投稿者 : yoshimura1212 投稿日時: 2019-01-03 07:50:49 (5853 ヒット)

新年おめでとうございます。2019年も張り切っていきたい。と意気込んでいたら元旦からノロにやられた。でももう回復した。今日から頑張りたい。
さてようやく伊藤さんの論文がNature on lineになった。なんと英国時間では1月2日である(欧米は休みは元旦のみか)。印刷は1/10号だそうだ。acceptが来てからずいぶん待たされたが「速報誌」なのでしかたない。プレスリリースも行ったが、残念ながら正月休みで何処もとりあげてくれてない。。。まあ正月からめでたい話と納得したい。ライフサイエンス分野では「新着論文レビュー」というのがあって3大誌本誌姉妹誌に掲載されたら総説を書いてくれと依頼が来る。意気込んで早めに原稿を送ったら11月末で新規掲載は停止だそうだ。インパクトファクター至上主義を助長すると批判されたのだろうか。。。せっかくなので日本語で理解しやすいだろうから内容はこちらで
プレスリリースでは一般受けを狙って脳内制御性T細胞(脳Treg)がセロトニンで増えるのでセロトニンを増やす抗うつ薬が脳梗塞のリハビリに効果があるのでは?という話を中心にしている。実際に今までの報告では治療効果があるとされてきたのだが、昨年末発表された大規模試験の結果は微妙でまだ研究の必要があるらしい。私は某社の間葉系幹細胞療法のように直接投与したらよいのではないかと思っているのだが。

ともかく日本語総説を読むのは面倒、内容を簡単に知りたいという方のためにあらすじを書くと以下のようになる。
通常脳内にはリンパ球の数は少なく脳内の免疫細胞といえばマクロファージの仲間のミクログリアだけだった。しかし脳内で炎症が起きるとリンパ球(T細胞とB細胞)が浸潤してくる。特に脳梗塞のような大きな組織損傷が起きるとリンパ球の浸潤が起きる。しかし脳梗塞後の一週間程度は浸潤マクロファージを中心とした自然免疫応答が中心で、リンパ球の意義はγδT細胞という特殊な自然免疫系のT細胞以外不明であった。おおまかに言うと、脳梗塞後1日目にマクロファージが炎症性サイトカインを放出し炎症を煽るが3,4日もすると今度は同じマクロファージが掃除屋になって炎症の引き金となるような物質を食べて炎症を収束させる。余談だが「はたらく細胞」のマクロファージ(なぜかカワイイ少女)は大ナタを振り回して細菌をやっつけているのと、ほうきを持って掃除しているのと2種類描かれているがマクロファージの性質を的確に表現している。
ということで脳梗塞後1週間を過ぎるともう免疫の役割は終わりと思われてきた。一見炎症の症状が見られないからだ。ところが伊藤さんは2週目以降にはT細胞が脳内に大量に集積することに気がついた。特に梗塞を起こした部位の内部だけでなく周辺にも集積している。またCD4陽性のT細胞の半分がTregであった。これほどTregが多ければ炎症反応が見えないのもうなずける(Tregは炎症を抑える細胞だから)。実はこの研究を行っている途中で「脳梗塞後30日もするとTregが脳内に集積する」という報告がなされたので「先を越されたか!」と肝を冷やしたのだが内容は記載のみでTregの除去実験は不完全だった(おそらく脳梗塞研究の専門家でCD25抗体でTregを除去したとしているのだが、免疫学の界隈ではこの方法ではほとんど除去できないことはよく知られている)。ここは落ち着いて伊藤さんは解析を進めた。重要なことは(1)脳Tregは神経症状の回復に一役買っている。そのひとつの役割はアストロサイトの過剰な活性化を抑制することにある。(2)脳Tregはいわゆる組織Tregの一種で組織特異的なTCRを有し、IL-33受容体を発現してIL-33に依存して増える。(3)アンフィレグリン(Areg)というサイトカインを放出することでアストログリオーシスを抑制する。(4)一方他の組織Tregと異なりCCR6,CCR8を発現し特殊なケモカインに引かれて脳内へ浸潤する。(5)なぜか7型セロトニン受容体(HTR7)を発現しセロトニンに応答して増幅、活性化される。
脳Tregは脳梗塞という特殊な状況でのみ生じるわけではない。現在自己免疫性の脳内炎症モデルなども調べているが、脳内にTregが留まることでセロトニン受容体を発現するなど脳Tregの性質を獲得するようである。「脳と獲得免疫」。多くのヒトの神経疾患は長い時間のかかる「慢性疾患」である。慢性(=長期間)であれば獲得免疫の出番だ。脳の病気における獲得免疫の意義の解明はこれからだと思う。
 


投稿者 : yoshimura1212 投稿日時: 2018-12-24 20:01:11 (3053 ヒット)

 12月は師走なだけになぜか忙しい。免疫学会の最終日に福岡を中心とした卒業生が集まってくれてまた「還暦会」をやってくれた。ありがたいことだ。ただはしゃぎ過ぎて翌日の飛行機にかろうじて間に合ったことはいい年をした大人としては反省材料だ。

天気予報によるとこの週末はひどく寒くなるそうだ。天気予報士南さんの説では「大掃除の時期なのに箒(ホウキ)も放棄したくなる」寒さだとか。女性アナウンサーに一瞬先を越されて「放棄」ですね、のようなことを言われてしかしメゲずに最後まで完遂し、言っちゃった後の静寂をものともしかなった南さんはオヤジの鏡として愛おしい。

西郷どん。自決シーンがなく「え!?」「下町ロケット」の最終回サギ。頭にくるが正月ももう一度楽しめるかと思ってしまう自分がどうにも哀しい。

科研費の上積み136億円はすべて若手に
。老兵はただ去りゆくのみ。

東京タワーも還暦らしい

出入国管理法(移民法)が成立。しかしすでに日本は移民大国だそうだ。留学生ビザで入国し勉強しながらアルバイトをしている。その数29万人。彼らの多くは多額の借金をして来日し劣悪な環境で寝る時間を惜しんで働いている。貴重な仲間としてしっかり育てている経営者もいるが、食い物にしている悪いやつらもいる。強制送還などがなくなり彼らが明るい正月を迎えられるように祈ることしかできない。

ともかくも2018年はいつもに増して激動の年だったような気がする。西日本豪雨では車が浸水して廃車に。温暖化対策は待った無しのはず。でもまあいいこともたくさんあった。神頼みも大いに効果があった。来年はもっといい年になって欲しいと願わずにいられない。


投稿者 : yoshimura1212 投稿日時: 2018-12-16 18:29:19 (2875 ヒット)

科研費に100億円が上積みされるそうだ。結構なことだ。本庶先生もこれからは「若い研究者を支援し育てる仕事をしたい」とおしゃっていた。ぜひ優れた若手が増えてほしいものである。ついでにまだまだやれるロートルにも支援をお願いしたい。もちろん老人が席を空けるのが最も効果的に若手を支援し鼓舞する方法なので引くときは引きますけど。

NHKで宅配業者の熾烈な状況を伝えていた。病気や事故の際の保証はないものの、個人事業主になれば「働き方改革」による「残業の縛り」もないので月に95万円稼げるという。問題は多いが働いたら働いた分実入りがあるのは魅力的だろう。若い研究者は例え大学や研究所に雇われていても「個人事業主」であるという気概を持って欲しい。というときっと「ブラック」とレッテル貼られて炎上するんだろうが。
それはそれとして、ここに出てくる小林さん。なぜリスクをとっても個人事業主を続けるかというと高校大学の奨学金を返済するためで「家族に返済のせいで不自由させないためにそれ以上に稼がないといけない」。昔は教育職に就けば返済は免除されていた。「国家百年(終身)の計は人を樹えるにしかず」と安倍首相も言っていたそうだが。若手を育てないといけないのは研究分野だけではない。


投稿者 : yoshimura1212 投稿日時: 2018-12-11 23:22:45 (3195 ヒット)

懇親会で渡邊武先生が乾杯の挨拶をされた。福岡での免疫学会は15年ほど前に渡邊先生(当時九大生体防御医学研究所所長。第33回日本免疫学会総会学術集会会長)が開催されて以来である。私は吉開先生(当時二人とも生医研教授)とともに実質的な実行部隊で、二人で東京まで出向いて学術委員会に開催案を報告しに行ったら完全ダメだしをくらって「小学生の使いか」とこき下ろされたことは今では懐かしい思い出である。何事も厳しくしかし活気あふれる時代だった。まだバブルの名残なのか参加総数は4000人を超えて大盛況だった(現在はその半分以下)。会場は同じ福岡国際会議場が中心だったが当然会場は足りなくて隣のサンパレスホテルや展示場まで使っていたと思う。手作り感満載で九大の当教室の教室員は総出でタイムキーパーなどボランティアを行っていた。私のほうは学会当日はこまごまとしたトラブルに対応するために広い会場を文字通り走り回っていた。終わったときはさすがに疲労困憊した。しかしまだ若かったので教室をあげて格安居酒屋を借り切って慰労会をやったことがなつかしい。その慰労会費だけ集会から出してもらった。集会はそんなに盛会だったのになぜ「格安」でやったのか今思うと謎である。経理のことは全く知らされてなかったから遠慮したのだろう。渡邊会長には私や吉開先生のような手足がいたが、今の私にやれと言われたら自分がまた走りまわることになるだろう(ただI科S科のO先生は助けてくれるというので心強いが)。部下には「そんな暇があったら研究しなさい」というのが私の信条なのだからしかたない。


投稿者 : yoshimura1212 投稿日時: 2018-12-05 22:26:17 (3311 ヒット)

昨年と同じく評議員会で一言言わせてもらって大会長は回避できた。事情を斟酌していただいた評議員の皆さんの良識に感謝したい。来年はもう言い訳できないだろうが。。勇気ある阪大の元学生さんが「もし先生が選ばれたら自分が総会で立ってそんなのおかしいと抗議します。除名されてもかまいません。だから辞めないで!」と言ってくれた。涙がでる。共に除名されなくて済んだがありがたいことだ。
 

 どなたかが自分が次期の大会長候補にノミネートされているとおしゃっていた。昨年決死の訴えをしたのでまさか理事会で無理矢理候補にされることはないとは思うが。ただ評議員会の投票で最終的に大会長が決まる。もしかしてこのページを見ている評議員のかたがおられたら絶対に私に大会長の票をいれないようにお願いしたい。もし選ばれたら辞退する(=退会する)しかない。「人の嫌がることを無理強いする」組織はいかがなものか。

昨日今日とAMED-CREST/PRIMEのキックオフmeeting。10倍以上の難関を勝ち抜いた選りすぐりの演題ばかりである。レベルは極めて高い。多くはキラめく目標を提示され期待はいやますばかりである。しかしビッグラボに属さない若手もいる。常識を打ち破るような革新的な発見の芽はむしろ孤高の若手にあるかもしれない。この仕事を引き受けたのはやっぱり伸びようとする若い人を支援したいという気持ちから。当然自身の「見巧者としての力量」が問われるし、如何にいいアドバイスができるか?という私自分の「研究者としての力量」にかかっている。採択課題は神経、免疫、幹細胞と極めて広範囲である。節操なく様々な分野に首を突っ込んで来た自分が指名された理由もわかるような気がする。ただこの仕事の時間的精神的拘束はかなり大きい。同時にMCBという学部の教育の仕事もある。今いっぱいいっぱいな状況であることは側からみてもお分かりになれると思う。
なかなか下に雑用を振れない人間である。雑用は研究の大敵である。誤解されがちだが今の自分のラボは教室員は少なくそもそも人手が足りていない。世の中には全く逆に下に振ることで若手を育てられる指導者がいる。しかし私に明日からそうしろと言われても難しい。せめてあと1年、できれば2年は待って欲しい。


投稿者 : yoshimura1212 投稿日時: 2018-12-02 12:18:34 (3005 ヒット)

先日留学時代の同窓会が開かれた。皆私と同じ年代なので健康のことは気になる。この頃肩が異常に凝る、なかなか痛みが取れないというと「それは関連痛といって心筋梗塞の前触れ」と脅された。
 翌日関東を中心とした卒業生と現役の教室員の皆で「第一回吉村研同窓会」と称して私の還暦のお祝い会をしてくれた。総勢50名くらい集まってくれて鹿児島、久留米、福岡、そして東京と懐かしい話題やスライドショーで盛り上がった。久留米のころの話題になるとやはりどこの軍隊かと思われるようなブラックな体質で今の若い人たちには想像もできないだろう。当時はお金も人も少なく「各自が他所より時間を費やすしか勝つ方法がない」という状況だったから仕方ない。そう思っていたら林先生の番組で「最初の2年は無休で質より量をこなせ」と言っていた。それほど間違っていない?

 赤いチャンチャンコを着せられて照れることしきり。ともかく皆の暖かい言葉に改めて「この仕事をやっててよかった」と思えた。歳を取るのはあまり嬉しくないが皆んなが気持ちよく祝ってくれるのが何よりも嬉しい。彼らのためにももうひと頑張りしないと、思わせられる。その前に健康診断いかないと心臓がやばいかも。

 あまりに嬉しくてつい酒が進む。実は前日の会でも紹興酒をひとりでほぼ一本空けている。司会のT君が「途中で記憶をなくす人が約一名必ずいるのでゆっくり飲みましょう」と言っているにも関わらず次々に盃をあける。「60にして耳順う」というが、私はさらに気が短くキレやすくなっており(時々Webのことでモンスタークレーマーになっている)人のいうことを聞けなくなっている。「60にして耳疑う」。予想通り二次会の途中から記憶がなくなり三人ほど「泊まっていけ」と無理やり自分の家に連れて来たものの家にたどり着いたとたんあえなく轟沈。気がついたら朝はとうにすぎており皆帰ったあとだった。何のもてなしもできず大変申し訳なかったが、備蓄していた冷凍食品がいくつかなくなっていたのでお腹は満たしてくれたのだろう。

さてもうすぐ免疫学会。今年も年会会長の選挙があるだろう。もしまたノミネートされても今の状況では辞退せざるを得ない。授業とAMEDの仕事と心臓の検査がひと段落つく来年まで待って欲しい。嫌がるのを無理にやらせるものでもないだろう。評議員のみなさんはぜひそこは汲んでほしい。。

なお林先生がインターフェロンがウイルスにくっついてウイルスの増殖を抑えると言っていたのは大間違いです。インターフェロンは細胞に作用してウイルスが増殖するのを抑えるサイトカインです。 


投稿者 : yoshimura1212 投稿日時: 2018-11-27 15:38:10 (2442 ヒット)

 月曜日は九大歯学部での講義。担当教授のご厚意でもうかれこれ10年以上続けている。毎年少しずつ趣向を変えているのだが、終了後学生さんたちの顔を見ると反省することの方が多い。今回は後半の半分は当然ながら「腫瘍免疫」「免疫チュックポイント阻害」の話をする。もともと「サイトカイン」の講義なので前半は炎症性サイトカインやヘルパーT細胞の話。キラーT細胞とはやや乖離があったように思う。ただ腫瘍免疫ではインターフェロンγが主役なのでつながりがないことはない。また歯科領域の「がん」でもオブジーボは使われている。
 今年はけっこう真面目に聞いていてくれたように思う。少なくとも寝ている学生はほとんどいなかった。ただやはりまだ2年生。「がん」がどうして発生するのか知らない。なので当然キラーT細胞がなぜがん細胞を認識できるのかわからないので「腫瘍抗原」から説明しないといけない。30−40分程度では駆け足で消化不良だったことだろう。むしろヒトコマかけて十分時間を取るべきだった。いや毎年「詰め込みすぎた」と反省するのだが一向に改善しない。前半かなり減らしたのだがその分後半を詰め込んでいるだけ。もう生まれついた性分なので直しようがないのかもしれない。

前日の休日に佐賀県有田まで足を伸ばして焼き物を見てくる。陶磁器がものすごく好きというわけでもなく「ブラタモリ」で有田を2回もやっていたから。バブルの遺産のようなポーセリンパークでは前の客が陳列している皿を指差しながら「これがタモリが一番気に入ったといっていたやつ」と自慢げに解説していた。やはり単純な、いや気持ちの素直な同類は何処にでもいるものだ。有田の町もしっかり宣伝に使っていた。


投稿者 : yoshimura1212 投稿日時: 2018-11-18 23:20:58 (2844 ヒット)

 東京テレビのニュースを見ていたらキャスターの小谷真生子がオプトジェテックスを紹介していた。解説は慶應義塾大学医学部精神科の田中謙二先生である。最適の解説者だろう。日本では最も権威ある学術賞のひとつである京都賞の本年度の受賞者に選ばれたのがオプトジェネテックスの生みの親の「カール・ダイセロス」博士である。なので特集を組んだのだろう。歴代の受賞者は今年の本庶先生を含めてノーベル賞をもらった方々が多いらしい。きっとダイダロスも間違いなくノーベル賞も射程距離内だろう。それを言うならダイセロスは4年前に、本庶先生は2年前に慶應医学賞を受賞している。ぜひそこも言って欲しかったが全く言及なしで残念。しかし賞金はノーベル賞に匹敵する京都賞である。残念ながら慶應医学賞は足元に及ばない。

それはともかく「ダイセロス」は非常に言いづらい。つい「ダイダロス」と言ってしまうのは私だけだろうか?「ダイダロス」?どっかで聞いたなと思ったら日曜劇場「下町ロケット2」で古舘伊知郎が率いる小型エンジンメーカーではないか。
NHKの「西郷どん」とTBS「下町ロケット2」。オヤジはこの2つだけを楽しみにサザエに負けることなく次の1週間を生き抜いている。年末に両方同時に終わってしまったらもう生きていく気力が湧かないかもしれない。しかし前回の下町ロケットと比べると今シーズンは視聴率的に相当苦戦しているらしい。それは全く当然と思う。今日の最後のテロップは「友情と信念で危機を乗り越えろ!」。いつから少年ジャンプかドラゴンボールに成り下がったか!と思ったら全く同じ論考をしている人もいた。それによるとドラゴンボール世代のオヤジが「下町ロケット」を支持しているというが世の中それほど甘くない。まず文系のオヤジもさすがに「友情と信念」で全部解決するなんて「子供扱いしてんじゃねーよ」とそっぽをむくだろう。さらに問題なのは私のように根強く支持して来たより単純な理系のオヤジだ。「陸王」もそうだったが理系技術畑をあまりにないがしろにしている演出にそろそろ辟易しているのだ。理系オヤジの興味は技術的困難をどんなヒントでどんな苦労をして克服したか、そのディテールにある。それが毎度なんら根拠も示さずに数字が上がった下がっただけではさすがに「いい加減にせいよ」ということになる。まあ他に楽しみがないのでネタバレ知ってもて最後まで観るだろうけど、もうこのパターンでは次はないな。

日産ゴーン会長逮捕の報道。内部告発からトップの不正が暴かれたらしい。リアル「半沢直樹」?事実は小説より激しい。

「ガイヤの夜明け」で帝国重工が開発中の国産ジェット機MRJが取り上げられていた。海外の敵対メーカーからの人材も登用して危機を乗り越え、いよいよテイクオフ間近だという。やっぱり「内製化」にこだわってはいかん。こっちにも下町メーカーが部品を供給しているらしい。リアル下町ロケット。


投稿者 : yoshimura1212 投稿日時: 2018-11-16 00:18:29 (9012 ヒット)

MCBの最後を飾るのはワシントン大学教授の今井眞一郎先生。老化研究の大家でサーチュインの機能を解明。さらにこの仲間のひとつSIRT1(サーテイワンと呼ぶらしい。どうしてもアイスクリームの31を連想してしまう)を脳だけで過剰に発現させたマウスを作成すると寿命が伸びることを示した。またこの酵素の基質であるNADのもとになるNMNを多く摂取するとやはり寿命が伸びる。「若返り薬」などと騒がれたが「若返るわけではなく、健康寿命が伸びる」のだそうだ。でも動きの鈍い老齢マウスにNMNを投与すると元気に運動し出すので「若返る」とも言えなくもない。
実は今井先生のお話をしっかり聞くのはこれが初めて。慶應義塾大学医学部の出身で私が現在いる東校舎の同じフロアに実験室を構えていたそうで因縁浅からぬ方なのだが。とにかくマイクがいらないんじゃないかと思えるほどに声が大きい。NMNを毎日飲まれているそうで元気の素はそれか?講義は内容もさることながら先生のエネルギーに圧倒される。こんなinspireされる講義はなかなかないんじゃないか?と思ったが、いろいろな研究室からもスタッフが聴講に来ている。質問は学生からではなく彼らがほとんど。うーん、学生さんらももう少し元気出して欲しい。

今井先生の話で気に入ったのは「小太りの人の方が寿命が長い」という話。無理なダイエットはむしろ寿命を縮める。ノーベル賞のオブジーボの効果も痩せている人よりも太っている人のほうが高いらしい。今の所食事制限がほとんどの生物で寿命を伸ばすことが知られている唯一の方法らしいが、それは実験室の話。マウスでも伸びるが免疫力が落ちて感染にやたら弱くなり、病原菌がいると早死にするそうだ。「実生活では勧められない」。食べることしか楽しみのない私のような大食漢にとってはなんだか気持ちが楽なる話ではないか。アルコールももしかしたら寿命を伸ばすかと思ったらこっちはダメらしい

この数日某財団の審査にかかりっきりだった。審査はもう天職なので何も文句はない。むしろ全部で35件程度なのでしっかり見てコメントも改善点も含めてしっかり書けるので働いた充実感がある。科研費の審査に比べると天国だ。科研費は今年大きな改革があった。業績欄がなくなってなぜか欠陥のあるResearch〇〇と結託してる。申請する方は改善になったのだろう。でも審査する側はむしろ煩雑さが増えた。そもそも審査員に意見を聴く機会は設けたのだろうか?少なくとも私の記憶にはない。「これまでの業績ではなく内容で勝負しよう」大いに結構。ならばそれを審査する側にも時間と精神的な余裕を与えるべきだ。具体的に言えば審査件数をひとり50件以下にすること。一件の審査料を2倍にすること。そうでもしてくれないと期待されている審査はできないように思う。こう書くともしかしたら危険分子として私は今年の審査は外されるかも。それはそれで大いに結構なことだ(小心者はJSPSや文◯省の依頼は断れない)。何にしても申請の方だけでなく審査員の改革なくして科研費制度の改革なし。


投稿者 : yoshimura1212 投稿日時: 2018-11-08 23:08:30 (3138 ヒット)

時差ボケも収まらないのに軽井沢まで出張。といっても東京駅から1時間少し。新幹線を降りるとパリよりも寒い。山の向こうでは人口スキー場があってもう誰か滑っている。コートを持って来なかったことを悔やむ。
生まれて初めて軽井沢に来た。「軽井沢」その名を聞くだけで違う世界のように感じるのは私だけだろうか。軽井沢と言えば避暑のための高級別荘地、もしくは「風たちぬ」で知られる深窓の令嬢の保養地のイメージしかない。いずれにしても自分のような庶民には縁遠いところと思っていたが、「軽井沢駅」の南口側は広大な敷地にこじゃれたアウトレット店が並んでいる。外国人観光客も多いようで、こんなきれいなところで気軽に楽しめるのだ。

臨床免疫学会はこれまでどちらかというとリウマチや乾癬などの自己免疫疾患が中心だったように思う。しかし今は腫瘍免疫も大流行りだ。ノーベル賞も拍車をかけているのかもしれない。私もTscmの話をする。夜は○○研のK先生らと飲む。K先生NHKの「ガッテン」でバンドデビューされたそうで超ご機嫌だった。映像はこちらから。メーキング映像まで見せてもらった。さらに先生の業界裏話の話題が尽きない。ぜひ「日本の生命科学者〇〇列伝」を出版してほしいが命の危険があるので難しいかもしれない。

軽井沢はやたらと夜が早い。何でもコンビニも含めて条例であらゆる店が23時には閉まるそうだ。そこはやはり高級別荘地か。物足りないのでホテルのコンビニ(支払いはフロント)でご当地ビール(軽井沢抗原ビール)を買って飲んだ。かなりうまい。

今回気がついたのはB細胞に関する話題が多いこと。自己免疫で抗体が重要なのは当然かもしれないが、B細胞は抗体産生だけでなく抗原提示細胞としても、またサイトカイン産生細胞としても機能している。その分類などの話題が多かった。ただSLEでは抗BAFF抗体が有効であるものの、CD20によるB細胞除去はことごとく失敗したという。どうもまだ釈然としない。B細胞の復権はこれからか。

 


投稿者 : yoshimura1212 投稿日時: 2018-11-05 23:52:20 (4544 ヒット)

 マリー•キュリーへの祈りが通じたのか。いやいやすべては伊藤さんの4年にわたる頑張りがすべて。reviewerの無理難題にもしっかりと正面から正攻法で対峙してきた。私はただ神社とパルテオンで拝んでいただけだ。これから日本に戻るので詳細は別の記事で紹介したい。

『脳Tregはアストログリオーシスを抑制し神経症状を改善する』(論文のタイトルはまだ出してはいけないらしいので日本語で。つまんね〜世の中だな。)

それにしても4人のreviewerのうち1人には「brain Tregなんぞ他のtissue Tregの仲間ではないか。全く新規性がない」と完全否定されていた。誰かは薄々わかる。「それをいっちゃあおしまいよ」という類いの批判だ。なんとeditorはこれを無視してくれた。今まで一人でもダメと言われるとrejectされることが多かったのでこれは本当にluckyだった。
内容は簡単に言うと『脳梗塞などの損傷を受けた脳組織には慢性期(人間でいうとリハビリ期)に制御性T細胞Tregが大量に集積し、脳Tregと呼ぶべき特殊な性質を獲得し、神経症状の回復に一役買う』ことを証明した論文。修復因子としてはとりあえずはアンフィレグリン(Areg)なので確かに筋肉Tregと同じと言えなくもない。でも脳Tregはセロトニン受容体を発現しセロトニンに応答して増える。セロトニンの脳内濃度を上げる薬は脳Tregを増やす。この薬は抗鬱薬として実際に使われている。脳梗塞のリハビリ期でも効果があるかもしれない。

今回の論文で最も重要なことは、「これまで脳梗塞の慢性期には炎症は治まり、免疫はあまり関係ないと思われていたのだが、実際はそうではなく、獲得免疫が発動しTregが集積することで一見静的な状態に見えていただけ、すなわち脳損傷の慢性期は実は免疫学的には”動的平衡状態”にある」ということを示したこと。脳梗塞に限ったことではなく多くの組織損傷でも似た機構が存在するのではないか。『動的平衡』はどなたかの決め台詞のようだが、実際には物理化学用語で古くから存在する。生物学的には「定常状態が維持され、一見何も起きていないように見える状態」をさす。しかし実際には様々な細胞が様々な分子を介して相互作用し生まれては消えて定常状態を維持している。『行く河の流れは絶えずしてしかももとの水にあらず(方丈記)』実は日本人には親しみ深い自然観なのだ。脳梗塞という一見単純な組織損傷の慢性期がそんな『動的平衡』にあること、それに組織Tregが極めて重要な役割を果たしていることを証明したこと、それがこの論文の出色な点であると思う。


投稿者 : yoshimura1212 投稿日時: 2018-11-04 15:52:39 (2861 ヒット)

10月後半は科研費が終わると、何度かWebにまつわる不具合でぶち切れたものの大きな出来事もなく平穏だった。11/2にパリで行われる国際会議に出席するために成田を出発する。翌3日に学会の合間を縫ってソルボンヌ大学近くを散策する。この付近にパルテオンというものすごく巨大な霊廟がある。多くのフランスの偉人や英雄たちが葬られている。地球の自転を証明したフーコーの振り子があることでも有名だ。このパルテオンの地下にマリー•キュリーとピエール•キュリーの棺が安置されていることを偶然知った。そもそもパルテオンとはギリシャ語の「すべての神々」に由来し、神様を祀る場所なのだ。英雄や偉人が神格化されるのは洋の東西を問わない。小学生か中学生の頃、「キュリー夫人伝」と「パスツール伝」を読んで科学者を志した。当時は自分の能力も知らない全く無垢な(無知な?)子供だった。そのキュリー夫人が眠っているのだ。かなり広いパルテオンの地下室を歩き回ってようやく二人の棺を見つけたときは感無量だった(なおパスツールの墓は研究所内にあるらしい)。しっかり手を合わせて拝む。いや今こそ最終段階にあるIさんの論文が無事に通ることをお願いしないといけない。なにしろノーベル賞を2回も受賞したのだ。菅原道真よりもご利益があるに違いない。一心にお祈りする。この頃はもうアイデアもでないので論文投稿の時は神頼みしかない。正月から何度神社にお参りに行ったことか。きっとその願いは通じるだろう。
ついでに近くのキュリー博物館を訪ねる。キュリー夫人の実験ノートからは今でも放射線が出ていることは有名な話だ。それが見れるかと思ったが残念ながらここにはないらしい。危険なので当然か(国立図書館で防護服を着たら見れるという)。当時の実験室や実験器具が展示されている。こんな粗末な機器でノーベル賞を2回ももらったのだ。やはり研究はお金ではなくアイデアと努力と忍耐なんだと納得する。

パリのホテルのトイレにウォシュレットがついているのを発見して驚いた。リモコンに絵も文字もなく試してみなかったらわからなかっただろう。欧米では初めて見た。GEBERITというスイスの会社の製品らしい。日本のよりもずいぶんシンプルだが機能は十分のように思える。惜しむらくは暖房ではなく座る時冷たい。ウォシュレットは日本発の偉大な発明品のひとつと思う。もっと広まっていいと思っていたのだがそろそろか。


投稿者 : yoshimura1212 投稿日時: 2018-10-14 13:08:26 (3236 ヒット)

 10/12 新潟大学の黒田先生に講演会に呼ばれて新潟に行った。人生初めての新潟である。新潟といえば米と日本酒。会場のホテルの正面には樽が積み上げられていた。懇親会では先生に勧められるままに10種類くらい利き酒をしてかなり出来上がってしまった。新潟は越後、越後と言えば上杉謙信。歴史好きのオヤジ(オヤジは多くは歴史好き)としては謙信ゆかりの地などを訪れたいと思って聞いたら、それは上越市で新潟市内にはそんなものはないという。がっかりだが朝ごはんではコシヒカリを3種類食べ比べ、市場ではまた日本酒を試飲して新潟を満喫する。
先生の話では、新潟名物は「塩引き鮭」(皮が絶品らしい)、枝豆(新潟県はえだまめ県。普通とは違うらしい)、サラダホープと柿の種。新潟の有名企業といえば亀田製菓。そこがつくっているサラダホープは新潟限定なのだそうだ。コンビニでも売っているということで早速購入。確かにサクサク感が抜群で止まらない。柿の種のほうは浪花屋が作っているもので開封して1日放っておいてもしけないらしい。先生の説によるとピーナッツを入れたのは亀田が最初なんだそうだ。
東京に戻る前に万代島(ばんだいじま;町名であって島ではない)の市場に寄って日本酒と魚をしこたま買い込んで、重い荷物をものともせずラボまで運んでそのまま酒宴。院生が学◯に通ったお祝いと助教の論文がもう少しで通りそうなので前祝い。雪椿と根知男山の4号瓶があっという間に空いて宮崎大学からもらった焼酎、薫陶も飲んでしまった。これはパッケージもいいが中身もかなりうまい。残念ながら一般には販売していないらしい。


投稿者 : yoshimura1212 投稿日時: 2018-10-10 19:49:34 (5085 ヒット)

 科研費の申請シーズンである。今回私は新学術のグループの一人として申請することになった。昨今申請はeRadから科研費申請システムにはいってずべてWebで済む。昔のように切り貼りした申請書をコピーしさらにコピーし、手で製本していた時代と比べるととんでもなく楽になった(おそらく今の若い人には想像もつかないだろう)。指示通りスイスイと進むと「分担者に承諾を得よ」という。教室内なので声をかけて承諾してもらったが、エラーが出てそれ以上進めない。おそらく機関担当者の承認も必要なのだろう。ということで「一時保存」して時間をおいてもう一度開く。ところが一時保存したはずなのに何処にもこれまで入れた形跡が見当たらない。自分が間違ったのだろうと観念してもう一度入力して「次に進む」を押すとやはりエラーだ。承認されていないらしい。しかたない。また「一時保存」してかなり時間をおいてもう一度開く。今度は「一時保存」を押したことは間違いない。しかしやはり「保存」はされてなくまた一からやり直し。だんだん拳が震えてきた。Web入力システム入力は良い点はたくさんあるものの必ず「落とし穴」がある。そこにハマると自力で抜けることが難しい。おそらく何か単純なことを間違えているかバグがあるか。ひとつつまづくだけで全く身動きが取れなくなる。システムを作った人はすべて「当たり前」のことなので「IT弱者」のことまで気持ちが及ばないのだ。某倫〇申請のシステムも同じ。1日も早くAIが進んで「初心者が陥りそうな間違い」を事前に察知して勝手に入力を訂正してくれるシステムを開発してほしい。
もうひとつの怒りは今年から〇〇〇〇の報告書にeRadからの報告も追加されたこと。科研費の毎年の報告書はすでにeRadでやるようになっているのでずいぶん楽になっている。これでだいぶ楽になるのかと思ったら、甘い。もちろん今までのExcellやWORDの報告書がなくなることはないらしい。なぜか2度やれ、というわけだ。せめてformatを同じにしてもらえれば入力はかなり楽になるのに。さらに業績はReser〇〇mapと連結しないととんでもなく入力が大変なことに気が付いた。Reser〇〇mapと連結することを前提としているとしか思えない。しかし私は昔のIDが残っていてReser〇〇mapにログインもできないのだ。い○めとしか思えない。ここでも「IT弱者」は途方にくれるしかない。もしかしたら大金をかけて作成したReser〇〇mapの利用頻度があまりに低いのでどこかが挽回しようと画策しているのか。。

後日談:申請書の方は結局最後の最後になって『Error: 重複応募の制限で応募できません』が出てきて、なんと自分は出せないことが発覚。ちゃんと調べて始めなかった自分が悪いんだが、せめて記入始めた時に警告出してくれれば、、、「私の失われた半日」も痛いが、それ以上に計画全体の修正が必要になるので仲間の先生たちに申し訳ない。やっぱりもっと巨大な「落とし穴」があったのだ。。。

Resea
〇〇mapはIDを再発行してもらってPubMedから論文リストを作成できた。340件を超えている。もう少しあると思うが面倒だからこれでよしとする。これをeRadに連結した。ここまではうまくいった。eRadから業績報告欄に行き、Resea〇〇mapから論文リストを転送。おお、簡単ではないか!しかしなぜか全ての論文に選択用のX印が。。。必要なのは2017年の15報だけなんですけど。。。全てを解除する設定は見当たらない。しょうがなく残りの325報のチェックを外す。書くのは簡単だが何の意味もない単純作業を30分くらいやらねばならない。すでに手がわなわなと震えている。まあよい。どうせこんな作業しかできない老いぼれだ。やっとX印を外して「登録内容の確認」ボタンをクリック。すると
『HTTP404:ページが見つかりません』
オーマイガー!何をやってもHTTP404。「保存」を押してもHTTP404。
ブチ切れても当然のシチュエーションながら、老人はもう怒る気を失っている。明日eRadかどこかに電話しよう。ここで悪戦苦闘しても多くの場合時間の無駄であることは経験的によくわかている。それにしてもだ、こんなク◯なシステムを作成して大金をせしめた業者かあるいは〇〇は何処だ?研究者の労力を削減するという謳い文句ではなかったのか?使われないのはク◯なシステムだということにどうして気づかないのか?そうかこれを作った人たちは自分が入力することはまずないからな。当然か。これでは日本の科学の落日も当然ともいえる。

翌日eRadのヘルプデスクに電話する。ブラウザを替えることしか方法が思いつかないらしい。選択を全部消す方法くらいつけとけ、研究者をバカにしてんのか!と電話口で怒鳴ってしまった。モンスタークレーマーと呼ばれているかもしれない。
ブラウザを3つ試したが全部ダメ。試しに手で論文を一件だけ入力して見た。するとうまく「登録」ができた。eRadとResearchmapの連結に問題があるのか?結局全部手で入れろというのか。こんな「生産性のない」ことになぜ時間を費やさなければならないのだろうか?馬鹿馬鹿しいので論文は一件だけにしてそのまま登録した。きっと怒られるだろうが問題を知らせる効果はあるかもしれない。


投稿者 : yoshimura1212 投稿日時: 2018-10-04 11:53:20 (4069 ヒット)

 酵素の分子進化とファージディスプレイ法。大方はゲノム編集技術だろうと思っていたのではないか。さすがノーベル賞委員会は世間の予想をはずすことを楽しんでいる。
ファージディスプレイ法は免疫学の教科書でも出てくる、モノクローナル抗体の作成法のひとつだ。私も講義でちゃんと解説している(学生は覚えてないだろうが)。しかし私が駆け出しの頃、すでにファージを使った遺伝子クローニングやペプチドライブラリーはあったので正直「そんなに斬新か?」と言われると「うーん」。ジョージ・スミス博士の方がファージディスプレイ法の最初の提唱者でウインター博士が抗体のスクリーニングに応用したのだという。アダリムマブ(商品名ヒュムラ;抗TNFα抗体)がファージディスプレイで取られた最初のヒト型モノクローナル抗体だ。2017年における全ての医薬品の中でもっとも売れた商品がヒュムラ(2.5兆円)である。そいういう意味では確かにすごい方法なんだろうが、TNFα阻害が関節リウマチなどの炎症性疾患で治療に使われているほうはまだ医学生理学賞もらっていないからややモヤモヤ感が残る。しかしファージなら高価な機器など必要としない。アイデア次第では元手もほとんどかからずにノーベル賞をもらえるかもしれないと思うと勇気づけられるではないか。


投稿者 : yoshimura1212 投稿日時: 2018-10-01 18:37:47 (5246 ヒット)

 本庶、Alison両氏が受賞。すごい。おめでとうございます。ますます腫瘍免疫研究に弾みがつくか。
本庶先生とは多少のご縁がある。はるか昔、学生時代に本庶先生の講義を聞く機会があった。抗体のクラススイッチのメカニズムを解明されたお仕事の話で初学者には非常に難しかった。しかし最先端の分子生物学を駆使した話に時代の熱気を感じられた。その後は私は免疫学とはかけ離れたことをやっていたので接点は少なかったが、そのうちいろいろな研究費の審査で御前に立たされることが何度かあって本当に恐ろしかった。「独創性とは何か?」という駄文ではこっぴどく怒られた。が、今で言う炎上商法でおかげで私は知名度が上がった。質問も厳しく「免疫サマースクール」で発表する時は先生が来られてないとわかるとほっとしたものだ。しかし3年前に「慶應医学賞」を受賞されたときは紹介文を書いたりした関係でだいぶ普通に話せるようになった。

記者会見で「生命科学研究ではひとりに1億円あげるよりも10人に分け与えた方が良い。特に若い人に」と言われていた。正論だろう。私には特に耳に響く。
また日本の製薬企業について「数が多すぎ。集中して研究に投資すべき」と言われていた。なかなか日本の製薬企業が話に乗ってくれないという経験のせいだろうか。
この間MCBで来られた仲野先生や免疫学の講義で来てもらった新蔵先生は本庶先生のお弟子さんである。たくさんの教授を排出されたので教育者としても立派なのだろう。仲野先生はOP9によってESから血液細胞を作れることを発見された時は嬉しさのあまり(これで本庶研から抜けられる!)、アルキメデスばりに何度も自転車で走り回ったそうである(講義で言われていたのだが、さすがに書くのは憚れれた。しかし新聞にも出ているので公表していいのだろう)。生命科学は「やってみないとわからない」と言われる。そうなんだろうけどなぜかうまく行く人は何度も予想が当たってうまくいく。その仕組みがわかるともっと科学は進むような気がする。私の場合は「N(試行数)を増やす」というなんとも芸のない方法しか思いつかなかったが。。。


投稿者 : yoshimura1212 投稿日時: 2018-09-28 22:24:12 (2807 ヒット)

 本当に久しぶりに癌学会に参加する。これまでは一般演題で若い人に行ってもらっていた。今回はシンポジウムと教育講演に呼ばれたので自ら出向くことにした。久しぶりに参加して抗腫瘍免疫も存在感を示していることに驚いた。一日いても途切れることなく聞きたいシンポジウムやワークショップがある。日本のがん研究もようやく世界の潮流に追いつきつつあることを実感した。注意を引いた発表で、水素吸引によってT細胞の疲弊化が減ってPD-1抗体の効果があがるという。マウスではなく実際の患者さんの話だ。実臨床に基づいた臨床の先生の話には説得力?がある。

これでも一応がん学会の評議員である。評議員を続けるにはCancer Scienceという学会誌に論文を定期的に出さないといけない。これが結構大変で常にクビの危機と背中合わせだった。評議員懇親会にも久しぶりに顔を出した。なんと出し物が「南こうせつ」のミニコンサート。なんでも会長先生が彼の親族の主治医だった関係だったそうだ。南こうせつ、歌もうまいが話もうまい。印象に残った話。「夢一夜」の講釈のあとで。こうせつの親父さんは大変やさしい父親だったそうだ。「父に怒られたことが一度もなかった。でもいつも父は母に怒こられていました。」父が亡くなって火葬されて骨壺が家に帰ってきた時のこと。母は骨壺を前に正座して寂しそうにしている。「夫婦ってこうやって終わるんだな」。子供たちもしんみり。「気落ちしなさんな。これからはオレたちがお母さんのことしっかりサポートするから」と励ました。母はそこで天井を見ながらぽつりと一言。「あんまり好きじゃなかったんだよね。。」オーマイガー!

シンポジウムでは近藤君のiTscmの話をはじめて英語でやった。発表者ツールにテキストを書き込んでいたので大丈夫と思っていたが、とても発表時に読めるものではない。自分でも情けなくなるほどグタグタの発表だった。何事も軽んじることなく練習して十分な準備が必要だ。
一般演題も英語のセッションが多い。英語のせいかなかなか質問が出なくて座長の先生が四苦八苦されていたのが可哀想だった。
 
 

 


投稿者 : yoshimura1212 投稿日時: 2018-09-26 23:50:11 (3463 ヒット)

 科研費のシーズンである。今年は大改革が断行される。なんと業績欄がなくなり過去の業績ではなくプロポーザルの優劣で判断されるという。大変立派な改革である。が、これは間違いなく審査員泣かせである。内容はもちろん見るけどやはり実行能力は重要と思う。今までのやりかたで不都合があったのだろうか?ロクに申請書を見ないで業績欄で判断してきた〇みたいな輩がいるから?いやいやそんなことで惑わされない。今までの審査結果には自信があるのだが。ともかく業績は審査員が調べないといけないので今まで以上に時間がかかることは間違いない。審査委員の数を増やして一人当たりの審査数を多くて50くらいに制限すべきである。できれば一件あたりの審査料も3倍くらいにして欲しい。審査員も大変だが書く方も大変だろう。若い人たちには同情せずにいられない。本当にバリバリやっている人は申請書書きに時間を割くよりも論文を書いたり実験したり研究のアイデアを考えたいと思うだろう。申請書書きもアイデアを整理したり予備検討データを見直す良い機会なのだが基盤Cくらいだと労力の割には、、ということになりかねない。

厚労省はアレルギー対策に巨額?の研究費を投入するという。10数年前に理研なんとかセンターができたときも同じことを聞いた気がするが、ただの記憶違いだろう。そんなの制御性T細胞(Tレグ)ですぐ治る(と信じて研究をしている)。ぜひ〇〇がやっている『Tレグを人工的につくる』ような研究に投資してほしい。

実は何かすごい面白いことを思いついて書き始めたのに科研費のことを調べているうちに忘れてしまった。もうあかんな。


投稿者 : yoshimura1212 投稿日時: 2018-09-19 18:17:35 (4284 ヒット)

 仲野徹教授は私が最も尊敬する(羨望する?)研究者のひとりである。あるいは文化人、評論家と言ったほうがよいのかもしれない。研究の著書も多いが、数多くの一般向け著書やテレビ出演もある。Twitterも評判らしい。今日も(そこまで言わんでもええやんやないかと思われるほど)散々自分の著作の宣伝をされていかれた。「お笑い系研究者」を自認されているように話は面白かったが、関東の学生には時代的、文化圏的にやや難しかったところもあったように思われる。
私にとって極めて面白かったのは先生らがクローニングしたPGC7という遺伝子の話。この遺伝子は仲野先生が2002年4月に最初に小さい雑誌に報告されている。ところが商売敵で後輩の斎藤通紀先生が同じ遺伝子を少し遅れて"Stella"という名前でNatureに発表。最早PGC7の名はほぼ消滅。「PGC7ていうのが先に出ているのを知っててよくも断りも(引用も)なく名前を変えやがったな」というわけだ。相当悔しかったのだろう、斎藤先生を極悪人呼ばわりしていたのだが、そこから奮起してStella/PGC7の機能「受精卵において母親由来のDNAのH3K9me2にくっついて脱メチル化を阻害する」を解明してNatureに発表してリベンジを果たされたところはすごい。この論文は「なぜ父親由来のDNAと母親由来のDNAの脱メチル化の速さに差があるのか?」という疑問を解決した本当にすごい論文だと思う。これ以外の論文ではご自身でもStellaを使っているのだが、このNature論文ではタイトルはPGC7になっている。そこに仲野先生の雪辱の思いがこもっているように思える。
学生向けに人生論や研究への取り組み方も話されたのだが、「自分の好きなように生きたらええ」というのが結論なのでどうにも迫力が足りない。いっそ文楽の話でもしていただいたほうがよかったかもしれない。私も文楽好きだが到底評論できるようなレベルではない。仲野先生は自分でも浄瑠璃をされ、国立文楽劇場に寄稿するほどの専門家なのである。この寄稿を読んで「夏祭浪速鑑」を観に行ったほどだ。ただ「長町裏の段」の解説に一箇所誤植がある。まあ、ケチをつけたいわけではなくその程度は自分でもわかると自慢したいだけなんだが。


投稿者 : yoshimura1212 投稿日時: 2018-09-11 21:26:06 (3746 ヒット)

 今日のMCBの講義は京都大学iPS研究所の川口先生と熊本大学発生研の西中村先生。奇しくもiPSから膵臓と腎臓を作成されたことで著名なお二人のお話だ。川口先生はしかしiPSの話はされず、膵臓の内分泌細胞、外分泌細胞がどのように影響し合いながら分化や機能維持を果たすのかを研究手法を交えてお話くださった。プロの研究者には馴染み易い話だった。最後に「先生が研究をされてこられたことは外科医としては役にっていますか?」と私が尋ねたところ、「論理的にものを考えることにものすごく役に立っている。例えば研究の経験がある者は血液検査を出す場合ものすごくよく考えて推論できるような検査項目を入れる。何も考えない者はただ漫然とルーチンで出す」と言われていたのが印象的だった。

一方の西中村先生は自分の夢だった「試験管内で腎臓を造る」という目標をどうやって実現したか、あるいは実現しつつあるか?という話で門外漢の私にも極めて刺激的な話だった。もともと腎臓内科医で透析で大変な思いをされている患者さんを腎臓移植で治したい、そのために人工的に腎臓を作り出したいというのがこの世界に入るきっかけだったそうだ。しかし腎臓は最も複雑な臓器のひとつで多くの種類の細胞が複雑に絡み合っている。そう簡単にできるものではない。例えばもしiPS(あるいはES)細胞からネフロンをつくるにしてもマウスの発生では10日くらいかかり1日ごとに変わっていく。もし一日あたり1000通りくらいの培養条件を検討しなければならないとすると1000の10乗の条件を検討しなければならないことになる。ほぼ無限といえる数字だ。それを先生は1日ごとに調べて確定していけば1000X10=10000回の条件検討で済むと考え、実際にそれをやり遂げられた。理屈はそうかもしれないが1000通りの条件検討すら想像がつかないくらい大変そうなのにそれを10回やるなんて、呆れるくらいすごい。しかも熊本地震によって中断も余儀なくされたという。例えば我々の分野のT細胞なんかOP9という線維芽細胞みたいなのとまず培養し、次にNotchを発現させたOP9-DL1と培養するだけで割と簡単にできる(らしい)。腎臓の細胞もそんなものだろうと思っていた不明を恥じるばかりだ。切片を切って糸球体のような形が見えた時は大学院生と涙を流して喜んだそうだ。こういう話は昔私が若かった頃、微量の生理活性物質を何段階ものカラムを通して丸一日コールドルームで過ごして精製していった先人たちの話に通じるものがあるように思う。創意と工夫、それに弛まぬ努力があれば不可能はない。NHKは「プロフェッショナル」に呼ぶべきだ。

MCBの先生方の話はそれぞれ個性があって興味が尽きない。多くの学生さんたちは「単位をもらう」ことしか考えていないだろうが本当に少人数でも何か感化されるものがあれば大成功だろう。

 


投稿者 : yoshimura1212 投稿日時: 2018-09-05 12:08:42 (3373 ヒット)

 先週27日夜会合で新宿まで行く。途中で稲光がして近くに雷が落ちた様子が見えた。これはすごい。次は写真に収めようとのそのそしているうちにものすごいゲリラ豪雨になった。この5分の遅れでびしょ濡れ。折りたたみ傘など全く役に立たない。つまらないことをしたと後悔。昨日の台風21号はものすごい勢力だったのだろう。中心からだいぶ離れた東京でも風が普通の台風くらいあったような気がする。自然は侮れない。ニュースで大阪の街でこの台風のなかを歩いている人たちを映し出していた。なんでこんな日に外出?と思うが新宿のゲリラ豪雨のことを思い出して「きっと自分もそうしてしまうのだろう」。

9/1,2 恒例の免疫適塾。理研の岡田先生のイメージングは映像がすごい。話も大変面白かった。雨でソフトボール大会は流れたが、この頃妙に胸が痛く(ときめくとか騒ぐではなく)なる自分としてはなぜかほっとする。で、早く家に戻ったので録画したカンブリア宮殿を見る。今回も感動モノだった。倒産寸前だった撚糸会社を技術開発で一発逆転。「下町ロケット」を地でいく中小企業のサクセスストーリーだ。数々の実験と失敗を繰り返してようやく新しい糸を開発。しかしそれでめでたしではない。これを編んで布にしてくれる会社が必要なのだ。何軒も探し回ってようやく小さな同じく倒産寸前の企業を見つけて、さらに技術的な困難を乗り越えてようやくタオルを開発。まるでどこかの小説で読んだ話のようだ(いや小説の方がこの話をモデルにしたのかも)。ベンチャーの話も感動したが理系人間としてはこちらのほうがより親しみを感じる。自分も頑張ろうという気にさせられる。我ながらつくづく単純な人間なんだと思う。
さっそくそのタオルを買おうとネットをみると軒並み「品切れ」。同じ単純人間が多いんだと納得。

台風もだがそれ以上に仰天したニュース。政府が原則70歳まで働けるよう企業に努力目標をおしつけるという。定年を指折り数えて待っている人もいるのに。アカデミアではますます若手のポストが減るので活力が失われると思う。

9/6 朝 北海道で強い地震。土砂崩れも発生している。広く停電しているそうだ。北大や札医の知り合いは大丈夫だろうか。
今回の停電は発電所の破損ではなく厚真町の発電所の緊急停止による需給バランスが崩れから北海道全域に広がった「ブラックアウト」らしい。


投稿者 : yoshimura1212 投稿日時: 2018-08-26 22:14:10 (3587 ヒット)

 ベンチャーから年商800億円の新ビジネスを作り上げた異端経営者・瀬戸欣哉(現在は年商1兆6000億円のリクシル社長)。その言葉がすごい。(カンブリア宮殿より)
「この会社を変えるためには個々が、自分たちでリスクを意識しながら実験をしていく。実験の結果に関して失敗を責めない。失敗から学ぶ限りはそれは失敗ではなく投資である。それがベンチャー的なものの考え方である」
「資金力がないからこそクリエイティブにならざるを得ないし実験して学ぶ」
「sense of ownership: 自分の会社だと思うと一生懸命自分で考える」
なるほど。会社を研究室に置き換えても同じ。うーん私は完全にベンチャー失格です。失敗を必要以上に責めてたし、いや最近はパワハラになるので責められなくて、矛先は自分に向かう。失敗するとすぐに忘れようとするので失敗から学ばない。つい過食に走ってしまう。ついでに哲学者のお考えもひとつ。「死を意識するからこそ人生は輝くのだ」(ハイデガー)(NHK Eテレより)。ジョブスも同じようなことを言ってたな。「朝起きたら今日が人生最後の日だと思って行動しなさい」。今日は仕事を早く終えて近所の神社まで走ろうと誓っていたが、気がついたらすでに夜で西郷どんを見ながらビールを飲んでいる。怠惰な自分には無理無理。。。でもそれが普通なのかもしれない。怠惰な人に送る「普通人の気持ちに寄り添ったお考え」特集は絶対に受けると思う。

 


投稿者 : yoshimura1212 投稿日時: 2018-08-24 08:33:35 (6500 ヒット)

 鹿児島から戻ってすぐに某研究補助金の最終報告書を書き始める。いや実はサマースクールの間中、他の先生の話は聞かずに部屋にこもって書いていたのだが全然終わらない。額も大きいのでしかたないが40ページくらいにはなりそうだ。つくづく「もらえなくて地獄、もらっても地獄か」と嘆いてもはじまらない。
「○○と乞食(もしくは坊主)は3日やったらやめられない」という。○○には政治家とか医者とか入るが教授もそのひとつだ。とんでもない、私は1日も早くやめたいのだが、某有名な教授にぼやくと「僕は報告書なんか書いたことあらへんで。申請書もない」。なるほどこんな先生がおるから「3日やったらやめられない」と言われるのか、と感心する。その先生を含むある門下では代々「雑用はすべて部下がやる」というのが伝統らしい。立派なお弟子さんたちがたくさん巣立っていることからすると「雑用は教授がやるからその時間は実験してほしい」というのはダメなのかもしれない。結局「雑用やらなくて済んだ時間は遊んでいる」ということかも。でも私なんぞは「ろくなアイデアもないのだから雑用くらいしかできんだろ」と言われるのがオチかもしれない。

8/25 一日かけて報告書を書き上げる。何が大変かって難しいのは3~5年前の学会発表の情報を集めることだ。ネットに出てるのもあるが出ていないのも多い。ちゃんと記録を残してなかったお前が悪いと言われればそれまでだが。数年おきに同じことをしている。もう治しようがない。


投稿者 : yoshimura1212 投稿日時: 2018-08-20 19:32:08 (3153 ヒット)

 8/20から鹿児島県指宿で免疫サマースクールが開かれている。もう20年くらい前に鹿児島に住んでいた。人情が厚く鹿児島は好きな街のひとつだ。指宿までのバスの車窓から錦江湾公園が見えた。昔よく家族で遊びにきたところだ。大型ロケットH-2Aの展示がまだあった。むちゃくちゃ懐かしい。
私は一日目の3番目のイントロダクトリーコースで獲得免疫の話をする。疾患や治療の話を中心に50分間しゃべった。時間が限られているので「免疫劇場」を見せようか迷ったのだが、聞いてみると意外と「知らない」というので見せることにした。「はたらく細胞の」キャラも随所に入れこんだ。そんなに難しい話はしなかっかった(つもりだったが)、あとで聴講生に無理に聞くとわかりやすかったと好評だったが本当のところはどうだろうか。今年は意外に医学部の3年生や4年生が多かった。講義が終わったばかりなせいか「アレルギーの4分類」忘れているのもいた。試験が終わればすっぱり忘れるのは学生の本分なのでしかたない。私も今年で免疫サマースクールは卒業だろう。
授業で免疫学などを教えている先生も多い。学生の「評価」のことを聞くと「見ない」そうだ。匿名で適当なことを書くのはネットの無責任な書き込みと同じ。建設的な改善点を聞きたいのなら顕名にすべきだろう。実は誰が書いたかはわかっているのだが。
理事長があいさつで「若い人たちにもっとサイエンスの世界に入って活躍してもらうためにもすそ野を広げなければならない。このサマースクールもその一つだが我々は常にその方策を考えている」と述べられた。すでに出来上がっているとなりから「年寄りが身を引くのが一番では?」と小声が。。
21日の夜は台風の風雨の音がすごくて眠れなかった。翌日帰れるか相当心配したが、前の便は欠航になったものの運良く自分の便は時間通り運行された。


投稿者 : yoshimura1212 投稿日時: 2018-08-15 07:28:04 (3169 ヒット)

 このところゲリラ豪雨が頻繁に報道されている。日本もいよいよ亜熱帯か。一昨日は千代田区で雷鳴の中での会議だった。1日座っているのはなかなか大変でかなり消耗する。お盆だからか電車が空いていたのがせめてもの救いか。タイからの留学生が教室見学に来た。もはや大学院生は海外に頼るしかないのかもしれない。今年のように仕事でお盆に墓参りに行けなかったのは久しぶりだ。お盆のことを聞いてみたらタイにはないらしい。仏教の行事ではあるが日本独特のようだ。日本の夏はタイより暑いそうだ。たいして外に出ないのに夏バテ気味。
山口で行方不明になっていた男児を発見したのは78歳のボランティアで捜索に参加した方だそうだ。このかた筋金入りのボランティアで様々な被災地に遠近に関わらず自家用車で駆けつけて人々を助けているという。私利私欲がなく他人のために働く人には頭が下がる。引退したらこんなジイサンになりたい。

昨日に続いて今日も一日千代田区で缶詰。雨はなかったようだが緊張が続き相当に消耗した。少しでもリラックスしようとつい冗談を言うと「先生、録音されてますよ」とたしなめられる。さらに追い討ちをかけるように某報告書のリマインドのメールが来る。しまった、完全に忘れていた。今週末は講演とサマースクールで出張なのでとても複雑な仕事はできない。懸案の論文のreviseもある。自分の事務処理能力をすでに大幅に超えている。NHK Eテレで毎週木曜日の深夜やっている「世界の哲学者に人生相談」。総集編に入ったのでもう終わりなのか。毎回含蓄のある哲学者の「お考え」を楽しみにしていたのだが。「沖仲仕の哲学者」と言われるエリック・ホッファー。『仕事にとって大切なこととは「自由」「運動」「間暇(=ヒマ)」「収入」この4つの適度な調和である』いやいや誠に的確で奥が深い。うーん、残念ながら今の自分にはどれもないような気がする。


投稿者 : yoshimura1212 投稿日時: 2018-08-12 00:53:06 (2546 ヒット)

 夏の花火はなんとなく寂しい。打ち上げの最中はきれいなので歓声をあげているが、終わると「もう夏も終わりか」という気分に否応なくさせられる。もっともこの酷暑では「早く終わってくれ」と思うのかもしれない。
今日は神宮の花火大会。仕事が一段落して帰ろうとしているとC君から電話。「信濃町駅付近からよく見えますよ、来ませんか?」おお席取りしてくれてたんだと思って行くとC君が突っ立っている。何のことはない、警察から「ここで立ち止まらないでください」と怒鳴られながら立って見るだけ。きっと綺麗どころと楽しくやっているのだろうという淡い期待を完全に打ち砕かれる。ビールを飲むのも落ち着かない。それで歩いて打ち上げ場所に近い方に歩いて行ったが木の影で余計に見辛い。しかたなく某所の屋上に行く。ここは新病棟ができたのでまず見れないと思われたところだ。しかし行ってみるとわずかの隙間からよく見えるではないか。何より腰掛けながら見れるのがいい。わずかに若いカップルが一組いちゃついている。意地悪くオヤジ二人が近くで(わざと?)大声を上げながらみていると即さくと何処かに消えて行った。


C君はよぼど嫌なことがあったのかすでに完全に出来上がっている。花火のあと「帰ります」と先に帰ったのにまた電話。「カラオケにいるので来ませんか?」私も今日は学◯の審査(一年中ひとの申請書ばかり読んでいる)が終わって解放的な気分になっていたのか、付き合うことにする。泥酔のC君も一人では心配だ。オヤジ二人で深夜まで何曲も歌った。「それでも愛は勝つ」と二人で拳を握りしめながら熱唱する。このところ溜まっていたストレスを解消できた。

NHKの日曜美術館で「いわさきちひろ」をやっていた。で、これまで行ったことがない上井草の美術館に行ってみた。殺伐とした日々を送っているので、子供の絵をみていると癒される。しかしどうも違う。よく調べたらNHKでやっていたのは東京ステーションギャラリー。残念ながらそちらまで行く時間がなくラボでまた別の助成金の申請書の審査をする。もしかしたらこれが天職なのかもしれない。


投稿者 : yoshimura1212 投稿日時: 2018-08-08 13:16:44 (2466 ヒット)

 台風のせいか急に涼しくなった。酷暑もようやく終わりかと思ったら、NHKのニュースを見ていたら衝撃的な話が出ていた。最新のProNAS.USAの論文で「このままでは温暖化に歯止めがかからずに地球は温室と化して生物が住めなくなる」というのだ。こちらのほうが詳しいか。灼熱の砂漠にだって、温泉にすら生物はいるので何らかの「生物」は住めると思うが、このところの異常な水害や暑さを思うと本当に人が住めなくなる可能性もあるのかもしれない。まだだいぶ先の話らしいが、子孫のために有効な手を尽くすべきだろう。

それにしてもこの8月の前半は神経をすり減らす毎日だ。自身のヒアリングもあれば審査する側のヒアリングもある。後者の方が楽そうに見えるかもしれないが「重責を担っている」ので精神的にはそうでもない。昨日は重責に堪えられず深酒し現実を忘れる。
期待していたもうひとつのAMEDの申請は面接の連絡がないのでダメだったのだろう。そういえばこれまで代表として気合いを入れて申請して、面接で落とされたことはことはあっても面接に呼ばれなかったことはなかった(ように思う)。連絡もなくスルーされる側のなんとなくじわじわくる、いわゆる「真綿で首を絞められる」気持ちがわかる。みなさんごめんなさい。早く快適(気楽)な季節になってほしい。

 


投稿者 : yoshimura1212 投稿日時: 2018-08-04 08:57:09 (2595 ヒット)

 毎朝ニュースで「命にかかわる暑さ」と言っているがあまり外に出ないのでさほど気にしていなかった。しかし今週は外回りが多くかなり消耗した。熊本出張ではgoogleではバス停から大学まで徒歩10分と出たので歩くことにした。ところが着いたのは大学病院で、研究所のビルはずっと先のようだ。道に迷って結局30分くらい歩いたろうか。熊本は九州のなかでもひときわ暑い。刺すような日差しを堪能させていただいた。英語でのセミナー。冒頭アドリブで「熊本は暑いがこの研究所は研究への熱気でもっと暑い」と言ったつもりだが全く伝わらなかったようだ。
セミナー終了後郷土料理の店に連れて行ってもらった。最初に出てきたのが「人文字グルグル」。ネギを巻いて味噌で食べるもののようだ。私は九州出身なのに初めて知った。実はネギではなくワケギで江戸時代に細川藩で開発された由緒あるものらしい。名前の由来はこちら。一度聞いたら忘れられないネーミングだ。
   数日後の眼科の研究会で「免疫応答」を説明するのに初めて「はたらく細胞」のキャラを使って説明してみた。もう十分大人の先生たちが相手だったせいか全くウケなかった。さらにここで時間を使いすぎたか予定時間を超過してしまった。かなり自己嫌悪に陥る。

この夏、近々自分自身の研究者としての人生を左右するヒアリングがある。落ちたらほぼ研究終了とも言える。こちらも熱い。
土日の全てを費やしてヒアリングの準備をする。夜中一人で作業をしていると夜回りの警備員さんに声をかけられる。やっぱりこんな仕事、若い人には敬遠されるよな。家に戻り一人で麻婆豆腐を作る。小さじ一杯味見するとこれがすこぶる美味い。そのまま3人前位くらいを平らげてしまった。ストレス食いか。でも今回はだいぶ気持ちが落ち着いている。どうあがいてもあと5年しかないのだ。自分が本当にやりたいことをストレートに伝えたい。最後の5年でやりたいと思っていることを10分で審査員に理解できるように伝えられなかったら全く自分の責任。潔く研究の世界から引退するのもやむなし。

 


投稿者 : yoshimura1212 投稿日時: 2018-07-19 09:16:17 (11681 ヒット)

 Gyao無料動画に「はたらく細胞」というのがあってちらっと見てみたら細胞を擬人化していろいろな病原菌に対抗するシリーズのアニメらしい。もちろんほとんどの登場人物は免疫系の細胞だ。T細胞が胸腺大学で教育を受ける回もあるらしい。
アニメの第二話で白血球が壊れた血管内皮からすべり落ちる際に仲間の白血球が「Lセレクチンを出してなかったのか!」と叫ぶシーンがあった。原作者は医学とは無縁の方らしいが相当に勉強していると感心した。

アニメやマンガで微生物学と免疫学(の基本)を学ぶのはとっつきやすくていい考えだろう。他にもWebでは「免疫のシゴト」とか「マンガ免疫学」とかいろいろある。「新抗体物語」は免疫の解説よりも主人公の人生ドラマが面白い。河本先生の「マンガでわかる免疫学」というのもがあるが惜しむらくは絵がちょっと。。(河本先生は本業界きってのアニメーター。なぜ彼自身が絵を描かなかったのか?)「はたらく細胞」のほうがはるかに絵がきれいで今風だ。細胞の擬人化という意味では東大の学生さんが作った「免疫劇場 MEN-EKI BLACK」が秀逸で毎年講義でも見せている。来年は「はたらく細胞」を見せようかと思ったがちょっと長すぎるな。「免疫劇場」は4分くらいなのでちょうど良い。「はたらく細胞」のキャラで「免疫劇場」を作ったらきっとウケるだろう。

免疫学の本試験。「丸暗記よりも理解」を大事にしてほしいと持ち込み可にしてみた。もちろん広い範囲から情報を集めて解くような問題なので何処に何が書いてあるのかくらいは覚えておかないといけない。「試験は合否を決めるためではなく勉強して理解を深めてもらうためにある」というのが私の信条。持ち込み可であってもある程度は勉強しないと解けない。しっかり勉強してくれたのか多くは大変よくできているので「持ち込み可」の試みはよかったのではないか。
でも講義に全く出ないで免疫学を教科書だけ読んで理解するのはかなり大変で膨大な時間がかかると思う。特に教科書では何が重要で何が瑣末なことなのかわかりにくい。概論講義は全部で12コマ=18時間程度である。「エッセンシャル免疫学」を全部読んで理解するのに必要な時間よりもずっと短くて済むと思う。


投稿者 : yoshimura1212 投稿日時: 2018-07-15 22:55:49 (2625 ヒット)

 7/14土曜日。この3連休、4つの眼科関係の合同年会が新宿で開催されてる。14,15,16と完全に連休を潰して勉強されている姿勢には頭が下がる。14日は講演に呼ばれてTregの話をする。夕刻7時から懇親会なのだが一度ラボに戻ってから出かけることに。懇親会では来賓代表でスピーチをと依頼されていた。私の一番苦手なやつだ。ところが新宿周辺は渋滞で会場には15分くらい遅れて到着。結局乾杯まで呼び出しがかからなかったので「ああ、自分の出番には間に合わなかったのだ」と妙に安心してワインを遠慮なくいただいていた。そうすると会の最後に「ではここで来賓のご挨拶を」と海外からの招待者と私が呼ばれたのだった。かなり油断していた。でも今こそ「古代ローマのライオンのスピーチ」のネタがぴったりだ、と思ったのだが、すでにほとんどの聴衆は出来上がっている。あまり複雑なことを言っても通じないかもしれない。そこで数日前の山中先生の講演を披露して「iPSの臨床応用は眼科領域が一番乗りである」と持ち上げ、でも「とりあえずは他家移植をめざすそうなので、HLAの問題は避けられない。再生医療には免疫学の知識が欠かせない」と免疫の勉強の重要性を強調した。そのあと「実は山中先生とは旧知のなかで、、、」と続けようと思ったが、「免疫学の勉強は重要」と言ったところで皆しらけたのか聞いていない。最後は前田敦子の「吉村は嫌いになっても免疫学は嫌いにならないで!」で少しの笑いを誘って結んだ。まあ皆さん記憶にも残ってないだろうからいいか。


  
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