トップ  >  不破留寿之大夫

2014 年 9/15 3連休は頼まれものの審査、論文書き、19日の講演のスライド作成で完全につぶれた。昨日はついでに蚊にも刺されてデング熱に恐怖に怯えるしまつ。KI君は優雅に連休を楽しんでいる模様。あいつも森岡毅にはなれんな。気分転換に久しぶりに文楽を観に行く。今回は初めての新作文楽。文楽に新作があったとは初めて知った。実際はハムレットやらお蝶夫人やら椿姫やらいろいろあるらしい。『ヘンリー4世』と『ウィンザーの陽気な女房たち』を下敷きにしたとあるがシュエークスピア作という以外どちらも観たこともなけば内容も知らない。ともかく文楽で普通人間がやる舞台がどんなになるのか、ほとんど興味だけで出かけた。これが期待以上のものだった。まず筋はわかりやすくある程度完結している。珍しく喜劇である。80分間と短く通しでやるので途中集中力が途切れることもなく物語に入っていける。浄瑠璃も古典のよりは聞き取りやすいがちゃんと文楽風?になっている。音楽も三味線だけでなく胡弓(胡弓の弓で三味線を弾いている?)やら琴やらあって楽しめた。また不破留寿人形が絶妙の動きをするので何度も笑いをとる場面があった。



物語は巨漢で大酒飲みで自堕落な(誰かといっしょじゃないか)不破留寿が主君の春若と、ちょっかい出した飲み屋と蕎麦屋の二人の女房に徹底的にいじめられるという話。そう言っては身もフタもないか。遊び人だった春若が実は厳格で賢い若君でついに不破留寿を懲らしめようと考えたことが発端。臆病者なのに大ボラ吹いてしまうところをつつかれてしまう。ついでに二人の女房に同時に恋文を書いたことがばれてさんざんな目にあう。大ボラふきで小心者なのだが全然憎めない。しかし最後は春若に追放の憂き目にあう。理由が単に『太りすぎだから』と言われて会場は大爆笑だったが人生最高体重更新中の自分は笑うに笑えない。それでも終幕、独白で『戦争で名誉のために死ぬなんで馬鹿の骨頂。オレは愉快に愉しく生きる』と強がりを言いつつ「グリーン




リーブス」の哀愁に満ちた曲が胡弓?で奏でられるなか静かに去って行った。この退出が客席に向かって出て行ったのでびっくりした。文楽でもこんな演出があるんだ。それにしても不破留寿之太夫は最後までおかしく哀愁に満ちていた。(仕事にも女房にも)うだつはあがらず出ているのは腹だけという同じ中年オヤジとしては同情を禁じ得ない。



ふたりの女房の人形が対照的だったが新鮮だった。蕎麦屋のほうはごく普通の和風で見慣れているが赤いほうの飲み屋の女房のほうはアイメイクしているのか目が大きくぱっちりしていて今風というか飲み屋のオネーさん風なのがひどく印象に残った。同じことを感じたらしい感想文を見つけた(○○○オヤジの目がいくのはやっぱりそこか?)。途中の立ち回りで飲み客が後ろでテニスをはじめる。語りが『錦織』と声をかけてこれも大爆笑だった。飲み屋の奥でシェイクスピアとおぼしき人形が酒を飲んでいた。こんな粋なこともするんだ。



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