投稿者 : yoshimura1212 投稿日時: 2019-06-12 22:39:01 (1389 ヒット)

東大をスベッたわけではない。3年生向けの免疫学の講義が始まった。抗体のところでIgG4関連疾患を説明するも、あまりピンときていない様子。まだ臨床講義も始まっていないのでそれはそうだろう。そこで昨晩ダウンロードしたドクターG(NHK)の『たちくらみでふらつく』(2017年)のさわりを見せる。IgG4関連疾患は日本で見つかったということもあってか、国試に出ることも多い。特に膵臓がやられるとすい臓がんと区別がつかなくて『摘出したらB細胞の山だった』ということもあったらしい。重要な疾患概念なのでビデオでわざわざ見せたわけだ(ドクターGというのが安直か。。)。実はうちのテレビの録画ディスクにはドクターGが何本も録画されている。以前某私医大から夏休みにうちのラボに実験に来ていた子がいみじくも言っていた。『夏休みに家に帰ると親が録画したドクターGのビデオが山積みされているんですよね』。おお、君の親も同じか。私もかつて医学生だった娘に見せようと貯めていたのだが、ほとんど観てくれていない。学生さんらに「もし実家に帰ってドクターGが録画されていたら親孝行と思ってぜひ観てください」。多少はウケるかと思ったのに完全な沈黙。うぅ。こういう時が次の一言に最も困る。スベッても動揺してはいけない。何もなかったように「はい、では次は補体。」と次の話題にコマを進めるしかない。


投稿者 : yoshimura1212 投稿日時: 2019-06-06 22:24:38 (1702 ヒット)

 今日は東京大学で朝から学会。朝の本郷通りを颯爽と歩いていた。歩行者も多い。突然体が宙に浮いたような気がした。歩きスマホをしていたわけではない。すぐに歩道の低い出っ張り(これいらなくね?価値がわからん。)につまづいたのだと理解した。加速装置をオンにしたかのように、すべてがスローモーションで動いて行く。『おっとっと』状態で次に片方の足を前に出せば踏ん張れる、少しかっこ悪いがまあ事なきを得るはずだ、とその状態までも頭に浮かんだ。しかし気持ちとは裏腹に足が出ない。なんで?という疑問の渦の中で完全うつ伏せ状態に沈んだ。スマホがポケットから飛び出す。カバンのPCが鈍い音をたてて地面にたたきつけられたような気がした。当然、すぐに起き上がり、受身となった手の掌からの出血を隠すようにスマホとPCを拾って(この2つは命にも代えられない)カバンに納め、何事もなかったように歩き始める。後ろから立派な紳士に声をかけられた。『ボールペン落としましたよ』。やさしいひとなのだろう。つとめて普通にペンを差し出した。しかし必死に笑いをこらえている目は隠せない。とにかくその場を逃げるように立ち去ったが気がつくと足の付け根が相当に痛む。地面に接触した場所ではないのでひねったのだろう。1日この痛みに耐えることになった。

このところ高齢者の車の事故の報道が相次いでいる。手足は頭では思う通りに動いているのに、実際は全くいうことを聞いていないのだろう。加齢による神経伝達速度の低下もあるらしい。身につまされる出来事だった。


投稿者 : yoshimura1212 投稿日時: 2019-05-30 23:35:53 (1620 ヒット)

湘南にある某研究施設を訪問し講演やフリーデスカッションを行った。ウワサの最先端リサーチパークである。これまで企業の研究所はいくつも訪ねたことはあるが、今回は度肝を抜かれた。まず敷地が広大。施設は大学とは比べ物にならない。創薬や実用化を目指しているので当然かもしれないが。職員の福利厚生も充実している。職員食堂は1000人を一度に収容できるという。
見学しているうちに『臨床応用とか治療とか我々大学人が言うのもおこがましくナンセンス』という気分になった。応用研究のプロ、この施設、そして大学とは比べ物にならない研究費だ。私の教室は60年前に建てられたボロ校舎で機器の維持費も自前。どうやって高額機器の保守契約費を捻出しようか頭を悩ませている有様だ。しかしその会社に勤める私の研究室の卒業生がいみじくも言っていた。『大学は企業にできない基礎研究をやるべき。』うーん、その通り。わかっていてもつい忘れがちになるんだよね。PD-1やiPSの例を挙げるまでもなく大きく花開くものほどはじめは見向きもされないド基礎研究だったはず。大学の研究は現象の根本原理を明らかにするような研究であるべき。初心に帰れと言われているようではっとした。大学の建物はボロであればあるほどいい。お金は少し足りないくらいがいい。そのほうが工夫が生まれる。大学教授に身分不相応な高額の研究費を与えて経理不正で処分された例は枚挙にいとまがない。この会社も高額で著名大学教授をチームリーダーにしているようだがコスパはどうかと思うが。。。もちろんほぼやっかみと負け惜しみなんですけどね。そうでも言わないと大学で研究なんてやってられない。

それにしても90分話して少し疲れた。喉が枯れる。体力の衰えだろうか。再来週から講義が始まる。90分X2コマ連続の講義が続くのに大丈夫か心配になる。


投稿者 : yoshimura1212 投稿日時: 2019-05-21 00:36:20 (1267 ヒット)

重慶の次の目的地は長沙。何度か訪れた土地だがここでも大歓迎を受ける。いつものようにシンポジウムは派手派手なのだが、speakerのイスがフカフカの重役用のもので睡魔との戦いに苦戦する。やはり中国は日本とは考える事が違う。

この地方はお茶の産地らしく今回もお茶をお土産にたくさんもらっている。畢竟帰りのスーツケースはお茶で一杯になる。中国のお土産の特徴は中身以上に凝った外身の包装で、重厚にパッケージされている。もしかしたら中身より外身のほうが値が張るのでは?と 疑うほど。しかし旅行者には重厚な包みはつらい。泣く泣く外身を破棄して中身のお茶の入った金属製の容器のみを整理する(まあどのみち日本で整理されるの だから。。)。

間違いなくかなり高価なお茶なのだろう。しかし送迎係の若い人に聞くと若者は実はお茶そのものはあまり飲まないのだという(日本と同じか)。日本茶もそうなんだろうが、実は中国茶も正式に楽しもうととすると相当に熟練を要する、じつに面倒くさいものなのだ(そうだ)。彼女はお茶はミルクティーにしか使っておらずいつも親に怒られるのだという。『こんな高価なお茶をミルクティーに?!』といったところなのだろう。知識がなければ価値はわからない。私もいただいた玉露に熱湯を注いで生きる資格がないほどに罵倒されている立場なので気持ちは極めてよくわかる。

長沙はおそらく北京、重慶に次ぐ中国でも指折りの大都市なのだろう。市内から空港まで高速道路を使っても1時間はかかる。そこはやはりスケールの大きい中国なのだから新幹線かリニアモーターカーを走らせてほしい。長沙は実は低速のリニアモーターカーが走っている。時速100kmくらいなので上海と異なりあまり宣伝されていない。


投稿者 : yoshimura1212 投稿日時: 2019-05-19 08:27:06 (1007 ヒット)

重慶の医科大学に呼ばれて講演と打ち合わせを行った。ほぼ一日缶詰めになり学生やポスドクらの発表を聞いてコメントしたりアドバイスしたり。呼んでくれた教授は最近アメリカから戻って来た新進気鋭だ。重慶は中国第二の都市である。空港は最近できたばかりでとてつもなく広い。中国の空港は何処もどう考えても無駄だろうというくらいの空間が多いがここはさらに広そうだ。道路は広く横断歩道がない。道幅が広く車は多いのでとても危険で渡れそうにない。反対側に行くには地下道を通って渡ることになる。街は人で溢れかえっている。アメリカと中国の貿易戦争が問題となっているが中国は引かない。中国の研究者に聞くとアメリカに頼る必要はなく内需で十分だろうという。技術ももう自前で揃えられる。だから譲歩する必要はない。その言葉がすんなり信じられるほどスケールが大きく自信もあり消費も激しい。日本はもう追いつけないかもしれない。何か別の独自の道を探るべきか。
重慶は火鍋の発祥の地らしい。仕事の後、夜景の美しい川のほとりのレストランに連れて行ってもらった。ものすごく辛いがこれがうまい。多くは内蔵などのモツだ。辛いもの好きにとってはたまらない。ただちに体重管理はあきらめてひたすら食べる。それでも次から次に出てくる。中国には「食品ロス」という言葉はないと思う。

 


投稿者 : yoshimura1212 投稿日時: 2019-05-14 18:57:15 (1562 ヒット)

Lewis Cantley教授はPI3キナーゼの発見者でいつもノーベル賞の候補にあげられる有名な人だ。本日北里講堂で公開セミナーが行われた。いつものラウンジやセミナー室とは格が違う。私のラボの卒業生の佐々木君は彼のところで5年くらいポスドクをしていた。PI3Kをやっていなかったのでどうかと思ったがちゃんと覚えていた。PI3キナーゼ阻害剤はいくつかのがんの治療薬として期待されている。しかし効きが悪い場合がある。彼らはそれは血中グルコース(糖)やインスリンレベルが高い場合であることを昨年のNatureに報告している。また糖をたくさん摂ると腸でのポリープも増加するらしい。Cantley教授は盛んに『砂糖の入った飲み物は飲むな!』と繰り返していた。もちろん糖尿病の予防にもいいだろう。どうしても聞きたいが公衆の場では恥ずかしくて聞けなかった質問があった。講演終了後直接聞いた。『糖はダメでもアルコールはどうでしょう?』彼は即座に『酒は糖を含んでいないから大丈夫。自分もワインは好きだ。』と答えた。この講演で一番の収穫だったかもしれない。

前日『教室のiMacが壊れた』との通報。データが。。。と悲痛な表情なのでなんとかしたい。PRAMの解除などすぐにできそうなことは全部やったが駄目。ネットで調べるとビープ音が3回なる場合はメモリの故障の可能性が高いそう。幸い10年ものの古いMacなのでメモリの取り出しは簡単だった。しかし今売っているメモリがそんな古いPCに合うのか?実際昔ノートPCが壊れた時にHDのせいだろうと踏んで中古品を購入して交換したのに治らなかったことがある。amazonで探すも全く同じ番号のものはなかった。いろいろ調べておそらくいけるだろうと踏んだ4GB2枚を5000円で購入。翌日届いたので早速交換したところ見事復活。電子機器の修理はさすがにまだ自信がないだけに大いに得意になった。早速皆に「ラボの修理屋」から復旧完了のメールを送った。


投稿者 : yoshimura1212 投稿日時: 2019-05-11 11:57:35 (1324 ヒット)

昨日はテキサスのサウスウエスタン大学に留学中の若手研究者が訪ねてきたのでセミナーをしてもらった。そのあといつもの「もつ鍋屋」さんで会食。かなり話が盛り上がって相当飲んだ。これもいつものごとく、どうやって帰ったのか記憶がない。朝気がつくと「チコちゃん」をやっている。『腹の虫がおさまらない、の腹の虫ってどんな虫?』というお題。確かに「虫の知らせ」とか「虫が好かない」とか何で虫?と思える表現は他にもある。私もこのところ大量の報告書や〇〇委員会のクレームやらで「虫の居所が悪い」。なんと昔のひとは様々な病気が『虫』で起きると思っていたそうだ。うがって考えると実は『病原菌』の概念がすでに戦国時代には確立していたとも言える。この想像上の『虫』がカラフルでなんとも面白い。実はこの虫の図鑑『針聞書』は今は九州国立博物館に所蔵されており公開されている。博物館ではこれを『売り』にしてアニメや体操まで披露しているではないか。NHKはなぜこんないい題材をムシしたのだろう。。
なぜこんな虫たちが気になったかというと、このなかに『大酒の虫』というのがいるから。自分のお腹にもいるに違いない、と思った人は多いはず。私のお腹にも巨大なのがいる。
で、思い出したのが芥川龍之介の『酒虫』。大酒のみの富豪「劉氏」のお腹にいた酒虫は僧侶によって取り除かれる。劉氏は酒が嫌いになり飲めなくなるが同時に健康も財産も失う。オチは酒虫は劉氏の魂そのものだったのでは、というもの。私から酒を取りあげたら何も残らないというのは頷ける。実に深い。


投稿者 : yoshimura1212 投稿日時: 2019-05-04 22:05:57 (1109 ヒット)

先月に続いて今回は国立台湾大学医学院の共同研究者に呼ばれてセミナーを行う。10連休の真っ只中で成田へ行く電車も満席、台北のホテルでも周りは日本人ばかりだった。国立台湾大学病院はさすがに台湾一らしく巨大で立派だった。台湾の人は一時日本に占領されたにも関わらず親日家が多いという。台湾大学も日本統治時代に設立され初代教授陣の多くは日本から派遣されたのだそうだ。呼んでくれた若い先生からも下にも置かない歓迎を受けた。セミナーは午前10時とやや変則。免疫には馴染みがない学生や先生も多いということでかなり基礎的な内容も加えた。そのせいかある先生から「自分の専門は免疫でも神経でもないがとてもわかりやすく面白かった」とお褒めの言葉をいただいたので儀礼半分としても嬉しかった。質問も多く予定の1時間を20分はオーバーしただろう。セミナーが終わってさっそく昼食に行こうということになった。訪問する前に「何が食べたいか」と聞かれていた。やはり

台湾といえば「小籠包」。なんと台北で最も有名でミシュランにも載っているという小籠包専門店に連れて行くという。ところがどのガイドブックにも出ているせいか待ち時間3時間は普通だそうだ(写真は200分待ち時間の表示)。それで彼は『朝の9時半に技術員を派遣して順番待ちの番号札を取りに行かせた』という。札を取って帰ったのかと思っていたのだが行ってみると2時間半ずっと待っていたというではないか。これには感激するやら申し訳ないやらで小籠包の味もただただ美味いという記憶しかない。日本ではさすがに自分が雇っていても技官や秘書を順番待ちに派遣することは難しい。やはり中国、台湾の人は客人に対する「もてなし」の気合が違う。三国志演義の逸話を思い出した。劉安という人物が劉備玄徳らをもてなすために己の妻を殺してその肉を使って料理を提供した話(真偽は不明らしいが)で少なくとも当時は美談とされている。古来より中国のおもてなし精神は筋金入りと言うべきか。しかし相手が喜ぶ姿を見るのが嬉しいようなので素直にこちらも感謝しつつ受け入れるべきなんだろう。


投稿者 : yoshimura1212 投稿日時: 2019-04-30 08:53:36 (1297 ヒット)

世の中は10連休である。テレビでは平成最後のxxxのオンパレードである。お祭り騒ぎのようで今朝のテレビでは芸人が「夏休み最後の」といい間違えていた。明日になれば令和最初のxxxに変わるのだろう。平成の30年間を振り返る番組も多くつい見入ってしまう。自分史と重ね合わせると平成元年にアメリカに留学、その後鹿児島大学に戻って、DNAX、久留米大学、九州大学、現在の慶應と駆け抜けて来たような気がする。クローニング以外はたいして能力もないのにここまで仕事ができたのはいい学生や仲間に巡り会えたからだろう。この30年で最も変わったのはやはりコンピュータ、ITだろう。アメリカ留学から帰る時に当時のMac(SEと言われた頃か)を大枚をはたいて購入し持って帰った。昔のPCはよくフリーズした。論文書いている時にワープロが止まって泣きそうになった経験のあるかたは多いだろう。それがいつの間にかインターネットの時代になってSNSにはついていけなくなった。生物学では遺伝子クローニングの時代からES細胞を使ったノックアウトマウスの時代になり現在では遺伝子情報、発現情報を駆使したインフォマティクスの時代に変わりつつあるような気がする。令和の時代ではこれがさらに加速して職人技の実験はすたれ、机についてモニターを見ながら実験はロボットがやる時代になるかもしれない。生物医学研究の概念そのものが変わるかもしれない。いやもう変わっているか。もう平成時代の老兵の出る幕ではない。しかし公共のデータベースは充実しきっと誰もが簡単に操作できるようにソフトウエアは進化すると思う。『ジャバジャバなカレー』で検索できる時代なのだ。多少の入力間違いはAIが修正してくれるだろう。なので自分でもお金をかけず家で何か発見できるようになるかもしれない。

また生物学のロジックそのものが変わるかもしれない。これまではある現象に遺伝子Aが関与するかどうか示すのにAを欠失させてその現象が無くなることを示すことが要求された。インフォマテックスの時代は複数どころか多数の遺伝子の関係性が重視される。ひとつの遺伝子の「あるなし」など気にされなくなるかもしれない。遺伝学から情報学へ。生命現象を『理解できた』という感覚そのものが変わるのかもしれない。
奇しくも池上彰の番組で『平成元年は世界の時価総額top10企業に日本の企業が7つも入っていたが平成30年はひとつもない。今やGAFAと言われる情報産業企業の時代。モノ造りにこだわりすぎて情報の時代に乗り遅れた』と言っていた。確かに生命科学も同じなのかもしれない。


投稿者 : yoshimura1212 投稿日時: 2019-04-20 00:03:41 (1531 ヒット)

 自慢したいわけではない。不思議な経験だったので書き残しておきたい。インキュベータをコントロールしている機械の緑色ランプが切れたのか消えている(写真は回復後)。出入りの業者さんが修理見積もりを持って来た。2000円のランプに出張修理費が3万円だという。たかがランプの交換に3万円?「技術的に難しいらしいので 、、」。ふざけるんじゃない。私はすぐにネジを外してフタを開けてみた。案の定、ハンダ付けはしてあるものの、簡単に交換できそう。フタを戻してランプのみ注文した。ところが翌日なぜかランプが点いて正常に動いている。接触でも悪かっただけなのか?でもそれなら昨日その場で回復したはず。治った理由は不明だがともかくほぼ触れずに修理できたわけだ。『わずかの時間で32000円分稼いだ』『来てます、来てます』(多くの方には古くてわからんだろうが)とすこぶる得意だった。
ちょうど今朝さる研究所の発表会に参加。DNAX関係者が多い研究所で所長が私の紹介の時に『DNAXにふらっと来てあっという間にOSMとCISをクローニングしていった伝説の人物』と紹介してくれた。30年も前の話だが、その時はやっぱり何か「来ていた」?もう実験にハンドパワーを使うことがない(国家的損失か?)ので修理屋として使うくらい。これまでもプロジェクター椅子かばんトイレMacの電源などの修理を紹介して来た。鍵なしで施錠されたドアを開けたこともある。やっぱり定年後は便利屋として我ハンドパワーを世の中の役に立つことに使いたい。

初夏の爽やかな気候の中本日はラボで科研費の報告書を書く。集中して事務仕事をやり終えると達成感がありよく働いた気分になる。しかし実際は研究は何も進んでいない。
鬼門である某〇〇委員会から先日頑張って書いた報告書の内容にケチをつけるメールが。。用語が全く理解できない。この人たちは日本語を書いているんだろうか?たぶん私の頭が神経変性しているのだろう。もうヒト細胞を使った研究はやめたい。


投稿者 : yoshimura1212 投稿日時: 2019-04-16 20:14:00 (2274 ヒット)

JSTに「多細胞」というAMED「適応修復」に似た領域が立ち上がり、Prime、さきがけを目指す若手には間口が増えた。制度的には両方出すことに問題はない。

この背景には一細胞RNAseqなどの最先端解析技術の応用が日本では大きく立ち遅れているという危機感があるのではないか。それでも費用的にも設備的にも本格的に一細胞RNA解析、一細胞エピゲノム 解析を行えるところはかなり限られるはず。すでにアメリカや中国には大きく水をあけられているように思う。このままではジリ貧だろう。やはり国がそれ用の施設を設けて研究課題を公募して、よいものを支援すようにすべきではなかろうか。

生命科学は常に新しい技術を取り入れて発展して来た。私の頃の『最先端技術』はtwo-hybrid法などでさほどお金はかからなかったが最近は機械もランニングコストも高額でひとつの仕事を完成するのにかかる金も時間も大幅に伸びた。
なので、ついでに言うと、そろそろ「戦力の逐次投入」という愚策はやめるべきだ。今年科研費は若手に配るために『若手』や『基盤C』の採択率を大幅に引き上げたとみられる。それは諸手を挙げて大いに結構とはいいがたい。限りある資源を浅く広くばらまくだけでは成果の出そうな芽を伸ばすには足りず、育つ見込みのない種にも水をやることになりかねない。直接経費では若手でも年間150万円X2年程度。これでは一細胞解析が4、5サンプル分にしかならない。本当に有望な若手を厳選して年間3000万円X5年、投資すべきだ。昔、思いついたように内閣府が「最先端次世代支援プロジェクト」と銘打って若手と女性支援を行ったことがあった。おそらく3000万円X4年はあったろう。これは有望な若手PIをかなりの数伸ばしたのではないかと思う。しかし継続されなければ効果は薄い。テニュアトラック制度とか卓越研究員とか人材育成なんたらとかPrimeとか「さきがけ」とか細かく分けて小出しにせずに、ひとつにして給与、身分と十分な研究の場と研究費を保証する。このような制度があれば将来に向けて少なくとも5年間じっくり研究に専念でき若手を勇気付ける効果もあるだろう。今こそ思い切った投資をしないともうアメリカ中国に追いつけなくなるのではないか。関心ある方は関連する中野徹先生のご意見『日本の科学研究ー地盤沈下はとめられるのか』『博士に未来はあるか?〜若手研究者が育たない理由』もぜひ読まれると良い。


投稿者 : yoshimura1212 投稿日時: 2019-04-14 09:20:15 (988 ヒット)

初めて台湾を訪れた。羽田から3時間ほど。時差もないので楽だ。知り合いの台湾出身のPIがオーガナイザーのひとりで、来ないかと誘われた。「人の集まりが悪いので動員をかけているのでは?」と同情した。彼はこちらが金沢で国際学会をやったとき、声をかけたら快く来てくれた。あの時の恩義は返さねば、と登録しようとするとすでにclose。1時間で300席分が埋まったのだそうな。変な心配は要らなかったのだ。しかしよく見るとspeaker は一流ばかりだ。主催者枠のなかに入れてもらって無理しても行くことにした。
今回は空港と会場をタクシーで往復しただけなので台北市内の事は全くわからない。台北の郊外の医科大学で行われたのだが、行って驚いたのは病院がでかいこと。慶應の新病院が5つくらい入るのでは。また隣接する研究所もできたてのピカピカだった(写真)。その中の講演会場は広く席と席の間は人がゆったり歩いて通れるくらいの間隔。台湾の国土は九州くらいと思うが人々の感覚は大陸のほうと変わらなく気宇壮大なのだろう。一方で主催者らの気配りは日本に近いかそれ以上だ。呼んでくれた友人は横に座って何くれとなく声をかけてくれる。「口に出さなくても察する、あるいは気にしてあげる」というのはアジア人に共通した気質なんだろうか。私は単なる聴衆の一人に過ぎないのだが、speakerらに混ぜてくれて毎晩豪華dinnerに招待してくれた。中華料理はとにかく量が多い。少し残すくらいが礼儀なのだそうが、生来の食い意地と「もったいない」という日本人の美徳から全部平らげてしまう。たった2日なのに1週間分くらい食べたような気がする。あるspeakerが「こんな手厚いhospitalityははじめて。次回も必ず呼んで欲しい。」と言っていたのもうなずける。日本では様々な規制で過剰な接待はできなくなっている。「おもてなし」の気持ちは台湾や中国のほうが勝っているような気がする。


投稿者 : yoshimura1212 投稿日時: 2019-04-11 17:49:36 (2001 ヒット)

本年度のAMEDのCREST、PRIMEの公募が始まった「適応・修復」領域は2年目でCREST3~5件程度、PRIME8~12件程度の採択をめざしている。ぜひ多くのかたに応募していただきたい。全くもって個人的な見解であるが本年度は「修復、再生」の本質をつくような「細胞間相互作用」に注目したいと思っていた。例えば哺乳類では組織損傷の後には必ず「炎症」が起き、炎症なくしては修復もない。一方で過剰あるいは慢性的な炎症は修復を妨げることが多い。組織修復に炎症は避けて通れないのだが、常々炎症細胞のそのものの研究というよりは炎症細胞と組織細胞、組織幹細胞との相互作用に注目したいと思っていた(全く一例で個人の見解です)。もちろん炎症を伴わないような組織応答もあっていい。もう一点最近認識を改めたのが、組織の破壊に伴う線維化や瘢痕形成は不可逆ではなく可逆的で正常に戻せる可能性があるということ。そんな夢のある研究が出てくるといい。手法としては複雑な組織の4次元解析なので一細胞RNA解析などがバンバンできるといいが、これは相当の設備とお金がかかる。国として支援を考えるべきだろう。
と思っていたらなんと今年から始まるJSTのほうのCREST、さきがけのテーマそれぞれ「多細胞での時空間的相互作用の理解をめざした定量的解析基盤の創出」(松田先生)「多細胞システムにおける細胞間相互作用とそのダイナミクス」(高橋先生)ではないか。京大チームか。『もろかぶり』とも言えなくはないが互いに切磋琢磨ができるといい。公募説明会(4/25)(登録が必要。こちらから)までに当領域のアピール点を考えておきたい。大きな声では言えないが「さきがけ」とPRIMEは全く別制度なので両方出すことも可能。

 


投稿者 : yoshimura1212 投稿日時: 2019-04-11 16:03:05 (1198 ヒット)

 脳梗塞の総説を書いていて、死んだ細胞から出るマクロファージ活性化分子、いわゆるDAMPsについて最近フォローしていないことに気が付いた。DAMPsについては完全精製したタンパク質ではTLRを活性化できないとか言われて混入物質を疑う先生もいる。七田君が新しいDAMPsとしてペルオキシレドキシンを報告してからすでに6年が過ぎている。論文はこちら。TLR2/4の欠損マウスの実験からTLR2/4を活性化することは間違いないものの、ペルオキシレドキシン(PRX)とTLRの直接の会合は示すことができていなかった。LPSとTLR4の結合ですら生化学的に示すことは難しいので致しかたないことではある。また当時は大腸菌の組み替えタンパク質を使っており菌体成分の混入を危惧する先生もおられた。その後PRXがマクロファージやミクログリアを活性化することは多くの続報が続いていたが分子機構の詳細は不明のままであった。最近発表された論文では「一分子原子間力顕微鏡」という文明の利器を使って実際にPRXがTLRに会合してサイトカイン産生を促すことを証明している。また中和抗体を使って刺激が解除されることも確かめており「大腸菌成分混入説」は否定されている。こちらの報告では脳梗塞だけではなく脳出血でもDAMPsとして働いているらしい。
ということで、七田君は間違っていなかった。我々が他のことに目を向けている間に別の人たちが発展させてくれていた。不精を恥じるものの、実はそうでないと一つの発見はなかなか浸透し発展していかない。いい研究ほどそうなんだろう。ただ、PRXがDAMPsとしてTLRを活性化することはだいぶ証明されてきたと言っていいが分子メカニズムはまだまだわからない。先輩格のHMGB1は3つあるシステインのうち2つがジスフィルド結合をしていてかつ残りの1個がフリーでないとTLRを活性化出来ないという何とも複雑なことになっているらしい。PRXもシステイン残基が酵素活性中心として他の基質に修飾されやすい。DAMPsとしての活性には何らかの修飾が必要なのではないか。最近はホスフォリパーゼ活性も見つかっておりこれもDAMPs活性に関係するのかもしれない。まだまだ目が離せない。岡山大学の西堀先生が秋にDAMPsの国際会議をされるので最近の動向を仕入れてきたい。


投稿者 : yoshimura1212 投稿日時: 2019-04-07 11:42:45 (1045 ヒット)

 春の陽気に誘われて(花粉症のために)鼻水を垂らしながら中野から新宿御苑付近まで歩く。途中、桜もまだ残っている公園や神社が結構ある。通りがかりの名も知らぬ神社では恒例の神頼みを行う。おみくじは「大吉」。すこし気分も良くなる。御苑の前までくると、先週の新宿御苑は長蛇の列でとても入る気がしなかったが今日あたりはだいぶ少なくなっている。しかしよく見るとぬあんと入園料が500円(従来は200円)になっているではないか!実は3/19から値上げされていたらしい。いろいろ理由はあるんだろうけど、庶民は行かんでよろしいということか。もっと都民は怒るべきだ。いや環境省の管轄らしいので「国民は」怒るべきか。桜をみるなら近くの公園や皇居で十分だろう。もうお昼に花見に出かけてラボ写真を撮れないのが残念だが。


投稿者 : yoshimura1212 投稿日時: 2019-04-01 16:50:00 (1425 ヒット)

 新元号は『令和』に決まったそうだ。万葉集からの出典らしい。
初春の令月にして気淑く風和らぎ〜
から来ているそうで春を迎えて、しかも新しい1年が始まる今の季節にぴったりではないか。もっとも使用は来月から。
新人も増えて研究に弾みをつけたい。幸い科研費も更新時期の人たちは順当に獲得できた様だ。しかし定年まであと5年。一昨日に新井賢一先生を偲ぶ会があった。先生がなくなってもう1年が過ぎたのかと思うと月日の経つのは速いどころか一瞬の様だ。頑張って今いる連中を順当に送り出したい。もちろんそれには相応の成果が必要であることは言うまでもない。新元号を眺めつつ気持ちを新たにしたい。

 


投稿者 : yoshimura1212 投稿日時: 2019-03-24 15:58:14 (1472 ヒット)

脳梗塞(正確には脳卒中や外傷性脳損傷か)の治療にエイズ治療薬の一種、マラビロクが有効かもしれないという論文が2月号のCellに出ていた。『Cell』といえば我々の業界では基礎生物学の最高峰の雑誌のひとつである。こんな疾患治療系も最近は載せるのだ。マウスだけではなくヒトでも有効性が示唆されたので価値が高いと判断されたのだろうか。。。Scienceにも紹介記事が出ていた
簡単にいうと、脳梗塞や脳損傷によって神経細胞にケモカイン受容体CCR5が発現誘導される。マウスの実験では神経細胞でCCR5を阻害すると脳傷害からの神経回復が早まる。CCR5は通常は白血球などが炎症部位に集まる時に使われる受容体であるが、エイズウイルスHIVが細胞内に侵入する時に使う副受容体でもあり、その阻害剤マラビロクはエイズ治療薬として使われている。マウスモデルではマラビロクが神経症状の回復を促進した。この薬をヒト脳卒中患者で使ったわけではないが、ヒトではCCR5に変異を持った人がある一定数いてHIVに耐性を持つことが知られている。だから中国の世界初のゲノム編集ベビーでも標的に使われた。この変異を持った脳卒中患者(N=68)は通常の患者(N=328)と比べて神経症状の回復が早かったのでおそらくヒトでもCCR5の阻害は治療として有効なのでは?という話だ。Phase2/3の臨床試験も始まっているらしい
ではなぜCCR5が神経損傷の回復を遅らせるのか?最新の高価そうな技術で詳細に調べられており(私は専門外でよくわからないのだが)イメージングなどによって、CCR5の阻害によってCREBやDLKシグナル経路が活性化し、運動野の神経の樹状突起スパインの消失が抑制されたり、新たな投射が形成されてりするのだそうだ。しかし最後にやっぱりCCR5が阻害されるとマクロファージの浸潤が少なく、アストロサイトの活性化は抑えられることも示されている。この論文にケチをつけるつもりは毛頭ないのだが、神経細胞の機能回復は炎症抑制の結果ではないのか?という疑問は残る。。。

本論文は何がすごいのか?実はマウスではCCR5欠損のほうが脳梗塞モデルに抵抗性を示すことやヒトでも虚血性脳血管傷害に関連する病気にかかりにくそうなことは過去に報告されている。なので本当は神経細胞に、これまで免疫細胞で機能すると考えられていたCCR5が脳損傷によって発現誘導されて(誘導の仕組みは不明)神経機能の障害を促進していることを強調したかったのだろうと思う。そこが一番新規性が高いのだろう。繰り返すがケチをつけたいわけではない。ただ免疫細胞のCCR5の阻害と完全に分けて実験できているわけではなさそうなのでやや不満が残る。なぜ神経特異的CCR5欠損マウスを使わないのか?mRNAのみでCCR5の細胞局在を示しているが、免疫学者としてはanti-CCR5抗体を使ってFACSや免疫染色でタンパクレベルでの存在を示してほしい(やっぱりケチをつけている?)。そもそもなんで神経は損傷時に回復を遅らせる分子を発現せなあかんの?その理由が説明されていない(確かにケチをつけている)。ともかくも初期の炎症を抑えることは治療価値がありそうな話だが、我々の論文は完全に無視されているのが最も癪にさわる。彼らはCCR5が炎症ではなく神経細胞そのものに作用するという立場なので当然か。


興味本位のついでに言うと、マウスではCCR5欠損は学習能力や記憶力が向上するらしい。ならばマラビロクは「頭が良くなる薬」かもしれない、ということで私など明日からでも飲みたいと思ってしまう。しかしCCR5に変異がある人は頭が良いと言う報告はなさそうなのでマウスほどは効果がないかもしれない。

なお伊藤さんに確認してもらったところ、脳梗塞慢性期で脳全体で確かにCCR5の発現は増え、Tregを除去すると発現はさらに上がる。よって神経症状の悪化とCCR5の上昇は関連はありそうだ。でもCCR5は当然TregにもエフェクターT細胞にも発現している。これを阻害したらどうなるかは研究してみないとわからない。


投稿者 : yoshimura1212 投稿日時: 2019-03-21 12:44:01 (1098 ヒット)

 外は5月並みの気温で東京では本日(21日)桜の開花宣言が出された。陽気に誘われてラボに行く道すがら御苑の近くを散歩した。これが大いなる間違いだった。飛散する花粉の量が半端ないのだ。通常私は1月下旬に超急性期花粉症でぐったりなる。3月,4月はもう慣れて特に大きな症状はないのだが、今春は外回りも多いせいかここ数日熱っぽく目がかゆい。特に昨日今日は仕事にならないほどきつい。半分夢うつつの状態だ。これはもう絶対になんとかしないといけない。舌下減感作療法を受けようか。いやいやもっと根本的に解決するアイデアはないか?もちろんデュピルマブ(IL-4受容体抗体)のような高価な治療法があるが価格的に現実的ではない。やっぱり『経口減感作療法』が最も手っ取り早いのでは?イネに花粉のタンパク質を作らせて花粉入りのコメにする『スギ花粉米』はどうなったのか?AERAによるとスギ花粉米の開発は2003年で実に15年も前のことだという。実用化に待ったをかけたのは案の定厚生労働省で「医薬品」扱いにされてしまったのだそうだ。しかし開発元は地道に臨床研究を続けており一定の効果は期待できそうとのこと。遺伝子組み換え食品になるし道は険しそうだが1日も早く市販してもらいたい。
しかし抗原である花粉は毎年大量に体に入ってきている。何もコメとして摂取しなくてもよさそうなものだ。たぶん普段の抗原侵入経路ではTh2を活性化してTregを増やすことが少ないのだろう。ならばTregを増やすような薬か食品を同時に摂取すればよいのではないか。免疫学者としてはそういうものを開発したい。我が身でよければいつでも実験に使っていいのだが。
 


投稿者 : yoshimura1212 投稿日時: 2019-03-10 16:04:16 (1495 ヒット)

keystoneから戻って都内含めて外回りが多く何をするにもまとまった時間がとれない。一昨日は金沢医科大学で昔の卒業生に呼んでもらって講演。そのあと加賀料理と日本酒を堪能させてもらった。金沢と言えばおでん。居酒屋をひとりで切り盛りしていたお姉さんに「なんで金沢ではおでんが有名なの?」と聞くと「石川県はおでんの消費量が日本一なんですけど、何故か?は知りません。」「ぼーっと生きてんじゃないよ」(と小さい声で)。ネットで調べてもよくわからない。ぜひチコちゃんに聞いてみたい。
接待してくれた卒業生や医学部の先生は金沢出身ではない。冬は寒くて大変だろうと思ったが金沢を愛してやまないようだ。ちなみに金沢は金箔も有名で、なんでもかんでも金箔が施されている。こちらは加賀百万石の伝統の他に湿度が高いことも関係あるのだそうだ。若い先生は洗濯物が全然乾かないと嘆いていたが。
金沢から戻って翌日は麹町の都市センターホテルで講演。また京大のK先生と一緒だ。K先生の話はいつ聞いても面白い。スライドでも「ここで少し脱線」と前置きして自分のマンガや教科書の話をしたり、所属するロックバンドの話をしたりする。今回はパワーアップしてN○Kの「がってん」で紹介された「リンパ節ひとり旅」のメーキングビデオまで披露された。いや脱線はいいのだが、ここまで強烈だと記憶にあるのは脱線の話ばかりで、本業の話をほとんど覚えていない。ご本人にそれとなく言うと「いや学生からも言われてます」と気にされていない様子。これはこれで持ち味なんだと納得。私は冒頭「脱線はしません」と宣言して少し笑いをとった程度。一つだけ大いに記憶に残ったのは○大CiRAからの報告でHLAのほとんどをノックアウトしてほぼすべての患者さんに移植可能なiPSを作ったという論文を紹介したこと。「キラーT細胞には認識されないだろうがNK細胞にやられるんじゃないですかね。「移植」というからにはもっと免疫学を勉強してほしいですね」またケンカを売るような言わんでもいいことを。。。でもK先生は憎めない。愛されキャラだと思う。

 


投稿者 : yoshimura1212 投稿日時: 2019-02-28 03:01:00 (5174 ヒット)

  27日付Natureのon line版にアメリカのラホヤ研究所のAnjana Rao教授らとの共同研究の成果が掲載されるプレスリリースも行なった。この仕事ではアメリカ側の貢献が大きい。膨大な遺伝子解析を行なってNr4aにたどり着いたのはRao博士だ。数年前に偶然国際会議で一緒になりRao博士から共同研究の話が舞い込んだのだ。私のグループはDNAやマウスを送ってほとんどの実験はアメリカで行われた。それでも敢えてうちからもプレスリリースを行なったのは、私にとっては思い入れが深いから。アメリカまで行ってreviseにどう答えるか筆頭著者と膝を付き合わせて議論したし、何よりNr4a阻害剤の開発に何処か乗り気になってほしかった。

  今回の研究は腫瘍免疫に関するものでまさに『T細胞の疲弊化(exhaustion)』の分子機構の一旦を明らかにしたものだ。T細胞(特にキラーT細胞)の疲弊化は多くのラボがしのぎを削っている、今最もホットな分野の一つだ。「疲れた」などと言ってはいられない。T細胞の疲弊は免疫チェックポイント療法でもCAR-T療法でも免疫療法の効果を損なうことが知られている。オブシーボのような抗PD-1抗体はT細胞の疲弊を回復させ元気にすると一般にはわかりやすく説明されているが、現在では完全に疲弊化したT細胞はもはや免疫チェックポイント療法では回復させることはできないと考えられている。それはPD-1以外にもTim3やLag3といった複数のチェックポイント分子が強力に発現し、またインターフェロンγのような腫瘍攻撃分子の発現が低下するためだ。このような変化はエピジェネテックに制御され後戻りできないと考えられている。では何がこのような疲弊化の性質を規定するのか?疲弊化に関する元締め的な転写因子の探索が続けれれていた。その一つがNr4aであったということだ。
T細胞とNr4aについては当研究室で関谷君が制御性T細胞(Treg)の発生維持に必須の分子ということで長く研究を続けていた。Nr4aはT細胞受容体(TCR)の刺激で誘導され、Foxp3などTreg機能に重要な遺伝子の転写を促進すると同時に炎症性サイトカインの産生を抑える。Rao博士らはT細胞の疲弊はTCRで活性化される転写因子NF-ATが単独で長く活性化されることで起こるという仮説を提唱して来た。活性化型NF-ATを強制発現すると疲弊の形質が現れるが、ゲノムワイドにクロマチンの状態を調べるとすべての疲弊関連遺伝子の転写調節領域にNF-ATが結合しているわけではない。NF-ATで誘導される別の転写因子が必要と考えた。疲弊によって発現が上昇する遺伝子の転写調節領域を調べるとそこにはNr4a結合配列が見出された。それでNr4aが疲弊関連遺伝子の元締めではないかと考えたわけだ。そこからはNr4aを強制発現したりノックアウトしたりして表現型や遺伝子発現の変化を調べている。Nr4a欠損T細胞(遺伝子が3つもあるので3つ潰さないといけない)では疲弊関連遺伝子のクロマチン状態が疲弊していない細胞のそれに近いことがわかった。Nr4a欠損T細胞は腫瘍マウスに投与しても疲弊化しにくく、強力な抗腫瘍効果が得られた。
もうひとつ私がNr4aに固執するのは大学院生だった日比野さんがNr4a阻害剤を探索していて抗がん剤であるカンプトテンシンにNr4aの転写を抑制する活性があることを見出したから(Cancer Res 2018)。このときはTregを抑えるから抗腫瘍活効果が上がると考えたが、よくよくデータをみるとCD8T細胞(腫瘍を攻撃するキラーT細胞)も増えてかつインターフェロンγ産生も大きく上昇している。なのでNr4aはCD8T細胞にも直接何かしているのではないかとうすうす感じてはいた。しかし『疲弊』にまでは頭がまわらなかったのだ(すでに頭が疲弊しているので)。 ともかくNr4a阻害剤は抗腫瘍免疫を増強させうることはすでに証明されている。あとはもっと特異性の高い阻害剤をスクリーニングすることだ。
しかし他の研究者も手をこまねいているわけではない。先週のkeystoneシンポジウムではToxやEgr2が同様の働きをすることが報告された。Nr4aは疲弊を制御する因子の一つにすぎないかもしれない(それは言いたくないが)。あるいはToxやEgr2の下流にあるのかもしれない。今後疲弊を制御する転写因子間の関係性がもっと詳しく調べられるだろう。
今回はproofが来てからon lineまでわずかな期間でプレスリリースもあたふただった。なんでかと思ったら同じ日にChen DongのラボからNr4a1が免疫寛容や疲弊に重要という論文が隣に掲載されていたので出版社は同時に出したかったのだろう。Nr4a1はAP-1結合サイトにくっついてAP-1を抑制するらしい。寛容(tolerance)と疲弊(exhaustion)、分子機構はほぼ同じなのかもしれない。なおChen Dongとは、彼のラボに卒業生が2人も留学したことがあり旧知の仲なのだが、彼らもNr4aに注目しているなんて今日まで知らなかった。

でもやはり『がん』は注目度が違うのだろうか?同じNatureなのに1月の脳梗塞のプレスリリースではほとんど応答なし。でも今回はすでに複数の新聞社から問い合わせが来たこっちも。どちらも一般にも関心が高い話題だとは思うのだが。。。
 

なおNr4aを阻害するばかりが能ではない。活性化すれば寛容が誘導されて自己免疫疾患に有効なはずだ。実はNr4aの活性化剤はすでに知られている。そのひとつがクロロキンだ。クロロキンの誘導体ヒドロキシクロロキンはすでにSLEに対して認可されている。クロロキンに抗炎症作用があることはよく知られているが、そのメカニズムのひとつはNr4aの活性化にあるのかもしれない。


投稿者 : yoshimura1212 投稿日時: 2019-02-25 23:56:41 (1467 ヒット)

今朝朝JR総武線のお茶の水付近で停電事故があり大混乱となった。東京の中心部で動脈が遮断されたようなものか。バイパスのために丸の内線に乗客が殺到したらしい。今朝は10時前から霞ヶ関付近でさる奨学金の面接審査の予定だった。9時前に家を出て丸ノ内線の駅に行ったが一向に電車が来ない。前が詰まっていて動けないらしい。今日は国立大学の2次試験だったので受験生は焦ったことだろう。私は途中であきらめて大江戸線や日比谷線を乗り継いで目的地には10時20分に着いた。こういうのは「憤懣やるかたない」が何処にも怒りの持って行きようが無い。つい審査にも厳しい言葉が出てしまったかもしれない。
ただ質疑応答を聞いていると、もっと「自分で考えてほしい」なと思う。博士課程1年くらいの駆け出しなのでいたしかたない面はあるが。「この実験は何の目的で行うのか?」「この方法で知りたい事がわかるのか?」という根本的なことがしっかり答えられない。「別のこれこれの方法が簡単だし早いとも思うがそれではダメな のか?」という少し応用問題にはもっと答えられない。3原則の「experimental value」そのものに関わる事だ。目的と方法の整合性は常に考えておかないといけない。それには日頃から自分のやっている実験に関連する論文は自分で探して読み、考える訓練をしてほしい。先生はそれを見越して、目的と方法に関する事は全部は言わない(私のように単にアイデアが無いという場合もあるが)。何故この実験を指示しているのか?そこは当然自分で調べて理解してほしいと思っている。大学院生として研究のトレーニングを積む というのはそういうことだ。

6人の審査員が10数名の候補から5名を選ぶのだが、驚いた事にどの審査員もほぼ同じ5名を選んでいる。どの発表もそれぞれ重要な研究課題で目的も方法もしっかり述べられている。しかし差が出るのは質疑のように思える。学生さんには「圧迫面接」のように感じられたかもしれなしが、実は我々は「日頃自分でどれくらい考えているか」を見ようとしているのだ。ただ先生の質問にはよいアドバイスや指摘が含まれていることも多い。「それは考えていませんでした。ご指摘ありがとうございます」ということもあるので面接は決して無駄ではない。いや無駄にしない人は通っているのかもしれない。


投稿者 : yoshimura1212 投稿日時: 2019-02-21 17:18:06 (1583 ヒット)

アメリカコロラド州のブレッケンリッジ市というところで開催されているキーストンシンポジウムに来ている。この名を冠した会議はあちこちで開催されているが、ここが最も高度が高い開催地で3000メートルはあるのだそうだ。富士山の山頂近くで会議をやっているようなものだ。空気がやたら薄い。気圧のせいかすぐに頭が痛くなる。しかも外は夜はマイナス20度くらいまで下がる。なんで好き好んでこんなところでやっているのかというと昼間は休み時間をつくってあるのでスキーでも楽しんで地元にお金を落としてほしい、ということらしい。昨年はこの近くのkeystoneという場所でこの時期に参加している。あのときは変なウイルスにやられて(インフルエンザではない)食事も喉に通らずスキーどころではなかった
あれからもう1年もたったのだ。やっぱり時間がやたら早く過ぎているような気がする。昨年の会議ではT細胞のゲノム編集や様々ながん細胞療法の工夫に度肝を抜かれたものだった。今年はそれがあたり前のようになっている。これにも時間の早さを感じさせられる。「癌と自己免疫」の会議なのにノーベル賞効果なのか「自己免疫」のほうは少ししかなく肩身が狭い。制御性T細胞(Treg)の大御所の某教授(うちの論文に難癖つけた人か)がTregの話ではなくCD8T細胞の話をしたのがすべてを物語っているような気がする。がんで問題になるT細胞疲弊(exhaustion)の話題も多い。一細胞RNAseqの図が当たり前のように次々に出てきてこれまで認識されていなかった細胞集団も捉えられるようになっている。日本でやったら一体いくらかかるのだろう。講演者のひとりが「T細胞医薬は始まったばかりでこれからどんどん進化する」。我彼の差は激しい。「疲弊」しているのは自分の頭とサイフらしい。

 
本当に脳が疲弊しまくっているのだろう。最終日前夜、食堂にノートPCを忘れた。気がついたときはドアが閉まっていて相当焦った。ホテルの従業員を捕まえて開けてもらって事なきを得たが、ただでさえ空気が薄くて息ができない上に、命の次に大事な商売道具のPCを失くしたかもしれない、と焦りまくっている。汗ばかり出て言葉が出てこない。さらに翌日デンバーの空港で搭乗券を無くした。ゲートでさあ並ぼうかというときに気がついた。もう時間がない。半分あきらめかけたが、運良く?雪で30分ほど出発が遅れることになった。すぐさま来た道やトイレを探しまわった。ひたすら走りまわる。ただでさえ息が苦しいのにもう死ぬかと思った。心臓が口から飛び出しそうというのはこういうことだろうか。しかしこれもなんとか道に落ちていたゴミくずみたいに丸まった券を見つけて助かった。よくゴミとして捨てられなかったものだ。安心したのか一気に汗が吹き出た。が、安心したのもつかの間、雪がどんどん積もっている。もう1時間も出発が遅れている。飛ぶんだろうか。。。キーストンはもうこれが最後だな。

2時間半後、飛行機は雪を溶かすのに巨大なシャワーを浴びてなんとか飛び立った。こんなの初めてみた。


投稿者 : yoshimura1212 投稿日時: 2019-02-16 09:55:44 (1869 ヒット)

インフルエンザが下火になったかと思ったら「はしか」が大流行の兆しだという。感染者が新幹線に乗っていたとかデパートの販売に従事していたというだけでニュースになる。「はしか」の原因ウイルスは「麻疹ウイルス」。講義をしていた頃は「5類感染症」でも医師は直ちに報告の義務がある、ということで試験によく出していた。怖いのは脳炎を起こすことがあり、特にごくごく稀だがウイルスが変異して持続感染を起こすようになり、SSPE(亜急性硬化性全脳炎)というゆっくりと進行する脳症になること。「遅発性ウイルス感染症」の代表例だ。

NHKの9時のニュースで桑子アナが「はしか」に関するクイズを出していた。「はしかと恋は似ている」なぜ?中年おじさんの有馬アナの答えは「歳をとってかかるとそれだけ重くなる」。桑子アナの正解は「誰でも一度はかかるもの」(ジェロームというイギリスの作家の名言)。しかし有馬アナの答えは間違っていない。同じく19世紀のイギリスの劇作家のジェラルドというひとの名言らしい。「トキメキ」が必要なオヤジ世代としては有馬アナが即座に口にした答えに共感してしまう。


投稿者 : yoshimura1212 投稿日時: 2019-02-07 20:36:15 (1958 ヒット)

サンバイオ というベンチャー企業のSB623は間葉系幹細胞を脳内に注入して脳の損傷部位を修復しようという細胞医薬品だ。一時脳損傷に効果があると報道されて株価は沸騰したもののアメリカでの脳梗塞の第二相試験の結果が思わしくなく暴落。しかしバイオベンチャーの未来を背負うと期待されていたし、うちの脳Treg療法にも近いのでなんとか挽回してほしいものだ。間葉系幹細胞から産生される修復因子が神経修復に良い効果があるのはさほど間違っていない気がするのだが。もともと脳梗塞は患者さんごとに梗塞領域の大きさもまちまちで薬の有効性を示しにくい疾患のような気がする。我々が動物実験で効果があると示したセロトニン再取り込み阻害剤も1500人規模だと効果あり、3000人規模だと効果なしと判定が分かれている(J Stroke Cerebrovasc Dis. 2018 May;27(5):1178-1189, Vs  Lancet. 2019 Jan 19;393(10168):265-274)。難しいが一歩ずつ先に進めるしかないのだろう。間葉系幹細胞は脳Tregのライバル(勝手に思っているだけ)なのだが、僭越ながら組織内でそんなに長生きしないのではないか?Tregならば少なくとも2ヶ月は脳内で生存できる(マウスだけど)。臨床へ行くにはまずは脳Tregを生み出す環境因子を見つけないといけないだろう。どっか出資してくれないだろうか。。まあこの忙しさでは研究のことを考えてられないか。。


投稿者 : yoshimura1212 投稿日時: 2019-01-26 20:47:54 (2019 ヒット)

 インフルエンザが猛威を振るっている。1月第三週の推定患者数は207万人で2009年以降最多だそうだ。一方で今年は強力な新薬が登場している。ゾフルーザである。今週の「カンブリア」には満を持してシオノギ製薬社長が登場。「手代木」さんという方だ。「てしろぎ」と読むらしい。うちの研究員もインフルエンザにかかって処方されたら翌日にはすっかり熱も下がったそうだ。聞かれもしないのに「こんなにインフルエンザが流行って儲かってしょうがないんじゃないですか?と言われるが流行らないにこしたことはない」と先手を打っていた。ずいぶん気が回る人だ。
5年ほど前にまでは細菌学とウイルス学を教えていたのでインフルエンザの化学療法は当然とりあげていた。ゾフルーザは広くいうとRNAポリメラーゼ阻害剤ではあるが作用は「宿主mRNAのCAP構造をもつ部分を切断してウイルスRNAの合成に供給するRNA切断酵素」を阻害するもの。恥ずかしながら「富山化学」が開発したRNAポリメラーゼ阻害薬「アビカン」に似たものとばかり思っていた。アビカン(T-705)は10年くらい前にすでに知れ渡っていたので
おそらく開発はこちらが先だろう。不運だったのはアビカンは催奇性の危険があるということで条件付き承認になったこと。シオノギにとっては幸運だったのかもしれないが、手代木氏がすごいのは社長になって当時特許切れなどで会社が売れる薬が少なくなっていたのに「製薬会社は薬を開発するのが使命」という原点に立ち返って果敢に新薬の開発に打って出たこと。新薬の開発には10年以上の歳月と1500−1700億円の費用がかかるのだそうだ。買収ばかりしている何処かの企業とは覚悟が違う。その信念があってこそゾフルーザをはじめとする複数の新薬を上市できたのだ。「自分の考えにもとずかないといけない。振りまわされると難しい」と言われる。やっぱり何かを達成した人は言うことが違うと感心する。

RNAウイルスは変異しやすい。ゾフルーザも耐性株が出てくると考えられる。ロッシュと提携するそうなので作用点の違うタミフルと併用で耐性株が出現する前に抑え込むことも考えているのかもしれない。下手の考え休むに似たり。すでに記事になっていた

私はなぜインフルエンザウイルスの原液を飲んだのか?自分の体を使ってワクチン開発をやっていたとかカッコいい話ではない。私が大学院生のころはピペットエイドみたいな便利な機器はなく、ピペットはゴム球のようなもので吸い上げていた。つけたりはずしたり面倒臭いことこの上ないし正確に止めることが難しい。私は当時から実験に関しては自ら恃むところすこぶる厚く『私失敗しないので』とうそぶいて(ホンマか?)口で吸っていたのだ。案の定何かのはずみで吸いすぎて卵50個分くらいの
濃厚な生ウイルス液を全部口に入れてしまった(インフルエンザウイルスは鶏卵で増やす)。もちろん使っていたのはA型ワクチン株だし気道に入った訳ではないから特に症状は出なかった。意外と最も効果的なワクチン接種方法だったのかもしれない。以来B型に感染することはあってもA型インフルエンザには罹患したことがない。35年以上前の話である。


投稿者 : yoshimura1212 投稿日時: 2019-01-19 19:04:31 (1832 ヒット)

インフルエンザが猛威を振るっている。電車通勤なので咳をしている人が近くにいると席を移動したくなる。当ラボでも2名ほど戦線離脱し1人suspectがいる。私もこの数日身体が怠い。いよいよインフルエンザかと身構えたが、いやいや自分にはA型には終身免疫が成立しているはず(学生時代にA型インフルエンザウイルスの原液を飲んで以来A型に感染したことがない)。よくよく考えたら「花粉症」に違いない。気象予想でもまだ花粉は出始め。ほとんどゼロ。しかし生ける超高感度花粉検出マシーンは違うのだ。私は1月の出始めが症状のピークで、最も花粉の放出が盛んな2,3月はむしろ身体が慣れて治まってくる。といっても激烈な症状は出ないものの倦怠感は避けられない。早めに家に帰って寝ることにする。
土曜日の朝は「チコちゃん」の再放送を楽しみにしている。今日は以前好評だった放送の再放送で手抜き回。「セコく生きてんじゃねーよ」といいたいが一つだけ感銘を受けた。「大人になるとなぜ時間が早く過ぎるように感じるか?」子供の1年は長く大人(特に私のような老人)には短い。その差は「トキメキ」の差なのだそうだ。脳の記憶可能な空き容量の差ではないという。ともかく老い(=時間の高速化)を止めるには「トキメキ」が必要なのだ。学者は好奇心の赴くままに「知的トキメキ」を常に追い求めているので1年が長そうに思われるかもしれないが私は違う。仕事の大半はトキメキとは無縁の雑用。教室員がめちゃめちゃエキサンティングな結果を持ってきてくれたら「トキメク」に違いないが、昨日も今日もネガティブデータばかりで1年が1週間にタイムスリップする。なお同時のチコの質問に「タイムマシン」の話題が出されていたのは偶然ではないのでは?時間をゆっくり流すには「なるべく速い乗りものの中にいること」。といってもそれは乗り物の外から観察した場合で、中の自分の時間の流れはごく普通にしか感じられないそうなので解決にはならない。やはりどなたか「トキメキ」を与えてくださらないか?


投稿者 : yoshimura1212 投稿日時: 2019-01-16 23:08:00 (1902 ヒット)

 昨日今日とAMEDのCREST・PRIME会議。といっても自分が指揮する領域ではなく自分が審査される方の領域。普段評価するほうなので評価される方になるのはかなりつらい。ひどく緊張する。しかしこの領域の若い人たちの発表はすごくて衝撃を受けるものが多い。つい自分もアドバイザーのような気分になってしまう。睡眠の研究をされている若い人がいた。驚くべきことにミミズのような線虫も眠るんだそうだ。発表のあとつまかえて質問する。最後に「睡眠だけに夢のある研究ですね」座布団1.5枚欲しい。いや0.5枚か。


投稿者 : yoshimura1212 投稿日時: 2019-01-14 15:36:21 (1542 ヒット)

昨年と違ってこの正月は胃腸不良と膨大な雑務のためにほとんど神社にお参りしていない。神仏だけが頼りの自分としてはこれはなんとかしないと、と思っていたところ、今朝何気なくNHKをつけたら「さし旅-仏像マニアと巡る新春!ご利益ツアー」という番組をやっていた。なんでも目黒の「大国寺」に仏像がたくさんあってかなり「ご利益」があるらしい。正月の参拝は神社と思い込んでいたがお寺でも「ご利益」は同じか。
京都に長くいたので仏像は馴染みがあるが、東京メトロの冊子によると江戸にも結構由緒ある仏像がたくさんあるらしい。今日は雲ひとつない快晴で縁起がよさそうだ。目黒なら近い。というわけで早速行ってみた。テレビではかなり大きなお寺のように見えたのに結構小さい。しかしお地蔵様やら石仏やら五百羅漢やらかなりの数の仏様がいる。予想した通り同じくテレビを観て駆けつけたと思われる単純な、もとい素直な老若男女で賑わっていた。テレビでは先生が「仏様もこっちをみているのだから長時間しっかりお願いするように」と言われていたが後ろがつかえているのでそうもいかない。主だった仏像を片っ端から拝んで「お願い」を早口で唱える。そしておみくじを引くとなんと「凶」。しっかり勉学に励まないといかんと諌められた。このお寺はおみくじがなんと50円で良心的だ。100円いれたのでもう1回引いてもいいはず、と今度は「吉」。どうも「凶」と「吉」の2種類しかないようだ(筒を振って出た番号の引き出しを開けて取り出すタイプなので、好奇心を抑えられなくて、、、)。「くじ」みたいなものをあてにせず精進せいということだろう。

「くじ」といえば西川先生のオヤジギャクをひとつ。日本が国際捕鯨委員会から脱退したことについて「鯨だけに目クジラ立てることもない」。座布団2つくらいあげたい。
ではなぜ「とがめる」ことにクジラが関係するのか?ボーッと生きている自分は知らなかったが海のクジラとは関係ないらしい。目尻(めじり)のことを「目くじり」ともいうそうでそれがなまって「目クジラ」になったのだ。明日すぐに自慢できる無駄知識。


 


投稿者 : yoshimura1212 投稿日時: 2019-01-09 09:00:36 (3153 ヒット)

予想通り正月の発表だったせいかプレスリリーリスの反響はほとんどなし。まあ予想通りで仕方ない。しかし研究者からは早速いろいろ指摘を受けた。まず公共のデータベースに登録した遺伝子発現データの名前が逆ではないか?とメールが来た。調べてみると確かにそうでこれはすぐに訂正してもらった。それにしても論文出たら直ちにデポジットされたデータを利用しようというのはすごい。英語の文章の意味がわからん!という欧州の大学院生からの指摘もあった。これは英語力のないこちらが悪い。
“Treg-cell-mediated suppression of Il6 induction was partially restored by an anti-AREG antibody.”
『AREGの中和がTregの機能を回復させる』のはおかしいのではないか?というわけだ。確かに言われてみるとその通りのような気がする。でもIl6の低下をAREG抗体は元に戻したと実験事実を述べただけと言えないこともないような気もする。nativeでないとわからない?いずれにしても曖昧な表現だったことは間違いない。スンマセン。それにしても細部まで舐め回すように読んでいる人がいるものだと感心する。感謝すべきことかもしれないが今後何を言われるかと不安になる。
よくtop journalに論文を出すにはどうすればいいですか?と聞かれることがある。私は大した数出してないので答えに窮するが、とりあえず答えるのは「数を打つこと」。自分が責任著者で出したNatureは2001年のSPRED以来である。この18年間おそらく50回以上トライしている。大学院生の『記念投稿』も多い。そのうちEditorが気に入ってreviewにまわしてくれたのが5つくらい。4つrejectを食らって最終的にOKが出たのは今回の1つだけ。なので実は先へ進む確率は雑誌全体の数字とほとんど変わらないかむしろ低い。母数が大きければ奇跡的に最後まで残る期待値も増えるということ。当たり前でつまらない話だ。
今回はしかし秘策?があった。神頼みはもちろんのことながら、reviewerになりそうな大家を国際学会で捕まえて無理やりマンツーマンでパワポを見せながら内容を紹介した。そこでアドバイスをもらった。それを解決しておけばさすがに無下にはできまい。評点はあがるだろう。実際これは効果があったと思う。学会などでは論文が受理されるまでは「真似されたら困る」と秘密にしておく方も多いと思うが未発表のデータを見せて議論することはそんなに悪いことばかりではない。私のところは自転車操業なのでなけなしの未発表データで話さざるを得ない台所事情もあるが。

た一緒に研究してくれる特任助教か助教を募集しています。興味ある方はメールください。


投稿者 : yoshimura1212 投稿日時: 2019-01-03 07:50:49 (3485 ヒット)

新年おめでとうございます。2019年も張り切っていきたい。と意気込んでいたら元旦からノロにやられた。でももう回復した。今日から頑張りたい。
さてようやく伊藤さんの論文がNature on lineになった。なんと英国時間では1月2日である(欧米は休みは元旦のみか)。印刷は1/10号だそうだ。acceptが来てからずいぶん待たされたが「速報誌」なのでしかたない。プレスリリースも行ったが、残念ながら正月休みで何処もとりあげてくれてない。。。まあ正月からめでたい話と納得したい。ライフサイエンス分野では「新着論文レビュー」というのがあって3大誌本誌姉妹誌に掲載されたら総説を書いてくれと依頼が来る。意気込んで早めに原稿を送ったら11月末で新規掲載は停止だそうだ。インパクトファクター至上主義を助長すると批判されたのだろうか。。。せっかくなので日本語で理解しやすいだろうから内容はこちらで
プレスリリースでは一般受けを狙って脳内制御性T細胞(脳Treg)がセロトニンで増えるのでセロトニンを増やす抗うつ薬が脳梗塞のリハビリに効果があるのでは?という話を中心にしている。実際に今までの報告では治療効果があるとされてきたのだが、昨年末発表された大規模試験の結果は微妙でまだ研究の必要があるらしい。私は某社の間葉系幹細胞療法のように直接投与したらよいのではないかと思っているのだが。

ともかく日本語総説を読むのは面倒、内容を簡単に知りたいという方のためにあらすじを書くと以下のようになる。
通常脳内にはリンパ球の数は少なく脳内の免疫細胞といえばマクロファージの仲間のミクログリアだけだった。しかし脳内で炎症が起きるとリンパ球(T細胞とB細胞)が浸潤してくる。特に脳梗塞のような大きな組織損傷が起きるとリンパ球の浸潤が起きる。しかし脳梗塞後の一週間程度は浸潤マクロファージを中心とした自然免疫応答が中心で、リンパ球の意義はγδT細胞という特殊な自然免疫系のT細胞以外不明であった。おおまかに言うと、脳梗塞後1日目にマクロファージが炎症性サイトカインを放出し炎症を煽るが3,4日もすると今度は同じマクロファージが掃除屋になって炎症の引き金となるような物質を食べて炎症を収束させる。余談だが「はたらく細胞」のマクロファージ(なぜかカワイイ少女)は大ナタを振り回して細菌をやっつけているのと、ほうきを持って掃除しているのと2種類描かれているがマクロファージの性質を的確に表現している。
ということで脳梗塞後1週間を過ぎるともう免疫の役割は終わりと思われてきた。一見炎症の症状が見られないからだ。ところが伊藤さんは2週目以降にはT細胞が脳内に大量に集積することに気がついた。特に梗塞を起こした部位の内部だけでなく周辺にも集積している。またCD4陽性のT細胞の半分がTregであった。これほどTregが多ければ炎症反応が見えないのもうなずける(Tregは炎症を抑える細胞だから)。実はこの研究を行っている途中で「脳梗塞後30日もするとTregが脳内に集積する」という報告がなされたので「先を越されたか!」と肝を冷やしたのだが内容は記載のみでTregの除去実験は不完全だった(おそらく脳梗塞研究の専門家でCD25抗体でTregを除去したとしているのだが、免疫学の界隈ではこの方法ではほとんど除去できないことはよく知られている)。ここは落ち着いて伊藤さんは解析を進めた。重要なことは(1)脳Tregは神経症状の回復に一役買っている。そのひとつの役割はアストロサイトの過剰な活性化を抑制することにある。(2)脳Tregはいわゆる組織Tregの一種で組織特異的なTCRを有し、IL-33受容体を発現してIL-33に依存して増える。(3)アンフィレグリン(Areg)というサイトカインを放出することでアストログリオーシスを抑制する。(4)一方他の組織Tregと異なりCCR6,CCR8を発現し特殊なケモカインに引かれて脳内へ浸潤する。(5)なぜか7型セロトニン受容体(HTR7)を発現しセロトニンに応答して増幅、活性化される。
脳Tregは脳梗塞という特殊な状況でのみ生じるわけではない。現在自己免疫性の脳内炎症モデルなども調べているが、脳内にTregが留まることでセロトニン受容体を発現するなど脳Tregの性質を獲得するようである。「脳と獲得免疫」。多くのヒトの神経疾患は長い時間のかかる「慢性疾患」である。慢性(=長期間)であれば獲得免疫の出番だ。脳の病気における獲得免疫の意義の解明はこれからだと思う。
 


  
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