何も大晦日の22時を狙ってacceptくれなくてもよさそうなものなのに。高里さんは2013年3月で卒業。論文は紆余曲折を経てPlosOneにacceptをもらいました。抗原特異的Tregが臓器(心臓)移植の拒絶反応を抑制できることを示した論文です。top-journalからはconceptualに新しくないと極評されましたが、実際に(マウスですが)抗原特異的Tregが使えることを示し、その効率的な作製方法を示したことは大いに価値があると信じます。
高里さん、おめでとう!なんとかacceptをもらいました。成否はともかく学問成果は常に世に問うことが必要なのです。もちろん完成の頂点に立つ仕事であればすばらしいですが、そんなことは滅多に無い。しかしたとえ一粒の麦となっても、実験成果は公表してこれを受け継ぐ人たちの参考材料になる必要があります。学問はそうやって発展して行き、何時か何処かで現実の治療や診断につながっていく。この仕事もいつか必ず評価されることでしょう。
Prevention of allogeneic cardiac graft rejection by transfer of ex vivo expanded antigen-specific regulatory T-cells
西本君のTh17による乾癬モデルの系を供与します。共同研究その他貴社のご希望に応じて技術供与します。必要なら研究員を派遣して技術指導もいたします。世の中のほとんどのモデルはγδT細胞に依存したモデルです。これでTh17阻害剤の評価はできません。γδT細胞とTh17の薬剤感受性には雲泥の差があるかです。我々のモデルはより正確にTh17の評価が出来るでしょう。気軽にご相談ください。
11/23あたりから教科書の読み会をスタートできないかと考えています。土曜日10時より東校舎1F会議室にて。教科書は以下。学生諸君の参加を待っています。2年ほど前にもやりましたが学部生はなかなか最後まで行き着けない。15回程度で3月中に終わる予定。免疫学をもう一度勉強してみたい大学院生も歓迎。
Cellular & Molecular Immunology, 7th ed. A.K.Abbas, A.H.Lichtman & S.Pillai (eds.)
貸し出し制度有り。希望者はメールで連絡を。
以前も紹介しましたが本HPではバナー広告を募集しております。本サイトの維持にもある程度の費用がかかるためですが、格安で掲載しますのでご担当のかたはぜひご検討下さい。
03-Sep-2013
Dear Dr.Yoshimura:
I am pleased to inform you that your manuscript INTIMM-13-0052.R1 is accepted for publication in International Immunology.
『Aryl Hydrocarbon Receptor plays protective roles in Con-A induced hepatic injury by both suppressing IFN-g expression and inducing IL-22』
この論文は肝臓においてもAhrやRORgtに依存したIL-22-producing innate-lymphoid cell (ILC22)が存在してConA-induced hepatitisを抑制することを証明した。肝臓のILC22は非常に数が少なく実験は困難を極めたが阿部さんは東京で1年、残りを広島で粘り強く実験してくれた。すでにILCの研究の世界は相当に進んでいるが、肝臓での証明はほとんどなく今後の展開に期待したい。
田宮君の論文"Smad2/3 and IRF4 play a cooperative role in IL-9-producing T cell induction"が掲載号のIn This Tssueに選ばれて紹介されました。これはすごい。。。やっぱりもったいなかったか。
TRAF6 is essential for maintenance of regulatory T cells that suppress Th2 type autoimmunity
この論文はTreg特異的にTRAF6を欠損させるとTh2タイプの自己免疫を発症することを発見したもので、fate-mappingマウスまで用いてTregでTRAF6のシグナルがFoxp3の安定性に重要な役割を果たすことを示した。TregでTRAF6を欠損させると自己抗体の産生やIgE産生があがってSLEやアトピーのような複雑な症状を示す。Tregは不安定となりRagに移入するとexFoxp3(TregからFoxp3の発現を失った細胞)が増える。Reviseでは統計処理のことも言われて移入実験を再度やり直したために3ヶ月という長い時間がかかったが、fate-mappingマウスを使うことで内容的にはかなり精度があがったと思う。炎症がひどくなるほどexFoxp3が増えることも確認できた。しかしexFoxp3は原因か結果かは実はまだよくわからない。またなぜTregが不安定になるとTh2優位なのかという根本的な謎も今後に残された課題だ。ともかくも武藤君、小谷君、落ち武者の近藤君の頑張りを褒めてあげたい。(落ち武者ネタは朝ドラみてるひとだけわかる)めでたいことだ。
皮膚科から出向してくれていた西本君の論文。4年で終わらずに4.5年かかったが完成度の高い仕事になったと思う。
Dear Prof. Yoshimura:
I am pleased to inform you that your manuscript titled "Th17 cells carrying TCR recognizing epidermal autoantigen induce psoriasis-like skin inflammation" has been accepted for publication in The Journal of Immunology.
皮膚抗原特異的なTCRトランスジェニックマウスのT細胞をTh17に分化させてからRagに移入すると乾癬様の症状を示した。当然のように思えるかもしれないが(実際、審査員のひとりは新規性がないと言ってほとんどrejectの感じだった)、これまで本当に皮膚抗原特異的Th17で乾癬が起こせたマウスモデルは存在しない。多くはIL-17はγδT細胞から産生されるacuteな皮膚炎だ。なのでacuteモデルではヘルパーT細胞を標的とした薬剤の効果は十分に検証できない。例えばCTLA4-IgとかRORγtアンタゴニストなどを評価するにはTh17依存性皮膚炎モデルが必要だった。本論文では明確なTh17依存性の皮膚炎を示すことができたし、メカニズムの上でも重要な発見がいくつかった。例えば実際にはTh17をRagに移入するとIL-17陽性IFNγ陽性のTh17/1に変化する。Th17/1がpathogenicなわけだが西本君はIFNγノックアウトマウスと交配することでIFNγ自体は乾癬に必須でないことを明確に示した。これは腸炎と違って極めて驚くべきことで、乾癬におけるTh17/1のpathogenicityの本体はきちんと調べ直す必要があると思われる。
ともかくもacceptになってよかった。Reviewer#1の意見が厳しかっただけにre-reviseがなくてほっとした。学会等の発表では極めて評価が高かった仕事だ。国際皮膚科学会でも優秀賞をもらったものだ。西本君の4.5年の粘りを素直に褒めてあげたい。おめでとう。
I am pleased to inform you that your manuscript titled "Smad2/3 and IRF4 Play a Cooperative Role in Interleukin-9-Producing T Cell Induction" has been accepted for publication in The Journal of Immunology.
久しぶりに嬉しいニュース。Smad2/3がIRF4とくっついてTh9分化に必須であることを明確に示した。
Reviseを送ってわずか1週間でacceptの返事がきた。完成度の高さから言うとJIのレベルではないと思う。もったいないことをしたような気もかなりする。前回の最初のSmad2/3のTregの論文(Takimoto et al.)もそうだった。どうもTGF−βネタは冷遇される傾向にある。これを打破するにはよい論文を積み重ねるしかない。次はさらにハイランクの雑誌を目ざそうではないか!夕方ピザとビールでお祝いをしたのに集まりが悪くさびしく乾杯。
免疫学講義の学生の出席率が悪い。細菌学ではあんなによかったのにまたダークサイドに落ちたか。これからはずっと外部講師が続くこともあり私が直接席をまわって名前を聞く。後ろの席に座っていると加点が少ない。つまり前の方が出席点が高い。理由なき欠席者はマイナス点をあげよう。もちろん内職も減点。講義を集中して聞けば試験前にかなり楽になる。それは間違いない。
吉田秀行君は昨年春に卒業してすでに某化成メーカーの研究所で研究員として働いている。在学中に彼はTh17とそれをモジュレートする化合物、天然物のスクリーニングを行い、2つの論文を発表している(Biochem Biophys Res Commun. 2012 May 25;422(1):174-80.とBiochem Biophys Res Commun. 2012 Feb 10;418(2):234-40.)。一方でたくさんの未発表データを残していた。今回スクリーニングで見いだしたTh17阻害物質のなかでCDK阻害剤が個体レベルでもEAEを抑制することを見いだし、論文としてまとめることができた。ただCDK阻害剤がどのようにTh17を抑制するのか、その肝心な点が未解明なままである。本研究では卒研生として1年間この研究に従事してくれた谷いとさん、revise実験を行ってくれた小谷君の協力なしには完成できなかっただろう。それにしても阻害剤の仕事は難しい。相当の時間と労力と研究費を費やしたが、新規のメカニズムに迫ることがなかなかできないからだ。もちろん治療効果があれば十分という考えもあるだろうが、それはヒトまでいかないと評価が定まらない。
Yoshida H et al. CDK inhibitors suppress Th17 and promote iTreg differentiation, and ameliorate experimental autoimmune encephalomyelitis in mice BBRC in press
実は慶應に行くことが決まってから実際に医療に貢献できるような仕事をしようと誓った。私立大学の医学部ということで臨床や製薬企業との連携も可能ではないかと考えた。しかしJAK阻害剤など我々が少ないライブラリーからスクリーニングして得られた化合物などたかが知れていることを思い知らされた。標的が決まってしまえば企業の潜在能力はすごい。今やJAKやRORはベンチャーも含めどこもかしもやっている。だから大学人は新しいコンセプトを出すことが重要なのだと再認識した。そのコンセプトを企業が受け入れてくれるかどうかはわからない。15年前に私がJAK阻害剤の有用性を説いても誰も見向きもしてくれなかった。それでも昨今のJAK阻害剤の興隆をみるとあきらめずに自分の信念に基づいて訴え続けることが大事なのだと思う。CDK阻害剤は関節リウマチで医科歯科の上阪先生が長年その有用性を訴えておられる。今回の仕事ではリウマチ以外の自己免疫疾患でも応用可能かもしれないことを示している。
4/1新学期が始まる。科研費のほうは悲喜こもごも(悲のほうが多いようだが、、、)。今日から微生物学免疫学教室はひとり教授体制となる。小安教授が理化学研究所の統合生命科学研究センターのセンター長代行に栄転されたためだ。私は新教授の赴任まで旧小安研と吉村研を束ねて教育と研究を推進する任をまかせられた。とても一人でできることではないので教室員一丸となってこれまで以上のパーフォーマンスを披露したい。同時に新教授が一日も早く決まって赴任できる環境を整えることがもうひとつの私の使命である。そのために全力を注ぎたいと思う。午前中教室会議を開きそのような意向を教室員に伝える。その後恒例の御苑での花見を行った。幸い昨日までの寒さは和らぎ薄日が心地よい花見日和だった。残念ながら桜の峠は過ぎて桜吹雪のなかでの食事会となったがそれもまたよし。今年は2名の気鋭の大学院生が参加してくれた。旧小安研の方々も一緒に花見を楽しんだ。写真はこのHPのトップページに掲載されている。
花田俊勝君は九大時代のうちの助教から平成17年にオーストリア科学アカデミー分子生物科学研究所(IMBA)のPennigerのところに留学した。それからもう7年の歳月が流れ彼のオーストリアでの仕事がようやくNatureのArticleとして2日ほど前に掲載された(今日気がついた)。実際には昨年より京都大学で特任准教授になっているので留学期間としては6年だろうか。それでもよく頑張り、粘ったと思う。そのひたむきな姿勢があっての成果だろう。心からおめでとうを言いたい。Reviewerが途中で替わったり、多くの追加実験を要求されたりで大変だったと聞く。さすがにNatureのArticleなのだからその苦労は推して知るべし。私は日和見なので実はJCIクラスでもいいから早く論文にして帰ってこいと呼び戻そうとしたことがあった。しかしそれは間違いだった。花田君には途中で投げない、妥協しないことの大事さを教えられた。これをステップに次はぜひ教授を目ざして欲しい。
Toshikatsu Hanada et al. CLP1 links tRNA metabolism to progressive moto-neuron loss
Nature in press doi:10.1038/nature11923
インターフェロンサイトカイン学会/マクロファージ研究会の学会の資金作りに当HPにバナー広告を募集したところ、タカラバイオ(株)さんに一口のっていただいた。残念ながら私の収入になるわけではない。でももしこれで宣伝効果があると判断されたら学会終了後も引き継き利用してもらえたらありがたい。
それにしても学会の資金集めは難しい。昨今は寄附も集まりにくいとは聞いていたがその通りだった。それでもプログラムがもうすぐ完成する。派手なことはできないがこじんまりとでも学術的に充実した会にしたい。ぜひ多くのサイトカイン、免疫、炎症関係の研究に興味ある方々の参加をお願いしたい。
関谷君はTregをつくるのに必須の遺伝子を発見しました。この遺伝子はNR4aと呼ばれるもので単独でFoxp3プロモーターを活性化できます。こんな遺伝子は他にありません。詳細な内容は以下のJSTのプレスリリースおよび原論文を参照ください。
免疫反応を抑える細胞が作られる新たな仕組みを発見
慶應のプレスリリースはこちら。
"Nr4a receptors are essential for thymic regulatory T cell development and immune homeostasis" Sekiya et al. Nature Immunology on line
「医療・介護情報CBニュース」
Yahooででていたのはこちら。
アメリカの時間ではまだ12月12日。12日に長谷川君の論文といっしょに2つacceptになった。なんともうれしいことだ。しかしImmunityからは同じ日にrejectが来たがそれは忘れよう。写真は卒業生の若林君から贈られたケーキ。
IL-23-independent induction of IL-17 from γδT cells and innate lymphoid cells promotes experimental intraocular neovascularization by Eiichi Hasegawa et al. J. Immunol. on line
九大の眼科から参加してくれた長谷川君の労作。もちろん最初はハイレベルの雑誌からスタートしたのですがなかなか意義を理解してもらえずようやくJIに落ち着きました。加齢性黄斑は失明のおおきな原因のひとつで網膜の障害と炎症、血管新生によって起こります。これのモデルとされるのが(そこがいつもたたかれるところであるが)レーザーによる網膜の障害モデルで、最終判定を血管新生でみます。本論文ではγδT細胞やILC17からのIL-17がVEGFに匹敵する血管新生能力があることを示しています。また興味深いことにこの網膜のモデルでは一般的にIL-17の誘導に必須とされるIL-23が必要でないこと、代わりにIL-1βなどを使っていることを明らかにしました。RORγtは必要なのでもう少し詰めれば新たなIL-17誘導機構を解明できたかもしれません。またILC17も細胞数が少なく結局characterizeできませんでした。やはり眼ですから細胞数が大きな壁になりました。しかし内容的にはレベルは高い。ほぼ同じreviewerにまわったと思われ同じことを何度も聞かれましたがモデルが十分普及していないのか我々のdisplayが悪かったのか当初IL-17の意義を十分認めてもらえなかったのが痛かった。しかし脳といい眼といいIL-17の重要性はますます明らかとなってきている。次のリベンジに期待したい。
そういえば今日は12-12-12。何かおめでたいことがあるかと思ったらこれだったか?
助教の七田崇君が「脳梗塞後炎症における免疫応答の解明」で日本免疫学会奨励賞を受賞しました。12/5からの学術集会で表彰される予定です。
<内容と受賞理由>七田崇氏は、脳卒中医療に関わった経験から脳内免疫機構に興味を持ち、大学院進学後に、脳内炎症の機能研究を開始した。七田氏は脳虚血後の急性炎症に、IL-17を生産する 型T細胞が関わることを見いだした。さらに、このような急性炎症とそれに引き続く神経障害が、T細胞浸潤の阻害剤であるFTY720で抑制することが可能であることを示し、新たな治療法の可能性を示した点で高く評価されている。さらに、脳虚血時に浸潤するマクロファージの活性化が壊死細胞から放出されるペルオキシレドキシンによって誘導されることを見いだし、ペルオキシレドキシンが新規の内因性炎症誘起因子であることを証明した。七田氏の進める研究は、炎症性疾患の発症機構の理解や新規治療法の開発に資するものであり、今後の発展が大いに期待される。
インターフェロンサイトカイン学会のニュースレターにJAK発見の経緯を書いて欲しいと頼まれておりその原稿を探していた。このHPの奥深くに隠れていたのを見つけて来た。他にニュースはないのかよ?!
http://new.immunoreg.jp/modules/pico_jinsei/index.php?content_id=18
手を入れたversion。こちらのほうがどうしてチロシンキナーゼに着目したかがわかる。
念のためアナウンス。学生課から連絡を受けた3年生は東校舎4F会議室の掲示板を見に来て欲しい。先日免疫の再試の時にアナウンスはしたのだが口頭で言ったきりなので伝わっているのかどうか。まあここまでして気がつきませんでした、なら私も免責だろう。というかオレはなんて甘いのだろうと自分にあきれる。
君たち3年生は後輩(現2年生)2名以上に『微生物学と免疫学の講義は必ず出るべきである』と伝えるべきだ。君たちは”自分たちはゆとり世代の学生でかつ医学部定員もかなり増えている、そんな時代の学生である”ことを自覚すべきだ。講義なんて出なくて大丈夫、なんていう先輩らの戯言は今の時代通じない。呼び出しの学生の97%は免疫の再試受験に引っかかっていることを考えると複数の科目間の成績にはきわめて強い相関関係があることが容易に想像できる。3年生は今からでも遅くないから2学期からの講義には真面目に出席して聴講して欲しい。
来年は出席を厳しくとる。欠席はマイナス点。講堂の後ろ半分は封鎖する。講義中に寝ている者は減点。というふうに厳しく対処してみようと思う。多くの先生は慶應の学生は優秀で厳しい指導は必要ないと考えている。学生もそのように錯覚、誤解している。実態はゆとり世代なのでモル計算も満足にできないかもしれないということを教師も生徒も自覚すべきだ。また自分の子供を見ていても強く感じるのは予備校や塾で手取り足取り指導してもらうことに慣れ、家で自分で計画をたてて机について勉強する習慣ができていない。現代の学生には厳しくしてしすぎることはないと思う。微生物学はまさにそのようなコツコツとした地道な勉強が必要な科目である。
学生のひとりが”高校の同級生と話していると医学部だけが他の学部と違う、厳しい、楽しめない”というふうなことを言う。医学部は高等教育の場でもあると同時に職業訓練校でもあるのだ。専門学校と思えば当然だろう。ちと長くて学習量も多いのは同情はするが。。
8/19日恒例の免疫適塾(リトリート)のソフトボール大会。今年はグランドが宿泊施設に付随しているので早朝早くから試合を行う。それでもかんかん照りでかなり暑い。死人が出るといけないということで一試合わずか3イニング。ホームランなしで外野を超えたら2塁ストップというルールになった。第一試合は小安研と天谷研で3-4で天谷研の勝利。意外と引き締まったいい試合で思いのほか打てない。第二試合は皮膚科と吉村研で私は一回表に投げる。最初二人は軽く抑えたがそのあと打たれていきなり3点のビハインド。2回表から七田君にスイッチ。七田君は1年間投球練習したというだけあって速い。腕をふりまわすビュンビュン投法だ。2、3回とゼロに抑える。しかし味方の打つほうはなかなか飛ばない。1,2回とゼロ。今回は駄目かと思ったが3回裏に4点を挙げて劇的な逆転サヨナラ勝ちを納めた。すこしづつ球に慣れて来た。続く第三試合。小安研対吉村研。こちらが先行で一回にいきなり4点を挙げ楽勝かと思いきやその裏私も七田君も打ち込まれて5点を入れられあっさり逆転される。特に小安先生のバッテイングはすばらしい。私の内角低めの明らかなボール球をすくいあげて外野を超えた。3回にも外野を超えられた。2回は共にゼロ。3回表に3点をあげ3回裏を抑えれば優勝だ。しかしここでまた私が投げて3連打をあびて1点計上して降板。七田君が投げて後続を断ち切りなんとか勝利をおさめた。しかしよく打たれた。七田君が投げなかったら大差でどちらの試合も負けていただろう。来年に向けて精進しなければ。
Shichita T et al. Peroxiredoxin family proteins are key initiators of post-ischemic inflammation in the brain Nature Medicine 18, 911-917, 2012 | doi:10.1038/nm.2749
News&Viewでもとりあげてもらいました。
脳卒中は患者数約140-150万人で日本ではがんと同程度で、年間13万人が死亡すると言われています。脳梗塞は脳卒中の3/4を占め、脳の血流が4分間止まるだけでその部分の脳組織は壊死し、運動麻痺・感覚麻痺・言語麻痺等の様々な神経症状がでます。しかし梗塞がどのように広がり終息するかは不明でした。近年梗塞後に起こる炎症が梗塞巣の拡大に寄与することが報告されはじめ、トピックスとなっています。七田君もこれまでにマクロファージがIL-23を放出し、それがγδT細胞からIL-17を誘導し、IL-17が梗塞の拡大を招くことを示してきました。(NMのN&V)ではIL-23はどうやって作られるのか?以前からマクロファージが細菌を認識するのに使っているtoll-like-receptor(TLR) (2011年ノーベル賞)が梗塞後の炎症に必要だということはわかっていました。しかし脳は無菌的でクリーンな臓器であり、細菌やウイルスなどの外敵は通常存在しません。したがって、脳組織の中にもともと存在しており、壊死に陥った時には細胞外にばらまかれて、マクロファージを刺激して活性化させる因子(DAMPs : Danger-associated molecular patternsとひろく呼ばれている)が存在していると考えられます。七田君は新しいDAMPsを見いだすべく研究を行いました。詳細はpress-release参照。JSTへはこちらから。ライフサイエンス新着論文レビューはこちら。
毎日新聞の記事はこちら。
吉田亮子さんは昨年4月に卒業して現在は佐賀大学でポスドクをしていますが、彼女が当教室でやっていた(やり残した)仕事を論文にすることができました。以前cFosがIKKによってリン酸化され安定化しNF-kBを抑制することで樹状細胞やマクロファージで炎症性サイトカイン産生を抑制することを報告しました (Koga et al. Immunity 2009)。吉田さんは安定化c-Fosのトランスジェニックを作成し解析を行いました。cFosを強制発現させた樹状細胞はLPS刺激によってサイトカイン産生が減少し、マウスはEAEに抵抗性を示しました。以前のimmunityの報告通りの結果となったのですが、それだと新規性がないということでハイランクの雑誌は無理でした。本当は個体内では面白いTregを作るのではないか?と期待していたのですがそのような現象はとらえられませんでした。樹状細胞の改変によるT細胞のリプログラミングは結構ハードルが高いことを思い知らされました。
ついでながら今年卒業した吉田秀之君の論文も。Biochem Biophys Res Commun. 2012 May 25;422(1):174-80. Preferential induction of Th17 cells in vitro and in vivo by Fucogalactan from Ganoderma lucidum (Reishi). Yoshida H,et al. 理由も聞かされず長く放置されて、これには相当口惜しい思いをした。一応形になったので忘れよう。
何故かBBRCの論文が増える。卒業生の残した仕事をまとめるのは残った者にとっても大変なことだ。以前もぼやきを書いたが。。。。ちゃんと期限内に書かせられない指導者が悪いんだろう。
3年前に九大で学位を所得して卒業した真田君(東大医科研、笹川先生指導)がfirst-authorの論文がNatureにでていました。私が何かしたわけではありませんが嬉しかったので紹介します。細菌とホスト両方を解析し新しい防御とエスケープ機構を発見したなかなかスケールの大きな仕事です。本人の努力と笹川先生のご指導のたまものでしょう。我々もあやかりたい。いや、やはり指導者の違いは大きいことが証明されたということか。。。
The Shigella effector OspI deamidates Ubc13 to dampen the inflammatory response Nature DOI 10.1038/nature10894
医科研の紹介記事より
毎年約1500万人が感染症で命を失われ、そのなかの約200万人は腸管感染症が原因である。腸管は無数の微生物に常に暴露されているが、微生物の侵入から生体を守るために自然免疫を中心とする堅固な防御システムが幾重にも備えられている。一方、赤痢菌やその仲間である病原性大腸菌(O157等)等の腸管病原細菌は、それら防御システムを巧みに回避して生体へ侵入する高度に進化した機能を備えている。病原細菌の腸粘膜への侵入に対する自然免疫応答と、それを病原細菌がどのようにして回避するか、そのメカニズムは全く不明であった。今回、東京大学医科学研究所の笹川千尋教授と真田真人研究員らは、兵庫県立大学の水島恒裕教授および大型放射光施設(SPring-8)との共同研究により、赤痢菌をモデルにして、(i) 粘膜上皮に対する病原体の侵入認識機構。(ii) この宿主認識・防御に対抗する赤痢菌の手段 を明らかにした。具体的には、(i) 細菌が細胞侵入するときに形成される葉状突起(ラッフル膜)を危険信号として認識する仕組みとして、「葉状突起に局在するジアシルグリセロール(DAG)-TRAF6-NF-κBに依存した炎症シグナル経路が重要である」ことを明らかにした。(ii) 赤痢菌の対抗手段として菌から分泌されるOspIを同定し、そのタンパク質の立体構造(図2参照)および生化学的性状を解明した。(i)と(ii)の結果から、OspIは、上述の炎症シグナル経路の制御に重要なTRAF6の活性化に必要なUBC13に結合性して、UBC13の100番目のグルタミンを脱アミド化する「新規な脱アミド化酵素である」ことを発見した(図1参照)。本研究により、感染初期の病原体に対する粘膜上皮の新規な防御機構と、それに対抗する病原体側のあらたな戦術が解明され、これを標的に創薬やワクチン開発への応用が期待される。
JAK's SOCS: A Mechanism of Inhibition
Immunity, Volume 36, Issue 2, 157-159, 24 February 2012
1999年に安川君が膨大なSOCS1変異体を作製して解析を行った結果、我々はSOCS1のKIRはpsudesubstrateだろうと予想した。それを今日まで延々と流布させてきたが、今日修正を迫られることとなった。KIRはJAKの活性中心に潜り込むのではなく何処か別の場所でJAKと結合し、その結果活性中心の構造を変化させて酵素活性を抑制するのであった。Bacon,Nicolaらは大量の組替え体タンパクを使ってNMRと古典的な酵素反応のkineticsを追うことで新しいモデルを提唱している(Immunity, Volume 36, Issue 2, 239-250, 16 February 2012)。おそらくこれが正しいだろう。生化学の見事な成果だと思う。JAKの阻害剤はがんやリウマチの治療薬として多くの会社が開発にしのぎを削っている。この成果は全く新しい作用機序のJAK阻害剤の開発に役に立つことだろう。それにしても我々の予想が裏切られたことは口惜しい。当時はあらゆるデータと他の阻害分子の報告から最も可能性の高い機構であると信じて仮説を発表したわけだ。それが技術の進歩によって修正された(もちろん全部間違っていたわけではない)。これが科学の進歩の一例だろうと思う。修正を受けより正しい、しかも革新的なモデルが提唱されたことは科学の進歩という意味では大いに喜ぶべきことでもあるのだ。
九州大学時代に準教授として活躍し、慶應ではかんりん丸プロジェクトで特任准教授としてラボを構えていた小林隆志君が4/1付けて大分大学医学部感染予防医学講座の教授として就任することが決まりました。最近少ないうれしいニュースです。
吉田秀之君は長年JAK阻害剤のTH分化への影響を調べてきました。これまでJIなどに共著で既存のJAK阻害剤がTh1,Th2は抑制するもののTh17は増加させることを示してきました。今回リウマチ治療薬として開発中のファイザー社のCP690550というJAK阻害剤が同様にTH17を促進してしまうこと、コラーゲン関節炎モデル(CIA)は抑制するのに自己免疫性脳脊髄炎(EAE)は増悪化させてしまうことを見いだしました。その理由としてCP690550は試験管内でSTAT3の抑制効果が弱いことが原因と思われます。JAKの強制発現から細胞内ではJAK1に対してCP690550は抑制が弱い可能性が示唆されました。本論文はどうしても早く出すためにBBRCに投稿しましたが発見の価値はJIを超えると思います。
Low dose CP-690,550 (tofacitinib), a pan-JAK inhibitor, accelerates the onset of experimental autoimmune encephalomyelitis by potentiating Th17 differentiation
D4杉山さんの論文がInt.Immunologyにacceptになりました。
Smad2 and Smad3 are redundantly essential for the suppression of iNOS synthesis in macrophages by regulating IRF3 and STAT1 pathways
本論文ではLysMCreを用いてマクロファージにおけるSmad2/3の機能を解明しています。当初Smad2単独cKOでは思うような差が出せず、Smad2/3-DKO(なかなか生まれない)のマクロファージを使っての大変な実験でした。実に根気のいる仕事でしたが杉山さんはこれを粘り強く見事にやってのけました。TGFβのマクロファージに対する作用としてはNO産生の抑制とサイトカイン産生抑制です。LPSやインターフェロンによってNO合成酵素が誘導されるのですが、TGFβはこれを強力に抑制します。杉山さんは骨髄由来マクロファージを用いてSmad2とSmad3が相補的にこの抑制に関与することを示しました。また驚いたことにTGFβがない状態でもSmad2/3欠損マクロファージは非常に強くNOやサイトカインを産生することを見いだしました。このことからSmad2/3が直接IRF3とSTAT1に作用して抑制する新しい機構を提唱しています。今後Smad2/3のM1/M2分化への影響やTGFβ非依存的なSmad2/3のマクロファージ抑制作用にも興味をもたれると思われます。
11/12箱根の古風な旅館での現代的なさわやかな結婚式、披露宴だった。関谷君のマンガと俳句の披露もあった。
二人分しゃべったのでかなり長くなってしまった。予行演習では15分を超えることはなかったのでその程度とは思うが30分くらいしゃべってたと言われた。それはないとおもう。スピーチ原稿へリンク。
多数のご応募ありがとうございました。募集は終了いたしました。
私どもの研究に参加してくれる特任助教を募集します。採用はH24年4月からで学位取得見込み者も歓迎です。もしもっと早く始められるかたはH24年1月からでも可能です。
保証できる期間はH26年3月末(H24年4月からですと2年間)までですがgrantがとれれば延長は可能です。研究内容はT細胞のリプログラミングで、細胞培養や細胞生物学に習熟したひとを希望します。免疫に経験がなくても再生医学などでリプログラミングの経験があればなおよいでしょう。待遇は学振PD並みですが自分自身で研究費が獲得できれば優遇できます。照会できるかたの連絡先(メールアドレス)を添えてCV、業績目録(様式自由)を下記までメールで送付ください。
JEMon line Takahashi et al. 208 (10): 2055
高橋さんは2008年12月から当教室に所属しています。臨床の助教からの転身で、マウスを扱ったことは初めてでした。しかしポスドク期間わずか2年余りで論文をJEMに発表できたことは本人の才能と努力の証でしょう。もっとも最初の投稿は昨年の夏だったので本当に短い期間で集中して仕事を仕上げてくれました。その技術力、集中力、構想力は称賛に値すると思います。
内容的にはTregのplasticityと機能異常の話でtimelyな話題なのだが、すでに一部の表現型はRudenskyらのグループとImmunityとCellに報告しており、その点をつかれた。しかしSOCS1を欠損したTregがなぜFoxp3を失い、なぜvivoでは抑制機能を持たないか分子レベルで明らかにした点は大きい。さらにTregが樹状細胞に働きかけてeffectorのTh1/Th17分化を規定するというinstruction説を打ち出しているのが極めて新しいのだが、残念ながらさらにハイランクのjornalでは理解してもらえなかった。
JSTにプレスリリースを依頼したが諸般の事情で却下された。せっかく原稿を用意したので添付する。一般のかたはこちらをどうぞ。
現在抗炎症機能をもつ細胞としては抑制性T細胞(Treg)が中心的であると考えられている。TGFβやIL-10の供給源としてもTregは重要である。しかしTregの発生、維持に関する制御機構はほとんど知られていない。最近TregがFoxp3を失いeffectorThとなって自己免疫疾患に関与するのではないかという説(exFoxp3説)やFoxp3を失わないまでも炎症環境化ではTregがサイトカインを出して炎症に寄与するという説が出されている。最近のNature MedicineでもMS(多発性硬化症)患者ではFoxp3+IFNγ+T細胞が存在することが報告されている。
今回SOCS1のTregにおける機能について集中的に解析を行った。まずFoxp3Creマウスと交配しTreg特異的SOCS1欠損マウスを作製したところ皮膚炎や肝炎などの自己免疫疾患様の症状を呈した(Cell. 2010 Sep 17;142(6):914-29.)。SOCS1のnTregにおける役割を解明するために、in vivoでその抑制能を検討した。RAG2欠損マウスへのnaïve T細胞とそれぞれのnTregの移入実験では、SOCS1欠損Foxp3陽性nTregを移入した方が腸炎の抑制効力が劣っていた。そこで、RAG2欠損マウスへそれぞれのnTregのみを移入して、nTregの運命を検討した。GFPでマーキングしたFoxp3陽性T細胞を移入した所、4週後にWT nTregは約60% がFoxp3 陽性を維持しているのに対して、SOCS1欠損nTregは40%までFoxp3陽性率が低下した。SOCS1欠損nTregを移入したRag欠損マウスではFoxp3陽性、陰性どちらの分画からもIFNγやIL-17の産生が認められた。これらの結果から、SOCS1がnTregにおいてFoxp3の安定性およびサイトカイン産生抑制に寄与することが明らかとなった。
次にIFNγSOCS1両欠損T細胞で調べた。するとFoxp3の減少は見られなくなった。STAT1はSOCS1欠損Tregで過剰に活性化されていたがIFNγSOCS1両欠損T細胞ではSTAT1は正常であった。よって自身が出すIFNγによってSTAT1が過剰に活性化されることでFoxp3が不安定することが示唆された。しかしFoxp3が安定でもこのIFNγSOCS1両欠損Tregはvivoでは抑制能がなくnaiveT細胞の移入による腸炎を抑制できなかった。よく調べてみると移入したTregからIL-17が産生されeffectorもTh17が増えていた。同様の変化はIFNγ欠損TregでもみられたがIFNγSOCS1両欠損Tregのほうが顕著であった。つまりIFNγがなくなったことでTh1による腸炎はおこらなくなったかわりにTh17が顕著に誘導されたことによって腸炎が起こったのだ。
これらの結果はFoxp3の増減はTregからのサイトカイン産生には直接関係ないこと、またTergからIL-17が出る(Th17型Tregになる)ことでeffectorもつられてTh17に分化する(instruction説)ことを示している。このときSOCS1欠損TregではSTAT1ではなくSTAT3の過剰な活性化が起こっていた。試験管内でもTregの培養上清はナイーブT細胞をTh17へ分化誘導させやすくしていた。つまりTregのなかでSTAT3が活性化されすぎるとIL-17(おそらくIL-6なども)を出しやすいTregになり、Tregから出るサイトカインがさらに樹状細胞に対してIL-6やIL-23を誘導してナイーブT細胞をTh17へと誘導する、というモデルが考えられる。
Tregがeffectorの分化の方向性を決めるとしたら非常にユニークで新しい考えだと思われる。TregはCTLA4を高く発現しておりナイーブT細胞よりも先に樹状細胞と相互作用すると考えられているのであながちあり得ない話ではない。これからの問題は炎症でみられるIFNγ+Foxp3+T細胞やIL-17+Foxp3+T細胞が単に炎症の結果なのか、あるいは樹状細胞のinstructionを介して自己免疫疾患などの原因ないし増悪化に寄与するのか、これを明らかにする必要があるだろう。また治療の観点ではSOCS1をTregで強化することでexFoxp3やTh1Treg、Th17Tregの出現を減らせるのかもしれない。