古賀さんの論文がimmunityに掲載されました

投稿日時 2009-07-12 18:04:15 | カテゴリ: TOP

 うっかりしてたらいつの間にか出てました。

JSTのpress-relreaseの準備をしていたら3/12 on line で出てしまいました。



http://www.cell.com/immunity/abstract/S1074-7613(09)00103-4



Cyclic Adenosine Monophosphate Suppresses the Transcription of Proinflammatory Cytokines via the Phosphorylated c-Fos Protein

Keiko Koga1,Giichi Takaesu1,Ryoko Yoshida1,2,Mako Nakaya1,Takashi Kobayashi1,Ichiko Kinjyo2andAkihiko Yoshimura1,2,3

Immunity. 2009 Mar 20;30(3):372-83. Epub 2009 Mar 12.



これはちょっとがっかり。

今は年度末でてんてこ舞いなのでしかたないか。

次回は忘れずにpress-relreaseします。せっかくなので概要を。



JST基礎研究事業の一環として、慶應義塾大学の吉村昭彦らは、免疫を抑制する新たな機構を解明しました。

アレルギーや自己免疫疾患は過剰な免疫応答が原因で起こる疾患です。これを抑制する手段としては従来よりステロイドなどが用いられてきましたが、副作用が少なく選択性の高い治療薬が求められています。体内にあるプロスタグランジンの一種や神経ホルモンもステロイドと同様に抗炎症作用、免疫抑制作用があることが知られていました。しかしその作用機構は明らかではなく、これを解明することで新たな抗炎症剤、免疫抑制剤の開発が可能となると考えられてきました。

本研究グループは、炎症を促進するマクロファージとよばれる細胞のなかでc-Fosという分子が新たな抗炎症作用の本体であることをつきとめました。c-Fosは遺伝子に直接作用して炎症性物質の産生を抑え、逆に抗炎症作用のある物質の産生を促進することから、新規の抗炎症剤の標的として喘息、リウマチのようなアレルギーや自己免疫疾患の治療に役立つことが期待されます。

本研究は、慶應義塾大学医学部吉村昭彦グループが九州大学生体防御医学研究所と共同で行ったものです。

本研究成果は、 2009年 3月12日 に米国科学誌「Immunity」のオンライン速報版で公開されました。



本成果は、以下の事業・研究領域・研究課題によって得られました。

戦略的創造研究推進事業 チーム型研究(CREST)

研究領域:「アレルギー疾患・自己免疫疾患などの発症機構と治療技術」

(研究総括:菅村和夫 東北大学大学院医学系研究科 教授)

  研究課題名:細胞内シグナル制御による免疫リプログラミング

  研究代表者:吉村昭彦

研究期間:平成20年9月~平成26年3月

JSTはこの領域で、アレルギー疾患や自己免疫疾患を中心とするヒトの免疫疾患を予防・診断・治療することを目的に、免疫システムを適正に機能させる基盤技術の構築を目指しています。

上記研究課題では、細胞内のシグナル伝達制御機構の解明とその人為的な調節により新たな免疫抑制の方法論を開発することを目指しています。





<研究の背景と経緯>

自然免疫の初期応答である炎症反応は、病原体の排除だけでなく、獲得免疫の活性化にも重要な役割を担っています。しかし、過剰な炎症反応は炎症性疾患や自己免疫疾患などの疾患へとつながり、害を及ぼします。そのため、自然免疫・炎症反応は通常は厳密に制御・抑制されています。その抑制因子としては副腎皮質ホルモン(ステロイド)、インターロイキン10 (IL-10)のほかプロスタグランジンE2(PGE2)、細胞外ATP、そのほかある種の神経ペプチドなどが知られています。PGE2やATPは細胞内cAMPを上昇させることで抗炎症作用を表します。cAMPによる炎症反応の抑制、という現象は20年以上も前から数多く報告されてきましたが、分子レベルでどのような細胞内因子が、どのような作用機序を介して炎症反応を抑制しているのかということはほとんど何も分かっていませんでした。



<研究の内容>

本研究チームは病原体構成成分であり、炎症反応を惹起させるリポ多糖体(LPS)に対するcAMPによる抑制の分子メカニズムの解明を試みました。その結果、LPS+cAMP刺激によって発現誘導される転写因子c-FosがcAMPによる抑制効果を担う責任因子であることを明らかにしました。

また、その作用機序としてはc-Fosが炎症性遺伝子の発現に必須な転写因子NF-κBのp65サブユニットと直接結合することによって、p65が炎症性遺伝子のDNAプロモーター領域と結合できなくなり、その結果、遺伝子の転写・発現が抑制されることを示しました。さらにc-FosがLPS+cAMP刺激によって発現誘導される分子メカニズムについても明らかにしました。c-FosのmRNA発現誘導にはcAMP刺激のみで十分でしたが、c-Fosタンパク質の誘導・蓄積にはLPSの下流で活性化され、NF-κBの活性化に必須なキナーゼであるIKKβが必要であることが分かりました。さらなる解析の結果、IKKβはc-Fosタンパク質の308番目のセリン残基をリン酸化し、その結果c-Fosタンパク質が安定化する、という新たな知見を見いだすことができました。炎症性遺伝子の発現に必須であり、炎症性遺伝子発現を正に制御しているIKKβがc-Fosタンパク質の安定化に寄与することで、炎症性遺伝子発現を負に制御するという、新規のネガティブフィードバック機構、つまり生体内で過剰な炎症反応を抑制するという恒常性維持機構の発見でもあります。





<今後の展開>

cAMPはセカンドメッセンジャーとして免疫反応だけでなく、その他多くの細胞内シグナル伝達に関与しています。そのため、生体内において、単純にcAMPを標的とした炎症反応抑制を試みた場合、免疫反応系以外の様々なシグナル伝達に大きな影響を与えることが予想されます。本研究でcAMP/c-Fosによる炎症反応抑制の分子メカニズムが明らかになったことによって、c-Fosが腸炎や自己免疫疾患、敗血症などの多くの炎症性疾患に対する新薬創出のターゲットとなることが大いに期待されます。






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