投稿者 : yoshimura1212 投稿日時: 2020-02-11 13:38:05 (2268 ヒット)

 北風小僧の寒太郎ではない。
私は今日からマスクをしている。新型コロナウイルス対策のためではない。昨日東京医科歯科大学の大学院講義のために御茶ノ水まで外出した。講義終了後呼んでいただいた先生に誘ってもらって上野あたりで食事をした。トータルすると結構な時間街を歩いたことになる。家に帰ると身体がだるい。喉は痛くないが頭痛もする。思いつくのは「花粉症」だ。確かに目がかゆい。毎年発症し始めが最もきつい。通常は超過敏のためにまだ花粉情報が発表されれる1月上旬から中旬にすでに発症していた。飛散始めは例年並みと言われているが、今年はなぜか私の発症は遅い。いずれにしても今日11日が休日でよかった。倦怠感のために何もできないのだから。
朗報がある。数日前に抗IgE抗体、ゾレア(オマリズマブ)が重症の花粉症に認可されたとの報道があった。ゾレアはじつはずいぶん前からある薬で主に重症喘息や蕁麻疹に使われていた。「アレルギー」の講義の時に必ず出てくる抗体医薬で抗ヒスタミン剤のような対処療法と違ってより根本に近い治療だ。しかし保険適応でも重症だと1シーズン5万円くらいはかかるという。うーん、1、2日ぐったりしていれば以降はなんとかなっているのでまずは様子見だな。

ところでアレルギーといえばついに塗り薬のJAK阻害剤に製造許可がおりたという。私は花粉症にもJAK阻害剤が絶対に効くと思うのだが。。製薬企業には「季節始めの短期間投与」をぜひ検討してもらいたい。


投稿者 : yoshimura1212 投稿日時: 2020-02-08 11:35:27 (2810 ヒット)

 毎日ニュースの冒頭は新型ウイルス肺炎のことである。クルーズ船や帰国便の人たちは2週間ほど隔離状態に置かれるらしい。健康な状態で外に出れないのはどんなに辛いだろうか。もし自分なら元来数時間でもじっとしていられない性格なので2週間隔離されたら肺炎よりも身動きとれないことだけで命にかかわるような気がする。気の毒なことだ。
その新型肺炎で日本国内の学会も大きな影響を受けている。特に中国からの参加者が多い学会は中止や延期が相次いでいるらしい。そもそも航空機が飛んでない。医科歯科大学で来月に予定されていた某国際学会も一昨日中止(主催者はオリンピック後に延期といっているらしいが)が決まった。それに参加し、ついでにうちでも講演してもらう予定だったアメリカの研究者から中止で来れなくなったと連絡があった。夜懇親会を予定していた料理屋さんに断りの電話を入れるとひどく残念そうだった。おそらく同様のキャンセルが相次いでいるのだろう。こちらも気の毒なことだ。

コロナウイルスは被膜(エンベロープ)をもつ1本鎖RNAウイルスである。重症化しやすいのは免疫がない人が多いこともあるが、ウイルスのプロテアーゼがSTINGを分解するため(結果的にインターフェロンの産生が減少する)という説もある。またHIVのプロテアーゼ阻害剤やポリメラーゼ阻害剤が有効らしい。これにまつわるきな臭い話もある。自分も4月に中国の学会への出張の予定があるが、さすがに延期とは思うが。。。ともかく口角泡を飛ばす激論、なんて当面ないな。
と思っていたら今メールが来た。4月予定の会議は10月に延期された。不謹慎かもしれんが胸をなで下ろした。

この肺炎東京オリンピックにも影響は出るだろうという。最悪延期か中止とも言われる。だから言わんこっちゃない。今から季節の良い10月に変更してマラソンも東京に戻すべきだろう。そもそもが金に目が眩んだIOCが酷暑の7月に決めたことがおかしいと思う。


投稿者 : yoshimura1212 投稿日時: 2020-02-05 22:29:35 (2181 ヒット)

 宮崎から帰ると今度は大津での研究会(2/4,5)。医科研の井上純一郎先生が代表の文科省「先端モデル動物支援プッラトフォーム」の成果発表を行う会で、琵琶湖のほとり大津市で行われた。主に遺伝子改変マウスの研究成果の発表なので分野は脳神経からがんまで多肢にわたる。我々のAMED「適応修復」班どころの話ではない。しかしものすごく興味深い話が多かった。九州大学の中島先生はNeuroD1という転写因子をミクログリアに導入すると機能的な神経になって脳梗塞モデルを改善するという報告をされた。ミクログリアと神経細胞は全く系統が異なるのでものすごいことのように思うのだが結構淡々と話していた。神戸大学の鈴木先生はHippo-YAPの活性化による食道がんのモデルマウスの話。これまで1年くらいしないとできなかった食道がんが4ヶ月でどのマウスにも起こるという。早くて同期しているので薬剤の効果判定も極めてやりやすくなったのだそうだ。Hippoというのは英語で「かば」のこと。「かば」は一見鈍いように見えるが実は時速40kmで走りライオンにも負けないそうだ。Hippo経路は他のシグナル経路よりも随分遅れて発見されたが、どっこいその機能の大きさと研究のスピードは「かば」級である、と結ばれたのが極めて印象的だった。九州大学の松本先生の発表は「目からウロコ」的な話で、これまでタンパク質をコードしないと考えられていたlong-noncoding RNA (lncRNA)が実はペプチドをコードしておりそれぞれ機能的も重要なんだそうだ。lncRNAは「STAT3を制御する」など免疫系でもいろいろ言われており論文も多いが、イマイチ仕組みがよくわからなかった。何らかの機能分子をコードしていると考えればわかりやすい、と納得できた。
学生時代京都に長く住んだが京都駅からたった2駅の大津はほとんど記憶がない。列車の通過点くらいなものだったろう。今回大津市に一泊して琵琶湖が一望できて温泉もあってすごくいいところなんだと認識した。しかし新幹線はすぐに「車酔い」してしまうので東京ー京都でもやっぱりきつい。 列車の長旅ではついビールに手が出るからダブルで効くのかもしれん。


投稿者 : yoshimura1212 投稿日時: 2020-02-01 22:21:49 (2290 ヒット)

1/31-/21。AMED-CRESTの「恒常性」班とうちの「適応修復」班の合同での国際シンポジウムが宮崎市「シーガイヤ」ホテルの会議場で行われた。さすが南国。春を通り越して初夏のような陽気だ。シーガイヤは「バブルの遺産」と呼ばれる施設だ。広大な敷地に巨大なホテルと会議場、それにゴルフ場と温泉施設がある。20年くらい前、まだ人工波で有名なプール(オーシャンドーム)があったころ、子供を連れて来たことがあったが、当時はとても庶民が泊まれるようなところではなかった。なので宿泊するのは今回が初めてだ。ホテル内も部屋も会議場もやたら広い。日本とは思えないほどの豪勢さだ。温泉施設もなかなかのものだった。ただゴフルをしない人には車がないときついか。
会議はもともとどちらの班も幅広い分野をカバーしているためか発表もそれぞれかなり違ったものだった。脳のマッピングのようなちょっと難しすぎる話もあったが、多くは極めて最先端のレベルの高い話ばかり。ポスター発表もCREST、PRIMEに採択されたものだけあって多くは洗練されたものだった。参加者からはとても勉強になったと言ってもらえてよかった。
一方で私は2日目一番手で10分間の領域紹介があたっていたのを完全に忘れていて準備を全くしていなかった。いつもうなされている「悪夢」が現実のものになった。前夜に必死にスライド作成するも、いつもの科学的講演とは全く勝手が違う。2期目の採択者の写真も英語情報もない。AMEDのHPにも1期生のしかない。ラボに戻ればパンフレットがあるのに。。。英語に直そうとしばらく格闘したが途中であきらめて日本語のまま載せてしまった。昔から英語はダメだったが、最近とみに記憶力が衰えて単語がでてこない。幸い、同時に羞恥心もなくなってきたせいかダメダメでも大して気にならなくなったが。
今回は招待講演者のひとりDiane Mathisの接待のために成田まで迎えに行ったり、ホテルから羽田までタクシーで同行したりとできる限りの「おもてなし」を行った。特に彼女のラボの卒業生の皆さんを集めて同窓会を企画したのは喜んでくれたようだ。ただよくしゃべるほうではないのでこちらも話題を見つけるのに苦労した。英語もだがそれよりもやはり「話したい内容」があるかどうかが重要な気がする。

ひとり中国からのspeakerがいた。2日目に来て黒いマスクをしていたのですぐにわかった。本人は100%クリーンと言っていたがマスクはまずい。もちろん感染はしていないのだろうが、ひとりだけマスクをしていると話しかけることすら心理的に勇気がいる。せっかくの優れた発表なのにほとんど議論できないのが残念だった。


投稿者 : yoshimura1212 投稿日時: 2020-01-24 07:09:13 (2244 ヒット)

21日から淡路島で行われている阪大iFrecのWinter Schoolに参加する。この会は世界中から50名の若手(大学院生、ポスドク)を呼んで合宿形式で4日間自分たちの研究の発表と講師のセミナーを拝聴するというもの。なんと若手の旅費参加費すべて会側が負担してくれるそうだ。もちろん応募は多く競争率は5倍。そのためどの発表もレベルが高い。一日発表を聞いたあと夜は畳の部屋で車座になって話し込む。英語なのでこれがなかなか辛い。観光などのサイエンス以外の話もあって言葉が出てこない。疲れる。実は先週喉が痛くなる変な風邪をひいてしまって疲れやすくなっている気がする。まさか新型肺炎ではあるまいが。。最終日は自分の発表が終わって懇親会が終了すると畳部屋にいくことなくそのまま自室で寝てしまった。
それに比べると若い人たちは当然ながらタフだ。中日くらいまでは講演後に質問に立つ人が続いてスケジュールが遅れに遅れた。主催者は座長に時間通りに進めよと指示したらしいが、さすがに皆疲れたのか最終日は質問はかなり少なかった。でも若い人にとっては世界中にネットワークを作れるよいチャンスだろう。iFrecだからできることなんだろうが立派なことをする。
Winter Schoolのあとは国際シンポジウムに参加。別の会議にも出て土曜日に東京に戻った。羽田空港からモノレールで浜松町に向かう途中の4人がけの席、目の前に国際線の駅でマスクをした東洋人が乗り込んできた。座るとなんとゲホゲホと咳をし始めたではないか。すぐに席を立つ勇気もなく顔を横にしてなるべく息をしないようにしていたが。。。


投稿者 : yoshimura1212 投稿日時: 2020-01-08 11:55:20 (2485 ヒット)

 6日がofficialな仕事始め。11時から新年祝賀会があって出席した。医学部長からの年頭の詞は『ONE TEAM』。昨年のラグビーの試合を振り返って一致団結して困難に立ち向かうことの重要性を強調された。それに呼応するように北里研究所理事長はジョークを紹介された。船が沈没しそうで船長は乗客を海に飛び込ませないといけなくなった。多国籍の客が乗船している場合は苦労する。アメリカ人には「飛び込めばヒーローになれる」。イタリア人「飛び込めば女にモテる」フランス人「飛び込むな」ドイツ人「規則だから飛び込め」そして日本人は「みんなが飛び込んでるから」。これはかなり有名な小話らしく後で周囲に自慢げに話したら「知っている」と最後の日本人のところは正解を言われてしまった。日本人は横並び意識が強くまわりと違うことを恐れる、ということなんだろうが、でもそれってONE TEAMの理念から言えばむしろ好ましい性質とも言える。もともと「和をもって尊しとなす」国なのだ。サッカーなどでも「個の力は劣っても戦略や集団プレーで勝つ」ようなことが言われる。科学や技術でもそうかもしれない。個人主義、個性重視が世界標準なのだろうけど、発想を変えて(戻して?)日本人の特性を生かした活躍の方法があってもいいのかもしれん。


投稿者 : yoshimura1212 投稿日時: 2020-01-01 22:23:51 (2448 ヒット)

2020年の年が明けた。この正月は福岡の実家で過ごすことにしたが、元旦早々娘が出勤だというので職場まで送り届けた。帰りに佐賀市の佐嘉神社に初詣に寄る。佐賀ではない。佐「嘉」である。「賀」も謹賀新年で使われるようにめでたいが「嘉」はそれに輪をかけて「めでたい、立派である、よろこばしい」という意味が込められているらしい。一心に拝んで出ようとすると知った顔。「渡○先生ではないですか?」。九大名誉教授で普段は京都におられるが実家は佐賀医科大学の近くで毎年佐嘉神社に初詣に来られるのだと言う。「これは奇遇です。今年はいいことがありそうです。」と(先月免疫学会で会ったばかりなのに)お互い同じ事を言い合う。まあともかく免疫学会の生き字引の偉い先生に元旦に出会えたのだ。縁起は悪くなさそうだ。
昨年末の櫛田神社と太宰府天満宮の参拝はご利益があったが、これで終わりでは困る。まだまだお願いごとは尽きない。大学院生の論文もある。本人は努力でなんとかしてほしいが、私には神仏に頼むしか手がない(え、それが仕事か?!)。
2日からは仕事。年中行事の某審査。10件くらいしか通らないのに200以上応募があったらしい。こんな合格率では制度のほうがおかしいんじゃないかと思う。
今年はいい年であってほしいと皆願っているが、災害で亡くなったり家を失う人が出ないようにあってほしい。しかし気候変動に関しては悲観的にならざるを得ない。人も人類もどうしようもないところまで来ないと自覚できないのかもしれない。せめて予想可能な洪水と台風には備えたい。

ところで初夢。ここ数年同じ夢をみる。というか年始年末にかかわらず同じ夢を見る。講演間際になってパワポの準備が出ていていない。シチュエーションは学会や講義などいろいろだが講演時に何の準備もできていないのは共通。慌ててぐちゃぐちゃになった状態なのだが、それでも何故かすり抜けて目が覚める。めでたいどころか、悪夢やないか。。そう言えば年明け早々に大学院講義が予定されている。そのための警鐘か。
 


投稿者 : yoshimura1212 投稿日時: 2019-12-27 16:24:56 (2706 ヒット)

 絶滅危惧種?のエッセーを読まれた生化学の先生から早速クレームが来た。「生化学は生物学の物質的根幹を成すものです。生物学、細胞生物学におけるメカニズムの解明は生化学を抜きにはできない。もっと自信を持って主張してください!」。もちろん生化学の重要性はすたれることはないと思うが、ついいつもの自虐ネタが出た。

私の返事は以下の通り。
メールありがとうございます。「面白く書いてほしい」と頼まれたエッセーですので暴論ご容赦ください。
ただ最近のバイオインフォマティクスの論文を読んでいると(理解がついていく範囲ですが)昔のように何か結論があるわけではなく、全体像を記載して終わっているのが多いですね。それがトップジャーナルに何報も出ているところを見ると今までの価値観では捉えられない、なにかしら新しい潮流があるのではと感じています。
例えばAIが囲碁で達人に勝ったという話がありましたが、AIがどうやって「考えている」か、そのプロセスは人間にはわからないそうです。ブラックボックスですがそれでも結果は出ている。同じようなことが生命科学でもありえるのではないか?もしかしたらコンピュータのなかで生命現象を再現できたら、途中はわからなくてもそれは生命を理解したことになるのかもしれません。もちろん私のような年寄りには理解しがたいことですが、これからの若い人たちはもしかしたらそんな理解の仕方をするのかもしれません。我々の「モノを示せ」と教えられて来た物差しをおしつけて良いのか疑問に思っている次第です。
もちろん私自身は今更変わることもできないので、あと数年しか残っていない研究期間はこれまで同様、新しい因子を探したり、遺伝子の機能を明らかにする仕事を続けようと思っています。
駄文、誠に失礼しました。

なお意図した訳ではないが水野先生の文章は私のと対局になっていることに気がついた。


投稿者 : yoshimura1212 投稿日時: 2019-12-22 09:42:36 (2947 ヒット)

生化学会の雑誌に投稿しました。今までのブログをつなぎ合わせただけですが。あくまで個人の見解です。


 

 


投稿者 : yoshimura1212 投稿日時: 2019-12-20 13:36:40 (2171 ヒット)

19日、慶應医学賞の授賞式である。来年度からは選考委員を辞することになっているので委員会委員としての最後のお勤め。今年の受賞者はユトレヒト大学のHans Clevers博士と大阪大学の岸本忠三教授である。岸本先生とはSOCSの発見の時をはじめ浅からぬ縁がある。昼食の時に「君に初めて会うたんは(30年くらい前の)アシロマの会議だったな」と懐かしい話になるのかと思ったら「あん頃が一番いい仕事をしとったな、今は。。」(pp130=JAKの発見の仕事を発表した)。まあおっしゃる通りでそれはしかたないにしても「あん時はスリムだったのにようけい太ったな」。30年前の話である。確かに今よりも15キロは痩せていた。それにしてもすごい記憶力である。
講演ではもちろんIL-6の発見から臨床応用まで、途中新しい研究の話も加えられて「80歳になってこの賞をくれるというのはもうしばらくは研究せいということやな」と意気軒昂である。質問では私が「先生は沢山の優れたお弟子さんを育てられた。人を育てる真髄かコツをお教えください」と問うと「そんなのは知らん。昔はぎょうさん叱って厳しく指導した。その頃の話をすると『先生今なら確実にパワハラですよ』と言われる」と答えられると会場は大爆笑。きっと厳しい中にも「一流のサイエンスをやれ」という強い信念があったからこそ皆さん付いてきたのだろう。
 


投稿者 : yoshimura1212 投稿日時: 2019-12-12 13:20:07 (2711 ヒット)

12/12 浜松での免疫学会。本日の総会で2022年の免疫学会の大会長を仰せつかった。昨日の評議員会で投票があった。昨年、一昨年とMCBの教務業務などの責任があるために評議員会の投票前に辞退を申し出ていた。「今年は演説しないんですか?楽しみにしていたのに」と残念がられた。理事長も「また立って意見を言ったら制止しようかと思っていた」と言われる。しかし皆さん誤解している。大会長の選考は理事会で3名の名前が上がってそれを承認し、次に評議員会で評議員によって投票が行われ、それから総会で一般会員に承認されて決まる。今年は理事だったので理事会で名前が挙った事は知っておりそこで反対はしなかった。そこで反対しないで評議員会で辞退を申し出るのは筋が通らない。昨年も一昨年も理事ではなかったのでノミネートされたことを知ったのは評議員会の場が初めて。そこしか意見を述べる機会がなかったのだ。理事長に「理事会でその場にいない人の名前が挙った時はやれるかどうか意思を問い合わせるべきではないですか?」と言うと「全くその通り」と言ってもらえた。昔と違って大会長になることが本人の利益になる訳ではない。今の時代に本人の意思確認なしで勝手にノミネートして勝手に「やれ」というのは人権無視も甚だしくパワハラに近いと言われてもしかたない。幸いMCBが終わって教務の負担が大きく減った。これまで免疫学会には大変お世話になったので恩返しと思って引き受けることにした。逃げまわっていたわけではない。やるからには細かいところにも気配りの効いた「来てよかった」と思ってもらえる会にしたい。早速周囲の人たちに何処でやるのがよいか?意見を聞いて回った。『Registrationの場所がわからない!』といった(金沢の時もそうだったが)初歩的な気配りの欠如は絶対に避けたい。


投稿者 : yoshimura1212 投稿日時: 2019-12-08 00:40:32 (3735 ヒット)

分子生物学会の3日目の夜はボストン留学時代の仲間が集まる同窓会。帰国してもう30年。ボストン会も27回目だそうだ。くたびれるのも道理だが、私以外は皆意気軒昂としている。その日は博多に泊まって翌日(12/6金曜日)朝一番の飛行機で東京に戻って東大薬学部の修士課程の講義。東大の講義はなんと一コマ105分。学生には「修行」いや「苦行」レベルだろうがこちらも普通にやっていては持たない。薬学全般のいろいろな分野の学生が来るということなのではじめの30分のイントロは持ちネタを一挙放出して一般向けの話。ガッテンの「免疫力」からはじめて定番の千円札の北里柴三郎の話をして抗体療法の本庶先生(PD-1抗体)や岸本先生(IL-6受容体抗体)の話に続ける。ついでやはり定番の「ひとはがんで死ななくなる」(本庶先生)から、では次は神経免疫が重要という話に。統合失調症とMHC遺伝子座の関連や抗NMDA受容体抗体脳炎の話もする。これに関連する新ネタとして、「学生の試験で『講義でとりあげた免疫が関与する脳や神経の病気を説明せよ』という問題を出したら「エクソシストの病気」という答えがあった。」という話をしたが、、、残念ながらあまりウケず。まあ講義には出席していたということだろうが。
でもやはり東大の学生さんはすごい。学部や修士の学生さんの仕事内容を聞いてアドバイスをしたが自分でよく考えていて私のアドバイスなど役に立たたないような気がする。呼んでくれた先生の学生さんがWebで「論文紹介」をしていることを教えてもらった。「Bio-Station」というサイトでひとつの論文をかなり詳しく解説している。西川先生の「論文ウヲッチ」もすごいがこちらも負けていない。これはいい情報源を教えてもらった。自分で読まんのか?と怒られそうだが。。

開けて月曜日はまた福岡に戻って今度は九大歯学部で講義。そのあとは浜松での免疫学会。12月は師走なので先生にとっても最も忙しい月と言われるがまさにその通り。


投稿者 : yoshimura1212 投稿日時: 2019-12-07 23:55:57 (2294 ヒット)

12/1日曜日は市ヶ谷で幹細胞クラブ。須田先生の卒業生の多くが発表する。なんで須田門下からはこんなにPIが排出するのか。きっと須田先生が研究を楽しんでいるのをみて皆ああなりたいと思うのだろう。一方の自分は。。古稀のお祝いの会では乾杯の挨拶をすることになっていたが直前まで迷ってかなりコケた。
翌月曜日は精神神経センターの山村先生主催の国際シンポジウム。またまた「腫瘍免疫の次は神経免疫」のスライドを披露してこの分野の重要性をあおる。その翌日火曜日から福岡の分子生物学会。朝2番目くらいの飛行機で福岡に向かったのだが着いたのは発表ぎりぎり。伊藤さんに代わりにしゃべってもらう。私が話すよりよほど皆うれしいだろうと思ったが、想定以上にイントロをゆっくりしゃべって後半はしょることに。逆に午後のセッションでは早口で予定より5分くらい早く終了。講演は場数を踏むほど迷いが生じるもの。私も若い頃はそうだったが誰もが通過することなんだろう。何度も話しているうちに慣れてくる。と言いつつ今でも迷っているが。
発表の後はワークショップの発表者の懇親会。もつ鍋が美味しかった。留学帰り(あるいはまだ途中)の新進気鋭の若い人たちがほとんどで、そんな中にこんな爺さんが混じって申し訳なかったが若い人たちの本音が聞けて楽しかった。日本もまだまだ見捨てたものではない。そんな彼らがもっと羽ばたけるように研究費や環境のサポートしないとけないんだろうけど。。そのあといつもの「梨庵」で2次会。結局午前様に。懇親会の前に会場付近の博多山笠で有名なパワースポット櫛田神社に参詣。そいういえば最近神社に詣ってなかった。だからこの頃論文もなんとか賞も落ちてばかりだったのか。いつもの5倍のお賽銭を入れて気合いを入れて拝む。さておみくじは、、中吉なのに「学問」「就職」は厳しいご宣託。これはいかんともう一度引くと大吉。しかしそれでも「学問」は「脇目ふらずに一心に勉強すれば吉」「求職」は「目上の人の助を得る」どんだけ厳しいんや!櫛田神社には「大吉」の上があるに違いない。しかしにらまれても困るので大事に持って帰る。神仏に頼らずに人事を尽くせということだろう。
なお翌日太宰府天満宮に詣ったら「中吉」。でも試験も就職も安心してよい内容だった。太宰府は大量の受験生の面倒をみないといけないので甘い?いやそれより学会は大丈夫なんかいな。

12月1X日。一心に祈ったひとつの願いは叶った。神仏は本当にいるのか。普段の5倍のお賽銭の効果なのか。次の願いは年明け。もう一度櫛田神社に行くべきか。いや太宰府のご利益か。もはや祈ることしかできない自分の無力さを思いつつ、でもこうして神社やお寺が存続するのは何世紀もの人々の祈りがあるからなんだろうと納得する。

 


投稿者 : yoshimura1212 投稿日時: 2019-11-24 20:04:48 (2277 ヒット)

24日(日曜日)。今日は東京藝術大学のArts Meet Science(AMS)というイベントに参加する。科学や技術の最先端のことを「states of the art」ということからも科学と芸術は実は結構近いのだろう。芸術と科学との融合、相互作用ということをテーマに著名な遺伝学者であるPeter Gruss と免疫学では一家を成したRoger Permutter (現在巨大製薬会社副社長)の基調講演と藝大の学長と学生らによる演奏が主な内容だった。知り合いの先生のお誘いで行ったのだが、元来観たり聞いたりするのはそこそこ好きだが、自分では何もできないし藝術性も創造性もない私には遠い世界のように感じていたが十分楽しめた。Peter Gruss はノーベル賞学者のいかに多くが秀れた演奏家であったかを紹介した。また声楽者や楽器奏者の口腔のリアルタイムMRI画像を示して科学的手法が「芸術の理解」を推進する様子を示した。Roger Permutterは自分でもピアノを演奏するらしく登場はピアノで降壇もピアノ演奏で、と凝ったものだったが、何がいいたいかイマイチわからなかった。ノーベル賞学者が 楽器の演奏が上手いからといって楽器ができる人が全員ノーベル賞もらえるわけではない。その関係性が重要なのだろうが、functional MRIで脳の似た部分が活性化されるという話はあったが、そこまではまだ解明されていないということかもしれない。ましてや芸術とはあまり縁のない普通の研究者はどうしたらよいのだろうか?あまり深く考えないで楽しめばよいのかも。全く別のことをしている時に新しい発想が生まれることはよくある話だ。情報交換会では学生をつかまえてNHKのダビンチミステリーで仕入れたばかりの「にわかうんちく」を披露して少し偉そうに解説して楽しかった(東大や藝大の学生さんはテレビなんぞ見ないのだろう)。
そもそもダビンチにとっては芸術(主に美術か)と科学は不可分のものだったようだ。彼の絵画が人体の解剖学に基づいていることはよく知られている。ミケランジェロを「解剖学と地質学を知らない」とこき下ろしたとか。しかし驚くのは(全くNHKの受け売りだが)皮膚をなめらかに描くのに何層も薄い絵の具の液を重ね塗りしたのだそうだ。それは人間の皮膚の構造に近い。顕微鏡がない時代にダビンチは人間の皮膚の構造を模倣していたのだ。やっぱり天才はすごい。でも逆に現代なら科学的知識を芸術に取り入れることで凡人でも天才がやったことに匹敵することができるのかもしれない。といっても実はすでにそれはもう普段やられていることなのかもしれない。例えば音楽のシンセサイザーとか、動画のCGとか。逆に芸術が科学に具体的にどう影響するのか、どうすれば同じ効果が得られるのか?がわかれば私のようなボンクラでも少しは優れた科学者に近づけるかも?

藝大の隣の国立博物館で「正倉院展」をやっていた。前売りを買っていたのだが行く機会がなくて最終日で混んでいたがAMSの前に寄ってさくっと見てきた。今日は芸術の秋にふさわしい一日だった。。。

 


投稿者 : yoshimura1212 投稿日時: 2019-11-21 08:33:49 (3182 ヒット)

がん免疫療法の課題のひとつはいかにT細胞の疲弊を抑え、若いメモリー(Stem Cell Memory=Tscm)を増やすかにある。少なくともCAR-T療法ではTscmを増やすことがより強い抗腫瘍効果をもたらすと考えられている。これは若いメモリーT細胞ほど長生きして最終的には多くのエフェクター(兵隊)T細胞を生み出せる、と考えられているから。近藤君は2017年に一旦活性化したT細胞をNotchリガンドを発現するOP9細胞(OP9-DL1)と共培養するとTscm様の細胞に変換することを見出した。このTscm様の細胞、iTscmはやはり強い抗腫瘍活性を持っている。ではiTscmがより若いメモリーT細胞であるメカニズムは何か?代謝に注目してその機構を探ったのが今回の論文である。簡単に言うとiTscm化するとエネルギー(ATP)を産生するミトコンドリアと細胞内の燃料タンクである中性脂肪が増える。つまり中性脂肪を燃料にミトコンドリアという発電所でどんどんATPを産生してくれる。なのでiTscmは長生きしてたくさんの子細胞であるエフェクターT細胞を作ることができる。

といっても代謝転換(metabolic reprograming)とメモリー分化と抗腫瘍効果については数年前から膨大な論文が発表されており周回遅れの感は否めない。エフェクターT細胞はエネルギー源として解糖系を、メモリーT細胞はミトコンドリアによる酸化的リン酸化をそれぞれ主に使っていることはよく知られている。現在の焦点は体内あるいは体外でどうやって解糖から酸化的リン酸化に転換するか?それによって疲弊を解除してエフェクターを増やせるか?ということだろう。その転換の鍵となる遺伝子の探索が必要で今回の仕事ではFoxM1を提案している。FoxM1はがん幹細胞に重要な遺伝子として広く知られている遺伝子。FoxM1の強制発現によってiTscm様の表現型と強い抗腫瘍効果が得られることがわかった。しかしFoxM1はがん遺伝子なので使い道は限られるとは思う。しかしこうやって代謝転換のメカニズムを明らかにしていけば効率的にiTscm化する方法が見つかるだろう。理想的には体内で使用できる薬剤が見つかればチェックポイント阻害剤との併用も可能であろう。

ただ一つ訂正しておくと我々はiTscmを発表した時に、「腫瘍内で疲弊化したT細胞を若返らせることができる可能性がある」と宣伝した。その後の研究で我々のOP9-DL1との共培養くらいでは疲弊化しきったT細胞をTscmどころか普通のメモリーT細胞にも転換することは困難であることが判った。誇大広告であったことを謝罪したい。腫瘍内にいて完全にヘロヘロになったT細胞をiPS技術を使わずに直接復活させることは並大抵のことではできないらしい。でももしそれができたら本当にすごいことだろう。まだまだゴールは遠く誰も成功していない。でもだからこそ挑戦する価値があると思いたい。


 


投稿者 : yoshimura1212 投稿日時: 2019-11-18 09:16:41 (2079 ヒット)

週末は大阪で腫瘍免疫の講演を行ってその足で台湾台北に飛ぶ。台北は国立台湾大学で行われている台湾の免疫学会での講演と長庚大学でのセミナー。大阪の講演は失敗だった。臨床家の集まりというので基礎的な話をと言われたのでPD1の効果などおそらく何度も聞いたと思われる話を延々として肝心の疲弊のメカニズムをじっくり話す時間がなくなった。後でもっと先生のお仕事の話を聞きたかったと言われて落ち込む。このごろ「聴衆の顔を見ながら話ができるようになった」と少し自信がついてきたと思っていたのは過信にすぎなかったか。
11月なのに台北は暑い。学会での講演の後、お昼に大学の外に出ると日本では真夏の日差しで、肌に刺さる。少し歩くだけで汗が吹きだした。大学近くの魯肉飯が有名な店でかなり並んだが、ものすごく美味しかったし2人前で900円くらい。安い。やはり暑いところは味が濃いほうがいいのだろう。生まれて初めてタピオカを飲んだ。確かに「ぷにゅぷにゅ」がクセになりそう。こちらではbubbe teaと呼ぶらしい。暑さと移動の連続でかなり疲れたので早めにホテルに帰って昼寝をしたら気がついたら夜になっていた。懸案の学位論文の修正を行うがなかなか捗らない。

長庚大学は台湾を代表する私立大学でキャンパスは台北郊外の岡の上の広大な敷地にあった。長庚というのは創立者の大金持ちの王永慶氏の父親の名前なんだそうだ。貧しい茶農家から身を立てて台湾屈指の大企業を創出した立志伝中の人物。自分の名前ではなく父親の名前をつけるというのは儒教の影響なのかもしれないが立派な人物だ。はじめは一万床(普通の日本の大学病院は千床もないだろう)もある巨大な病院を造ったのだが、働いてくれる医師が足りないというので医科大学も造って、さらに工学部なども増やして行ったらしい。それまで台湾の医師の収入は低く患者からの袖の下が横行していたが王氏は医師の待遇を改善して袖の下を禁止し誰もが平等な医療を受けられるようにしたのだそうだ。まことにたいした人物だ。講演では呼んでくれた先生が学生に「もし今日の講演者を知らないなら免疫学の教科書のサイトカインのところをみろ。サイトカインの負の制御機構としてSOCSというのが必ず出ている。今日の先生はその発見者だ」と持ち上げてくれた。いやいやそんなたいそうなことではしていないしもうすぐ定年だと謙遜すると「台湾なら特別教授になれる」と言われて御世辞とはわかっていてもそんな道もあるかと少し気持ちが動く。
 


投稿者 : yoshimura1212 投稿日時: 2019-11-12 16:43:06 (4023 ヒット)

MCBのトリを飾るのはワシントン大学の今井眞一郎先生。言わずと知れた「老化長寿」研究の第一人者で昨年に続いての講義だ。今回は学生以外の研究者のかたも多数聴講に来られた。驚くべきことは今年Cell Metabolismに発表された成果で、NAD合成の律速酵素eNAMPTが脂肪組織機からエキソソームのような小さいベジクルに包まれて分泌されること、それが老化によって減少するが、eNAMPTを内包するベジクルを老齢マウスに注射すると毛並みも運動機能もよくなり寿命も長くなるらしい。マウスではあるがその違いは明白で、私などすぐにでも注射してもらいたいのだが、どうやら小胞に包まれることが重要で、そうしないと標的である脳に届かないらしい。やはりこの酵素の産物であるNMNを摂取するのがもっとも手っ取り早そうだが、純粋なNMNはべらぼうに高いそうで相当の金持ちでないと個人的に購入することは難しいという(Amazonで調べると売ってないことはなさそうだがまがい物が多いのだろうか。。)。今井先生はエネルギッシュで声も大きく、後ろの方で〇〇学生がうるさく私語をしても、ものともしない。圧倒的なパワーだ。きっとNMNを毎日飲んでおられるのかと思ったら、そうではなく食事で取れるらしい。NMNを多く含む食物は「枝豆、ブロッコリー、アボガド」。さらに朝ごはんをディナー並みに豪勢に食べるとNMNの利用の面ではよいらしく今井先生は朝ごはんにステーキを食べると言われていた。逆に夕食を質素にして夜8時までに食べて朝の8時まで何も食べないこと。12時間の食事の間欠で擬似的に飢餓状態を作ることで寿命の延長が期待できるらしい。
また面白いのはNMNを最も多く含むのは実は赤血球。ドラキュラが長生きする理由もこれか!?

なおこれでMCBの講義は終了。まだレポートがあるが、長かった講義期間が終わった。お世話係も今年で終了。講義が辛いのは学生ばかりではない。時間的に拘束されるということよりも、これだけの講師陣を揃えながらxxxxx。。。。心折れることが多すぎる。次の主任の先生、よろしくお願いいたします。


投稿者 : yoshimura1212 投稿日時: 2019-11-11 21:06:12 (2005 ヒット)

 11日日曜日呼ばれて「京都賞」の授賞式に初めて出席する(もちろん授賞式の見学者として)。京都賞は日本国際賞と並ぶ日本を代表する国際学術賞である。演壇には過去の受賞者の山中先生や本庶先生もおられた。楽団の演奏ばかりでなく能が披露されたり着物姿の子供達の合唱が入ったりと豪華な演出だった。やっぱり稲盛氏はすごいと再確認した。正装で来るように書いてあったので生まれて初めて蝶ネクタイをつけた。家人に「年よりになったコナンみたい」と言われる(年取ったコナンを見たことがあるんか?)。普通の背広なので他のタキシード姿の人を見るとややおかしい気はする。まあ普通のスーツにネクタイの人も多かったのでさほど気にしなくてよかったのかもしれない。ただ胸の白ハンカチにまで気が回らなかった。

翌日、岩倉のあたりはすでに葉が落ち始めているようだったが国際会議場の周辺は人も少なく静かで散策にはうってつけだった。海外からの観光客もここまでは来ないらしい。やっぱり秋の京都はいいなあ。稲盛氏は経営破綻した日本航空を再建したことでも知られる。地下鉄の駅ではJALを解雇された人たちなのか、なにやら稲盛氏を非難する演説を行なっていた。気持ちはわかるが人員整理は稲盛氏のせいとは思えないしまして京都賞とは関係ないことなので、なにもここでやらなくても、という気はした。


投稿者 : yoshimura1212 投稿日時: 2019-11-10 00:48:04 (2849 ヒット)

今日は慶應内の脳神経系の研究室が集まる研究会で講演を行なった。多発性硬化症の愛媛大越知先生、神経修復で著名な大阪大学の山下教授もいっしょだった。
日本人の死因の第一位は悪性腫瘍(がん)。2018年がん免疫療法でノーベル賞を受賞した本庶先生は「21世紀中に人類はがんを克服しひとはがんで死ななくなる」と述べている。免疫(ワクチンや血清療法)が感染症による死を激減させたように腫瘍免疫はがんによる死をいずれなくせるのかもしれない。ではがんでなければひとは何で死ぬのか。第2位は心疾患、第3位は老衰、第4位が脳卒中などの脳血管障害である。また寝たきりになる原因の第1位と第2位は認知症と脳血管疾患で、超高齢化社会を迎えて脳の病気の克服は急務である。免疫が克服すべき疾患は「がん」の次は「脳神経疾患」ではないだろうか。折しもバイオジェン、エーザイのアルツハイマー治療抗体アデュカヌマブが逆転申請となった。9月に「臨床試験を継続しても有効性が証明される可能性が低い」ということで中止が発表されたばかり。それがつい先日一転承認申請を行うことになったという。何が起きたのか?どうも高投与量群の患者データを追加したら有意差が出たらしい。これで直ちに認知症が克服できるわけではないだろうが、抗体を使ってアミロイドβのクリアランスを行えば治る可能性が示された意義は大きい。抗体の作用機序や発症、改善効果のメカニズムの解明が一気に加速するのではないか。同様にパーキンソン病やALSなど神経を変成させる有害物質の沈着で起きる脳の疾患は多い。同じく免疫系を介した治療が可能だろうという期待も出てきておかしくない。しかし実際にはT細胞の関与や寄与するミクログリアのサブセットなど解っていないことはものすごく多い。ちなみにアミロイドβの主要な受容体のひとつは七田君がDAMPs受容体として同定したtypeAスカベンジャー受容体である。ちょうどPD1抗体がヒトのがんに効くことが実証されてから腫瘍免疫の研究がものすごく盛んになった時に似ているような気がする。腫瘍免疫の国際会議に行くとアメリカや中国に今さら追い付けないような気がするが、神経免疫ならまだチャンスはあるのではないかと思う。国は機を逸することなく集中的に研究費を投入しては、と私ごときが言っても方針はなにも変わらないだろうけど。


投稿者 : yoshimura1212 投稿日時: 2019-11-07 21:46:07 (2248 ヒット)

水曜日から岡山で開催のDAMPsの国際会議に来ている。DAMPsはDamage/Danger-assocaited molecular patternsの略で、要するに傷害等で組織が破壊された時に細胞成分が分泌され炎症を惹起する原因物質である。一番有名なのはHMGB1という核内タンパク質で、ストレスがかかると細胞質に移動し、未だに分からない機構で細胞外に分泌されてサイトカインのように働くというしろものだ。toll-like receptor2/4(TLR2/TLR4)を介して主にマクロファージや血管内皮細胞を活性化することが知られている。我々も脳梗塞モデルでペルオキシレドキンという分子を新たなDAMPsとして報告した。国際会議では主にHMGB1に関する驚きの報告が相次いだ。HMGB1に対する抗体は脳梗塞のみならず脊髄損傷、てんかん、痛み、アルツハイマーその他さまざまな疾患に効果があることが報告された。特に驚きだったのはHMGB1を神経特異的に欠損させるとなぜか神経が少ないと思われる関節での炎症も抑えるとのことで、そのメカニズムは想像することも困難だ。またHMGB1の一部分を投与すると強い抗腫瘍免疫を誘導するという報告も驚きだった。一方で数億円もかけてHMGB1に結合する中分子(分子量50kDくらい?)を作成したところ抗体で報告されているような疾患に効果がなかったという報告もあった。ほぼ完璧なネガティブデータでそれを公表する勇気には賞賛するが、もともと抗体はHMGB1のクリアランスを促進することで作用するとも考えられていたはず。小さくしたらいいというものではないと思ったのは私だけではないだろう。ともかくもこれまでのDAMPsの意識を転換させられる極めて面白い会議だった(明日もあるのだけれど)。DAMPsは間違いなく存在する。そこは疑う余地はない。しかしその作用機序はまだ不明な点が多いし、ましてやその阻害が及ぼす治療効果もさらなる研究が必要、というのがこの分野には初心者の偽らざる感想だ。
学問的にも勉強になる会議ではあったが、2日目の午後は岡山市では失礼ながら数少ない勝景地の後楽園と岡山城への遠足と会食が用意されていたことは大会長のN先生の気配りが感じられた。岡山城は烏(う)城と呼ばれて遠くからみると漆黒の外観が極めて印象的である。しかし近くまで行くと完全なコンクリ建設でやや(いや実際にはかなり)期待を削がれる。NHKのニュースでは全国的に木造での城の再建が検討されているそうであるが、沖縄の首里城の火災が影響する可能性があるという。それでも宇喜多秀家や小早川秀秋などの秀吉から家康への時代の変遷を語るに欠かせない武将たちが居城とした城である。歴史、大河好きのオヤジには興味が尽きない(城内のゲーム風の肖像は全くもっていただけない)。いい一日を過ごさせていただいた。写真は岡山城と武将姿でご満悦の大会長。

岡山から戻ると持田財団の助成金と学術賞の授賞式。今年は私が推薦した竹田潔先生が学術賞を受賞された。数年おきに必ずNatureを発表されるようなすごい先生である。その師匠は審良静男先生と岸本忠三先生。受賞講演の最後に両先生から受けた薫陶を話された。岸本先生が言っていた『本当に重要な研究をせよ。重箱の隅をつつくような仕事はするな』という言葉は耳が痛い。選考委員長からも「助成金の受領者はよく胸に刻むように」というお言葉があった。師匠と呼ぶべき人を持てるのは幸せなことだと深く感じ入った。


投稿者 : yoshimura1212 投稿日時: 2019-10-31 00:49:59 (2101 ヒット)

2020年は東京オリムピックの年である。極評されているNHKの大河ドラマであるが、私のなかでは近年にない秀逸な作品だと思っている。しかしC席でも10万円はくだらないという開会式のチケットを買えるわけもなく2020年に特に大きな思い入れはない。が、IOCがマラソンと競歩を「東京は暑いから」という理由で札幌に無理やり替えるという話が出た時はそれはおかしんじゃないのという気持ちになった。そもそもオリンピックを7月の最も暑くて湿度も高い時期にやったら死人がでるんじゃないか、という話ははじめからあった。今年の8月に外国人を午前中案内しただけで完全に疲弊した。10月とか5月に開催すれば何の問題もないはずである。暑さ対策の費用も浮く。ところがIOCが巨額のテレビ放映権欲しさにこの時期でないとまかりならん、と決めたのだという。全くもってIOCの言うことは筋が通らない。そんなに選手のことが心配なら秋開催にすればいい。でも多くの報道は何故かそこを追求しない。ぜひ東京都はIOCの横暴に一矢報いて欲しいものだ。しかしこれも温暖化のツケ。グレタにIOC会長にぜひ"How dare you!"と言って欲しい。


投稿者 : yoshimura1212 投稿日時: 2019-10-19 12:55:59 (3563 ヒット)

札幌の臨床免疫学会で印象的だったのはJAK阻害剤の話題が多かったこと。といっても自分がそれを選んで聞きにいっているからかもしれないが。もちろんトファシチニブやバリシチニムは関節リウマチで認可されている。京都大学の橋本先生の話ではJAK阻害剤は早期に「痛み」を軽減するという。JAK阻害剤はアトピー性皮膚炎でも期待されており、日本でもJTと鳥居薬品が『JTE-052軟膏」を承認申請している。こちらもバリア機能強化とともに痒みの軽減が期待されている。JAKを活性化するIL-4やIL-13は「かゆみ」を感知する神経の感受性を高めるらしい。よってJAKを阻害することで痒みを抑えることができる。「痛み」のほうはどういう機序かはこれからだそうだが、サイトカインが痛みや痒みの神経に作用してその閾値を決めているのだろう。CAR-T療法で起こるサイトカインストームはIL-6の阻害が有効であることが知られているがこれもJAK阻害剤で代価できるだろう。JAKの変異が知られている腫瘍分野の先生の話ではがんの縮小効果もだがそれ以上に患者さんに「身体が楽になった」といわれるのだそうだ。そう考えるとJAK阻害剤はステロイドに近いかもしれないがそれ以上にQOLを改善する効果が期待できるのかもしれない。まだまだ使用に慎重な医師は多いらしい関係者の意識が変わり始めている気がする。以前OSheaが来た時に講演で「アメリカではJAK阻害剤がイヌのアトピーで使われてよく効くと評判で、ヤミでヒトに使われているらしい」と言っていた。JAK阻害剤がいつかさらに広く様々な疾患に使われたら、30年前にこの分野の端っこで開拓に関与した者としては嬉しい限りだ。


投稿者 : yoshimura1212 投稿日時: 2019-10-17 22:22:07 (1964 ヒット)

グレタにノーベル平和賞をあげるべきだった。先週末関東東北を縦断した台風19号。昨年の西日本豪雨に匹敵するかそれを超える被害らしい。多くの方から大丈夫だったかとメールが来たが首都は頑強だ。その周辺の被害が大きい。テレビで被災した人たちを見るのはつらい。ある遠く離れたところにいる卒業生から「こんな状況でも研究させてもらえることに感謝したい」とメールが来た。温暖化のためにこんなことはこれから毎年のように起きるだろう。でも我々はいつもこんな弱い立場の人たちから集められた税金で研究をさせてもらっている。研究者はそんな人たちから未来を託されて研究させてもらっているのだということを忘れてはいけないのだと思う。

NHKの台風の特集をみていた。北陸新幹線の車両基地はなぜあんな水没の危険があるとことに造られたのか。長野オリンピックのために新幹線を通すために急いであの場所に築かずを得なかったのだという。グレタの言った「経済成長というおとぎ話」を思い出した。

臨床免疫学会で札幌に来た。さすがに外は寒いくらい。コートを持って来てよかった。ランチョンセミナーでTregの話をする。主催者の予想を超える盛況だったそうだが、役立ついい情報を提供できたなら望外の喜びだ。


投稿者 : yoshimura1212 投稿日時: 2019-10-11 12:42:12 (2442 ヒット)

今日のMCBは筑波大学の家田先生。臨床でも忙しい中を来ていただいた。嵐の前の静けさなのかまだ天候は悪くない。家田先生は慶應循環器の出身。以前かから線維芽細胞の心筋細胞へのダイレクトリプログラミンを研究されておりこの分野ではパイオニアかつフトンロランナーだ。講義では留学時代のきっかけの話から心筋梗塞の治療を目指した研究まで紹介された。非常に驚いたのは心臓のなかで実は心筋細胞は3割くらいしかないらしい。1割が線維芽細胞で他は血管内皮など。なので心筋梗塞領域の線維芽細胞のうち100%でなくてもある程度心筋になれば治療効果が期待できるのだそうだ。ただ老化した線維芽細胞はリプログラミン効率が悪い。なぜかCOXの発現が高く炎症を介した仕組みが関係するそうだが「老化」のメカニズムを考える上でも示唆に富む研究のように思われた。ダイレクトリプリグラミングを治療に、というのは夢だろうが家田先生は単に夢に終わらせず実際に可能にする努力をされている。それが伝わってくる講義で、学生からの質問もいつも以上に多かった。来ていただいてよかった講義の一つだろう。


投稿者 : yoshimura1212 投稿日時: 2019-10-04 08:41:28 (3772 ヒット)

NHKの今朝のニュースで「日本からノーベル賞が出なくなる」と出して特集が放送されていた。 同様の話はだいぶ前から出ている。確かに毎年日本人候補者は減っている。私も昨年まではNHKや新聞社に「この時期連絡できるようにしておいてください」と言われていた。もちろん私が受賞するかも、という話ではなく「免疫関係で受賞者が出た時のコメント」のため。しかし今年はない。昨年が腫瘍免疫の本庶先生だったからということもあるだろうがノーベル賞候補の日本人は確実に減っている。ノーベル賞に発展するような革新的な成果には長く地道な基礎研究が不可欠。そのような人材を育てる環境は年々厳しさを増している。消費税も痛い。地方大学の窮状は目を覆うばかりでニュースで取り上げられた先生は自腹で学生を学会に派遣したという。一番不幸なのは資金不足で十分な実験ができない学生だろう。これでは研究者になりたいという若手は育たない。そんななかで企業との共同研究で活路を開こうという動きもあると報道された。大学は「運営」から「経営」に舵を切るべきとされた。しかし企業との研究ほど直近の技術的成果を求められるものはない。お金を出す企業としては当然だろう。ますます基礎研究に割く時間がなくなり自分で自分の首を絞めることになりかねない。
ところで今年の私の予想は医学生理学賞は「レプチン」か「オプトジェネテックス」。化学賞は「ゲノム編集」か「次世代シークエンサー」。まあ外れるだろうな。平和賞はぜひグレタにあげたい。

医学生理学賞は「低酸素応答」に。もう外した。
化学賞はリチウム電池。日本人が受賞してよかった。ノーベル賞の受賞が好調で関心が高いうちに、次に続に続く人たちを育てる抜本的な改革ができるとよいが。。


投稿者 : yoshimura1212 投稿日時: 2019-10-01 11:57:40 (2265 ヒット)

 9/30のMCBでは名古屋大学の山中宏二先生が登壇。山中先生は筋萎縮性側索硬化症(ALS)の発症機構で著名な先生だ。話し方が非常にマイルドで京都大学医学部を卒業されているので「お公家さん」かと思っていたら三重県のご出身だそうだ。家族性ALSでよく見つかるSOD1遺伝子変異のトランスジェニックマウスの研究からSOD遺伝子の変異は酵素活性を失わせることではなく異常たんぱく質として蓄積することで神経症状をもたらすことが知られていた。山中先生は変異SOD遺伝子を各種の細胞で消すことで病状の変化を追跡し、なんと変異SODは神経細胞ではなくミクログリアやアストロサイトなどのグリア細胞に働いて神経を障害することを明らかにされた。文章で書くと簡単だが1年以上観察しないといけない実験で相当に根気が必要だ。気の短い私にはほとんど不可能。おそらく同様の機構が同じく異常たんぱく質が蓄積するアルツハイマー病やパーキンソン病でも起こっているのではと推測されている。神経変性疾患は単純な神経の病気ではなく思った以上に複雑なのだ。ではなぜALSでは運動神経が、アルツハイマーでは記憶などに関与する神経が特異的にやられるのか?それはまだ大きな謎なのだそうだ。アルツハイマーではアミロイドβに対する抗体が期待を集めていたが思った効果が得られずに臨床試験は中止に追いやられた。でもミクログリアは免疫細胞なので何か免疫系が関わっていることは間違いないだろう。すでに凝集してしまった変性たんぱく質は毒性は少なく途中の過程が重要なのかもしれないらしい。


投稿者 : yoshimura1212 投稿日時: 2019-09-29 16:11:45 (1989 ヒット)

木曜日から「がん学会」。初日午前中の英語のセッションでの発表。T細胞疲弊化の話題は英語でやったことがほとんどないので緊張する。25分の予定が直前に20分にと言われて後半のスライドをかなりスキップすることになった。いずれにしても準備不足で自分としては不満の残る内容だった。学会は演題はまだ少ないものの「がん免疫」は「がん学会」でも盛況で聴衆も多く定着しつつある気がした。

日曜日は郷里に戻って高校の同窓会に頼まれた講演を行う。話題の中心はもちろん「がん免疫」。がん学会での話も含めてノーベル賞の本庶先生の話題満載(もちろん賞賛ばかり)だった。一般向けの講演はあまり経験がなくいつも以上に緊張する。眠たくならないように所々にジョークをちりばめる。新ネタはCAR-Tの「キムリヤ」一回3300万円もするので「高すぎてムリヤ〜」まばらな笑い。「忘れてください」。
柳沢先生の話からヒントを得て「世の中では『笑うと免疫力がアップしてがんになりにくい』といわれているが実験的には証明されていない。ミッキーマウスは笑うけど我々がよく実験に使うネズミは笑わない。そもそも動物を笑わせるのは極めて難しい」これはうけた。
ノーベル賞の話題にからめてカロリンスカ研究所で昔、共同研究者に呼ばれて講演をしたときの謝辞の話を披露する。「今回は講演の機会をいただき誠にありがとうございます。つきましては12月にもう一度お呼びいただけることを願っています、と言ったら意味がわかってもらえずに会場がシーンとなった」これはまあまあ受けた。

質問で「先生がノーベル賞をとるのはいつですか?」「残念ながらノーベル賞は存命中でないともらえないので、私が生きているうちは難しいでしょう。」とかわす。イグノーベル賞ならそのうち、と言えばよかった。
予定の40分きっかりだったと思うが、一般向けに話すのはめちゃめちゃ難しい。


投稿者 : yoshimura1212 投稿日時: 2019-09-24 16:52:18 (2545 ヒット)

グレタ・トゥーンベリさん16歳は世界で最も有名な少女かもしれない。国連の温暖化の会議で怒りをぶちかました。あなたたちが話しているのはお金の事と経済成長というおとぎ話ばかり。恥を知りなさいHow dare you! というのは「よくもまあこんなことができるものだ」という怒りの表現。何度かでてくる。すごい。偉い。ぼーっと生きている自分が恥ずかしくなる。日本でも台風や豪雨で多くの人々が亡くなったり被害をうけたりしている。確かに彼女の言う通りで現在の大人たちが野方図に放出している二酸化炭素のつけは子供達にまわっている。放出を減らすぐらいでは足りない。吸収して減らす方法を開発すべきだろう。削減は困難。ならば技術開発で吸収すれば新たな産業の育成にもなりそう
この子はアスペルガー症候群で自覚しているという。中には「病んでいる」と避難するバカなそれこそ恥を知るべき大人もいる。幾多の批判にも負けないこういうカリスマ的な人が世界を変える事ができるのだろう。温暖化阻止のジャンヌダルク。負けないでほしい。


投稿者 : yoshimura1212 投稿日時: 2019-09-21 20:22:41 (2716 ヒット)

Kenn Murphyはずっと昔から免疫学の世界では一家言ある高名な人物で(見た目から?)「近寄りがたい」「怖い」人と思っていた。なんと35年も同じワシントン大学の教授をつとめている。実は歳は私と同じくらいかもしれない。彼が有名なのは免疫学では最も権威ある教科書「Janeway's Immunobiology」の単著者であることだろう。以前は共著だったが共著者が自己紹介しか書かないのでキレたという。やっぱり怖い?!
そのMurphyが慶應にやってきた。H教授がホストでセミナーをやってついでに接待にも誘ってもらった。私が知っているKennのイメージは免疫学会でよく呼ばれていた20年前であるが現在も外見はほとんど変わっていない。これまでのイメージで「怖いやつ」と思っていたが話してみると割と普通のオヤジだった。が、自分との大きな違いはその体型で腕を見る限りかなりの筋肉質。おそらく腹も3段に割れているに違いない。体型の話になって、彼は太ったと思ったら「高脂肪低タンパク」食事療法を行うのだと言う。最近もそれをやってXXポンド(アメリカはまだkgではなくポンドを使う後進国なのでよくわからなかった)減量したという。おいおい逆じゃないのかと思って確かめたが間違いない。「高脂肪」食といえばヒトでもマウスでも太らす食事のはず。それが何故?ポイントはタンパク質を摂取しないということらしい。延々と代謝経路の説明をされたがもともと代謝は大の苦手なので全くフォローできない。H先生はいちいちうなずいていたのできっと理解できたのだろう。世の中様々な食事ダイエット法は乱立しているが完全に逆説的な「高脂肪低タンパク」は初めて聞いた。ネットで調べても出てこない。低タンパクが脳にいいという話はあるようだが。。。まあ糖質制限ダイエットさえ続かずに食は美味しければそれが一番と思っている怠惰な人種には無縁か。。。


投稿者 : yoshimura1212 投稿日時: 2019-09-21 12:25:26 (1713 ヒット)

 14日からの3連休はオーストラリアのシドニーで開かれた国際炎症学会(WCI)に参加する。南半球は冬から春になりかけの頃で前半は非常に良い天気で快適だったが後半冷たい雨が降った。学問的には脳梗塞研究で著名な研究者と知り合いになれたことが一番の収穫だった。私が慢性期の脳Tregの話をしたら、オーストラリアでは動物愛護の観点から脳梗塞モデルを処置したマウスは1週間以上飼育してはいけない規則なのだそうだ。それで慢性期のことは研究できなかったと悔しがっていた。我々はその規制のおかげで少し得をしたということか。実はマウスは脳梗塞モデルに強く1週間もすると普通に動いている。それを処分するほうがよほど残酷のように思えるが。。

よいことばかりではなかった。初日、街は最近建設されたと思われる高架の道路が縦横に交差しており、GoogleMapで調べても会場までの行きかたがよくわからない。道路や線路を越えられないのだ。ようやく会場に着いたものの、3つほどの巨大なコンベンションセンターが並んでおり、しかも学会の看板が一切なくどこでやっているか全くわからない。散々探し回って基調講演を聞き逃してしまった。またプログラムの冊子が全くなくすべてアプリでダウンロードしなければならない。これは日本でも普及しているのだが、ここではすぐにはデータが入って来なくて、なぜか時々勝手にスマホに送られてくる。全部のプログラムが見れるようになったのは1日後。自分がどこで発表すればよいかもわからず焦った。船で英国領事館まで行ってパーティーをやるというので期待していたら雨でバスでの移動に変更になった。夕方の通勤時間帯にぶつかり大渋滞に巻き込まれ1時間くらいかかって到着したように思う。帰りはなんと自分らで勝手に帰れという。折り畳み傘が壊れて泣きそうになった。参加者の多くはオーストラリアからなので彼らには勝手はよくわかるのだろうが、難儀なことが多かった。会場は有名なダーリング湾の近くで夜景が美しかったのでよしとすることにしたい。


  
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