On lineで出ました。
JST,慶應とのプレスリリースも。http://www.jst.go.jp/pr/announce/20110520/
Immunityに出していた市山君の論文がやっとacceptになりました。ほほacceptと言われてから3ヶ月近くたったので全く異例のことです。一時はrejectかと気をもみましたが、粘り強くやりとりをしてようやくacceptにまでこぎ着けました。
市山君は当教室を先春卒業し別教室に一時移籍後すでにアメリカに留学中。そんななかでreviseの作業は困難を極めましたが多くを学ぶことができたはず。これを糧にアメリカでも更なる活躍を期待したい。reviseには理不尽な要求であることも多いが今回のはきわめてまっとうで追加実験で論文はかなりよくなったと思います。
この論文はT細胞特異的Smad2/3欠損マウスのリベンジでもありました。Smad2/3-KOは考えられないほどの労力と時間と資金をかけたにもかかわらずJIどまり。私自身やるかたない思いを抱き続けてきましたが、そのなかなからSmad非依存性の応答遺伝子を見つけ出した市山君の頑張りが今回の成果につながりました。それにしてもタイトルまでかえられてしまった。"Transcription factor Smad-independent T helper 17 cell induction by Transforming-Growth factor-b is mediated by suppression of Eomesdermin" Ichiyama et al. Immunity
Th17のマスター転写因子であるRORgtはTGFβによって転写誘導されますが、Smad2/3-両方が欠損したT細胞でもRORgtは誘導されることからTh17の分化はSmad非依存的な経路によって誘導されると考えられてきました。しかしTGFβのSmad非依存的経路とは何か?どんな遺伝子がRORgtの誘導にかかわるのか?現在でも完全にはわかっていません。本論文ではまずSmad2、Samd3の両方が欠損したT細胞でTGFβで増減する遺伝子(つまりSmad非依存性応答遺伝子)をピックアップしました。これらの遺伝子をT細胞に導入したところ、eomesdermin(通称eomes、エルメスではない)という遺伝子が強力にTh17分化を抑制することがわかりました。eomesの発現はTGFβによってSmad非依存的に発現が抑制されます。もし抑制されないとTh17誘導が起こりにくくなります。eomesは転写抑制因子として働きRORgtのプロモーターに結合してRORgtの発現を抑制します。なのでTGFβがeomesの発現を抑えることでTh17分化を促進していることになります。
ではSmad非依存的経路とは何か?市山君は様々な阻害剤を用いて検討したところ、JNK阻害剤がeomesの発現抑制を解除しTh17分化を抑制することを見いだしました。TGFβはJNKを活性化することは以前から知られていましたので、全く新しい経路の発見とはいきませんでしたが、ともかくもTGFβ-->JNK-->eomesの抑制-->Th17促進というスキームが完成しました。JNK阻害剤はTh17によって引き起こされる自己免疫疾患EAEモデルを著しく改善しました。この経路の発見によって新しい治療戦略を提示できたと思います。
しかしeomesはRORgt誘導を抑制するものであって、RORgtを本当に誘導する本体はまだわかっていません。この単純そうで難しい問題こそがTh17に残された大きな問題で今後も取り組んでいきたい課題です。分子のレベルで免疫を理解して治療方法を開発する、という当ラボの方向性に興味をもってくれる学生の参加を期待します。
科学新聞社が掲載してくれたそうです。
樋渡清司君は鹿児島大学外科学教室に所属していましたが学位取得後、基礎研究も手がけてみたいと平成20年12月より慶応ラボに参加してくれました。主に腫瘍形成や転移におけるマクロファージの役割をSOCS3欠損コンデショナルノックアウトマウスを使って解析しました。彼の在任期間は実質1年半程度でしたが、その間に大いに仕事をしてくれて立派に論文をまとめあげてくれました。それがようやく日の目を見ました。その後昨年H22年9月より愛媛大学に移動しましたが現在は臨床を中心に活躍しています。当ラボで身に付けた科学的な考え方や実験方法は実証に基づいた医学(evidence-based medicine)の体得に大いに役立ってくれるでしょう。
Suppression of SOCS3 in macrophages prevents cancer metastasis by modifying macrophage phase and MCP2/CCL8 induction Cancer Letters 308 (2011), pp. 172-180
本論文ではまずマクロファージ特異的SOCS3欠損マウスがBL16メラノーマの腫瘍移植モデルおよび転移モデルに抵抗性を示すことを見いだしています。SOCS3欠損マクロファージは通常M2タイプと言われ腫瘍の成長を促進すると予想していましたが逆の結果で驚きました。樋渡君は腫瘍抽出液にTLRを介したマクロファージ活性化因子があることをつきとめWTとSOCS3欠損マクロファージで活性化の違いを比較しました。その結果SOCS3がないと炎症性サイトカインTNFαやIL-6の産生が低く、炎症が抑制されていることがわかりました。このような炎症性サイトカインの低下は全身性に腫瘍抵抗性(あるいは全身状態の改善)を導くものと考えられます。一方で腫瘍内のマクロファージはSOCS3欠損のほうが集積していました。アレイ解析の結果、SOCS3欠損マクロファージはSTAT3を介してMCP2/CCL8を高産生していることがわかりました。MCP2は単独投与で腫瘍の転移モデルを抑制しました。MCP2の抗腫瘍効果のメカニズムは十分わかっていませんが、マクロファージでSOCS3を低下させることでケモカインを介した抗腫瘍効果を増強できることが明らかとなりました。本研究は炎症と転移の関係に新しい知見を加えたものとして高く評価できると思います。
大学院生の石埼君(群馬大内科出身)の論文がGenes to Cellsに受理されました。 慶應ラボがスタートした年に参加してくれた院生の最初の論文ですので私も喜びひとしおです。Spred1コンデショナルKOマウスとmiR126を組み合わせた内容でmast-cellのIgE応答をmiR126がSpred1を介して正負に制御していることを示した論文です。Spred1はIgE受容体からのERKを抑制しサイトカインの産生を抑制しています。miR126の強制発現によってSpred1が減少しサイトカイン産生が増えます。Spred1欠損マスト細胞ではmiR126の効果が見られないことからmiR126--Spred1--ERK--サイトカイン産生という制御系が成り立つことをきれいに証明しました。
Spred1/2-DKOの解析等まだまだこれから発展させるべき仕事の端緒ですが、とりあえずひと呼吸おいて次につなげて欲しいものです。
miR126 positively regulates mast cell proliferation and cytokine production through suppressing Spred1
Genes to Cells (2011) 16, 803–814
関谷君の論文
"The nuclear orphan receptor Nr4a2 induces Foxp3 and regulates differentiation of CD4+ T cells"
この論文ではオーファン核内受容体NR4a2がFoxp3の誘導とIFNγの抑制に重要な役割を果たすことを示しています。NR4aファミリーは生体内で神経系や造血系で重要な役割を果たしていることがすでに知られており今回免疫系、特にT細胞での機能が明らかになりました。最も重要なことはNR4a2は単独で抑制性T細胞のマスター遺伝子であるFoxp3を誘導できることで、TGFβに次いで、人工的にTregを作り出しうる可能性が示されました
詳細はプレスリリース参照。
関谷君は当ラボに来てまだ2年半ですが、優れた実験技術と論理的な考察で姉妹紙に短期間で論文を発表できたことは快挙です。内容的には論文2つ分以上の実験データが詰まっています。今後もこのファミリーを中心にエピジェネテック転写制御による免疫コントロールという極めて大きな、先進的分野を開拓して行ってもらいたいものです。
炎症を抑える新しいたんぱく質を発見
-花粉症などのアレルギー疾患や、炎症性疾患の新たな治療法開発に期待-
3/17、このような時期ですので質素簡潔に送別の会を催しました。いつものようにピザとすし。配達されるのか心配でしたがちゃんと時間通りに来ました。アルコールは控え目に。今回本当はこの2名の他に技術員の福勢さん、大学院生の森君、研究員の吉田さんも送別する予定だったのですが、地震のために延期となりました。歓迎会の時に来てもらうとして今日は出発の日が近い二人をまず送り出すことになりました。椎野さんは3年、橋本君は6年の長きにわたって研究室の発展に尽くしてくれました。椎野さんは子供をかかえながらも、よくラボをもりたてていただいた。その的確な仕事ぶりには目を見張る。責任感は強く本当によく切り盛りしていただいた。切れ目なく東工大に次の職がすぐに決まったこともうなずける。橋本君は6年間、本当によく頑張った。論文も2報だし就職も塩野義の研究職に決まりまさに順風漫歩。6年間の思い出話に花が咲いた。慶應ラボの立ち上げや整備、マウス室の管理などに自分のことをあとまわしにして率先してやってくれた。私はそれにはいつも感謝していたし、彼の仕事ぶりには一目おいていたつもりでした。ただあまりそれは伝わっていなくて、怒られた思い出しかないとさんざん言われた。まあ褒められたことよりも怒られたことのほうが記憶に残りやすいのでしょう。ともかくも今日は立派に卒業だ。この6年間に三重丸くらいあげたい。塩野義でもきっと力を発揮してくれることでしょう。
ところで、橋本君の雑誌会で私が自分で選んだ論文を渡して”これを紹介してくれ”、と頼んだことがあったという。実際に発表したらつまらない論文だったので私が”一体誰がこんなつまらない論文を選んだんだ?!”と怒ったという。そんなことがあったかもしれない。記憶に全く自信がない。昔私が大学院生だったころも同じようなことがあった。教授に言われてやった実験データを持っていったら”誰がこんなつまらん実験を考えたんだ!”と言われたことがある。歴史はくりかえされる。学生は教授なんてそんなもんだと思っていて欲しい。
東北地方太平洋沖地震により東京のラボも相当揺れた。しかし幸い福岡地震の時のようなビーカーが割れたり機器が倒れたりということはなかった。職員大学院生にもケガなどなく不幸中の幸いであった。
JSTからのプレスリリース(複雑な話なのかどこからも取材はなかったが)。NCのリンク 日経バイオのリンク やっぱり難しくてなんのことか理解できなかった!?こちらのHPのかたはかなり頑張って読み解いていただきました。書かれてある通りです。もっと簡略に書けばよかた。。スミマセン。
知念君は九大の内科出身でうちの学振PDでしたが、昨年4月からすでにNew YorkのRudenskyラボに留学しています。彼のこの論文は留学後投稿していろいろと難癖つけられましたがようやくacceptにまでこぎ着けました。これまで費やした時間を思うと本当に感無量です。なぜこんなに時間がかかったのか、、、おそらく単に私の書き方がまずかったのだろうと思います。内容が複雑なので書き方をかえるべきだったと途中で思ったのですがreviewのあとだったのでしかたありません。昨年のBMB2010で発表した話の展開が最もわかりやすくインパクトがあったろうと思います。この話はSOCS1/Rag-DKOが激しい腸炎で死亡することからスタートしています。そのメカニズムを解明しようとして新たな消化管の免疫寛容(自然免疫の抑制)機構の発見(再発見かもしれない)にたどり着きました。途中で事情により論文のタイトルが"Prostaglandin E2 and SOCS1 play a role in intestinal immune tolerance"といういかにもインパクトがないものになってしまったことがかえすがえすも残念です。しかしともかく知念君のDKOマウスの観察からPGE2システムの破綻に気がついた慧眼に賞賛を送りたいと思う。写真はNYでボスと(タイトルは”巨星と巨星(虚勢?)がぶつかるとき”だそうです)。
Tregなどから産生されるIL-10は自然免疫系の過剰な活性化を抑え、腸炎等を抑制することはよく知られている。我々は獲得免疫系(特にTreg)を欠損するRag欠損マウスでも自然免疫系の過剰応答が起こらないことに着目し、第二の抑制系の存在を想定した。まず腸上皮細胞培養液や腸抽出液において樹状細胞やマクロファージのTLRリガンドによる活性化を抑制する因子が存在することを確認した。精製や解析の結果、この因子はPGE2であることを確認した。そこでRag欠損マウスにインドメタシンを投与しPGE2の産生を抑制したところ極めて重篤な腸炎を発症した。この腸炎はTregの移入(すなわちIL-10の供給)や腸内細菌の除去(TLRを活性化させない)、あるいはPGE2受容体EP4のアゴニストの投与によって軽快した。よってPGE2-EP4経路は個体においてもIL-10と独立して機能するTLRの抑制系であることが確認された。では腸炎を発症する時はこの経路はどのように破綻しているか?Rag/SOCS1欠損マウスでも似たような腸炎を発症することからSOCS1がPGE2-EP4経路の重要な調節因子であることが示唆された。試験管内の解析の結果、SOCS1欠損樹状細胞はSTAT1が過剰に活性化されておりPGE2によるTLR経路の抑制が破綻していることがわかった。IFNγ—STAT1経路は炎症を促進するシステムであるが、駒井さんの実験などから、STAT1が抗炎症経路PGE2-EP4に拮抗することが明らかとなった。すなわち過剰なIFNγは腸炎を促進するが、そのメカニズムのひとつはEP4シグナルの抑制であることが明らかとなった。今後EP4シグナルが樹状細胞を介してT細胞、特に末梢での抑制性T細胞の産生に及ぼす影響を明らかにしたい。
その後質問を受けました。では大腸炎患者さんでは鎮痛剤として使われるNSAIDは使っていけないのか?そうです。慎重投与もしくは禁忌です。薬の注意書きにも書いてあります。言い忘れましたが、PGE2は私どもが発見したマクロファージへの作用の他、上皮細胞の保護や再生を促す作用もあります。PGE2は複数の機構で腸管の恒常性を保つのに役立っているのです。
いつものように夜中の2時頃目が覚めた。昨日はサンディエゴのUCSDに留学中の谷口君とラホヤアレルギー研究所に留学中の安芸君を訪ねた。谷口君は一昨年より、安芸君は昨年より留学中。谷口君は少し太ったようだ。安芸君のボスのYun-Kaiにも言われていた。二人で空港まで迎えに来てくれた。極寒のsnowbirdに比べるとサンディエゴは春の陽気だった。雲ひとつなく日光がまぶしい。サンディエゴ特にラホヤは風光明媚なところとして知られている。ここで研究生活を送れたらそれだけでも幸せな気がする。ランチを済ませさっそくM.Karinと話をした。彼はNatureにin pressという話をしてくれた。癌の転移にRANKLが重要であることは知られている。彼らはそのソースがFoxp3陽性のTregであることを発見したのだった。彼の話を聞いているとともかく着想がいい。直近の話題を上手に取りこんでうまくstoryを作っている。オーストリアのPenningerのスタイルに似ている。谷口君によると相当細かく大量の論文を読み研究会に出席してはメモをとっているそうだ。頭もいいがさらに相当の努力をしているという。斬新な着想を得るにはその裏できめ細かい情報収集が必要なのだろう。M.Karinですらその努力を怠っていないのだから、ましてや私のような発想に乏しい者はもっと努力しないといけないと感じ入った。
H18年に学位をとった緒方君もKarinのラボにいて5年ぶりくらいに再開を果たす。
その後ラホヤアレルギー研究所を訪問。安芸君らと写真をとろうとすると、安芸君は昔と変わらずに”いやぼくはいいです”と遠慮する。HPにのせないでくださいといいつつしぶしぶ撮影に応じてくれた。そういうことを言われるとすぐに載せたくなる。まず副所長のAmnon Altmanと話をした。彼のところには随分前に久留米の時の卒業生のM君が留学している。彼は釣りばかりしていたと評判だったが安芸君はよく働いてくれているらしい。Yun-Caiは相変わらずマイペースのようだが確実にいい論文を出している。彼自身はM.Karinのような野心的なところはなく対照的で飄々としている。ラホヤが気に入っていてずっとここに居たいと言う。3年前に出来た立派な研究所、ラホヤの住環境、おおむね順調な仕事、家族、これだけ揃っていれば随分幸せなことなんだろう。私にはどれもないかもしれないと思うと愕然とする。Yun-Caiが谷口君と安芸君もつれてお気に入りのChinesesレストランに連れていってくれた。
新年早々、アメリカユタ州のsnowbirdというリゾート地で行われるkeystone meetingに参加した(7日-12日)。今回はじめて羽田国際線ターミナルを使用。きれいで立派な建物で中の店も凝っていた。今回のmeetingはTGFβがテーマ。免疫関係の有名人も多数来ていた。Wanjun(写真左から2番目)のラボに留学している丸山君(写真)がずっと行動をともにしてくれた。スキーもやった。今回おそらくはじめて5日間通してkeystoneに参加した。内容の濃い会議だった。詳しくはまた改めて。明日はサンデイエゴに行って昔の卒業生の谷口君、安芸君に会う予定。しかしそれにしても片付けないといけない仕事が多く、論文もはかどらず、セミナー以外はほとんど部屋でパソコンをたたいている。
スキーは半日。リフト待ちはないし、広大なゲレンデで半日で十分だった。
今回の話題はなんといってもVJKuchrooによるTGFβ3の話だろう。OSheaらがNatureにpathgenicなTh17になるにはTGFβはいらない、むしろ抑制的になる、と発表したばかり。これに対してIL6+TGFβ説の提唱者のひとりVJ.Kuchroo (写真一番右)も黙っていない。確かにIL-1を加えればTGFβ1がなくてもTh17になるがそのときはTGFβ3がIL-1依存性に誘導され、TGFβ3はTGFβ1と違ってpathogenicTH17を作るとまるで今日のために隠し持っていたかのような発表を行った。この発表を聞いて(おそらくはじめて聞いたのだろう)Osheaもあわてて質問にたって自分たちの正しさを主張した。白熱した議論が続いて非常に面白かった。OSheaとは長いつきあいなので彼を応援したいが、今回他のKOマウスの発表を聞いていると、どうもTGFβがあればそれを使い、なくてもIL-1などで代価できる、というのが本当のような気がする。例えばTGFβを活性化するインテグリンのKOマウスはEAE(TH17依存性疾患モデル)が起きないという。TGFβができないのでTh17ができずに発症しないと考えることができる。TGFβにはまだまだ解明されていないことが多い。
今年は3日午後から仕事。昨年末から残した仕事が山積み。しかもせんべいを食べていたら歯が折れた。せんべいが固かったわけではない。子供の頃に処置した虫歯を埋めていた銀が、さすがに40年もたって隙間ができ何カ所がとれそうになっているそうだ。おそらくその一カ所がかけて中で虫歯が増殖し(いや象牙質が溶けると言うべきか)中が空洞になったのだろう。残念ながら今日は歯医者はどこも休みなので明日開いている歯科医院に飛び込むしかない。
しかしHPをもっと頻繁に更新すると誓ったので簡単に年頭所感を。
今年の目標はもっとサイエンスに集中する。ともかく新しいことにチャレンジしたい。いつも締め切りに追われていてはよいアイデアもわかない。創造的に暮らすことでアイデアも斬新になるだろう。現在、運動もしない趣味もない状態なのでこれでは考えも飽和しているような気がする。といって具体的なよい解決策があるわけではないが。。
ひとつの方法として、若い人にどんどん仕事を投げるようにしたい。雑用を押し付けるわけではなく、彼らにも必要な修業だと思っていくつかの仕事に責任をもってもらう。これは重要な気がする。細かいことまで自分でやろうとするからしんどくなる。人にまかせられることはなるべくまかせるようにしたい。そうすることで若手を育てるべきなんだろう。例えば論文のreviewなんかも意見を聞くだけでもだいぶ違うような気がする。
これからは学生や若手をほめる。アウトリーチ委員会でこの話は何度か聞いた。報酬が出せない時でもよくやったね、とほめることで人は充足感を得るものだそうだ。コーチがオリンピックで新記録を出させるコツはやはりほめることにあるという。どこかのTVでもほめると社会適応力が2倍に、認知症も予防でき、夫婦関係も円満になり、営業成績も何倍にもなるというのをやっていた(11/1 NHK のアサイチでした)。これは研究にも応用できるかもしれない。もちろん頭ではわかるが、私のように打たれて育ってきた世代には実行が難しい。まあしかしできるだけほめるように心がけたい。
ともかく週末からkeystoneでの学会で1週間不在なのでそれに向けて雑用を全部終わらせないと。やっぱりこの商売、雑用からは逃れられない宿命かもしれない。
大掃除のあと有志で忘年会をしました。山田君がもりあげてくれて非常に楽しかったが。。。
本日おおそうじ。午前中ですでに疲れ果てたが部屋中ちらかったままなので終わるまで頑張らないといけない。反省点①ラボ独自のCNS、もしくは姉妹紙論文がでなかった。かろうじて共著でCellに出ているがこれはDavid Baltimor の力が大きい。2つほどreviseにひっかかっているが。。②雑用に追われた。学会の仕事、審査員の仕事などで本業の研究に十分な力を注げなかった。そのため大学院生と会話も減ってしまった。③入院などあってやせたがリバンドで逆に太りそう。④講演でデータを詰め込みすぎ、聴衆の興味を測り損ねて失敗。3日ほど落ち込む。何度も同じ失敗をしてもなかなか改善しない。⑤学生講義内容を新しくしようと内容の更新を試みたが時間がなく挫折。⑥HPの更新がままならなかった。⑦ソフトボール大会で惨敗した。⑧H君がローターのふたをしめずにまわして遠心機を壊した。死人が出なくてよかった。CNS論文を出して返済してくれるそうだ。⑨今年書かなければならなかった論文3つほど越年させてしまいそう。⑩そのほか思い出したら書き込む予定。
よかったこと①助教として木村君がラボに参加してくれたこと。②福勢さんの次の就職先が決まったこと。③此枝さんの論文を出せたこと。④森田君や井上さんがT細胞リプログラミングの課題に挑戦してくれていること。⑤中川君が山梨大学の準教授に昇進したこと。⑥長年共同研究をしてきた九大の井上先生が鹿児島大学の教授になったこと。⑦武藤君と七田君が学振に受かったこと。⑧思い出したら書き込みます。
6月12日、徳島市で市山健司君の結婚式、披露宴がとり行われました。市山君の真面目な性格を反映して実になごやかな式、披露宴でした。私もスピーチは久しぶりで大変緊張しました。市山君と奥さんの本当に楽しそうな笑顔が印象的でした。祝辞はこちら。
4年の歳月と膨大な研究費を注ぎ込み、ラボの将来をかけて取り組んだprojectでした。それなりの結果は出せたと思います。この論文の主要な点は(1)Samd2はSmad3と同等に免疫抑制にかかわる。(2)Foxp3はSmad2/3に依存して転写促進される。nTregにおいてもSmad2/3はFoxp3の維持に必要。(3)IL-2やIFNgは逆にSmad2/3に依存して抑制される。(4)TGFβはFoxp3に依存しない経路で免疫抑制が可能(5)TH17はSmad2/3によって間接的に制御されるがRORgtはSmad2/3に依存しない。といったところです。positiveにみればどれもこれまですっきりしてなかった点が明確になりSmadの重要性を示した価値は大きいと思います。論文としての完成度も非常に高いと思います。しかしtop-journalはほとんどreviewにまでまわしてくれなかった。これらは現象の羅列であってメカニズムまでは掘り下げておらず、またおおよそ想像がつくことがほとんどでインパクトが少ないというのがeditorの考えでした。そういわれればそうかもしれません。言いたい事は山のようにあるが、言い訳はやめよう。次に皆を納得させるものを出せばよい。実際にすでに若林君はSmad2とSmad3がどのようにFoxp3とIL-2を制御しているのか、その分子機構をepigeneticなレベルで解明しようとしています。このJI論文は次の大きなstepのための小さな第一歩と考えたい。
Takimoto et al. Smad2 and Smad3 are redundantly essential for the TGFβ-mediated regulation of Treg plasticity and Th1 cell development" Journal of Immunology in press
なおTGFβの総説をJBに発表しました。分子機構に焦点をあてています。
Cellular and Molecular Basis for the Regulation of Inflammation by TGF-{beta}
Yoshimura A, Wakabayashi Y, Mori T.
http://jb.oxfordjournals.org/cgi/reprint/mvq043v1?view=long&pmid=20410014
昨年まで九大で学振PD、現在佐賀大学医学部助教の中谷真子さんの論文がJ. Immunolにacceptになりました。
SOCS3 in T and NKT cells negatively regulates cytokine production and ameliorate ConA-induced hepatitis
主要な実験のほとんどを九州大学の1年半の間で、reviseの実験は佐賀大学で行ってくれました。私やreviewerの厳しい要求によく耐えて粘り強く頑張ってくれた成果だと思います。実験を支えていただいた佐賀大学の吉田裕樹教授に感謝したいと思います。
この論文ではT細胞特異的SOCS3トランスジェニックマウスがNKT依存性のConA肝炎に耐性を示すことからNKTにおけるSOCS3の機能を明らかにしました。SOCS3は明らかにNKTの活性化を抑制しインターフェロンγやインターロイキン4の産生を抑制します。しかし実際どのような仕組みで抑制するのか?TCR刺激やSTAT3が大きく変化するわけでもない。さんざんin vitro実験をやりましたが、残念ながら最後までわからなかった。これには我々のまだ知らないNKT活性化とSOCS3による調節の機構があるのでしょう。将来の課題としたいと思います。
revise実験で忘れられないのは、中谷さんがわざわざ慶應に実験の相談に来てくれた時のこと。学会の帰りなので1日しかない。ちょうどマウスがいるのでそれを使って佐賀で実験しようということになった。しかし東京から佐賀へサンプルを届けると宅急便で2日かかる。私は2日も無駄にするな、この場でマウスをさばいて脾臓を持って行け、これなら明日すぐに実験にとりかかれると主張した。日曜日にもかかわらず橋本君を呼び出し臓器をとりだしてもらった。中谷さんには鬼、と言われながらも発砲スチロールの箱を持たせて駅まで見送った。ところが案の定飛行場の荷物検査でひっかかってしまった。それはチューブの赤い液体の中になにやら黒い物体が浮いていたら普通の人は怪しむよな。結局私が安全を保証するという一筆を書いてFAXして認めてもらったものの、中谷さんは3時間以上空港に足止めされて佐賀行きはなくなり、福岡行きの最終便に乗せられるはめに。もう2度と口を聞いてくれないかもしれないと思っていたが、まあ最後はacceptになったので勘弁してもらえているだろう。
秋の講義にプリオン病の話をしようと思って、少し古いが
『プリオン説はほんとうか? タンパク質病原体説をめぐるミステリー』福岡伸一/著 ブルーバックス
を読んだ。福岡氏は非常に筆のたつひとで面白くてついつい引き込まれてしまった。これを読むと確かにプリオン説は怪しいと思えるような構成になっている。しかしもちろんウイルス学を教える立場からするとウイルス説の展開はかなり強引でプリオン説のそれにひけをとらない。特に引用文献がないのが欠点で、細かい科学的な反論を避けるために学術書ではなくブルーバックスに発表されたと言われてもしかたがない。
この本の批評はネット上でたくさんあるようなので繰り返さないが、一点だけ気になった箇所があった。それは2005年Scienceの論文で長崎大学の西田、Yale大学のManuelidisらが神経培養細胞を用いてscrapieの干渉現象を報告している。調べてみると神経培養細胞に感染した脳の抽出物をかけると異常プリオンが蓄積することは他のgroupでも証明されているようだ。この性質を利用して高感度の異常プリオンを検出しようという試みもされているらしい。
一般的にウイルスの研究を難しくするのは動物でしか感染を証明できない場合であって(C型肝炎ウイルスも培養細胞では増えられない)培養細胞で感染できるならウイルスは比較的楽に純化できるはずだ。事実同じYaleのグループは25nmの小粒子を観察している(ProNAS2007)。そうすると福岡先生の教室で取り組んでいるといわれるウイルスゲノムを単離する方法など、もっとたやすいはずだ。脳組織よりも培養細胞のほうがはるかにDNAもRNAも均一に得られるだろう。なぜそれをやらないのだろうか?
プリオン説を疑う根拠としてコッホの3原則にあてはまっていない、といわれるがそれはウイルス説も同じこと(むしろ古典的なウイルス説の方が苦しいのではないか?)。おそらく感染させた培養細胞抽出液をマウスに感染させても発症しなかったのではないか?もちろんプラークもできずに感染粒子はとらえられていないのだろう。もしそうならウイルス説(レセプター説)は相当あやしい。プリオン説でもウイルス説でもない第三の仮説を考えた方がよいのかもしれない。
もう一点。この本ではプリオンタンパクの沈着は発症の結果であって原因ではないような書き方をしている。このような異常タンパクの蓄積で神経細胞が死ぬことはよく知られているし、いろいろな研究からプリオン病(神経細胞死)はプリオンタンパク質の異常な蓄積で起こることはそれほど疑う余地はないような気がする。問題は異常プリオンタンパクが正常プリオンタンパクを異常にかえていく連鎖反応が本当に生体内であるのか、という点だろう(試験管内でも証明は難しいようだが。。それには生きた細胞が必要なのかもしれない。プリオンタンパクは膜タンパクなのだから)。
本書が書かれてもう5年もたっている。残念ながら福岡先生のところからウイルスを発見したという報告も、世界的にプリオン説を決定的に覆したという報告もまだないようである。
追記)なおさらに調べてみるとSoto博士らはすでに試験官内で、微量の異常プリオンをもとに正常プリオンを異常プリオンに転換する方法を開発しており(Cell 2005, Nature Method 2005, Cell 2008など)これがマウスを発症させることもできることを報告している。正常プリオンは組み替え体ではうまくいかないらしいので、まだ何か別の因子の介入はありうることだと思われるが、彼らの仕事は最終証明に極めて近いのではないか。福岡氏の著書には2005年の彼らの論文は引用されているのだろうか。。。
いずれにしてもこの本はもう古い。知識の乏しい学生には勧められない。ただ気楽な読み物として、あるいは論文を批判的に読み自説の補強にうまく利用する方法(弁論術?)を学ぶにはよいと思われる。つまり現在、プリオン説にたった論文と否定的な論文の数の比は圧倒的に前者が多い。しかし読者はそんなことは知らない。後者の説を読者に納得させるには両者の論文を同程度引用し、前者の欠点を詳細に指摘し後者の説をあたかもすごい発見のように紹介すればよい。これは我々も論文を書く時に無意識にやってしまうことなのだが、専門家のreviewerからはこっぴどくやられる。
先週朝日新聞の科学部の本田さんという記者から連絡があって今度のNature Med on line版に出る論文について照会があった。わざわざ研究室まで来て30分以上話を聞いて行った。熱心なひとだ。つっこみどころ満載の論文で、本当に画期的か、と言われると腕組みをせざるを得ないが、まあせっかく時間をかけて説明したので気に入ったらぜひ掲載して下さい、と言って分かれた。Minマウスを使った時点でおそらく評価はわかれるだろう。TH17のところは最近よく言われることと一致している。 ともかくこの分野(炎症とがん)の啓蒙にはありがたい話だと思って良い点数をあげた。
腸内細菌、大腸のがん化促進 米グループがマウスで解明
下痢を起こす腸内細菌の一種が、大腸のがん化を促進することを、米ジョンズホプキンス大のグループがマウスの実験で明らかにした。胃がんでは、胃の中にいるピロリ菌が原因の一つとされているが、この腸内細菌も、似たような役割を果たしている可能性を示している。23日付米医学誌ネイチャー・メディシンに発表される。
バクテロイデス・フラギリスという、人の腸内に常在している腸内細菌の一種。人によっては何の症状も示さないが、下痢を起こすことで知られている。毒素を作るタイプと作らないタイプがあり、グループは大腸がんを自然発生しやすくしたマウスに、それぞれを感染させて観察した。
すると、毒素型を感染させたマウスは下痢になり、大腸に炎症と腫瘍(しゅよう)が1週間以内にでき、がん化が早まった。非毒素型は下痢を起こさず、大腸の炎症も腫瘍も認められなかった。菌の毒素が免疫細胞を活性化させて炎症を起こし、がん化を促進しているとみられる。
また、毒素型を感染させたマウスは、炎症反応の引き金となる信号を送るたんぱく質が増えていた。このたんぱく質が増えると、特定の免疫細胞が活性化されてIL17という因子が作られることが、もともと知られている。IL17を働かなくさせたマウスで同様の実験をすると、腫瘍ができにくくなったことから、こうした因子を抑えることなどで大腸がんの治療につながる可能性も明らかになった。
今回の成果について、吉村昭彦・慶応大医学部教授(微生物・免疫学)は「人の大腸がんとの関係は今後、疫学調査などがされないと、まだわからないが、人の腸内細菌の毒素ががん化を促進することを実験的に示したことは画期的だ」としている。(本多昭彦)
今日は新任の森田君の歓迎会の予定が,当の本人が来られずに納涼会となった。
たまたま知り合いの理工学部の学部生のK君が来ていたので誘った。大変しっかりした子なのだが、彼といろいろ話しているとこの両親が偉い。子は親のカガミと言うが、K君をみていると親御さんの立派さが垣間見える。
k君の御両親は彼が大学進学にあたっては学費は負担するがそれ以外はずべて自分でまかなうように宣言したそうだ。そのために彼は利子付きの奨学金(月10万円)とアルバイトで東京で暮らして来たと言う。普通なら親は子供の通帳を見て盆暮れくらいには公的資金を注入するもの。K君の両親はそんなことは一切しなかったという。K君は今は苦しいかもしれないがきっといずれ両親の偉大さを実感することだろう。特に自分の子供を持てば。
子供、特に男の子を甘やかしていいことはひとつもない。酒井法子の夫の妻を平気で売るような言動をみて憤懣やるかたない50代以上の男性は多いことだろう。我々の時代にはこんな恥も外聞もないようなことは万死に値した。まだ男子たる者、という気概はあった。女子供ひとつ守れないで一人前の男子と言えようか。草食系などとは無縁な時代だった。その世代が親となったのに、自分の息子には男らしさのかけらも教えられない情けない世代となった。あまり大きな声では言えないが、韓国のように○○制を復活させて欲しいと願う世のお父さんたちは少なくないに違いない。それも情けない話なのだ。自分の息子すらちゃんと教育できないから他力本願にならざるを得ない。草食系を増殖させた団塊世代以降の親父の責任は大きい。
話がそれた。K君の御両親に私は心から敬意を表したい。今の時代になかなかできないことだ。子供は最低限のサポートでつきはなす。わかっているけどそれがなかなかできない。それをさらりと成し遂げられている御両親を私は尊敬する。
あのルソーも言っている。子供を駄目にしたけければ子供の欲しがるものをすべて与えればよい。簡単なことだと。
脳虚血モデルは極めて大変なアッセイ。七田君の労を惜しまない努力とすぐれた手技のたまものです。本研究は九州大学でスタートしたものですが慶應大学で重要な実験の多くを行いました。慶應発の仕事の第一号とも言うべき記念碑的論文となりました。
脳梗塞は脳の血管が詰まり、脳組織が損傷する病気。損傷を受けた後、その周囲が数日間炎症を起こして神経細胞が死滅し、体のまひや言語障害などをもたらす。炎症のメカニズムが不明で、発症後1日が過ぎると有効な治療法がなかった。
研究チームは炎症にかかわるたんぱく質として最近発見されたインターロイキン(IL)17とIL23が関係していると仮定。脳梗塞を再現したマウスの脳でILの発現を調べた。
発症1日目には、梗塞部分に死んだ細胞を捕食する免疫細胞「マクロファージ」が集まり、IL23を作っていた。続いて別の免疫細胞「γδ(ガンマ・デルタ)型T細胞」が集まって、IL17を分泌。そのピークは発症3日目だった。このT細胞はIL23の刺激でIL17の分泌を始める性質があり、2種類のILが連鎖的に作られ、時間差で炎症を悪化させる仕組みが分かった。
二つのILが分泌されない遺伝子欠損マウスを作ると、通常と比べて梗塞部分の体積が約4割小さくなった。T細胞が梗塞部分に集まることを防ぐ薬剤を使ってもほぼ同じ効果があった。同様のメカニズムが人間にある可能性は高いという。【奥野敦史】
<p> 現在のラボの写真や歴代の花見の様子をupしました。<a href="http://new.immunoreg.jp/modules/pico/index.php?content_id=10">クリック</a></p>
旧HPにあったいくつかの問題を解決するためにHPをリニューアルしました。これでExploreでもSafariでも快適に読めるのではないかと思います。なるべく更新を頑張ります。
不具合がたくさん見つかります。特に写真がきちんと表示されないようです。これはURLがかわったためで順次なおしていきます。ご指摘いただければ幸いです。
吉村研、小安研、天谷研の合同リトリート(免疫適塾)のレクリエーションにて
3研究室の合同リトリート、免疫適塾の研究会、講演会の翌日(本日6/6)、つくば市の某グラウンドを借りてソフトボール大会が挙行された。久しぶりのソフトボール、しかも事前準備全くなしの状況でありながら、回を重ねるごとに皆上手くなり引き締まった試合が続いた。しかし当初予定した一試合5回は身体がきつく到底持たず3回までとすることにした。
どの試合も接戦で盛り上がった。晴天の中久しぶりに汗を流して爽快でだったが、身体中筋肉痛となった。帰りの駅の階段がつらかった。
PhDの修士、博士課程希望者求めます
学費が高い?今年からJSTでRA制度がはじまりました。学振DCなみのサポートが得られます。すでにどこかの大学の博士課程に在籍しているひとでも出向してくれれば大丈夫です。私にメールしてみてください。今なら4月のRAに間に合うかもしれません。
うっかりしてたらいつの間にか出てました。
http://www.cell.com/immunity/abstract/S1074-7613(09)00103-4
Cyclic Adenosine Monophosphate Suppresses the Transcription of Proinflammatory Cytokines via the Phosphorylated c-Fos Protein
Keiko Koga1,Giichi Takaesu1,Ryoko Yoshida1,2,Mako Nakaya1,Takashi Kobayashi1,Ichiko Kinjyo2andAkihiko Yoshimura1,2,3
Immunity. 2009 Mar 20;30(3):372-83. Epub 2009 Mar 12.
これはちょっとがっかり。
今は年度末でてんてこ舞いなのでしかたないか。
次回は忘れずにpress-relreaseします。せっかくなので概要を。
JST基礎研究事業の一環として、慶應義塾大学の吉村昭彦らは、免疫を抑制する新たな機構を解明しました。
アレルギーや自己免疫疾患は過剰な免疫応答が原因で起こる疾患です。これを抑制する手段としては従来よりステロイドなどが用いられてきましたが、副作用が少なく選択性の高い治療薬が求められています。体内にあるプロスタグランジンの一種や神経ホルモンもステロイドと同様に抗炎症作用、免疫抑制作用があることが知られていました。しかしその作用機構は明らかではなく、これを解明することで新たな抗炎症剤、免疫抑制剤の開発が可能となると考えられてきました。
本研究グループは、炎症を促進するマクロファージとよばれる細胞のなかでc-Fosという分子が新たな抗炎症作用の本体であることをつきとめました。c-Fosは遺伝子に直接作用して炎症性物質の産生を抑え、逆に抗炎症作用のある物質の産生を促進することから、新規の抗炎症剤の標的として喘息、リウマチのようなアレルギーや自己免疫疾患の治療に役立つことが期待されます。
本研究は、慶應義塾大学医学部吉村昭彦グループが九州大学生体防御医学研究所と共同で行ったものです。
本研究成果は、 2009年 3月12日 に米国科学誌「Immunity」のオンライン速報版で公開されました。
本成果は、以下の事業・研究領域・研究課題によって得られました。
戦略的創造研究推進事業 チーム型研究(CREST)
研究領域:「アレルギー疾患・自己免疫疾患などの発症機構と治療技術」
(研究総括:菅村和夫 東北大学大学院医学系研究科 教授)
研究課題名:細胞内シグナル制御による免疫リプログラミング
研究代表者:吉村昭彦
研究期間:平成20年9月~平成26年3月
JSTはこの領域で、アレルギー疾患や自己免疫疾患を中心とするヒトの免疫疾患を予防・診断・治療することを目的に、免疫システムを適正に機能させる基盤技術の構築を目指しています。
上記研究課題では、細胞内のシグナル伝達制御機構の解明とその人為的な調節により新たな免疫抑制の方法論を開発することを目指しています。
<研究の背景と経緯>
自然免疫の初期応答である炎症反応は、病原体の排除だけでなく、獲得免疫の活性化にも重要な役割を担っています。しかし、過剰な炎症反応は炎症性疾患や自己免疫疾患などの疾患へとつながり、害を及ぼします。そのため、自然免疫・炎症反応は通常は厳密に制御・抑制されています。その抑制因子としては副腎皮質ホルモン(ステロイド)、インターロイキン10 (IL-10)のほかプロスタグランジンE2(PGE2)、細胞外ATP、そのほかある種の神経ペプチドなどが知られています。PGE2やATPは細胞内cAMPを上昇させることで抗炎症作用を表します。cAMPによる炎症反応の抑制、という現象は20年以上も前から数多く報告されてきましたが、分子レベルでどのような細胞内因子が、どのような作用機序を介して炎症反応を抑制しているのかということはほとんど何も分かっていませんでした。
<研究の内容>
本研究チームは病原体構成成分であり、炎症反応を惹起させるリポ多糖体(LPS)に対するcAMPによる抑制の分子メカニズムの解明を試みました。その結果、LPS+cAMP刺激によって発現誘導される転写因子c-FosがcAMPによる抑制効果を担う責任因子であることを明らかにしました。
また、その作用機序としてはc-Fosが炎症性遺伝子の発現に必須な転写因子NF-κBのp65サブユニットと直接結合することによって、p65が炎症性遺伝子のDNAプロモーター領域と結合できなくなり、その結果、遺伝子の転写・発現が抑制されることを示しました。さらにc-FosがLPS+cAMP刺激によって発現誘導される分子メカニズムについても明らかにしました。c-FosのmRNA発現誘導にはcAMP刺激のみで十分でしたが、c-Fosタンパク質の誘導・蓄積にはLPSの下流で活性化され、NF-κBの活性化に必須なキナーゼであるIKKβが必要であることが分かりました。さらなる解析の結果、IKKβはc-Fosタンパク質の308番目のセリン残基をリン酸化し、その結果c-Fosタンパク質が安定化する、という新たな知見を見いだすことができました。炎症性遺伝子の発現に必須であり、炎症性遺伝子発現を正に制御しているIKKβがc-Fosタンパク質の安定化に寄与することで、炎症性遺伝子発現を負に制御するという、新規のネガティブフィードバック機構、つまり生体内で過剰な炎症反応を抑制するという恒常性維持機構の発見でもあります。
<今後の展開>
cAMPはセカンドメッセンジャーとして免疫反応だけでなく、その他多くの細胞内シグナル伝達に関与しています。そのため、生体内において、単純にcAMPを標的とした炎症反応抑制を試みた場合、免疫反応系以外の様々なシグナル伝達に大きな影響を与えることが予想されます。本研究でcAMP/c-Fosによる炎症反応抑制の分子メカニズムが明らかになったことによって、c-Fosが腸炎や自己免疫疾患、敗血症などの多くの炎症性疾患に対する新薬創出のターゲットとなることが大いに期待されます。
SOCS1がFoxp3陽性Tregの産生をnegativeに制御する、という論文
Foxp3-dependent microRNA155 confers competitive fitness to regulatory T cells by targeting SOCS1 protein.
Lu LF, Thai TH, Calado DP, Chaudhry A, Kubo M, Tanaka K, Loeb GB, Lee H, Yoshimura A, Rajewsky K, Rudensky AY.
Immunity. 2009 Jan;30(1):80-91.
PMID: 19144316 [PubMed - in process]
miRNAの部分は別としてして我々はT細胞特異的SOCS1Tgおよび欠損マウスにおいてnTregが減少および増加していることを示した。TGFβ欠 損などでもnTregが増えることは知られているがSOCS1欠損はそれを上回る。nTregがどのようにして生まれるかは未だ解明されていない。我々の マウスがこの重要な問題に解答を与えることを信じて現在精力的に解析を行っている。