トップ  >  瀧本君の思い出(結婚式祝辞)2007年9/29

  今日(2015年7月3日)瀧本君の告別式に行って来た。御両親に会っても言葉もでなかった。大変厳しい闘病生活だったことは想像に難くない。3月に見舞いに行った時は本当につらそうだった。あれから完全寛解を維持できていたそうだが、EBウイルスによるリンパ球増殖性疾患に勝てなかった。我々も骨髄移植に伴うGVHDを抑制する研究を行っている。免疫抑制剤を使うとどうしてもGVL効果を損なうしウイルス感染ほか感染症のリスクは高まる。そこを抗原特異的なTregでなんとかしたいと思って研究している。

  2007年に瀧本君の結婚式で祝辞を述べた。思い出して読み返したら涙が出て来た。本当に優秀でユニークなやつだった。もし現場に復帰できていたらこの闘病経験を生かして優れた研究医か臨床家になっていたことだろう。
鴻鵠の志半ばで逝ってしまった彼の死を無駄にしないためにも我々は研究を続け、少しでも医学に貢献できる仕事をしたい。それがかなわなくても医学を科学として探求できる後継者の育成に努めたい。
 2009年に市山君と瀧本君をkeystoneとボストンへ連れていった。当時ボストンやワシントンに留学していたラボの卒業生らも集まってくれてハーバード大学前で記念写真をとった。決して御し易い学生ではなかったが私の意見を蹴ってもやり抜くガッツを持っていた。もっと自由にやらせてあげたらよかったと今になって思う。

*******


瀧本君と朋子さんの結婚披露宴(9.29)祝辞

瀧本君、朋子さん ご結婚おめでとうございます。御両家の皆様もさぞお慶びのことと思います。
私はご紹介にあづかりました九州大学生体防御医学研究所で瀧本君の指導教官をしております吉村と申します。
今日はまず瀧本君の紹介を皆様にしたいところですが、彼は私どもの研究室にきてまだ1年半にしかなりませんがおそらく彼ほどエピソードに事欠かない人物も少ないのではないかと思います。そのなかからひとつだけ御紹介します。

嚥雀いずくんぞ鴻鵠の志しをしらんや

と申します。
これは雀やツバメ等の小さな鳥におおきな鳥の志しがわかるはずもない、という意味です。つまりいってみれば小人物には大人物の大きな志しは理解できないということです。私は瀧本君こそ、この鴻鵠のような人物であると思っています。
瀧本君が研究室に来て最初の週に、私に土曜日に宗像の病院でアルバイトをすることになったのだが、どう行けばいいでしょうか?と聞いて来ました。私は「そりゃあ博多駅か吉塚駅から鹿児島本線にのればすぐやろもん」、と答えました。すると彼は真顔で答えたのです。「先生鹿児島本線に乗ったら鹿児島に行ってしまうんじゃないですか?」。どうやらかれは鉄道に乗ったことがなく鹿児島本線というのは鹿児島に行く電車であるとこの年まで信じていたようです。
このようにある意味純粋無垢、悪く言えば世間知らず、とういべきで常人では理解し難い瀧本君ですが、私はやはり鴻鵠なのだと思います。仕事についてはよくできます。頭もいい。私は彼が鴻鵠であることを知っていますから研究ではいつも「三振してもいいからホームランを狙え」と言っています。彼は今、免疫寛容、つまり例えば、なんで食べ物に対して免疫はできないのか、といったことの原理に関する重要な仕事をしています。免疫学の長年の大問題に挑戦しています。これがわかれば花粉症も移植の拒絶も癌の免疫療法も自在にコントロールできる。私は瀧本君が今やっている仕事がもう少しでホームランになりそうな予感がしています。時々“それで卒業できるでしょうか?”と不安げに言う時がありますが、鴻鵠となる大人物になるものがそいうことは言っては行けない、「君ならば必ずホームランを打てる」、と諭しています。
朋子さんもおそらく瀧本君が鴻鵠となる人物であることを見抜いて結婚にOKされたのだと思います。おそらく瀧本君は普段の生活では普通のものさしでは計り知れないことも多々あるかと思います。しかしそれは見方をかえると、愛すべき点のおおい、きっと笑いの絶えない、なごやむような出来事が多い、ということもできます。『愛する者と暮らすのに大きな秘訣がひとつある。それは相手の欠点を直そうとしてはいけないという事だ』という格言もあります。どうか広い気持ちで少々のことは気にせずに暖かく彼を見守ってあげてください。必ずや大きなことをなしとげるはずですから。
一方滝本君にはぜひ重要なことをひとこと申し加えたいと思います。
ある夫婦のお話です。妻が病気になって寝込んでしまった。夫は毎日夕飯を用意してくれる妻を思って、今日は外でたべてくるからいいよと言いました。ところが妻はなんてヒトなのと怒りだしたそうです。なぜでしょうか?瀧本君わかりますか?それは寝込んで起きられない自分のために早く帰ってご飯を食べさせて欲しい、それくらいの思いやりのある男性であって欲しいというのが妻の感情だったのです。さきほどお二人は神父さんのまえで誓いの言葉をかわしたと思います。

  病める時も、健やかなる時も、死が二人を分かつまで

と変わらぬ愛を誓われたと思います。健康な時はなかなかお互いの重要性や思いやりを感じることができません。しかし病気で片方が寝込んだような時にこそ思いやりや愛情がはかられるものです。滝本君は仕事ではきっと我々の常識を超えた大発見ができると思います。しかし家庭ではぜひ常識人として愛情を持って奥さんと楽しい家庭を築いていただきたいものです。 
お二人の幸せを心からお祈りして、私からのお祝いの言葉とさせていただきます。本日はおめでとうございます。


(省略したエピソード)
時間の都合とあまりに新郎をこき下ろすと新婦の両親が不安になるのではと思って以下のエピソードは省略しました。しかしそれは杞憂でした。御両親はすでに十分ご承知でそれでもなお彼を娘の婿にと認めています。ご両親は瀧本君におとらず鴻鵠な人なのでしょう。
また新婦から,瀧本君はじめて出会った入局の面接の時に彼が友人からネクタイを結んでもらっていたのが最も印象的であったという話しがありました。私が言うまでもなく朋子さんはよくわかっておられる。才色兼備の奥さんはこれからも瀧本君を上手にリードして彼にホームランを打たせてくれることでしょう。実は朋子さんこそが鴻鵠なのかもしれません。
私は研究室への出欠には厳しいほうで、朝はきちんと9時までには来る、遅れる時は電話をして理由を言うように指導しています。大学の研究室というのは比較的ルーズなところが多いのですがそれでは社会に出てから困ります。社会のルールを守るように言っているのですが瀧本君は一向に守ってくれませんでした。レッドカードを5枚出してもうこれ以上無断で遅刻したら破門を言い渡したのですが、それでもまだ懲りずに遅刻してくるので私は言うのをやめてしまいました。彼は普通の定規で計れる人物ではないと悟りました。ところが最近はしっかり朝早くから出てくる。どうしたのかとと問うと、ハニーに起してもらっているとニヤニヤしながら言います。コイツ、と思いましたが、まあ幸せでいいのかと納得しました。しかししばらく前に遅れて来ましたので、奥さんの具合でも悪いのかと聞きますと、昨晩当直でした、という返事でした。先日また遅れて来たので、また当直か?と聞きますと、いやちょっと喧嘩して起してもらえませんでした、ということでした。普通は面倒みきれません。朋子さん、私はほっておくのが一番だと思いますね。あまり手をかけると必ず奥さんに頼りっきりになります。
(遅刻の常習犯であることは研修医時代の同僚も披露していた。朝5時に目覚ましをかけているのだが起きるのは隣の部屋の同僚だったそうだ。)
後2つほど用意していましたが省略します。いろいろと常識はずれのことの多い瀧本君ですがそれこそが彼の持ち味でしょう。きっと鴻鵠たる人物になってください。

 
プリンタ用画面
友達に伝える
前
大石君からの帰国の手紙
カテゴリートップ
卒業生より
次
須田先生文集への寄稿