申請となった。9月に「臨床試験を継続しても有効性が証明される可能性が低い」ということで中止が発表されたばかり。それがつい先日一転承認申請を行うことになったという。何が起きたのか?どうも高投与量群の患者データを追加したら有意差が出たらしい。これで直ちに認知症が克服できるわけではないだろうが、抗体を使ってアミロイドβのクリアランスを行えば治る可能性が示された意義は大きい。抗体の作用機序や発症、改善効果のメカニズムの解明が一気に加速するのではないか。同様にパーキンソン病やALSなど神経を変成させる有害物質の沈着で起きる脳の疾患は多い。同じく免疫系を介した治療が可能だろうという期待も出てきておかしくない。しかし実際にはT細胞の関与や寄与するミクログリアのサブセットなど解っていないことはものすごく多い。ちなみにアミロイドβの主要な受容体のひとつは七田君がDAMPs受容体として同定したtypeAスカベンジャー受容体である。ちょうどPD1抗体がヒトのがんに効くことが実証されてから腫瘍免疫の研究がものすごく盛んになった時に似ているような気がする。腫瘍免疫の国際会議に行くとアメリカや中国に今さら追い付けないような気がするが、神経免疫ならまだチャンスはあるのではないかと思う。国は機を逸することなく集中的に研究費を投入しては、と私ごときが言っても方針はなにも変わらないだろうけど。






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