トップ  >  高木さん結婚おめでとう(シリーズ第1弾)

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有木君、高木さん今日はおめでとう。お二人を知る者としてこんなにうれしい日はありません。


私は宏美さんの指導教官ですので彼女の紹介をする立場であり、彼女がいかに優秀で女性としても魅力的であるかを並べるべきでしょうが、みなさんそれは十分によくご存知のことと思いますし、あまりほめすぎてあとで話しが違うと言われても困ります。それで最近感銘をうけた夫婦に関する2つのお話を紹介して私の祝辞にかえたいと思います。

ひとつは2年前に日経新聞の私の履歴書というコラムに連載された石坂公成先生の話です。石坂先生はアレルギーをおこすもとになる抗体IgEの発見で著名な免疫学者で文化勲章も受賞されています。このコラムは普通は本人の苦労話やサクセスストーリーが中心ですが石坂先生のものは半分以上が奥さんのことや奥さんとの関係について書かれています。奥さんもやはり免疫学を専門に研究されてアメリカの大学で教授になった最初の日本人女性と言われています。共に基礎研究を志し日本でもアメリカでも同じラボでずっと研究を続けられました。

その奥さんが60歳くらいの頃でしょうか、パーキンソン病を煩われて次第に身体が動かなくなり故郷山形に戻られました。夫である石坂先生はアメリカの研究所所長などの要職をすべて辞めて引退して山形に戻られて奥様の看病にあたられています。石坂先生と言えば教科書に載るくらい著名な先生です。当然日本に戻られたら研究所長や学長等の要職につかれるはずのかたです。それが寝たきりの奥さんの看病のために山形で引退されている。本着に深い愛情がなければできることではありません。私は深く感動しました。自分がもし寝たきりになったらはたしてうちの女房はつきっきりで介護してくれるだろうか?と自問しますと全く自信がありません。

ではどうして石坂先生たちは愛情を持続できたのでしょうか?私は先生も言われているように同じ目標を持って、生活でも仕事でも二人でひとり、二人三脚を実践されてきたからだと思います。私が偉いなと思うのは、石坂先生は奥さんと結婚記念日とクリスマスには毎年カードを交換している、というのです。私など結婚記念日ですらとうに忘れてしまっています。女房もあきらめきっています。IgE発見の激しい競争のなか、このカードで奥様は“二人の選んだ道でありここまで力をあわせて登って来た道です、頑張りましょう”と励まされたそうです。有木君も宏美さんも同じく研究者として自立を志しているわけです。これは普通の夫婦にないすばらしいことです。研究でも生活でもぜひ同じ目標をもって二人三脚を実践していかれたらきっと石坂先生たちのような美しい夫婦になれるのではないかと思います。


 (会場で突然思い出して)でも崖っぷち夫婦の我々もそう言えばカードのやりとり(一方的か?)をしたことがあります。私がアメリカに留学した時に3ヶ月ほど先に行ってセットアップしていました。当時はメールもなく国際電話も非常に高かった時代です。私はほぼ毎日絵はがきを書いて出していました。時々あれは一体なんだったのか?と言われることもありますがきっと熱病にうなされていたのでしょう。ともあれ有木君と宏美さんも今は離ればなれの身、そう言う時こそお互いの絆が深まるときだろうと思います。


  しかしそうはいっても長い結婚生活ではかならず衝突も起きます。私なんぞは毎日衝突のくり返しです。

『結婚前には両目を大きく開いて見よ。 結婚してからは片目を閉じよ。』こんな諺にもあるように、結婚生活では相手の欠点には目をつむれ、というのがおおいですね。私は両目を閉じないとやっていけないと思います。しかし長い夫婦生活の中では必ず衝突があります。そんなときどうすればいいのでしょう?

私はずっと長く読売新聞をとっています。多くの方が言われるように読売新聞が他の新聞より抜きん出ているのはただひとつ “人生案内“です。 このなかで酔って帰る夫とけんか、と題された相談があり目をひきました。

結婚10年目の奥さんからの相談です。自分も幼児と小学生の子供をかかえてストレスが溜まっているのだが、仕事人間の夫が毎晩お酒を飲んで帰って来てけんかになり、お互いになじりあう、どうしたらいいでしょう、という悩みです。私ならそんな弱い夫とはさっさと別れてしまえ、と言ってしまいそうなところですが、ある大学の先生の回答はこうでした。

まず小さな子供の世話で精いっぱいだというのに、毎晩のように酒を飲み当たり散らす夫に神経をすり減らすというのではさぞ大変でしょうね、とねぎらったうえで、でも真面目人間の夫が家であたりちらすのですから、余程つらい問題を抱えているのでしょう。夫の攻撃は実はあなたに救いを求める叫びにほかならないのです、どうか彼のいい分にじっくり耳を傾けてください、というものでした。

いかがでしょうか?まさになんじの敵を愛せよの精神ではないでしょうか。右のほほをなぐられたら左もさしだしなさい、というものです。普通はできません。それが出来るのは本当に愛情があればこそだろうと思います。逆に言えば長い夫婦生活ではお互いを傷つけあうような時があるかもしれない、そのときこそが二人の愛情が試されているときなのでしょう。そんなときはぜひこの大学の先生の回答を思い出していただけたらと思います。

ふたりの門出の時に坊さんの説教のような大げさなことを言ってしまったかもしれませんが、お二人ならばきっとこのような深い愛情と二人三脚の精神をもってどんな難局にも負けずに歩いて行かれると信じています。

どうかお幸せに。

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