トップ  >  山岡育英会h29年12月会報寄稿

奨学金破産の衝撃〜大学生の経済的困窮に思う

私は学部学生時代、大学院時代あわせて8年半の長期にわたって奨学生として山岡育英会には多大な恩恵を与りました。現在、慶應義塾大学医学部で免疫学の教育と研究に携わっています。私は18歳で念願の京都大学理学部に合格したものの、母子家庭で親には経済的余裕が全くありませんでした。授業料は免除されましたが生活費はなんとかしなければならない。当時は山岡育英会をはじめいくつかの企業団体にも学部の給付型奨学金があり、日本育英会の奨学金とあわせて月に5〜6万円程度を奨学金でいただくことができました。残り4万円くらいを家庭教師などのアルバイトで補っていました(今も当時も物価水準はものすごくは違わないのがある意味すごい)。奨学金なくして今の自分はないと言えます。当時、京都の高級中華料亭で奨学生を励ます会があり滅多に口にできない御馳走を目当てに年一回必ず参加させていただきました。そのとき山岡淳男理事長はいつも十八番の「くちなしの花」(「昔の名前で出ています」だったかもしれない)を披露してくださいました。



 私が学生の頃はこのような親に頼らずに大学に通う「苦学生」はさほど珍しくありませんでした。現代では死語になったのかと思っていましたが、最近大学生の経済的困窮が問題になっています。NHKのクローズアップ現代やニュース解説では奨学金破産や奨学金中退の問題が盛んに報道されています。大学を中退する人は年間およそ8万人。そのうち5人に1人が「お金がない」ことが原因で、中退してもまともな職につけない「中退難民」が増えているのです。無事に大学を卒業できても現在の奨学金のほとんどは貸与型なので多くの学生は400600万円の借金を背負っての船出となります。日本学生支援機構の厳しい「借金取り立て」もよく話題になります。国の教育支援は先進国で最低レベルなのです。政府はようやく給付型の奨学金を始めましたがまだまだ焼け石に水。額は少なくもらえる人も限られています。このような状況のなかで山岡育英会の活動は非常に貴重で、経済的に困窮しながらも学びたいと切実に願う学生の心の拠りどころであったと思います。しかし現在は学部学生には支給されておらず、大学院生に限られているようです。これは誠に残念なことです。大学院に進学できる学生はかなり恵まれています。実は現在ではリサーチアシスタントなど様々な制度があり大学院生のサポートは充実していると思います。恩返しと思い毎年山岡育英会に少額ながら寄附を続けていますが、学部時代にこそ一番恩恵を受けた私としてはやや複雑な思いがあります。


 一方で大学の教員としてレジャーランド化した大学にも危惧を覚えます。私の講義でも学生の大半が講義にも出ず何をしているかわからない。何不自由なく学べるということがどれほど有難いことなのか気がついてほしい。難波のエリカ様こと上西小百合議員は給付型奨学金に反対でその理由は 『大学に行けば何とかなる、なんて甘い考えだ』とおっしゃる。この方もたまにはまともなことを言うものだと思いました。大学生の中退難民を扱ったテレビ番組で某私大の著名な教育評論家が『借金してまで大学に行くのだから将来を保障してあげなきゃ』と言っていましたが、今の時代に「大学に行けば一生安泰」などという考えは通用しません。しかし「借金してでも学びたい」という真摯な気持ちのある優秀な若者もいることは間違いなく、彼らはこの国の将来にとっても貴重な存在です。大学人として彼らに経済的な不安が少なく学ぶ機会を与えられるように何かできることがあれば行動したいと思います。 


 


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