トップ  >  小宮節郎先生とのご縁

私は1987年に鹿児島大学医学部腫瘍研究施設(秋山伸一教授)の助手として赴任し、19957月に久留米大学分子生命科学研究所に教授として転出するまで、途中2年間ほど海外留学を挟みましたが、鹿児島大学で約8年間奉職させていただきました。久留米大学に赴任した当時はまだ37歳の青二才で、まず、いの一番にやったことは臨床の教授の方々への挨拶回りでした。とにかく臨床から人を送ってもらいたい一心で夏の暑い中を臨床各教室に出向きました。まあお話を伺いましょう、という程度の所が多かったのですが整形外科の井上明生教授だけが当時講師だった小宮先生を紹介してくださったのでした。小宮先生は鹿児島大学出身ということで私が鹿児島から来たので親しみを感じて下さったのか、「大学院生を近々送ります」と約束してくださった。それが横内雅博君で199512月より研究室に来てくれて、酵母を使ったチロシンキナーゼに結合する分子の探索の系を立ち上げてくれました。彼は大変優秀で数ヶ月でいくつもの新規遺伝子を見つけてくれました。そのひとつが現在のSOCS1(当時我々はJAK-binding protein, JABと呼んでいた)でした。SOCS1はサイトカインのシグナルを抑制する重要な分子ということがわかり、様々な困難を味わったものの論文は1997Nature に掲載されました(A new protein containing an SH2 domain that inhibits JAK kinases. Nature. 1997 Jun 26;387(6636):921-4.)。小宮先生と私の最初の共著論文でした。


  次に小宮先生が送ってくださったのが鈴木律君と脇岡徹君でした。鈴木君はSOCS1の仲間であるSOCS3が実はIL-6のシグナルを選択的に阻害することを見つけて報告しました(CIS3 and JAB have different regulatory roles in interleukin-6 mediated differentiation and STAT3 activation in M1 leukemia cells. Oncogene. 1998 Oct 29;17(17):2271-8.)。一方脇岡君は鹿児島大学を1995年に卒業し久留米大学で研修を行っていたのですが、実は学部学生時代に私がいた腫瘍研究施設に出入りしており旧知の仲でした。彼は19974月に私の研究室にやってきました。それからしばらくして横内君は19986月にアメリカ合衆国イエール大学のDr.Baronのもとに留学しました。Baronのラボは破骨細胞を大量に集めcDNAライブラリーを構築していたのですが、それを使いこなす技術がなく横内君が橋渡しをしてくれて私の研究室と共同研究をスタートさせることになりました。脇岡君はこのライブラリーから現在のSpred1という遺伝子を釣りあげました。Spred1Rasの抑制因子でした。これも大変な苦労の末に20018月にNatureに掲載されました(Spred is a Sprouty-related suppressor of Ras signalling. Nature. 2001 Aug 9;412(6847):647-51.)。その後Spred1は神経細胞種I型(NF1)様の遺伝疾患の原因遺伝子であることがわかりRasの抑制遺伝子であることが確立しました。最後に小宮先生に送っていただいたのが庄田孝則君で彼は私の異動に伴って九州大学までついて来てくれました。彼の論文はリウマチの新規治療法に関するものでIL-6のシグナルをブロックすることで関節炎モデルを抑制できることを示した先駆的なもので2001JCI (Induction of the cytokine signal regulator SOCS3/CIS3 as a therapeutic strategy for treating inflammatory arthritis. J Clin Invest. 2001 Dec;108(12):1781-8.)に掲載されました。このときすでにアクテムラの効果は予想されていたのでした。



 小宮先生との出会いがなければSOCSSpredも発見できず今日の私はなかったと言えます。鹿児島と久留米が結んでくれた縁だと思います。小宮先生が派遣して下さった若者たちは本当に優秀でした。九州大学に異動になったときに再び整形外科学教室を訪ねて井上教授にお礼を述べた時に「うちの一番優秀な若いのを送りましたから」と胸を張っておられたのも当然のことと思います。そのような優秀な人材を、まだ海のものとも山のものとも知れない、出来立ての基礎教室に派遣してくださった小宮先生の度量の大きさに今も感服します。小宮先生は2000年に鹿児島大学医学部整形外科学教室の教授に就任されました。教授選考のプレゼンテーションのリハーサルを私の研究室で行ったのがついこの間のような気がします。これからも小宮先生とのご縁を大事にしたいと考えていますが、この場を借りてもう一度小宮先生にお礼を申し上げたいと思います。本当にありがとうございました。


 


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