免疫は強いほうがいい?弱いほうがいい?

投稿日時 2021-05-12 08:23:57 | カテゴリ: TOP

 講義の準備をしている。コロナの感染や重症化の地域差(ファクターX)や年齢差(ファクターY)は何なのか?もう随分前からいろいろな仮説が唱えられているがなかなか一言では説明できない。ヒトなので検証も難しい。コロナの重症化には過剰な免疫、特にサイトカインストームが重要、という認識は間違っていないだろうが、では免疫は弱ければいいのか?確かにコウモリは自然免疫系に変異があり、そのためサイトカインストームが起きず感染しても平気だ。子供もそれに近いのかもしれない。一方で交差免疫を持っているほうが重症化しにくく、T細胞応答が素早く上がる人は重症化しにくいとも言われる。いったいどっちやねん、と言いたいが、一元的に白黒つけようとするのが間違っているような気がしてきた。
ワクチン注射後の抗体値をみていると若い人が高く私のような老人は低い(と言っても十分ウイルスを中和できる量)、また男性よりも女性の方が高い傾向があるように見える。これは一般的に言われていることと同じ傾向で、高齢者は免疫老化により獲得免疫応答が弱く、男性よりも女性のほうが免疫応答は強い(だから自己免疫疾患は女性に多い)。やはり免疫、特に獲得免疫(抗体とT細胞応答)が強くウイルス排除が早ければ重症化はしにくい(ウイルスは増えにくい)だろうし、自然免疫が強くなりすぎてサイトカインストームが強くなれば重症化する。サイトカインストームのサイトカインの多くは自然免疫系の炎症性サイトカイン(IL-1やIL-6)である。獲得免疫、特にヘルパーT細胞は自然免疫を活性化するが、通常は適切に制御されておりウイルスがいなくなれば獲得免疫系の細胞は減って免疫応答は収束する。高齢者や基礎疾患のあるひとは獲得免疫系は弱く、その分自然免疫系が強く活性化され続けるのだろう、という『自然免疫/獲得免疫のバランス説』を提唱したい。これだといろいろな報告や仮説を無理なく説明できるような気がする。簡単に言えば獲得免疫が強ければ感染しにくく当然重症化もしにくいし、獲得免疫が弱く自然免疫ほうが強ければ重症化しやすい。どうだろうか?

内閣参与の高橋洋一氏が「日本の感染者数はさざ波」と表現して各方面からひんしゅくを買っている。第二波、第三波などと感染者の増減は波に例えられるので高橋先生の表現は言い得て妙だと思うが。。先生の主張がYoutubeに出ていて極めて真っ当な意見のように思える。イギリスやイスラエルの状況を見ればワクチンで確実に収束し死者も激減するのだから、もう四の五の言わずにすべてのエネルギーと資金をワクチン接種に向かわせればいいのに。高橋先生の話だともうワクチンの必要量は確保できているらしい。患者が来なくて困っている開業医も多いというのでちゃんとした報酬を保証すれば打ち手はすぐに確保できそうなものだろう。

横浜市立大学の発表ではファイザーのワクチンでも英国型やインド型でも90%以上中和活性があったという。今の所変異株にも十分対応できるということだろう。英国型が主流のイギリスでも収束しつつあるのだから当然かもしれない。この中和活性というのはスパイクとACE2の結合を抑制できるかどうかをみるもので直接抗体の量を測るものではない。なかにはまれに抗体価の低い人もいるのでそういう人は3回打つなどの工夫が必要かもしれない。日本も野球場とか薬局とか何処ででも打てるようにならないものだろうか。ワクチンだけにこれしか打つ手はないのだから(お気に入り)。

アメリカでは頑なに打ちたくない人もいてワクチン接種のペースが鈍っているという。その対策なのか「オハイオ州で、ワクチン打てば1億円当たる」そうだ。宝くじより確率高いかも。日本では個人には難しいだろうから6月中に接種を終えた自治体に1億円配るとか。またメリーランド州では一回1万円くれるという。あの手この手でワクチン接種を推進しようとしている。今アメリアで感染しているのはほとんどがワクチン打たなかった人たち。行動制限が緩和されるので、周りが打って自分だけが打たないと自身の感染リスクが高くなることはもっと報道されてもいいのではないだろうか。

アメリカCDCはワクチン2回目接種から2週間以上経過したひとはパンデミック前と同じ生活を可としてマスク着用のやソーシャルディスタンスは原則必要ないとしている。これもワクチン接種をさらに加速したい狙いだそうだ。CDCは科学的に根拠のあることとしており日本もこれに習ってはどうなんだろうか。それでも打ちたくないというひとはぜひ「打たなくて何かいいことがあるのだろうか?」と考えてみていただくとよいのではないかと思う。しかしやはり問題は接種の目詰まりでこれは行政の責任だろう。






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