コロナ感染のファクターY;子供が軽症なわけ

投稿日時 2020-12-17 13:30:23 | カテゴリ: TOP

 日本を含む東アジア地域の感染率は欧米に比べると一桁以上低いので日本(東アジア)はコロナから守られている、という考えがあって、山中先生はこれをファクターXと名付けた。いろいろな研究者がファクターXの正体を探ろうとし、免疫交差説やBCG説、何らかの遺伝子の違いなど様々な角度から研究された。しかし昨今の日本の流行をみると結局ファクターXは「マスクと手洗い」など行動の差であって遺伝子や免疫の問題ではないのではないか、という疑いを抱かせる。岩田先生は「ファクターXは幻想」とまで言われている。
一方確実に守られている人たちがいる。それは子供や若者で世界的に20歳以下の感染者は概ね軽症か無症状だ。その理由はまだはっきりしない。それで子供や若者をコロナから守っている因子をファクターYと呼ぶことにしよう(と言っているのは私だけ)。仮説はいくつかある。今週号のNatureにニュースが出ているが複雑で結局何がいいたいのかわからない。「生物はそれほど単純ではない」という身も蓋もない言葉で結ばれている。そこを私なりに簡単に分類すると
(1)自然免疫説:子供はしょっちゅう風邪をひいている。あるいはいろいろなワクチンを打って間もない。そのため自然免疫が強化されている。
(2)交差免疫説:その風邪のかなりの部分は風邪コロナなので交差免疫が強く発動する。
(3)子供はコロナの受容体ACE2の発現レベルが低い。
(4) (1)とは逆に免疫系が未発達なので(多分)サイトカインストームを起こしにくい。

まだ決め手はないが、私は商売柄(2)を押している。が、(4)も魅力的かもしれない。子供と同じく確実にコロナから守られている動物がいるからだ。それはコウモリである。コウモリはコロナウイルスほか多くのウイルスに感染しても無症状でリザーバー(ウイルスの排出源)になっている。インフラマゾームが専門の原英樹准教授が教えてくれた。コウモリに症状がない理由のひとつはIL-1βを産生する機構が遺伝的に欠落しているからだそうだ。IL-1βは主にマクロファージが産生する自然免疫系のサイトカインでサイトカインストームでも主要な役割をしている。IL-1βが作られなければサイトカインストームは起きず一見無症状の状態が維持されるだろう(感染が身体中に広がらないのか不思議だが。。サイトカインストームが起きないとウイルスと獲得免疫の攻防が平衡状態に達し不顕性になるのか)。コウモリではIL-1β産生に必要なインフラマゾームの部品であるNLRP3AIM2やcaspase-1の遺伝子に変異があるらしい。他にもインターフェロン産生にかかわるSTINGにも機能低下変異があるらしい。


IL-1βが軽症の鍵なのか?IL-1βを産生しやすい痛風持ちは重症化しやすいと言う。では子供ではIL-1βは低いのか?インフラマゾームが未発達なのか?もしそうならどうしてか?調べる価値はあるのではないか(論文をみても結果か原因かよくわからない)。また今使えるインフラマゾームの効果的な阻害剤はBTK阻害剤以外知られていない(と思う)。BTK阻害剤は重症での効果が報告されているが、早期に使えば症状を抑えられるかもしれない。でもそうするとウイルスを排出し続ける無症状のひとを増やしてかえってやっかいか?痛風で使われるコルヒチンは臨床治験が始められているそうだがインフラマゾームを抑える効果は小さいそうだ。

コロナの変異種が出現して感染力が7割り増しとか。ロックダウンすればウイルスも生き延びるために感染力が高い方が残るだろう。一般的に感染力が上れば毒性は下がる。新型コロナもいつかは季節性の風邪になると言われているがその過程のひとつなのでは。

日本では感染者数、死者数共に欧米より一桁低いのになぜ医療崩壊と言われているのか?この記事の指摘はもっともなことで抜本的な制度変更が必要だろう。こちらも似たような意見。2類相当を見直すとずいぶん前に言われていたのにどうなったのだろうか

 日本がワクチンでは大きく出遅れたのはなぜか?ワクチンだけでなくコロナ関連の論文はアメリカや中国、欧米よりはるかに少なく世界16位だという。実はコロナ関連だけでなく多くの科学分野で日本の存在感が薄れているNHKの番組ではこれを広く捉えて「”科学立国”再生の道」と題して特集番組を組んでいた。一番の問題は若い人が科学分野に残らないこと。なので様々な若手支援のプログラムを組んでいるという。それはもちろん大いに結構なことなのだが、それだけなのだろうか。何かずれていないだろうか。そもそも強い意思をもって研究したいという若者がほとんどいないのに誰に支援するのだろうか?地方どころか都会でも助教を募集してもなかなかいい人が集まらないという現実がある。老害と一蹴されるだろうが、それでも言わせてもらうと自分が若い頃はもっとポストはなく研究費も絶望的に少なかった。しかしお金はなくても夢はあった(昭和の高度経済成長期並に)。日本の政策は一度決めたことは矛盾が出て失敗が明らかでもなかなか否定されずやり直すことができない。社会構造から抜本的に変えないと難しいのではないか。。

 

 






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