博士課程4年 白石裕士
九州大学生体防御医学研究所・免疫制御学分野
免疫の過剰な活性化や自己抗原への反応は自己免疫疾患を誘導する。生体内では様々な機構により免疫を調節しているが、免疫制御細胞として重要な細胞のひとつとして樹状細胞がある。樹状細胞は名前のとおり樹状突起を有する細胞で、抗原を食作用によって取り込み、T細胞に提示する抗原提示細胞のひとつである。炎症性刺激により活性化した樹状細胞は、ナイーブT細胞を活性化・増殖・分化誘導し、抗原特異的な免疫応答を惹起する(図参照)。一方、アポトーシス細胞の貪食など、自己抗原を提示するような状態では免疫寛容を誘導する。つまり樹状細胞は獲得免疫系を正および負に制御する重要な免疫制御細胞であると言える。樹状細胞の活性化は、LPS (lipopolysaccharide) のような菌体成分による TLR (Toll-like receptor) の刺激やネクローシス細胞による細胞内成分による刺激によって起こる。一方、IL-10やTGF-betaによる刺激は抑制的に働く。私は樹状細胞が活性化する機構を研究する過程で、生きた線維芽細胞が樹状細胞の活性化を負に制御している現象を発見した。線維芽細胞と共培養した樹状細胞は LPS のような TLR のリガンドで刺激した際のT細胞活性化能が低下していた。これは「普段は生体内の生細胞により樹状細胞を抑制するシグナルが存在し、病原性微生物などによって抑制シグナルが失われるために樹状細胞が活性化する」という機構の存在を示唆している。またこの分子機構を解明することで炎症性疾患の発症機序やがん細胞が免疫監視機構から逃れる分子機構の解明につながればと考えている。現在、この分子メカニズムについて解析を行っており、線維芽細胞由来の抑制活性物質の精製を HPLC などを行い、同定を試みている。これまで生化学をまともに学ぼうとしなかった自分には、このような作業は新鮮で、とてもよい経験になったと思っている。
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